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次の文を読み115、116 の問いに答えよ。
Aさん(82歳、男性)。妻との2人暮らし。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準はランクJ。Aさんは搔痒感のために皮膚科を受診し、老人性皮膚搔痒症と診断され、抗ヒスタミン内服薬が処方された。身長165cm、体重55kg。Aさんの趣味は散歩で、毎日1km 程度を歩いている。
116 Aさんは「食べにくくてあまり食事が摂れていない。階段の昇り降りをしたり、10分以上歩いたりすると疲れてしまい、あまり外に出なくなった」と言う。体重は1か月間で2kg減少していた。他に自覚症状はなく、血液検査の結果は、血清蛋白の低下の他に異常はなかった。
このときのAさんに出現している現象として最も考えられるのはどれか。
1.脱水
2.筋肉量の減少
3.胃酸の分泌増加
4.関節可動域(ROM)の制限
解答2
解説
・Aさん(82歳、男性、老人性皮膚搔痒症)
・食べにくくてあまり食事が摂れていない。
・階段の昇り降りをしたり、10分以上歩いたりすると疲れてしまう。
・あまり外に出なくなった。
・体重:1か月間で2kg減少。
・他に自覚症状はなし。
・血液検査:血清蛋白の低下の他に異常なし。
→フレイルとは「加齢により心身が衰えた(虚弱な)状態」のことをいう。身体的フレイルの評価基準には、一般的にFriedらによるフレイルの定義が用いられることが多く、①体重減少(6か月間で2~3㎏以上)、②主観的活力低下、③握力低下、④歩行速度の低下、⑤活動度の低下の5項目のうち3項目以上が当てはまればフレイルであるとしている。ちなみに、1~2項目該当で「プレフレイル」という。【フレイルの要因】①身体的:体重減少、活力低下、握力低下、歩行速度低下など。②社会的:閉じこもりがち、社会交流の減少など。③精神的:認知機能の低下、意欲判断力の低下、抑うつなど。
1.× 脱水より優先度が高いものが他にある。脱水とは、生体において体液量が減少した状態をいう。水やナトリウムの喪失が原因で起こる。ちなみに、脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
2.〇 正しい。筋肉量の減少が最も考えられる。なぜなら、これまでAさんの趣味として、散歩(毎日1km程度)があったが、現在はあまり外に出なくなってしまい、体重は1か月間で2kg減少しているため。ちなみに、血清総蛋白とは、血清中に含まれているタンパク質の濃度を測定したもので、総蛋白の低下は、アルブミンの低下かグロブリンの低下のいずれかで起こる。低栄養状態の指標となる。
3.× 胃酸の分泌増加より優先度が高いものが他にある。胃酸過多により、胃炎や胃潰瘍などが起こりやすい。胃潰瘍とは、胃の粘膜の下にある筋層まで傷ついている状態である。自覚症状で最も多いのが、みぞおちの痛みである。食事中から食後に起こることが多く、十二指腸潰瘍の場合は、空腹時、特に早期に痛むことが多い。胸やけ、胃もたれ、吐き気、嘔吐、食欲不振を伴うこともある。
4.× 関節可動域(ROM)の制限は、設問文から判断できない。主な原因として、①皮膚や骨格筋、関節包などの関節周囲軟部組織にその原因がある場合、②骨・軟骨といった関節構成体そのものに原因がある場合、③関節内遊離体や脱臼に伴う骨の偏位、強直などがある場合に分けられ、本症例はいずれも設問文には記載されていない。
次の文を読み117、118 の問いに答えよ。
Aさん(31歳、初産婦)。妊娠40週1日。Aさんは午前5時に、陣痛間欠10分、陣痛発作10秒となり入院した。入院時の内診所見は子宮口1cm開大で、未破水であった。
117 Aさんは、午後2時に子宮口が4cmまで開大し、破水した。このときの胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
胎児心拍数陣痛図の情報で正しいのはどれか。
1.陣痛間欠4分
2.陣痛発作10秒
3.母体脈拍数50/分
4.胎児心拍数基線150〜160 bpm
解答4
解説
・Aさん(31歳、初産婦、妊娠40週1日)
・午前5時:陣痛間欠10分、陣痛発作10秒。
・入院時の内診所見:子宮口1cm開大、未破水。
・午後2時:子宮口4cmまで開大、破水。
→胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。胎児心拍数パターンをみるときは、①心拍数(基線の高さ)、②心拍数の細かい変動(基線細変動)、③胎動や子宮収縮に対する心拍数の変化(一過性変動)の3点についてチェックする。
1.× 陣痛間欠は、「4分」ではなく1分~1分30秒程度である。陣痛間欠とは、個々の収縮を陣痛発作、発作終了から次の発作までの休止をいう。下の波形が子宮収縮圧を示しており、紙送り速度は、1メモリ間隔は20秒である。
2.× 陣痛発作は、「10秒」ではなく1分~1分30秒程度である。下の波形が子宮収縮圧を示しており、山形の曲線が陣痛発作である。陣痛発作とは、陣痛の間(子宮の収縮と休止を一定の間隔で繰り返し)で、子宮が収縮するときをいう。
3.× 母体脈拍数50/分はどこにも表記されない。なぜなら、胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものであるため。
4.〇 正しい。胎児心拍数基線150〜160bpmは、胎児心拍数陣痛図から読み取れる。上の波形が胎児心拍数を表している。胎児心拍数基線とは、10分間の区間の平均心拍数である。正常値は110〜160bpmとされ、160bpm以上になると頻脈、110bpm以下の場合は徐脈と判断される。
分娩時間は、陣痛発来(陣痛周期が10分間隔)から胎盤娩出までの時間である。陣痛とは、子宮の収縮が規則的に1時間に6回以上(間隔が 10 分以内)になったときである。つまり、分娩所要時間は、分娩第1期から第3期までの合計時間となる。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
次の文を読み117、118 の問いに答えよ。
Aさん(31歳、初産婦)。妊娠40週1日。Aさんは午前5時に、陣痛間欠10分、陣痛発作10秒となり入院した。入院時の内診所見は子宮口1cm開大で、未破水であった。
118 このとき、Aさんは陣痛のたびに緊張して身体を固くし、痛みがないときは眠そうにしている。昼食は、プリン1個と牛乳1本を摂っている。Aさんは「赤ちゃんは、なかなか生まれないですね」と疲れた表情で看護師に話す。
このときのAさんへの対応として適切なのはどれか。
1.「陣痛に合わせていきんでみましょう」
2.「眠いときは眠るようにしましょう」
3.「階段の昇り降りをしましょう」
4.「お風呂に入ってみましょう」
解答2
解説
・Aさん(31歳、初産婦、妊娠40週1日)
・痛みがないときは眠そうにしている。
・昼食:プリン1個と牛乳1本を摂っている。
・「赤ちゃんは、なかなか生まれないですね」と疲れた表情。
1.× 陣痛に合わせていきむ必要はない。なぜなら、本症例の子宮口は4cm、分娩第1期であるため。いきむ(努責)のは、子宮口全開大の後(分娩第2期)である。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す必要がある。
2.〇 正しい。「眠いときは眠るようにしましょう」と伝える。なぜなら、眠そうで、疲れた表情をいるため。また、医学的にも分娩第1期の潜伏期に該当し、初産婦で12時間かかる。本症例の場合、陣痛発来から9時間であるため、睡眠を取れるときに体力を回復する必要がある。
3.× 階段の昇り降りをする必要はない。なぜなら、階段昇降によりさらに疲労が蓄積され、最悪の場合、分娩遅延につながる可能性が高くなるため。分娩は正常に進んでおり、運動などの現時点では介入の必要はない。
4.× お風呂に入る必要はない。なぜなら、入浴によりさらに疲労が蓄積され、最悪の場合、分娩遅延につながる可能性が高くなるため。さらに、入浴により上行性感染を引き起こす可能性がある。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
次の文を読み119、120 の問いに答えよ。
Aさん(17歳、高校生)。身長158cm、体重48kg。Aさんは最近、月経時に下腹部痛が繰り返し出現し、寝込むことが多くなった。心配した母親と一緒に、Aさんは産婦人科クリニックを受診し、医師から機能性月経困難症と診断された。既往歴に特記すべきことはない。
119 Aさんの下腹部痛についての説明で適切なのはどれか。
1.プロスタグランディンの過剰産生によって起こる。
2.無排卵性の月経によって起こる。
3.卵巣内のうっ血によって起こる。
4.経血の流出によって起こる。
解答1
解説
・Aさん(17歳、高校生、身長158cm、体重48kg)
・最近:月経時に下腹部痛が繰り返し出現、寝込むことが多くなった。
・医師から機能性月経困難症と診断された。
・既往歴に特記すべきことはない。
→月経困難症には主に2種類あげられる。①器質性月経困難症:子宮内膜症、チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫などの器質的疾患を伴う。30歳以降の女性に多くみられる。②機能性月経困難症:器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。
1.〇 正しい。プロスタグランディンの過剰産生によって起こる。機能性月経困難症とは、器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。
2.× 無排卵性の月経によって起こるものではない。なぜなら、無排卵性月経とは、卵子が排卵されない状態で、月経(生理)があることをさすため。無排卵性月経は、排卵にかかわるホルモンが正常に分泌されないために起こる。原因として、無理なダイエットや強いストレス、また激しい運動や不規則な生活習慣などがあげられる。
3.× 卵巣内のうっ血によって起こるものではない。卵巣内のうっ血は、主に骨盤内うっ血症候群でみられる症状の一つである。骨盤内うっ血症候群とは、卵巣内やその近傍に静脈瘤がある女性に発生し、立位時や性交時に悪化する慢性疼痛である。原因として、妊娠、出産、生理などで骨盤内の血流の増加が繰り返され、卵巣静脈に負担がかかることによって静脈弁が壊れることがあげられる。
4.× 経血の流出によって起こるものではない。経血とは、子宮の内膜がはがれて出血が起こり、一度固まった血液が酵素の働きで再び溶かされて体外へ出たものである。経血量が多い、レバーのような塊が混じるときは過多月経といい、子宮の病気(子宮筋腫、子宮腺筋症など)が隠れている可能性が高いため受診を勧める。
次の文を読み119、120 の問いに答えよ。
Aさん(17歳、高校生)。身長158cm、体重48kg。Aさんは最近、月経時に下腹部痛が繰り返し出現し、寝込むことが多くなった。心配した母親と一緒に、Aさんは産婦人科クリニックを受診し、医師から機能性月経困難症と診断された。既往歴に特記すべきことはない。
120 Aさんは「次の月経からは、痛みがあれば、処方された鎮痛薬を飲むようにします。部活動で毎日ジョギングをしていますが、その他に日常生活で気を付けることを教えてください」と看護師に聞いてきた。
このときの看護師の指導で適切なのはどれか。
1.運動量を増やす。
2.下腹部を温める。
3.葉酸を含む食品は控える。
4.腰部のマッサージは控える。
解答2
解説
・Aさん(17歳、高校生、身長158cm、体重48kg)
・診断名:機能性月経困難症と。
・Aさんは「次の月経からは、痛みがあれば、処方された鎮痛薬を飲むようにします。部活動で毎日ジョギングをしていますが、その他に日常生活で気を付けることを教えてください」と。
→機能性月経困難症の治療として、プロスタグランジンの合成を抑制する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めが月経痛に有効である。痛み止めだけでは効果がない場合は、ホルモン剤治療(低用量ピルや黄体ホルモン剤)などの治療を行う。
1.× これ以上、運動量を増やす優先度が低い。なぜなら、Aさんは部活動で毎日ジョギングをしているため。ただし、子宮や骨盤の血流をよくするために、運動量の他に、入浴後のストレッチを推奨することもある。
2.〇 正しい。下腹部を温める。なぜなら、下腹部を温めることで子宮や骨盤の血流を改善することができるため。
3.× 葉酸を含む食品は控える必要はない。なぜなら、葉酸と機能性月経困難症の関連性はないため。ちなみに、葉酸とは、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。
4.× 腰部のマッサージは控える必要はない。なぜなら、腰部のマッサージすることで、精神的な除痛がみこめることもあるため。ただし、明確な根拠はないため、効果は確実とはいえない。
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。