第108回(H31) 看護師国家試験 解説【午後16~20】

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16 緑内障患者への投与が禁忌なのはどれか。

1.コデイン
2.アスピリン
3.アトロピン
4.フェニトイン

解答3

解説

MEMO

緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどが生じる。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。

1.× コデインは、中枢性麻薬性の鎮痛薬鎮咳薬(せき止め)として使う。主な副作用には、眠気、めまい、嘔気・嘔吐などである。依存性もあり、身体依存、精神依存、耐性がみられる。禁断後、数時間で離脱症状が出現し、①精神症状(被刺激性、苦悶、不安、興奮など)、②痙攣発作、③あくび、流涙、鼻汁、発汗、不眠、食欲不振などが現れる。
2.× アスピリンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤で(NSAIDs)の一つである。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。
3.〇 正しい。アトロピンは、緑内障患者への投与が禁忌である。なぜなら、抗コリン作用があり、投与により散瞳するため。緑内障は、眼圧の上昇があり、その原因は眼圧を保つ房水の吸収障害である。房水吸収を阻害する抗コリン作用の薬剤は禁忌である。したがって、抗コリン剤のほかに抗ヒスタミン剤も禁忌である。 抗ヒスタミン剤を使用すると、瞳孔を閉じる働きを持つ毛様体筋を弛緩させるため、隅角がせまくなってしまい、眼圧上昇がおこると考えられています。
4.× フェニトインは、抗てんかん薬である。強直間代発作(全般けいれん発作、大発作)や焦点発作、自律神経発作、精神運動発作などに効果が期待できる。副作用に、眼振、幻暈、嘔気、失調、振戦、小脳障害、歯肉増殖などがある。

 

 

 

 

 

17 看護師が行う看護過程で適切なのはどれか。

1.問題解決思考である。
2.医師の指示の下で計画を立てる。
3.看護師の価値に基づいてゴールを設定する。
4.アセスメント、計画立案、評価の3段階で構成される。

解答1

解説

MEMO

看護過程は、根拠を持った看護を実践するための思考過程である。根拠を持つためには、科学的根拠に基づいて情報の分析を行う必要がある。看護における問題解決過程とは、看護過程の流れ(①対象の全体像の把握(アセスメント)→②看護診断→③目標設定→④計画→⑤実施→⑥評価)を指す。

1.〇 正しい。問題解決思考である。問題解決思考とは、現状に何かしらの課題があり、目指すべき姿におよばないギャップのある状態において、効果を発揮する思考法である。看護過程において、クリティカル・シンキングが必要になる。クリティカル・シンキングとは、看護過程を展開するうえで重要な考え方のひとつである。批判的な思考能力・問題解決能力・創造的思考・意思決定能力などをいう。
2.× 「医師の指示の下」で計画を立てる必要はない。看護過程は、根拠を持った看護を実践するための思考過程である。看護過程の計画は看護師が専門的に立てることができる。
3.× 「看護師の価値」ではなく、患者(対象者)に基づいてゴールを設定する。看護師の価値観の押し付けにならないよう注意する。
4.× 「アセスメント、計画立案、評価の3段階」ではなく、①対象の全体像の把握(アセスメント)→②看護診断→③目標設定→④計画→⑤実施→(⑥再評価:アセスメント)の5段階で構成される。

 

 

 

 

 

18 成人のグリセリン浣腸で肛門に挿入するチューブの深さはどれか。

1.2cm
2.5cm
3.12cm
4.15cm

解答2

解説

グリセリン洗腸とは?

病院における浣腸は、肛門にグリセリン液を入れて排便を促すために実施するグリセリン浣腸のことを指す。直腸及びS状結腸までの排便を促すことができる。便秘の原因の特定・改善だけでなく、原因のはっきりしない腹痛で苦しんでいる人に診断目的で行う。浣腸液の温度は38〜40度前後、挿入するチューブの深さは、肛門から5〜6cm程度で、注入速度は、50mlを15秒程度の時間をかけて実施する。基本的に左側臥位で行う。グリセリン洗腸を実施する際に発生のおそれがある腸管穿孔は、グリセリン浣腸のチューブが直腸前壁に当たって腸管粘膜を損傷することで起こる。肛門から直腸前壁までの長さが最も短いときに接触の危険性が高くなる。

1.× 2cmでは浅すぎる。なぜなら、肛門入口から4~5cmまでが肛門管(内肛門括約筋と外肛門括約筋が存在)であるため。つまり、直腸内に行き渡らず、薬効が不十分となる。
2.〇 正しい。5cmが成人のグリセリン浣腸で肛門に挿入するチューブの深さである。浣腸液の温度は38〜40度前後、挿入するチューブの深さは、肛門から5〜6cm程度で、注入速度は、50mlを15秒程度の時間をかけて実施する。肛門入口から4~5cmまでが肛門管(内肛門括約筋と外肛門括約筋が存在)であり、カテーテル先端が5cmより手前である場合、抜けや漏れが起こる。
3.4.× 12cm/15cmでは深すぎる。深すぎるとチューブの先端が直腸壁に当たり、腸管穿孔が起こる。ちなみに、大腸穿孔の場合、糞便性腹膜炎から容易に敗血症、多臓器不全に至るため、死亡率は11~34%と報告されている。

 

 

 

 

 

19 右前腕に持続点滴をしている患者の寝衣交換で適切なのはどれか。

1.左袖から脱ぎ、右袖から着る。
2.左袖から脱ぎ、左袖から着る。
3.右袖から脱ぎ、左袖から着る。
4.右袖から脱ぎ、右袖から着る。

解答1

解説

右前腕に持続点滴をしている患者=右手がうまく使えない=右片麻痺患者と同様の方法で行う。脱ぐときは、右前腕に持続点滴ラインがあることから、自由に動く左袖から先に脱ぎ、左腕・服を自由に動かせることで、安全を確保して右腕を脱ぐことできる。また着るときは反対に、先に慎重に袖を通したい右袖から着ることで、自由に左腕は動くため、可動域を補って服を着れる。したがって、選択肢1.左袖から脱ぎ、右袖から着る

 

 

 

 

20 転倒・転落の危険性が高い成人の入院患者に看護師が行う対応で正しいのはどれか。

1.夜間はおむつを使用する。
2.履物はスリッパを使用する。
3.離床センサーの使用は控える。
4.端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。

解答4

解説

高齢者の転倒の原因

①内的要因:加齢変化、疾患・障害、使用中の薬物など。
②外的要因:屋内外の生活環境、履き物、衣服など。

【高齢者の転倒による骨折】

①大腿骨近位部骨折
②脊椎圧迫骨折
③上腕骨近位部骨折
④橈骨遠位端骨折

1.× 安易に夜間のおむつ使用を推奨しない。なぜなら、排泄機能の低下を招くだけでなく、尿路感染症や皮膚トラブルなども起こしやすいため。おむつの着用は、それ以外に代替策がない場合の最終的な選択である。就寝前に排尿を促したり、ポータブルトイレの使用を考えるべきである。
2.× 履物はスリッパを使用しない。なぜなら、スリッパの使用は転倒を助長することになるため。スリッパ踵が覆われていないため、すり足歩行になりやすくつまづく要因となる。
3.× 離床センサーの使用は、「控える」のではなく、慎重に判断し必要なら使用する。なぜなら、離床センサーを用いることで、転倒・転落の原因や対策へとつながるため。主に、認知力低下を認める患者などでは、有効な対策となる。ちなみに、離床センサーとは、ベッドから離れたことを検知する装置であり、通常、ベッドに設置され、重量を感知することで、ベッドから離れたことを検知する。認知面が不安定で転倒の恐れがある場合や、睡眠の質を測定するために病院や介護施設で使用されることが多い。これにより、看護師や介護者は、高齢者や障害を持つ方が危険な状態に陥らないようにする。
4.〇 正しい。端坐位時に足底が床につくベッドの高さにする。なぜなら、立ち上がる際、立ち上がりやすくなり転倒を防ぐ対策となるため。同時に、座った時に膝関節が90度になる高さにすることも大切である。

 

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