第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午前71~75】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

71 Aさん(74歳、女性)は、1人暮らし。要介護1、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱa。頻尿のため、自室からトイレへの移動中に廊下で失禁することが頻繁にある。1日3食の高齢者向け配食サービスを利用している。
 現時点でのAさんの日常生活で最も起こりやすいのはどれか。

1.窒息
2.転倒
3.熱傷
4.徘徊

解答2

解説

本症例のポイント

・Aさん(74歳、女性、1人暮らし、要介護1)
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱa
・頻尿:自室からトイレへの移動中に廊下で失禁することが頻繁にある。
・1日3食の高齢者向け配食サービスを利用している。
→Aさんの尿失禁の種類として、「機能性尿失禁」が考えられる。機能性尿失禁とは、尿の膀胱内保持可能で正常な排尿も可能であるが、傷病者や高齢者など体動が不自由な人が尿意を感じてからトイレにたどり着くのが間に合わずに失禁してしまう状態である。対応策は、ポータブルトイレの設置などの環境調整、衣類の変更などで対応することが多い。

1.× 窒息より起こりやすいものが他にある。高齢者の窒息による事故の原因として、約半数を「気道閉塞を生じた食物の誤嚥」が占めている。特に、餅による窒息事故が多発する。日常生活自立度判定基準「で、食事がうまくできず窒息のリスクが高くなる。
2.〇 正しい。転倒が、現時点でのAさんの日常生活で最も起こりやすい。なぜなら、本症例は頻尿で失禁するなどの症状があり、尿意で慌てて転倒する可能性が高いため。Aさんの尿失禁の種類として、「機能性尿失禁」が考えられる。機能性尿失禁とは、尿の膀胱内保持可能で正常な排尿も可能であるが、傷病者や高齢者など体動が不自由な人が尿意を感じてからトイレにたどり着くのが間に合わずに失禁してしまう状態である。対応策は、ポータブルトイレの設置などの環境調整、衣類の変更などで対応することが多い。
3.× 熱傷より起こりやすいものが他にある。なぜなら、Aさんは、1日3食とも高齢者向け配食サービスを利用し、自分で調理していないため。ただし、若年者と比較すると高齢者は熱傷しやすいと言える。なぜなら、高齢者は若年者に比べて皮膚が薄く、また、運動機能や感覚機能が低下するため。高齢者に多いやけどは、①低温やけど、②着衣着火、③ストーブの上に置いたやかん等の熱湯を浴びる事故、④入浴に際しての事故である。カイロが最も多く、次いで、湯たんぽ、ストーブ類、電気毛布、あんかの順で多い。
4.× 徘徊より起こりやすいものが他にある。なぜなら、徘徊がみられるのは日常生活自立度判定基準「以上であるため。徘徊とは、認知症の「周辺症状」と呼ばれる症状の一つで、 家から外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る行動のことを指す。夜中の徘徊の原因として、記憶障害や見当識障害によるものとされている。

(※図:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランク)

 

 

 

 

 

72 Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右膝の痛みにより立位が困難である。端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。
 Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。

1.歩行器
2.ベッド柵
3.電動介助リフト
4.トランスファーボード

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(77歳、男性)
・脳梗塞による左片麻痺:右膝の痛みにより立位困難
・端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。
・妻(77歳、小柄):体格差のある夫の移乗の介助に負担。
→妻は、「移乗」の介助に負担を感じている。移乗は、①端坐位→②立ち上がり→③立位→④方向転換→⑤立位→⑥座り込み→⑦車椅子座位という工程を踏むことが多い。ただ、今回、左片麻痺・立位困難・立ち上がり介助が必要なAさんに対する移乗は、立位を経由せず、トランスファーボードを使用することで、介助量の軽減につながる。ちなみに、トランスファーボード(スライディングボード)とは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移譲するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できる。

1.× 歩行器は優先度が低い。なぜなら、歩行器は歩行するための歩行補助具であるため。本症例は立ち上がり困難であるため、歩行器を使用した立位保持や方向転換は困難である。
2.× ベッド柵は優先度が低い。なぜなら、主にベッド柵の目的は、ベッドからの転落および寝具の落下を予防するためのものであるため。ベッド柵の中にも、介助バー(L字柵)があり、これは起き上がりや立ち上がりをサポートしたり、車椅子への移乗動作の補助をする目的で使用される。ただし、Aさんは右膝の痛みで立ち上がりが困難であり、妻の介助量の負担軽減という観点から見ると、選択肢に優先度が高いものが他にある。
3.× 電動介助リフトは優先度が低い。なぜなら、電動介助リフトは、端坐位が困難なほぼ寝たきりに適応となるため。電動介助リフトとは、電動または手動で人を吊り上げ、キャスターで移動して降ろすことによって、移乗介助を行う機械のことである。自分自身で起き上がれる、ベッドの端に座ることが出来る、支えがあれば立ち上がれるなどの状態であれば、特に使用する必要はない。
4.〇 正しい。トランスファーボードがAさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具である。妻も「移乗」の介助に負担を感じている。移乗は、①端坐位→②立ち上がり→③立位→④方向転換→⑤立位→⑥座り込み→⑦車椅子座位という工程を踏むことが多い。ただ、今回、左片麻痺・立位困難・立ち上がり介助が必要なAさんに対する移乗は、立位を経由せず、トランスファーボードを使用することで、介助量の軽減につながる。ちなみに、トランスファーボード(スライディングボード)とは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移譲するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できる。

 

 

 

 

73 Aさん(82歳、男性)は、妻(75歳)と2人暮らし。障害高齢者の日常生活自立度判定基準B-1。日中は車椅子に座っていることが多い。Aさんの仙骨部に発赤があるのを発見したため、訪問看護師は妻にAさんへの介護方法を指導することにした。
 妻に指導する内容で正しいのはどれか。

1.「仙骨部をマッサージしましょう」
2.「夜間は2時間毎に体位変換をしましょう」
3.「時々お尻を浮かすよう声をかけましょう」
4.「車椅子に座らせるときは円座を使いましょう」

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(82歳、男性)
・2人暮らし:妻(75歳)
・障害高齢者の日常生活自立度判定基準B-1
・日中:車椅子に座っていることが多い。
・仙骨部:発赤
→褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。

1.× 褥瘡に対し、マッサージは禁忌である。なぜなら、褥瘡(発赤)に対しマッサージすると、皮膚組織に摩擦が起こり、組織の損傷を進行させる可能性が高いため。
2.× 本症例において、夜間の2時間毎に体位変換の指導は適切ではない。なぜなら、本症例は、障害高齢者の日常生活自立度判定基準B-1(自力で座位を保つことができ、介助なしで車椅子などに移乗できる状態)であるため。ベッド上での体位変換が自立して行えると考えられる。褥瘡の原因として、「日中は車椅子に座っていることが多い」ことが考えられる。ただし、完全に寝たきり患者の場合は、夜間の2時間毎に体位変換が推奨されている。
3.〇 正しい。「時々お尻を浮かすよう声をかけましょう」と妻に指導する。時々、殿部を浮かすことで、殿部の除圧につながり褥瘡予防となる。20分ごとのプッシュアップ(殿部除圧)が推奨されている。15分~1時間ごと、1回15秒以上行うことが推奨されている。
4.× 褥瘡に対し車椅子に座らせるときの円座は使用しない。なぜなら、円座は接触面積が少なくなり、より圧がかかりやすくなるため。接触する部分の血行が悪くなり褥瘡を悪化する。ちなみに、円座とは、会陰切開などを行った産後の女性や、腰痛や痔に悩まされている人が、痛みを和らげるために用いることがある。 また、姿勢や骨盤の矯正を目的として用いられることもある。

(※図引用:「障害高齢者の日常生活自立度判定基準」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

74 地域包括ケアシステムにおける支援のあり方で、「互助」を示すのはどれか。

1.高齢者が生活保護を受けること
2.住民が定期的に体重測定すること
3.要介護者が介護保険サービスを利用すること
4.住民ボランティアが要支援者の家のごみを出すこと

解答4

解説

地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。

1.× 高齢者が生活保護を受けることは、公助に当たる。
2.× 住民が定期的に体重測定することは、自助に当たる。
3.× 要介護者が介護保険サービスを利用することは、共助に当たる。
4.〇 正しい。住民ボランティアが要支援者の家のごみを出すことは、互助に当たる。

 

 

 

 

75 医療提供の理念、病院・診療所等の医療を提供する場所、その管理のあり方を定めたのはどれか。

1.医療法
2.医師法
3.健康保険法
4.保健師助産師看護師法

解答1

解説

1.〇 正しい。医療法は、医療提供の理念、病院・診療所等の医療を提供する場所、その管理のあり方を定めたものである。医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。医療法における医療計画とは、医療提供体制の確保を図るための計画である。地域における体系的な医療の提供を実現することを目的として、都道府県が策定する計画である。医療計画は6年ごと(平成29年度までは5年ごと)に見直される。
2.× 医師法とは、医師全般の職務・資格などを規定する日本の法律である。つまり、一般人には禁止されている医療行為を、医師という有資格者に限って許可する法律である。
3.× 健康保険法とは、労働者及びその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する医療保険給付等について定めた日本の法律である。
4.× 保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。通称は保助看法。(※一部引用:「保健師助産師看護師法」厚生労働省HPより)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)