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次の文を読み50~52の問いに答えよ。
Aさん(36歳、初妊婦、専業主婦)は夫(35歳、会社員)と2人暮らしである。Aさんは双胎妊娠で、妊娠高血圧症候群を合併していたため、妊娠34週から管理入院していた。面会に来た夫から助産師に対して「出産育児一時金について教えてほしい」と相談があった。
51 妊娠36週0日。腹痛と性器出血があり、常位胎盤早期剝離と診断され、緊急帝王切開術となった。第1子は女児で出生体重2,300g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後5点、5分後8点であった。第2子は男児で出生体重2,050g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後0点、5分後2点。第2子は出生後3時間で死亡した。
第2子に必要な対応はどれか。2つ選べ。
1.死産証書の交付
2.異常死産児の届出
3.死胎検案書の交付
4.死亡診断書の交付
5.出生証明書の交付
解答4・5
解説
・妊娠36週0日(常位胎盤早期剝離)。
・腹痛と性器出血:緊急帝王切開術。
・第1子は女児で出生体重2,300g、アプガースコア1分後5点、5分後8点であった。
・第2子は男児で出生体重2,050g、アプガースコア1分後0点、5分後2点。
・第2子は出生後3時間で死亡した。
→Aさんの第2子は出生後3時間で死亡している。ただし、アプガースコアから生後すぐは生きていたことが分かる。したがって、第2子の場合の分類としては、「早期新生児死亡」に該当する。早期新生児死亡とは、生後1週間未満の死亡のことである。一方、死産とは、「妊娠4か月(妊娠12週)以後における死児の出産」である。
1.× 死産証書の交付は必要ない。なぜなら、第2子は出生後3時間で死亡しているため。死産証書とは、妊娠4ヶ月以降に子宮内にて胎児が死亡しており、死児を分娩した場合に交付する。医師が立ち合う場合であり、死胎検案書は立ち合わない場合に作成する。
2.× 異常死産児の届出は必要ない。なぜなら、第2子は出生後3時間で死亡しているため。異常死産児の届出は、死産(妊娠20週以降に胎児が死亡すること)の場合に用いる。ちなみに、異常死産児の届出とは、医師法第21条(異状死体の届出)により医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと定められている。
3.× 死胎検案書の交付は必要ない。なぜなら、第2子は出生後3時間で死亡しているため。異常死産児の届出は、死産(妊娠20週以降に胎児が死亡すること)の場合に用いる。ちなみに、死産証書とは、医師が立ち合う場合であり、死胎検案書は立ち合わない場合に作成する。
4.〇 正しい。死亡診断書の交付は、第2子に必要な対応である。
【死亡診断書の法的根拠】
・(参考)医師法第19条第2項(応招義務等):診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
・(参考)歯科医師法第19条第2項(応招義務等):診療をなした歯科医師は、診断書の交付の求があつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
5.〇 正しい。出生証明書の交付は、第2子に必要な対応である。なぜなら、第2子は、子宮内・出生後2時間は生きていたため。第2子のアプガースコアは、1分後2点、5分後2点であることからも生きていたことが分かる。
異常死産児とは、病死・自然死以外の死亡死体で、事故、災害、中毒、自殺、他殺による死亡及びそれら後遺症による死亡や、病死と判断されてもその原因が不詳の場合、また手術中や診療・検査中の予期せぬ急死や乳幼児の突然の死亡も異状死体に含まれる。
異常死産児の届出には、①医師法(第21条)と保健師助産師看護師法(第41条)に義務として記載されている。①医師法第21条(異状死体の届出)により医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと定められている。②保健師助産師看護師法(第41条)助産師は、妊娠四月以上の死産児を検案して異常があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署にその旨を届け出なければならない。
(※図引用:「アプガースコア」ナース専科様HPより)
次の文を読み50~52の問いに答えよ。
Aさん(36歳、初妊婦、専業主婦)は夫(35歳、会社員)と2人暮らしである。Aさんは双胎妊娠で、妊娠高血圧症候群を合併していたため、妊娠34週から管理入院していた。面会に来た夫から助産師に対して「出産育児一時金について教えてほしい」と相談があった。
52 Aさんの分娩を担当した助産師は助産録を記載した。
助産録について正しいのはどれか。
1.第1子、第2子それぞれに作成する。
2.新生児の所見の記載義務は医師が負う。
3.帝王切開分娩の記載は医師の診療録を代用する。
4.緊急手術に関するインフォームド・コンセントの内容は記載事項に含まれる。
解答4
解説
1.× 必ずしも、第1子、第2子それぞれに作成する必要はない。助産録とは、助産師が分娩介助をしたときに、助産に関する事項を速やかに記載しなければいけないものである。助産録の記載内容の12項目が定められている。双胎の場合は、すべての項目に第1子用と第2子用の2部の記録を作成する必要はない。ちなみに、5年間保存しなければいけない。
2.× 新生児の所見の記載義務は、医師「だけ」が負うものではない。なぜなら、医療はチームアプローチであるため。助産師の専門的な視点からの新生児の所見を記載すべきである。ちなみに、助産録の記載内容の12項目として、⑩児および胎児付属物の所見と定められている。
3.× 帝王切開分娩の記載は、医師の診療録を代用する「ことはできない」。帝王切開分娩であっても、助産師は助産録を記載する義務がある。助産録の記載内容の12項目として、⑦分娩経過・処置、⑧分娩異常の有無、経過および処置と定められている。
4.〇 正しい。緊急手術に関するインフォームド・コンセントの内容は記載事項に含まれる。特に、医療安全の観点から、緊急手術に至った経過や処置として、患者および家族が緊急手術についてどのような説明を受け、どのような同意がなされたかを記録するため。ちなみに、インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。
①妊産婦の住所、氏名、年齢、職業
②分娩・死産回数、生死産の別
③妊産婦の既往疾患の有無およびその経過
④今回の妊娠経過、所見、保健指導の要項
⑤医師による妊娠中の健康診断受診の有無
⑥分娩場所、年月日時分
⑦分娩経過・処置
⑧分娩異常の有無、経過および処置
⑨児の数、性別、生死別
⑩児および胎児付属物の所見
⑪産褥経過、褥婦および新生児の保健指導の要項
⑫産後の医師による健康診断の有無
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(31歳、経産婦)は身長156cm、体重59kg。妊娠中、母児ともに経過は順調であった。妊娠37週3日、20時に腹部緊満感の増強で来院し、内診所見は子宮口4cm開大、展退度30%、Station-3、陣痛間欠10分であり、そのまま入院した。入院時の胎児心拍数陣痛図では、胎児心拍数基線は145bpm、基線細変動は正常で一過性頻脈がみられた。
妊娠37週4日、6時の胎児心拍数陣痛図を下に示す。
53 このときのAさんへの対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.努責を促す。
2.内診を行う。
3.経過観察をする。
4.乳頭刺激を行う。
5.超音波検査の準備をする。
解答2・5
解説
・Aさん(31歳、経産婦、身長156cm、体重59kg)
・妊娠中:母児ともに経過は順調。
・妊娠37週3日、20時:腹部緊満感の増強で来院
・内診所見:子宮口4cm開大、展退度30%、Station-3、陣痛間欠10分で入院。
・入院時の胎児心拍数陣痛図:胎児心拍数基線は145bpm、基線細変動は正常で一過性頻脈。
・妊娠37週4日、6時の胎児心拍数陣痛図:一過性徐脈もみられる。
→本症例は、変動性一過性頻脈が疑われる。また、陣痛、子宮口拡大前であるため、分娩第1期と考えられる。胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。
→胎児心拍数陣痛図とは、分娩監視装置による胎児心拍数と陣痛の連続記録であり、子宮収縮に対する胎児の心拍数変化により胎児の状態を推測するものである。胎児心拍数パターンをみるときは、①心拍数(基線の高さ)、②心拍数の細かい変動(基線細変動)、③胎動や子宮収縮に対する心拍数の変化(一過性変動)の3点についてチェックする。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。一過性の胎児心拍数変動で、多くは子宮収縮、胎動などに関連して出現する。心拍数が開始からピークまで30秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm以上、元に戻るまでの持続が15秒以上2分未満のものをいう。
1.× 努責を促す必要はない。なぜなら、努責を促すのは第2期以降であるため。早いタイミングで努責(いきみ)を行うと産道に傷がついたり赤ちゃんの頭に無理がかかったりする。分娩第1期は呼吸法や肛門圧迫で努責(いきみ)を逃す。
2.〇 正しい。内診を行う。なぜなら、 子宮口の開大度や進行状況を確認するため。子宮口がさらに開いている場合や進展している場合、分娩の進行を評価する必要がある。
3.× 経過観察をする優先度は低い。なぜなら、6時の胎児心拍数陣痛図で一過性徐脈がみられるため。最悪の場合、臍帯脱出に発展する。臍帯脱出とは、胎児より先に臍帯が腟を通過することである。臍帯脱出が起きると胎児への血液供給が断たれてしまうため、まずは腟鏡診や内診によって臍帯を直接観察し診断する必要がある。内診により頭囲か骨盤位であるか確認し、頭囲で臍帯脱出の場合は児頭を内診指で持ち上げて臍帯の圧迫を解除する必要がある。可能ならば医師に連絡し、医師が到着するまで骨盤高位にする。
4.× 乳頭刺激を行う必要はない。なぜなら、分娩後出血の予防介入方法のひとつであるため。ちなみに、乳頭刺激のほかにも、授乳、子宮底のマッサージまたは圧迫、子宮の冷罨法などあげられるが、未だ有効性が検証されていないものも多い。
5.〇 正しい。超音波検査の準備をする。なぜなら、超音波検査により詳細な胎児の状態を確認することができるため。変動一過性徐脈は、圧変化によって起こる胎児の心拍数急激な低下で、臍帯圧迫が原因となることが多い。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(31歳、経産婦)は身長156cm、体重59kg。妊娠中、母児ともに経過は順調であった。妊娠37週3日、20時に腹部緊満感の増強で来院し、内診所見は子宮口4cm開大、展退度30%、Station-3、陣痛間欠10分であり、そのまま入院した。入院時の胎児心拍数陣痛図では、胎児心拍数基線は145bpm、基線細変動は正常で一過性頻脈がみられた。
妊娠37週4日、6時の胎児心拍数陣痛図を下に示す。
54 その後、Aさんは4,100gの児を出産した。会陰裂傷はⅣ度であり会陰裂傷縫合術が行われた。
分娩後のAさんへの対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.緩下薬を投与する。
2.抗菌薬を投与する。
3.食事は普通食にする。
4.血圧を2時間ごとに測定する。
5.トイレ歩行以外は動かないようにする。
解答1・2
解説
・Aさん(31歳、経産婦、身長156cm、体重59kg)
・妊娠中:母児ともに経過は順調。
・4,100gの児を出産。
・会陰裂傷:Ⅳ度(会陰裂傷縫合術)。
→会陰裂傷の第4度は、直腸まで損傷しているため、その程度を確認して直腸粘膜の縫合を行う。会陰裂傷は適切な治療が行われないと、肛門括約筋機能不全、便失禁のほか、将来的に子宮下垂や子宮脱の原因となる。また縫合不全や感染を起こすと瘻孔ろうこう(穴・欠損)を形成することがあり、炎症が治まってから再手術が必要になる場合がある。
【会陰裂傷の重症度】
第1度:会陰の皮膚、腟壁粘膜のみに限局し、筋層には達しない裂傷。
第2度:会陰筋層まで及ぶが、肛門括約筋には達しない裂傷。
第3度:肛門括約筋や腟直腸中隔に達する裂傷。
第4度:第3度裂傷に加え、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴う裂傷。
1.〇 正しい。緩下薬を投与する。なぜなら、Ⅳ度会陰裂傷の場合、肛門粘膜や直腸粘膜の損傷を伴うため。緩下薬は、便秘薬や下剤ともいわれ、腸を刺激して排便を促し、便をやわらかくして排便しやすくする効果が期待できる。便秘や硬便は裂傷部位に大きな負担をかけるため、治癒を妨げる可能性がある。したがって、緩下薬の投与により、排便をスムーズにし、会陰部の負担を軽減する。
2.〇 正しい。抗菌薬を投与する。なぜなら、Ⅳ度会陰裂傷の場合、感染のリスクが高いため。感染を予防することで、裂傷部位の治癒を促進する。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。
3.× 食事は、「普通食」より刻み食(消化に良い食事)にする。最初の7~10日間は食物繊維が少なめの食事をとる。その結果、排便の必要性が減少し、患部に無理な力がかかることも減る。
4.× 血圧を2時間ごとに測定する必要はない。なぜなら、連続モニタリングの適応には該当しないため。ただし、分娩第3期以降は、急変にも対応できるよう30~1時間程度に1回測定するのが望ましい。
5.× トイレ歩行以外は動かないようにする必要はない。なぜなら、 早期離床は血栓予防や体力回復につながるため。痛みや体調の変化に注意しながら、トイレ歩行以外でも無理のない範囲で動くことが推奨される。
「経過観察」を満たしても、以下の場合は連続モニタリングを行う(ただし、トイレへの歩行や病室の移動等で胎児心拍数が評価できない期間を除く)
1)分娩第2期のすべての産婦
2)分娩時期を問わず、以下のような場合(①子宮収縮薬使用中、②用量41mL以上のメトロイリンテル挿入中、③用量41mL未満のメトロイリンテル挿入中であっても陣痛が発来した場合、④無痛分娩中、⑤38℃以上の母体発熱中、⑥上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合)
3)分娩時期を問わず、以下のようなハイリスク妊娠の場合(①母体側要因:糖尿病合併、“妊娠中の明らかな糖尿病”、コントロール不良な妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、妊娠・分娩中の低酸素状態が原因と考えられる脳性麻痺児、子宮内胎児死亡児出産既往(概ね30週以上)、子癇既往、子宮体部への手術歴、②胎児側要因:胎位異常、推定体重<2,000g、胎児発育不全、多胎妊娠、サイトメガロウイルス感染胎児、③胎盤、羊水、臍帯の異常:低置胎盤、羊水過多、羊水過少、臍帯卵膜付着が診断されている場合)
4)その他、ハイリスク妊娠と考えられる産婦(コントロール不良の母体合併症等)
7.以下の場合は分娩監視装置を一定時間(20 分以上)装着してモニタリングを記録し、評価する。1)破水時、2)羊水混濁あるいは血性羊水を認めたとき、3)間欠的児心拍数聴取で(一過性)徐脈、頻脈を認めたとき、4)分娩が急速に進行したり、排尿・排便後など、胎児の位置の変化が予想される場合(間欠的児心拍聴取でもよい)
(※引用「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P223」)
次の文を読み55の問いに答えよ。
Aさん(30歳、経産婦)は身長162cm、体重60kg、特記すべき合併症はなく、妊娠経過に異常は認めず、胎児の発育は順調であった。妊娠38週6日、11時30分に破水感で受診し高位破水の診断で入院した。妊娠39週0日、前期破水の適応のため分娩誘発の方針となり、オキシトシン点滴静脈内注射を開始し、9時30分に陣痛発来した。11時45分に完全破水し、羊水混濁は認めなかった。15時35分に子宮口全開大しStation±0となった。その後、16時にStation+1、16時30分にStation+2、
17時30分にStation+3と経過した。経過中、胎児心拍数陣痛図はreassuring fetal statusであった。その後、19時30分にStation+3であった。
このときの胎児心拍数陣痛図を下に示す。
55 このときの助産師の対応で適切なのはどれか。
1.経過観察をする。
2.吸引分娩の準備をする。
3.ジノプロスト点滴静脈内注射の準備をする。
4.オキシトシン点滴静脈内注射中止の準備をする。
5.メチルエルゴメトリン静脈内注射の準備をする。
解答2
解説
・Aさん(30歳、経産婦、身長162cm、体重60kg)
・特記すべき合併症はなく、妊娠経過に異常は認めず、胎児の発育は順調。
・妊娠38週6日11時30分:破水感、高位破水。
・妊娠39週0日:前期破水の適応のため分娩誘発の方針。
・オキシトシン点滴静脈内注射を開始し、9時30分に陣痛発来。
・11時45分:完全破水、羊水混濁は認めなかった。
・15時35分:子宮口全開大、Station±0となった。
・16時:Station+1、16時30分:Station+2、
・17時30分:Station+3。
・胎児心拍数陣痛図:reassuring fetal status。
・19時30分:Station+3。
→本症例は、reassuring fetal status(RFS)ではあるものの子宮口全開大から4時間経過していることから、遷延分娩/分娩停止が疑われる。急速遂娩の適応は分娩第2期の胎児機能不全、回旋異常、遷延分娩、分娩停止、母体疲労や母体の心疾患などの合併症により第2期短縮が望ましい場合である。
reassuring fetal status(RFS)とは、健常な胎児の状態を呼び、安心できない胎児の状態をnon-reassuring fetal status(NRFS)と呼ぶ。
1.× 経過観察をする優先度は低い。なぜなら、子宮口全開大から4時間経過し、医療的処置が必要となるため。
2.〇 正しい。吸引分娩の準備をする。本症例は、reassuring fetal status(RFS)ではあるものの子宮口全開大から4時間経過していることから、遷延分娩/分娩停止が疑われる。急速遂娩の適応は分娩第2期の胎児機能不全、回旋異常、遷延分娩、分娩停止、母体疲労や母体の心疾患などの合併症により第2期短縮が望ましい場合である。吸引分娩とは、分娩第2期に分娩を補助および促進するために鉗子または吸引器を児頭に対して使用することである。子宮口全開大から胎児娩出までの遷延や胎児機能不全の疑いがある場合などに行われる。
3.× ジノプロスト点滴静脈内注射の準備をする優先度は低い。ジノプロスト点滴静脈内注射の適応として、①妊娠末期における陣痛誘発・陣痛促進・分娩促進、②腸管蠕動亢進(胃腸管の手術における術後腸管麻痺の回復遷延の場合)である。
4.× オキシトシン点滴静脈内注射中止の準備をする優先度は低い。オキシトシン点滴静脈内注射の適応として、分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、流産、人工妊娠中絶である。
5.× メチルエルゴメトリン静脈内注射の準備をする優先度は低い。メチルエルゴメトリン静脈内注射の目的は、子宮収縮の促進並びに子宮出血の予防及び治療で、適応は、胎盤娩出前後、弛緩出血、子宮復古不全、帝王切開術、流産、人工妊娠中絶である。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P206」)
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。