第107回(R6) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

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6 新生児の呼吸障害の症状とその原因の組合せで正しいのはどれか。

1.呻吟:呼吸中枢の未熟性
2.多呼吸:高い気道抵抗
3.陥没呼吸:胸郭の脆弱性
4.無呼吸発作:小さなガス交換面積

解答

解説

呼吸窮迫症候群とは?

呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。症状として、肺胞がしぼみ、呼吸がうまく出来ず、多呼吸の症状が現れる。息を吸うときに肋骨や胸骨の下が陥没するのが特徴(陥没呼吸)。 症状が悪化すると、呻吟、チアノーゼ、嗜眠、不規則呼吸および無呼吸となる。

1.× 呻吟は、「呼吸中枢」ではなく小さなガス交換面積(肺自体の未熟性で生じることが多い。ほかにも、呼吸窮迫症候群でみられることが多い。呻吟とは、苦しみうめくことで吸気時に声門を狭めて呼気を行うことで生じる「う~」といううなり声である。気道内圧を高めに維持しようとする自己防衛反応で、肺胞の虚脱を防ぐ効果がある(※読み:しんぎん)。

2.× 多呼吸は、高い気道抵抗が原因とはいえない。新生児一過性多呼吸とは、出生後、肺の中に過剰な液体があるために一時的な呼吸困難が起こって、しばしば血液中の酸素レベルが低くなる病気である。ちなみに、多呼吸とは、浅くて速い呼吸のことである。基準値として、新生児は60回/分以上、乳児は50回/分以上、幼児は40回/分以上である。主に肺炎など肺のコンプライアンスが減少するために1回換気量が不足し、呼吸回数で補おうとする。多呼吸の原因として、他にも肺の未熟性、感染症、心不全、代謝異常などがあげられる。

3.〇 正しい。陥没呼吸は、胸郭の脆弱性による。陥没呼吸とは、吸気時に胸の一部が陥没(肋骨の下が凹む呼吸様式)するものである。呼吸窮迫症候群のほかにも、肺炎・気道閉塞などで出現する。

4.× 無呼吸発作は、「小さなガス交換面積」ではなく呼吸中枢の未熟性で生じることが多い。したがって、早産児(百日咳に罹患するとさらに)発症することが多い。未熟児無呼吸発作の定義は,在胎期間37週未満で出生した無呼吸の原因となる基礎疾患がない新生児における,20秒を超える呼吸休止,または20秒未満の呼吸休止で徐脈(80/分未満)か,中枢性チアノーゼ,および/または85%未満の酸素飽和度を伴うものとされる。無呼吸は新生児が百日咳に罹患した場合、重症度を評価するために観察すべき臨床症状である。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険性も高い。症状として①カタル期(1~2週間)、 ②痙咳期(4~6週間)、 ③回復期(2~3週間)に分類され、痙咳期には、新生児・乳幼児期では無呼吸発作を伴う。

 

 

 

 

 

7 乳児期の泌尿器系の発達で正しいのはどれか。

1.排尿は反射的に行われる。
2.新生児の尿濃縮力は成人と同程度である。
3.乳児期前半での尿回数は1日5回程度である。
4.体表面積当たりの腎血流量は生後3か月で成人レベルに達する。

解答

解説
1.〇 正しい。排尿は反射的に行われる。なぜなら、乳児期は神経系が未熟なため。したがって、乳児の排尿は自律神経系による反射的なもので、随意的なコントロールは未獲得である。排尿は膀胱が一定の容量に達したときに反射的に起こる。 2〜3歳になると意識的に排尿を抑制できるようになる。

2.× 新生児の尿濃縮力は成人と、「同程度」ではなく未熟(50%程度)である。なぜなら、腎臓(ネフロン)が未熟であるため。したがって、腎機能も未熟である。ちなみに、尿濃縮力とは、腎臓が尿を濃縮する能力のことである。

3.× 乳児期前半(1歳未満)での尿回数は、「1日5回程度」ではなく1日10~20回である。排泄のリズムは、個人差や授乳・食事量により変わるが、生後3か月までは1日当り15~20回くらいで、 6~12か月くらいになると10~16回前後となる。腎機能の未熟さや、水分摂取量が多いことによる。

4.× 体表面積当たりの腎血流量は、「生後3か月」ではなく約2歳で成人レベルに達する。腎機能の成熟は2歳である。

 

 

 

 

 

8 Aさん(78歳、女性)は骨盤臓器脱と診断され、ペッサリーの挿入によって症状が改善していた。最近、赤色帯下が下着に付着するため婦人科を受診した。ペッサリーと接する腟壁に浅いびらんがあり、少量の出血を認める。超音波検査では子宮、付属器は正常で、子宮頸部の細胞診では異常はない。
 出血の改善に有効な腟錠の成分はどれか。

1.イソコナゾール硝酸塩
2.クロラムフェニコール
3.エストリオール
4.プロゲステロン

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳女性骨盤臓器脱
ペッサリーの挿入によって症状が改善。
・最近:赤色帯下が下着に付着。
・ペッサリーと接する腟壁に浅いびらん少量の出血
・超音波検査:子宮、付属器は正常
・子宮頸部の細胞診:異常なし
→本症例(78歳女性骨盤臓器脱)の腟壁に浅いびらんや少量の出血が、どのような原因か考えよう。本症例は、老人性膣炎が疑われる。萎縮性腟炎(老人性腟炎)は、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症である。治療は、エストロゲンの補充が第1選択になる。膣の中に入れるエストロゲンの錠剤や飲み薬を使い、性交痛に対しては潤滑ゼリーの併用も効果的である。 また、細菌感染を合併している場合は抗生剤を併用する。本症例は、上記症状と超音波検査や子宮頸部の細胞診の異常がなかったため老人性膣炎が疑われる。

ちなみに、ペッサリーとは、ドーム形をしたゴム製のカップで、腟から挿入して子宮頸部にかぶせて使用し、骨盤臓器脱の保存的治療に用いられることが多い。また、避妊用として使われるが、産後6週間以降使用できる。ペッサリーは①体重の増減が4.5キログラム以上あった場合、②1年以上使用している場合、③出産や中絶をした場合には、腟の大きさや形が変化することがあるためサイズを合わせ直す必要がある。

1.× イソコナゾール硝酸塩とは、カンジタに起因する腟炎および外陰腟炎に効果的な抗真菌薬である。

2.× クロラムフェニコールとは、細菌性腟炎に用いられる抗菌薬である。

3.〇 正しい。エストリオールは、本症例の出血の改善に有効な腟錠の成分である。エストリオールとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)で、更年期障害の症状、腟炎、子宮腟部びらんなどに用いられる。

4.× プロゲステロンとは、黄体ホルモンを補う薬剤であり、生理不順や無月経、機能性子宮出血の治療に用いられる他、乳がんや子宮がんなどのエストロゲン依存性のがん細胞の増殖を抑える。ちなみに、黄体ホルモンとは、妊娠の準備のため基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させ、乳腺を発達させる働きがある。

骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。ペッサリー療法とは 、骨盤臓器脱により子宮や膀胱、腸など膣から出てきた臓器を人工的に膣内に納める方法で、臓器の下垂に伴う不快な症状を軽減・緩和する目的で行う。骨盤臓器脱の危険因子として、 慢性的な咳や習慣性の便秘、重い荷物を持つなどの労務、仕事、肥満、多産、加齢などがあげられる。他にも、骨盤底筋と総称される骨盤の支持組織が分娩時に損傷されたり、先天性な脆弱性、また更年期以降のエストロゲンの低下により弱くなり支持力を失うことにより引き起こされる。

 

 

 

 

 

9 Aさん(26歳、1回経産婦)は、妊娠38週5日に陣痛発来で入院した。身長152cm。推定胎児体重は3,550g。Leopold〈レオポルド〉触診法に続き、Seitz〈ザイツ〉法を用いて診察を行った。児頭と恥骨が同じ高さに触れた。
 このときの助産診断で適切なのはどれか。

1.児頭の最大通過面は骨盤入口部を超えている。
2.児頭骨盤不均衡〈CPD〉である。
3.Seitz〈ザイツ〉法(±)である。
4.児頭の回旋は正常である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(26歳、1回経産婦、妊娠38週5日に陣痛発来)
・身長152cm、推定胎児体重は3,550g。
・レオポルド触診法に続き、ザイツ法を用いて診察を行った。
児頭と恥骨が同じ高さに触れた
→本症例は、児頭骨盤不均衡になる恐れがある。児頭骨盤不均衡の評価を正しく行えるようにしよう。ちなみに、児頭骨盤不均衡とは、胎児の頭が母体の骨盤に比べて大きかったり、母体の骨盤の形に問題があったりして、胎児がスムーズに骨盤を通過できず分娩の進行が停止する場合を指す。全分娩の約4~6%にみられる。

(※図引用:「C.産婦人科検査法16.骨盤計測」)

(※図引用:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)

1.× 児頭の最大通過面は、骨盤入口部を超えている「とは断言できない」。むしろ、骨盤入口部を超えていないと考えられる。なぜなら、本症例はSeitz〈ザイツ〉法(±)であるため(図参照)。ちなみに、骨盤入口部を超えている場合、児頭は骨盤腔に入っている状態となる。

2.× 児頭骨盤不均衡〈CPD〉である「とは断言できない」。むしろ、児頭骨盤不均衡ではないと考えられる。なぜなら、本症例はSeitz〈ザイツ〉法(±)であるため。また、確定するには、X線骨盤撮影による十分な骨盤形態の検討が要求される。
【児頭骨盤不均衡の機能的診断法(※参考:「骨盤形態からみた難産予測 著:又吉國雄 様」)】
①レオポルド触診法:第3、第4手法で、妊娠38週以降の初産婦に「floating head」が確認できる。
②Seitz法:児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。
③内診により、児頭の先進部がstation±0に達していれば、入口部における児頭骨盤不均衡はないと考えられる。
さらに、分娩の進行状況で、すでに子宮口が全開大し破水を認めているにもかかわらず、分娩が遷延している(2時間以上)状態であれば、児頭骨盤不均衡は極めて疑わしいと考えられるが、上記の所見により児頭骨盤不均衡が疑われる場合は、X線骨盤撮影による十分な骨盤形態の検討が要求される。

3.〇 正しい。Seitz〈ザイツ〉法(±)である。なぜなら、本症例の児頭と恥骨が同じ高さに触れたため。【Seitz法】児頭が骨盤腔内に嵌入しているか否かを腹壁上からの触診でみる方法である。恥骨結合より児頭前面が低ければ Seitz(-)、同じ高さなら(±)、児頭前面の方が隆起していれば(+)と判定し、児頭骨盤不均衡を疑える。

4.× 児頭の回旋は正常である「とは断言できない」。むしろ、児頭の回旋が異常である可能性も考えられる。なぜなら、本症例はSeitz〈ザイツ〉法(±)であるため。第2回旋の異常として発展することがある。

(※画像引用:「Leopold触診法」看護roo!イラスト集)

Leopold触診法とは?

レオポルド触診法とは、母体の腹壁に触れることで子宮の収縮状態、子宮底の位置、胎児の数、胎向、胎位、胎勢、先進部、下降度などの観察が目的である。妊娠27週頃から可能で、児頭は固く丸く、四肢は小部分として触れる。

【触診法】
第1段法:子宮底の位置や高さ、形、胎児部分を触診する。
第2段法:一方の手で胎児小部分を確認し、他方の手で胎向を確認する。子宮の形、大きさ、緊張度、羊水量、胎動、胎向をみる。
第3段法:恥骨結合上の胎児部分を触診し、可動性(移動性)をみる。
第4段法:恥骨結合と胎児の下降部に指先を挿入して、下降部と骨盤進入度合いを確認する。

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

 

 

 

 

 

10 前置胎盤について正しいのはどれか。

1.経腟超音波検査で診断を行う。
2.約半数は癒着胎盤を合併する。
3.妊娠後期にスクリーニング検査を行う。
4.診断後は子宮収縮の有無に関わらず子宮収縮抑制薬を投与する。

解答

解説

前置胎盤とは?

前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

(※図引用:「前置胎盤・癒着胎盤」日本産婦人科医会より)

1.〇 正しい。経腟超音波検査で診断を行う。前置胎盤であるだけでは自覚症状がないので、妊娠中期(妊娠 23~24週頃)の頸管長チェックと合わせて全例にスクリーニングする方法や、経腹超音波検査で子宮下部に胎盤が付着している場合に経腟超音波検査で精査するなどで診断する(※引用:「前置胎盤・癒着胎盤」日本産婦人科医会より)。

2.× 「約半数」ではなく約5%は癒着胎盤を合併する。「癒着胎盤:MSDマニュアル」において、「前置胎盤を有する女性では,癒着胎盤のリスクは,これまでの帝王切開の回数が1回の場合には約10%であり,4回を超える場合には60%超にまでに上昇する。前置胎盤のない女性では,帝王切開の既往はごくわずかにリスクを上昇させる(4回の帝王切開までは1%未満)」。ちなみに、癒着胎盤とは、胎盤の組織の一部(絨毛)が脱落膜を貫通して子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態をいう。分娩前には正確な診断が難しく、赤ちゃんを取り出した後、胎盤が子宮からなかなかはがれないために判明することがほとんどである。

3.× 「妊娠後期」ではなく妊娠中期(妊娠24週ごろ)にスクリーニング検査を行う。妊娠後期(妊娠28週~)に至っては、確定診断や分娩様式を決定する時期である。

4.× 診断後は子宮収縮の有無に関わらず子宮収縮抑制薬を投与する必要はない。なぜなら、無症状の前置胎盤を持つ妊婦に対しての入院管理、子宮収縮抑制薬、子宮頸管縫縮術が予後を改善するというエビデンスは乏しいため。ただし、警告出血があった場合の7割は緊急帝王切開になる。(※参考:「26. 前置胎盤」日本産婦人科医会より)。

妊娠後期とは?

妊娠後期とは、妊娠28~40週までのことで、おなかはますます大きくなり、張りを感じることも増えてくる時期である。

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)

妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)

妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

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