第107回(H30) 看護師国家試験 解説【午後101~105】

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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 A君(14 歳、男子)は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32 ℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB 教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。

101 B教諭に付き添われて、A君は病院に到着した。来院時、A君のバイタルサインは、体温38.5℃、呼吸数26/分、脈拍128/分、血圧90/48mmHgであった。口唇粘膜は乾燥し、皮膚をつまむとゆっくり戻る状態であった。血液検査データは、赤血球580万/μL、白血球12,500/μL、Hb 16.8 g/dL、Na 152mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 109mEq/L、クレアチニン0.9mg/dLであった。尿比重1.035。受診時の身長165cm、体重57kg(発症前60kg)。
 A君の状態に対するアセスメントとして適切なのはどれか。

1.貧血である。
2.低カリウム血症である。
3.高ナトリウム血症である。
4.循環血液量が増加している。
5.ツルゴール反応は正常である。

解答3

解説

本症例のポイント

・体温38.5℃、呼吸数26/分、脈拍128/分、血圧90/48mmHg
・口唇粘膜は乾燥し、皮膚をつまむとゆっくり戻る状態であった。
・赤血球580万/μL、白血球12,500/μL、Hb 16.8 g/dLNa 152mEq/LK 4.0mEq/L、Cl 109mEq/L、クレアチニン0.9mg/dL
・尿比重1.035。受診時の身長165cm、体重57kg(発症前60kg)
→本症例の評価を正常範囲内から逸脱している項目を正確に把握できるようにしておこう。

1.× 貧血とはいえない。なぜなら、本症例は、Hb16.8g/dLであるため。ちなみに、ヘモグロビンの正常値は男性:14~18g/dL、女性:12~16g/dLである。
2.× 低カリウム血症とはいえない。なぜなら、本症例は、K 4.0mEq/Lであるため。ちなみに、カリウムの正常値は3.5~4.5mEq/Lである。
3.〇 正しい。高ナトリウム血症である。本症例は、Na 152mEq/Lであるため。ちなみに、ナトリウムの正常値は135~145mEq/Lである。体内の総ナトリウム量に対して体内総水分量が不足していることを意味し、水分摂取量が水分喪失量よりも少ないことにより引き起こされる。主な症状は口渇である。
4.× 循環血液量は、「増加」ではなく低下している。なぜなら、ツルゴール反応の低下していることから脱水が疑われるため。循環血液量とは、血管系内を比較的迅速に循環している血液量をいう。
5.× ツルゴール反応は、「正常」ではなく低下している。ツルゴール反応とは、一般的に皮膚の張りをさし、皮膚をつまみ、皮膚の戻る時間を計る触診を行うことで、脱水の評価するものである。本文から「口唇粘膜は乾燥し、皮膚をつまむとゆっくり戻る状態であった。」と記載があることから読み取れる。

脱水の評価

ツルゴールの評価方法は、一般的に皮膚の張りをさし、皮膚をつまみ、皮膚の戻る時間を計る触診を行うことで、脱水の評価する。皮膚が元の状態に戻るまでに2秒以上かかる場合は、ツルゴールの低下と判断し、脱水の可能性を疑う。

 

 

 

 

次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
 A君(14 歳、男子)は、夏休みのサッカー部の部活動で、朝10時から12時まで屋外で練習した。昼食時におにぎり2個とお茶を500mL摂取し、休憩後の13時から15時まで再び練習した。この日は晴天で、外気温は32 ℃であった。15分休憩し練習を再開したところ、A君は突然頭痛と悪心とを訴え、グラウンドの隅に座り込んだ。サッカー部担当のB教諭が、A君を日陰で横にして休ませ様子をみていたが、症状が改善せず、顔面蒼白、冷汗が出現した。A君は「気持ち悪い」と言った後に嘔吐した。

102 A君は熱中症と診断された。点滴静脈内注射の後、A君の状態は回復し、家族とともに帰宅することとなった。付き添いのB教諭から、今後の部活動における熱中症予防について看護師に相談があった。
 熱中症予防のための指導内容で適切なのはどれか。

1.袖口の狭い服の着用を促す。
2.口渇がなくても水分摂取を促す。
3.湿度が高いときに部活動をする。
4.休憩は90 分に1回を目安にする。

解答2

解説

(※図引用:「部活動中の熱中症対策」環境省HPより)

1.× 袖口は、「狭い服」ではなく、広い服の着用を促す。なぜなら、袖口が広い方が、通気性のよく熱の放散を促すことができるため。一方、袖口が狭い服装や熱を吸収しやすい服装は、保熱するため控える。
2.〇 正しい。口渇がなくても水分摂取を促す。水分をこまめに摂取できる環境にする。例えば、自由に水分補給ができるように、グランド周りに水筒を置いたり、個人ボトルを持参してもらうようにする。
3.× 湿度は、「高いとき」ではなく低いときに部活動をする。なぜなら、湿度が高いときは汗の蒸散しにくく熱がこもりやすいため。熱中症の発生には、気温・湿度・風速・日射・幅射が関係する。
4.× 休憩は、「90分」に1回を目安にするのは不適切である。なぜなら、気温やその日の体調に合わせる必要があるため。「熱中症予防運動指針」によると、暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)が31℃を超える場合は、運動は原則中止と言われている。ちなみに、暑さ指数とは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標である。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されているが、その値は気温とは異なる。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標である。

(※図引用:「熱中症予防運動指針」JSPO様HPより)

熱伝導形態

熱には3つの熱伝導形態があり、①熱伝導、②対流熱、③熱放射である。
①熱伝導は、物質を介して熱が伝わることをいう。(簡単にいうと、直接触れることによる熱の移動)
②対流熱は、液体や気体の流れに乗って熱が移動することをいう。
③熱放射は、温度差がある物体の間で、熱が移動することをいう。
④エネルギー変換熱は、電磁波や超音波など体内で吸収されて熱エネルギーに変換することをいう。

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。
 身体所見: 体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。
 検査所見: 血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性(PT活性)105%(基準値80〜120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50) 41 IU/mL(基準値30〜45 IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50〜99/1視野。

103 A君の状態から最も考えられる疾患はどれか。

1.川崎病
2.血友病A
3.急性リンパ性白血病
4.全身性エリテマトーデス(SLE)
5.Henoch-Schönlein(ヘノッホ・シェーンライン)紫斑病(IgA血管炎)

解答5

解説

本症例のポイント

・A君(13歳、男子)。
2週前:下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現。
・血尿および蛋白尿あり。
・既往歴および家族歴:特記なし。
・身体所見: 体温36.7℃、血圧110/66mmHg、意識清明、腹痛、浮腫なし。
・両膝関節:軽度疼痛あり、腫脹および発赤なし。
・両下腿に紫斑が散在している。
・検査所見: 血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性105%(基準値80〜120%)活性化部分トロンボプラスチン時間32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価41IU/mL(基準値30〜45 IU/mL)、抗核抗体陰性。
・尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50〜99/1視野。
→本症例の大きな特徴として、2週間という短期間で急激に多彩な臓器症状(紫斑・腹痛・膝関節痛・血尿・蛋白尿)がみられるようになっている。また、「紫斑をきたす」という症状からは小型動脈や毛細血管などの血管障害血小板減少といった病態が考えられる。

1.× 川崎病とは、乳幼児に好発する血管に炎症が起こる病気のことである。原因は、今のところその原因は特定されいないが、細菌の感染、ウイルスの感染、なんらかの環境物質による刺激などがいわれている。症状として、発熱、結膜充血、口唇・口腔病変、不定形発疹、手足の硬性浮腫、掌蹠(しょうせき:膿が溜まっている状態)や指趾先端の紅斑、頚部リンパ節腫脹などがみられる。本症例は、13歳で発熱を伴っていないことなどから、川崎病は否定できる。
2.× 血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。血友病Aの原因は、第Ⅷ凝固因子の活性低下でおこる。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。本症例は、プロトロンビン活性105%(基準値80〜120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間32.0秒(基準対照31.2秒)であることから、血友病は否定できる。
3.× 急性リンパ性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。本症例の白血球は5,600/μLであることから、急性リンパ性白血病は否定できる。ちなみに、正常値は、3100~8400/μL程度である。
4.× 全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。本症例の場合、関節炎、腎病変しかみられないことから、全身性エリテマトーデス(SLE)は否定できる。
5.〇 正しい。Henoch-Schönlein(ヘノッホ・シェーンライン)紫斑病(IgA血管炎)が最も考えられる。紫斑病性腎炎ともいい、IgA血管炎に伴い発症する腎炎で、紫斑(紫紅色~暗紫褐色の点状~斑状の皮下出血)が必ず出現する。体内の小さな血管(毛細血管)にIgAという免疫グロブリンが沈着することにより発症するタイプの血管炎 である。成人よりも小児で発症することが多く、 好発年齢 は3~7歳と報告されている。男女比は、1.5~2.0:1と男性に多い(※参考:「紫斑病性腎炎(指定難病224)」難病情報センターHPより)

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。
 身体所見: 体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。
 検査所見: 血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性(PT活性)105%(基準値80〜120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50) 41 IU/mL(基準値30〜45 IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50〜99/1視野。

104 その後6か月間、A君は外来で経過観察となった。関節症状および紫斑は自然に消失したが、尿の異常と低蛋白血症は変わらず、その他の所見も変化がなかった。
 A君の尿の異常の確定診断をするために最も重要な検査はどれか。

1.腎生検
2.咽頭培養
3.腹部MRI
4.クレアチニンクリアランスの測定

解答1

解説

本症例のポイント

・6か月間:外来で経過観察。
・関節症状および紫斑は自然に消失。
尿の異常と低蛋白血症は変わらず
・その他の所見も変化がなかった。
→ヘノッホ・シェーライン紫斑病の症状としては、紫斑や関節痛、腹痛が認められる。紫斑(点状の出血斑)は下腿に多く、早期は隆起する。関節痛は約80%に認められ、軽度の腫脹を伴うことがある。腹痛は約60%に認められ、便に出血を伴う。ちなみに、約50%に糸球体腎炎を合併する。多くは無症状(血尿、蛋白尿のみ)で発症することが多く、 全身倦怠感 、微熱などの症状を伴う(※参考:「紫斑病性腎炎(指定難病224)」難病情報センターHPより)。

1.〇 正しい。腎生検が最も重要な検査である。なぜなら、本症例は尿蛋白や尿潜血の異常が半年間続くことから、ネフローゼ症候群や糸球体腎炎を合併している可能性も考えられるため。腎生検は、慢性糸球体腎炎を直接確認できる方法である。ちなみに、腎生検とは、腎臓の一部を細い針を使って採取して、顕微鏡で観察することで、腎臓病の診断や治療を決めるために行う検査のことである。
2.× 咽頭培養とは、上気道由来の細菌の有無、種類を把握する目的で行われる検査である。主に、咽頭炎起炎菌を同定する。上気道由来の細菌で、注意すべき菌は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)である。
3.× 腹部MRIとは、MRI装置を利用し、上腹部にある臓器を重点的に検査する画像検査である。上腹部にある臓器とは、肝臓・胆のう・膵臓・腎臓・脾臓・副腎・リンパ節であり、腫瘍性病変の評価などに用いる。
4.× クレアチニンクリアランスの測定は、腎機能を最も正確に把握でき、特に初期の腎機能悪化を鋭敏に捉えるという特徴を持つ。したがって、糸球体でろ過される血液の量を調べる検査であり、本症例のように尿の異常(糸球体腎炎)を確定診断するためには適さない。ちなみに、クレアチニンクリアランスとは、血漿中の特定成分を1分間に腎から尿中に排泄されるのに必要な血漿量で示される。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

 

 

 

次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
 A君(13歳、男子)。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。
 身体所見: 体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。
 検査所見: 血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。プロトロンビン活性(PT活性)105%(基準値80〜120%)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)32.0秒(基準対照31.2秒)。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP 0.1mg/dL。補体価(CH50) 41 IU/mL(基準値30〜45 IU/mL)、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3+、潜血2+、赤血球50〜99/1視野。

105 検査の結果、A君は2年間のステロイド治療が必要と判断された。1か月後に外来受診の予定である。
 看護師からA君に対して行う生活指導で適切なのはどれか。

1.「水分を積極的に摂取してください」
2.「紫斑が出現したら記録してください」
3.「蛋白質を制限した食事を摂取してください」
4.「日光をなるべく浴びないようにしてください」

解答2

解説

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

1.3.× あえて、水分を積極的に摂取する必要はない/「蛋白質」ではなく塩分を制限した食事を摂取する。なぜなら、水分摂取を促すと、全身の浮腫や腹水・胸水などが悪化するため。食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。また、小児の食事制限は、成長・発達への悪影響に対する懸念から、慎重に判断しなければならない。原則的に運動制限や食事制限は行わないことが多いが、医師や栄養士などに必ず相談する。
2.〇 正しい。「紫斑が出現したら記録してください」と生活指導する。なぜなら、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IgA血管炎)は、再燃する可能性があるため。予後は基本的に良好で、多くの場合、数週間で自然寛解する。一部に再発(約10%)し、持続型に移行(5%未満)することもある(※参考:「紫斑病性腎炎(指定難病224)」難病情報センターHPより)。
4.× 日光をなるべく浴びないようにする必要はない。紫外線を避けるよう指導するのは、全身性エリテマトーデスである。全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

 

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