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次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
Aさん(19歳、男性、専門学校生)は、1人暮らし。「皆が自分を嫌っている」と言い、昨年から学校を休学し、アパートに引きこもるようになった。先週、夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人が両親へ連絡をした。連絡の翌日、Aさんの両親が訪ねてみると、Aさんは「隣の人に嫌がらせを受けている。助けてくれ」と叫び続けたため、両親とともに精神科病院へ行き、その日のうちに任意入院となった。Aさんは統合失調症と診断され、抗精神病薬による治療が開始された。
111 入院後2か月。Aさんは症状も落ち着いてきたため、退院の準備をすることになった。Aさんは看護師に「病気はすっかりよくなったのに、ずっと薬を飲まなければならないのか。体がだるく、体力が落ちた気がする。朝から学校へ行けるかどうか心配だ」と話した。
Aさんの退院の準備のために行う支援で優先度が高いのはどれか。
1.服薬心理教育
2.食事への援助
3.筋力トレーニングの指導
4.アサーティブトレーニングの指導
解答1
解説
・入院後2か月。
・症状も落ち着き、退院の準備。
・Aさん「病気はすっかりよくなったのに、ずっと薬を飲まなければならないのか。体がだるく、体力が落ちた気がする。朝から学校へ行けるかどうか心配だ」と。
→本症例は、退院準備が始まっていることから、統合失調症における維持期であると考えられる。維持期は、①再発防止、②患者がよりよい生活を獲得する、③デイケア、④体力つくりが大切になる。Aさんは「ずっと薬を飲まなければならないのか」と言っていることからも、薬についての必要性や効果、期間など学習する必要がある。
1.〇 正しい。服薬心理教育が、Aさんの退院の準備のために行う支援で優先度が高い。本症例は、退院準備が始まっていることから、統合失調症における維持期であると考えられる。維持期は、①再発防止、②患者がよりよい生活を獲得する、③デイケア、④体力つくりが大切になる。Aさんは「ずっと薬を飲まなければならないのか」と言っていることからも、薬についての必要性や効果、期間など学習する必要がある。ちなみに、服薬心理教育とは、統合失調症に対して行う支援のひとつで、まず、統合失調症の症状や原因を学ぶところから始まり、治療に対する薬物療法での薬剤の作用、副作用から日常生活における注意点を指導するといった治療に対して前向きに取り組んでいくための教育を行う。つまり、病気や服薬の必要性や効果などを学ぶものである。
2.× 食事への援助の優先度は低い。なぜなら、入院中も含め食事のことは問題になっていないため。
3.× 筋力トレーニングの指導より優先度が高いものが他にある。なぜなら、Aさんは「体がだるく、体力が落ちた気がする」と言っているものの、前後の文脈から推測すると、薬の副作用の影響が強いと考えられるため。Aさん(19歳)であることからも、日常生活を過ごすことで次第に体力は戻ってくる可能性が高い。
4.× アサーティブトレーニングの指導の優先度は低い。アサーティブトレーニングとは、自分の意見を適切に伝えられるようにトレーニングする方法である。自分も相手も大切にした自己主張の訓練である。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(40歳、男性、会社員)は、うつ病と診断されていた。最近、仕事がうまくいかず、大きなミスを起こし、会社に損失を与えたことから自分を責め不眠となり、体重が減少した。ある朝、リビングの床で寝ているAさんを妻が発見し、大きな声で呼びかけたところ、Aさんは1度目を開けたが、すぐ目を閉じてしまった。ごみ箱に、からになった薬の袋が大量に捨ててあり、机には遺書があった。救急搬送後、意識が清明となり、身体的問題がないため精神科病院に入院となった。
112 入院時の看護師のAさんに対する関わりで適切なのはどれか。
1.いま死にたい気持ちがあるか尋ねる。
2.命を大切にしたほうがよいと伝える。
3.死ぬ気があれば何でもできると話をする。
4.家族が悲しむから死んではいけないと伝える。
解答1
解説
・Aさん(40歳、男性、会社員、うつ病)
・救急搬送後:意識が清明となり、身体的問題がない。
・精神科病院に入院となった。
→本症例は、うつ病の急性期である。この時期は可能な限り休息と保護的なかかわりが必要となる。うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。
1.〇 正しい。いま死にたい気持ちがあるか尋ねる。なぜなら、自殺しないように約束してもらうことは、うつ病患者への対応の一つであるため。自殺念慮とは、死にたいと思い、自殺することについて思い巡らす事のことをいう。自殺念慮の切迫度は、計画の具体性が高い場合、また実際に準備をしている場合に高いと判断する。うつ病患者への対応として、他にも、①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること、②重要事項の判断・決定は先延ばしにすることなどがあげられる。
2.× 「命を大切にしたほうがよい」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんの思いや意向を聞かず、否定している発言にも聞き取れるため。まずは、気持ちを受け入れることが大切である。
3.× 「死ぬ気があれば何でもできる」と話をする必要はない。なぜなら、励ましは心理的な負担となるため。余計に患者を追い詰めることになる。
4.× 「家族が悲しむから死んではいけない」と伝える必要はない。なぜなら、うつ病にかかりやすい人の特徴として、責任感が強い人が多い。家族を引き合いに出すと、余計に責任を感じさせることになりかねない。また、家族がいない人は死んでも良いのか?という話にもなりかねないため、あえて家族を引き合いに出す必要はない。
かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。
うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。
①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。
【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)
【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(40歳、男性、会社員)は、うつ病と診断されていた。最近、仕事がうまくいかず、大きなミスを起こし、会社に損失を与えたことから自分を責め不眠となり、体重が減少した。ある朝、リビングの床で寝ているAさんを妻が発見し、大きな声で呼びかけたところ、Aさんは1度目を開けたが、すぐ目を閉じてしまった。ごみ箱に、からになった薬の袋が大量に捨ててあり、机には遺書があった。救急搬送後、意識が清明となり、身体的問題がないため精神科病院に入院となった。
113 入院後1か月、Aさんのうつ症状は改善を認めたが、同室患者とトラブルが続き、不眠や多弁傾向となった。また焦燥感が強く落ち着いて食事ができなくなった。そのため双極性障害と診断され、主治医から炭酸リチウムの内服の指示が出た。Aさんは炭酸リチウムを服用して1週後、手の震え、嘔気が出現した。
Aさんの手の震え、嘔気の原因を判断するための検査で最も適切なのはどれか。
1.尿検査
2.髄液検査
3.頭部MRI検査
4.薬物血中濃度検査
解答4
解説
・入院後1か月:うつ症状は改善を認めた。
・同室患者とトラブルが続き、不眠や多弁傾向。
・焦燥感が強く落ち着いて食事ができなくなった。
・診断名:双極性障害(炭酸リチウムの内服)
・1週後:手の震え、嘔気が出現。
→うつ状態だけが続くものを「うつ病」、躁状態とうつ状態をくり返すものを「双極性障害」などと分類される。気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。
→炭酸リチウムは、双極性障害の治療でよく用いられるが、適正な血中濃度が保てない場合は、リチウム中毒となる。これは、炭酸リチウムの有効血中濃度の範囲は、0.60~1.20mEq/Lと非常に狭いため起こってしまう。リチウム中毒の症状は、悪心・嘔吐、下痢、血圧低下、不整脈、意識障害、振戦、乏尿などである。重篤になると命の危険にもつながるため、定期的な血中濃度検査が推奨されている。
1.× 尿検査とは、尿中の成分を検査することにより腎・尿路系、もしくは腎前性疾患を推測する検査である。たとえば、尿中の蛋白は腎臓の病気、潜血は結石や腎炎等、糖は糖尿病関連、ウロビリノーゲンは肝臓の病気の可能性が示唆される。
2.× 髄液検査とは、脳脊髄液を採取する検査である。通常、体を丸めて横向きになり、背骨の間に針を刺し、脊髄腔(骨髄と硬膜の間の空間)に針を進めて5~10ccの脳脊髄液を採取する。髄液の機能として、栄養を補給し老廃物を排除する働きと、脳や神経を保護する役目がある。 そのため、脳や脊髄に病気や異常があると、髄液に変化がみられ、この髄液を採取し調べ病気の診断、治療、予後を判定するのが髄液検査である。
3.× 頭部MRI検査とは、頭部断面の構造をみるMRI、頭部の血管の様子を調べるMRAの両方を調べられる。脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)の検出やリスク発見、特に虚血性の脳卒中である「脳梗塞」の検出力に優れている。
4.〇 正しい。薬物血中濃度検査は、Aさんの手の震え、嘔気の原因を判断するための検査で最も優先される。本症例は、炭酸リチウムの内服1週後で、手の震え、嘔気が出現していることから、リチウム中毒が疑われる。炭酸リチウムは、双極性障害の治療でよく用いられるが、適正な血中濃度が保てない場合は、リチウム中毒となる。これは、炭酸リチウムの有効血中濃度の範囲は、0.60~1.20mEq/Lと非常に狭いため起こってしまう。リチウム中毒の症状は、悪心・嘔吐、下痢、血圧低下、不整脈、意識障害、振戦、乏尿などである。重篤になると命の危険にもつながるため、定期的な血中濃度検査が推奨されている。
次の文を読み112〜114の問いに答えよ。
Aさん(40歳、男性、会社員)は、うつ病と診断されていた。最近、仕事がうまくいかず、大きなミスを起こし、会社に損失を与えたことから自分を責め不眠となり、体重が減少した。ある朝、リビングの床で寝ているAさんを妻が発見し、大きな声で呼びかけたところ、Aさんは1度目を開けたが、すぐ目を閉じてしまった。ごみ箱に、からになった薬の袋が大量に捨ててあり、机には遺書があった。救急搬送後、意識が清明となり、身体的問題がないため精神科病院に入院となった。
114 入院後3か月、Aさんは退院予定となり、元の職場に戻るための準備をすることになった。Aさんは「すぐに仕事に戻るのではなく、規則正しく生活することなどから、段階的に取り組むほうがいいのではないか」と訴えていた。
Aさんの職場復帰を含めた退院後の生活を支援するために適切なのはどれか。
1.自立訓練
2.就労移行支援
3.就労継続支援
4.精神科デイケア
解答4
解説
・入院後3か月:退院予定(元の職場に戻るための準備)
・Aさん「すぐに仕事に戻るのではなく、規則正しく生活することなどから、段階的に取り組むほうがいいのではないか」と。
→本症例は、①元の職場に戻る準備、②規則正しい生活を確立したいという。その両方が行える施設を選択することが望ましい。
1.× 自立訓練とは、知的障害者・精神障害者に対して、自立した日常生活ができるように訓練や助言をするものである。本症例は復職の準備をしている段階である。
2.× 就労移行支援とは、一般就労などを希望する就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、知識・能力の向上、実習、職場探しなどを通じ、適性に合った職場への就労が見込まれる障害者を対象としたサービスである。事業所内での作業などを通じた訓練、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援などを実施する。就労移行支援の期限は2年(特例で3年)である。本症例は、元の職場に戻るための準備をしている段階である。
3.× 就労継続支援とは、障害者総合支援法5条14項に「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」と定められている(※一部引用:「障害者総合支援法」e-GOV法令検索様HPより)。本症例は、元の職場に戻るための準備をしている段階である。
4.〇 正しい。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。
115 Aさんが利用する在宅サービスで最も優先度が高いのはどれか。
1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護
2.通所リハビリテーション
3.短期入所生活介護
4.療養通所介護
解答4
解説
・Aさん(70歳、男性、ALS:3年前)
・2人暮らし:妻(68歳、慢性腎不全)。
・妻:週3回の血液透析、1回に約6時間の外出が必要。
・在宅で療養生活を続けていた。
・入院:人工呼吸療法、経管栄養法を受けた。
・妻:退院後に必要なケアなどについて指導を受けた。
・退院前カンファレンス:訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討する。
→本症例の場合、妻が外出するため1回に6時間の見守りが必要である。対応するサービスを選択する。
1.× 定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、訪問介護員または訪問看護師が要介護者の自宅を定期訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の介護サービスである。一日に複数回訪問し、一回の訪問は10~20分程度で、短時間の身体介護(食事介助、清拭介助、排せつ介助など)を中心に行う。本症例の場合、妻が外出する6時間の見守りには対応が困難である。
2.× 通所リハビリテーション(デイケア)は、利用者が老人保健施設・病院・診療所などに通い、日常生活上の支援や、生活機能訓練を受け、可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるようにする居宅サービスである。本症例の場合、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討している。
3.× 短期入所生活介護(ショートステイ)とは、利用者が可能な限り自己の生活している居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、利用者に短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスである。本症例のように、人工呼吸療法、経管栄養法を受けた対応は困難である。
4.〇 正しい。療養通所介護が最も優先度が高い。療養通所介護とは、難病等の重度要介護者やがん末期の者であって、サービス提供に当たり看護師による観察が必要な利用者を対象とする地域密着型サービスである。入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話や機能訓練を行うことで、利用者の社会的孤立感の解消や心身の機能の維持、利用者の家族の身体的・精神的負担の軽減を図る(※参考:「療養通所介護」厚生労働省HPより)。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)