第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午前106~110】

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次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性)は、23歳で統合失調症を発症し、精神科病院へ5回入院したことがある。1年前に、被害妄想が原因で隣人に暴力を振るい措置入院となった。入院後2か月で自傷他害の恐れは消失し、医療保護入院へ切り替えられたが、幻覚や妄想があり家族へ1日に何回も電話をかけていた。その後は家族へ電話をかける回数が減り、病棟での生活も安定してきた。幻聴は続いているが、自分の身の回りのことは自分で行えるようになった。作業療法も継続して参加できていることから、退院を検討することになった。

106 Aさんの退院について、両親は「退院は反対。入院前のように隣人とトラブルになるのではないかと不安です。私達も高齢になってきたので負担が大きいです」と話した。
 このときの両親への看護師の対応で適切なのはどれか。

1.退院後に活用できる社会資源について情報提供する。
2.Aさんの主治医に入院の継続を依頼するよう勧める。
3.Aさんの現在の病状を隣人に説明するよう勧める。
4.退院の承諾は家族の義務であることを伝える。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(50歳、男性)
・23歳:統合失調症発症、精神科病院へ5回入院歴あり。
・病棟での生活も安定してきた(幻聴あり)。
・退院を検討:作業療法も継続して参加できている。
・両親は「退院は反対。入院前のように隣人とトラブルになるのではないかと不安です。私達も高齢になってきたので負担が大きいです」と。
→本症例は、統合失調症の維持期である。統合失調症の維持期は、①再発防止、②様々なレベルで社会復帰をしている患者の生活の質の維持や向上を図る、③体力作り時期である。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。

1.〇 正しい。退院後に活用できる社会資源について情報提供する。なぜなら、本症例の両親は、「退院は反対。入院前のように隣人とトラブルになるのではないかと不安です。私達も高齢になってきたので負担が大きいです」と言っているため。精神科デイケアなど社会資源を使用提供することで、高齢の両親が抱える心理的身体的経済的負担を軽減できる可能性が高い。
2.× Aさんの主治医に入院の継続を依頼するよう勧める必要はない。なぜなら、両親が反対しているだけの理由で、入院を継続することはできないため。現在Aさんの病態は退院レベルであるため、今後のAさんの希望(今後どのように生活していきたいのか)を聞いていくことも大切である。
3.× Aさんの現在の病状を隣人に説明するよう勧める必要はない。なぜなら、Aさんは23歳から統合失調症発症と診断され、精神科病院へ5回入院歴があり、すでに隣人も知っている可能性が高いため。仮に知らなかったとしても、隣人に説明したからと言って、両親の「入院前のように隣人とトラブルになるのではないかという不安」は、Aさんの病状次第なところもあるため解消されない可能性が高い。また高齢の両親に、近隣の病気の働きかけはさらに負担が大きくのしかかってしまう。
4.× 退院の承諾は家族の義務ではない。これは、平成25年に精神保健福祉法改正により義務ではなくなった。平成25年に改正された主な趣旨は、家族の負担軽減および本人の同意を得ない入院期間の短縮化であり、それを実現するための新たな制度が制定された。ちなみに、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)とは、①精神障害者の医療及び保護を行うこと、②障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと、③精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律である(参考:「精神保健福祉法について」厚生労働省HPより)。

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性)は、23歳で統合失調症を発症し、精神科病院へ5回入院したことがある。1年前に、被害妄想が原因で隣人に暴力を振るい措置入院となった。入院後2か月で自傷他害の恐れは消失し、医療保護入院へ切り替えられたが、幻覚や妄想があり家族へ1日に何回も電話をかけていた。その後は家族へ電話をかける回数が減り、病棟での生活も安定してきた。幻聴は続いているが、自分の身の回りのことは自分で行えるようになった。作業療法も継続して参加できていることから、退院を検討することになった。

107 その後もAさんの両親は、高齢であることを理由に自宅への退院には同意しなかった。
 Aさんの退院を計画的に進めるために行うことで適切なのはどれか。

1.精神医療審査会の開催
2.入院診療計画書の修正
3.行動制限最小化委員会の開催
4.医療保護入院者退院支援委員会の開催

解答4

解説

1.× 精神医療審査会の開催する必要はない。なぜなら、Aさんの両親は、退院を望んでいないため。精神医療審査会とは、精神障害者の人権に配慮しつつ、その適正な医療及び保護を確保するため、精神科病院に入院している精神障害者の処遇等について専門的かつ独立的に審査を行う精神保健福祉法に基づき設置された機関である。具体的には、精神科病院に入院中の患者家族等から退院請求処遇改善請求があったときに、入院の必要性や処遇の妥当性について審査を行う。
2.× 入院診療計画書を修正する必要はない。なぜなら、入院後の病状の変化で修正されるものではないため。入院診療計画書とは、入院時の病名、推定される入院期間、入院中の治療・検査・ケアなどの計画が記載されるものである。クリニカルパスとは、入院中の標準的な経過を説明するため、入院中の予定をスケジュール表のようにまとめた入院診療計画書である。
3.× 行動制限最小化委員会を開催する必要はない。なぜなら、Aさんは行動制限を受けおらず、退院レベルであるため。行動制限最小化委員会とは、隔離および身体拘束の必要性と妥当性について検討を行う病院内審査機関である。行動制限が最小化されるよう事例検討研究教育を行う。
4.〇 正しい。医療保護入院者退院支援委員会の開催を実施する。医療保護入院者退院支援委員会とは、医療保護入院者の地域生活への移行の促進をめざし、医療と福祉の関係者が連携し、早期退院に必要な体制の充実を図るなど、医療保護入院者が円滑に地域生活へ移行できるよう支援するものである。本症例のように、退院が長引きそうである場合に、①医療保護入院による入院継続の必要性の有無・理由②推定される入院期間内に退院できるための取り組みが審議される。

 

 

 

 

次の文を読み106〜108の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性)は、23歳で統合失調症を発症し、精神科病院へ5回入院したことがある。1年前に、被害妄想が原因で隣人に暴力を振るい措置入院となった。入院後2か月で自傷他害の恐れは消失し、医療保護入院へ切り替えられたが、幻覚や妄想があり家族へ1日に何回も電話をかけていた。その後は家族へ電話をかける回数が減り、病棟での生活も安定してきた。幻聴は続いているが、自分の身の回りのことは自分で行えるようになった。作業療法も継続して参加できていることから、退院を検討することになった。

108 Aさんの退院については、アパートでの単身生活か、共同生活援助(グループホーム)での生活を目指すことになった。
 Aさんの精神科リハビリテーションを進めるにあたり、病棟看護師が連携する職種で最も優先度が高いのはどれか。

1.退院後生活環境相談員
2.理学療法士
3.介護福祉士
4.栄養士

解答1

解説

共同生活援助<グループホーム>とは?

共同生活援助<グループホーム>とは、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつであり、ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。

1.〇 正しい。退院後生活環境相談員が最も優先される。退院後生活環境相談員とは、医療保護入院者が退院に向けての相談や地域援助事業者の紹介など円滑な退院後の地域生活への移行のための調整業務を行う。退院後生活環境相談員になれるのは、精神保健福祉士の資格を有する者等である。
2.× 理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。
3.× 介護福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法を根拠とする国家資格で、身体が不自由な高齢者、身体もしくは精神に障害がある方に対し、食事や入浴、排泄の介助など日常生活を営むためのサポートをおこなうことである。つまり、主に患者の介護を行う。
4.× 栄養士とは、都道府県知事の免許を受けた資格で、主に健康な方を対象にして栄養指導や給食の運営を行う。また、薬剤師とは、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格で、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどる職種である。

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(76歳、女性)は、長女(46歳、会社員)との2人暮らし。Aさんは5年前に2型糖尿病と診断された。1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。炊事は主にAさんが担当している。Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。Aさんのバイタルサインは、体温36.4℃、脈拍74/分、血圧128/80mmHg。身長154cm、体重68kgである。

109 このとき、外来看護師がAさんに行う指導で適切なのはどれか。

1.糖質を含まない水分を摂取する。
2.労作後は食事摂取量を増やす。
3.決まった食事時間を設定する。
4.空腹感に応じて食事を摂る。

解答3

解説

本症例のポイント

・Aさん(76歳、女性、2型糖尿病:5年前)
・2人暮らし:長女(46歳、会社員)
・1年前:血糖測定とインスリン自己注射を朝1回。
・炊事:主にAさんが担当している。
・夕食時間にばらつきがある。
・Aさん「時々汗が出て手が震えることがあります」と。
・体温36.4℃、脈拍74/分、血圧128/80mmHg、身長154cm、体重68kg
→「時々汗が出て手が震えることがある」ことから、Aさんは低血糖症状が疑われる。血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

1.× 糖質を含まない水分を摂取する必要はない。むしろ、本症例は「時々汗が出て手が震えることがあります」という発言から、低血糖症状が起こった時の対応が必要であるため、飴や角砂糖など(糖を含む水分)を携帯してもらう。ただし、常に糖質を摂取すると糖尿病の悪化が助長されるため、糖質は、低血糖時や、3食の食事に合わせて決められたカロリーの範囲内で摂取する。
2.× 「労作後」ではなく労作前に食事摂取量を増やす。なぜなら、労作中(運動中)に糖が消費され、低血糖症状を助長されるため。したがって、運動療法は、食後1〜2時間に実施することが多い。
3.〇 正しい。決まった食事時間を設定する。なぜなら、食事の時間や量にばらつきがあると、インスリン注射の効果も変動し、高血糖や低血糖が生じやすくなるため。ただし、現在は色々なインスリン注射薬を治療に使用できるため、それぞれの生活パターンに合わせたインスリン治療が可能である。看護師から主治医への患者の様子の報告を忘れずに行う。
4.× 空腹感に応じて食事を摂る必要はない。なぜなら、食事時間や量のばらつきが生じるため。食事の時間や量にばらつきがあると、インスリン注射の効果も変動し、高血糖や低血糖が生じやすくなる。

糖尿病とは?

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。
 Aさん(76歳、女性)は、長女(46歳、会社員)との2人暮らし。Aさんは5年前に2型糖尿病と診断された。1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。炊事は主にAさんが担当している。Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。Aさんのバイタルサインは、体温36.4℃、脈拍74/分、血圧128/80mmHg。身長154cm、体重68kg である。

110 1か月後、Aさんと一緒に外来を訪れた長女は「今までインスリンの治療は母に任せてきましたが、母は眼が見えにくく、インスリンの量が多い日があったようです。母が自己注射を続けられるように、私も手伝えればと思います」と外来看護師に話した。外来受診時、Aさんに末梢神経障害の症状は認められず、手指の動きに問題はなかった。
 Aさんがインスリン自己注射を行う上で、外来看護師が行う長女への助言で適切なのはどれか。

1.「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」
2.「血糖測定は娘さんが代わりに行いましょう」
3.「注射の針はつけたままにしましょう」
4.「注射の部位は上腕を選びましょう」

解答1

解説

本症例のポイント

・1か月後:長女「今までインスリンの治療は母に任せてきましたが、母は眼が見えにくく、インスリンの量が多い日があったようです。母が自己注射を続けられるように、私も手伝えればと思います」と。
・外来受診時:末梢神経障害なし、手指の動き良好。
→本症例は、糖尿病の合併症をきたしていると考えられる。主に3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があげられる。なかでも糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気である。初期の段階では、自覚症状はないが、進行に伴い、視力低下や飛蚊症が起こり、最終的に失明に至ることもある。ちなみに、糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

1.〇 正しい。「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」と助言する。なぜなら、長女の発言「母は眼が見えにくく、インスリンの量が多い日があった」ことから、糖尿病網膜症により、投与するインスリンの単位数を間違えたと考えられるため。
2.× 血糖測定を娘さんが代わりに行う必要はない。なぜなら、Aさんは末梢神経障害なし手指の動き良好であるため。できることはなるべく自分で行うことで、Aさんの自尊心を尊重することができる。ただし、糖尿病神経障害をきたし、安全に行うことができない場合、娘さんに介助してもらうことも検討される。ちなみに、糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。
3.× 注射の針はつけたままにする必要はない。なぜなら、つけたままだと針刺し事故感染症を引き起こす恐れがあるため。したがって、注射の針は1回限り使い捨てである。
4.× 注射の部位は上腕を選ぶ必要はない。なぜなら、同じ部位に繰り返し注射すると硬結がおこることがあるため。また、Aさんは目が見えにくいため、面積が広く大きい所の方が良い。ちなみに、一般的に注射部位は、上腕、腹部、殿部、大腿部など、脂肪組織がある部位に駐車できる。毎回約2cmずつずらしながら注射すると、硬結も予防できる。硬結とは、注射部位の皮膚が硬くなることである。

 

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