第107回(R6) 助産師国家試験 解説【午後46~50】

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次の文を読み45~47の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)は身長158cm、非妊時体重53kg。自宅近くのB診療所で妊婦健康診査を受けていたが、妊娠を機に仕事を辞め、妊娠13週のときに実家近くへ転居した。妊娠18週0日、今後の妊娠・分娩管理を希望してC病院を受診した。Aさんは「引っ越してバタバタしていましたが、今はゆっくり片付けをしています」と話した。
 母子健康手帳の記載内容を以下に示す。

46 妊娠28週0日、Aさんは「引っ越し後の片付けをしたりしていて、胎動は気にしていなかった」と話した。超音波検査では胎動あり、推定胎児体重は1,250gであった。妊娠22週0日から妊娠28週0日の母子健康手帳の記載内容を以下に示す。
 妊娠28週0日までのAさんと胎児のアセスメントで正しいのはどれか。

1.正常経過である。
2.妊娠糖尿病である。
3.胎児発育不全である。
4.妊娠高血圧腎症である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、初産婦、身長158cm、非妊時体重53kg)
・妊娠28週0日「引っ越し後の片付けをしたりしていて、胎動は気にしていなかった」と。
・超音波検査:胎動あり、推定胎児体重は1,250g
→異常所見の有無を判断できるようにしよう。

1.〇 正しい。正常経過である。なぜなら、異常所見がみられないため。Aさんの体重の変化も正常範囲内である。Aさんの場合、非妊娠時のBMIは約21.2(普通)で、体重増加も非妊娠時より+10kgであり、妊娠全期間を通しての推奨体重増加量の範囲である。妊婦の体重の変化として、基準として、①低体重(やせ)の場合:12~15kg、②標準(ふつう)の場合:10~13kg、③肥満(1度)の場合:7~10kg、④肥満(2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)とされている。これ以上、体重が増加した場合、早産や切迫早産、胎児の発育の遅れによる影響、成人後の生活習慣病などのリスクがあげられる。

2.× 妊娠糖尿病であると断言できない。なぜなら、妊娠26週0日(8月5日)に行われた血糖検査において、50gGCTの結果120mg/dLであるため。50gGCTでは、食事時間に関係なくブドウ糖50gを飲み、その1時間後に血糖値を測る。血糖値が140mg/dl以上であれば妊娠糖尿病の疑いがあると判断される。ちなみに、妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

3.× 胎児発育不全であると断言できない。なぜなら、推定胎児体重は1,250g(妊娠28週0日)であるため。妊娠28週の胎児の平均体重は1,130g以上である。胎児発育不全とは、平均と比べて成⻑が遅くなっていることをいい、胎盤由来の妊娠合併症の代表的なものである。子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

4.× 妊娠高血圧腎症であると断言できない。なぜなら、Aさんの血圧は正常範囲内で、尿蛋白は陰性であるため。妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に高血圧と蛋白尿が出現し、分娩後12週までに正常化する場合である。

(※図引用:「推定胎児体重と胎児発育曲線」)

 

 

 

 

 

次の文を読み45~47の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、初産婦)は身長158cm、非妊時体重53kg。自宅近くのB診療所で妊婦健康診査を受けていたが、妊娠を機に仕事を辞め、妊娠13週のときに実家近くへ転居した。妊娠18週0日、今後の妊娠・分娩管理を希望してC病院を受診した。Aさんは「引っ越してバタバタしていましたが、今はゆっくり片付けをしています」と話した。
 母子健康手帳の記載内容を以下に示す。

47 妊娠32週0日、Aさんは「時々お腹が張るような感じがありますが休むと治まります。甘いものが食べたくなります」と話した。
 妊娠30週0日と妊娠32週0日の母子健康手帳の記載内容を以下に示す。
 妊娠32週0日に実施が必要な検査項目はどれか。

1.75gOGTT
2.子宮頸部細胞診
3.尿蛋白/クレアチニン比
4.B群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠32週0日「時々お腹が張るような感じがありますが休むと治まります。甘いものが食べたくなります」と。
・妊娠32週0日の母子健康手帳:浮腫(+)、尿たんぱく(2+)、尿糖(-)
→本症例は、妊娠高血圧腎症が疑われる。妊娠高血圧腎症とは、①妊娠前から高血圧が存在し、妊娠20週以降に蛋白尿が出現した場合。②妊娠前から蛋白尿(腎疾患)が存在し、妊娠20週以降に高血圧が出現した場合。③妊娠前から高血圧と蛋白尿が存在し、妊娠20週以降にいずれかが増悪した場合である。

1.× 75gOGTTは優先度が低い。なぜなら、Aさんは尿糖(-)であるため。ちなみに、75gOGTT(糖負荷試験)とは、耐糖能(血糖値を正常に保つ能力)を調べる検査である。2型糖尿病の初期や前段階におけるインスリン分泌反応を調べることに用いられている。主に経口グルコース負荷試験(oral glucose tolerance test;OGTT)が行われ、WHOの勧告により、負荷量75gが世界的に広く普及している。糖尿病が疑われる場合2時間まで、低血糖が疑われる場合は5時間まで測定する。

2.× 子宮頸部細胞診は優先度が低い。なぜなら、子宮頸がんの所見はみられないため。また、子宮頸部細胞診は子宮頸がんの早期発見のための検査で妊娠初期に行われることが多い。ちなみに、子宮頸がんとは、子宮の入り口である「子宮頸部」に発生するがんである。がんの中では比較的若い世代に発症しやすく、30歳代後半が発症年齢のピークである。子宮頸がんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因とされており、予防としては、HPVワクチンの接種が有効である。子宮頸部細胞診とは、ブラシやヘラで子宮頸部をこすり、細胞を採取する検査である。その採取方法として、医師が直接子宮を見ながら頸部の細胞を採取する「医師採取」が一般的であるが、自分自身で子宮入口(頸部)の細胞を採る「自己採取」による検査方法もある。

3.〇 正しい。尿蛋白/クレアチニン比は、妊娠32週0日に実施が必要な検査項目である。本症例は、妊娠高血圧腎症が疑われるため。尿たんぱく(2+)がみられることから、尿検査を行って、尿蛋白300mmg/日以上、もしくは尿蛋白/クレアチン比が0.3㎎/mg CRE以上の場合、尿蛋白尿陽性となり、この二つがそろえば、妊娠性高血圧腎症と診断される。

4.× B群溶血性連鎖球菌〈GBS〉感染症は優先度が低い。なぜなら、Aさんは妊娠32週0日であるため。B群溶血性連鎖球菌検査とは、妊娠後期(33~37週頃)において、腟口や肛門の周囲を検査用の綿棒でこすり、検体を培養して、B群溶血性連鎖球菌がいるかどうかを調べるものである。ちなみに、B群レンサ球菌とは、膣内に常在することのある細菌で、妊婦以外では、膀胱炎などの尿路感染症でもおこさない限り問題となることは少ない。ところが、出産時にこのB群レンサ球菌が膣内に存在すると、生まれる新生児に敗血症、髄膜炎、肺炎などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがありえることが知られている。この母から子への感染が問題とされている。B群連鎖球菌は、新生児における、敗血症や髄膜炎、肺炎の主要な原因菌の一つである。髄膜炎が死亡原因となることや、髄膜炎の後遺症として、聴力や視力が失われたり、運動や学習の障害などが残る場合もある。妊婦では、膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)、死産を起こすことがある。妊婦以外では、尿路感染症、敗血症、皮膚・軟部組織の感染症および肺炎を起こすことがあり、死亡例もある(※参考:「B群レンサ球菌(GBS)感染症について」横浜市HPより)。

 

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

 

 

 

 

 

次の文を読み48~50の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、大学生、未婚)は腹痛を主訴に救急外来を受診した。Aさんの意識は清明で、体温38.0℃、脈拍85/分、整、血圧118/78mmHgであった。診察の結果、Aさんは陣痛発来しており、内診所見では既に破水しており、子宮口全開大、Station+2であった。児は頭位で推定体重は3,000g。Aさんは1人暮らしで、特定のパートナーはおらず妊娠の自覚もなく、1年以上病院への受診歴はない。HIV抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陽性、梅毒スクリーニング検査陰性、新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉PCR検査陰性、胸部エックス線写真で肺野に異常陰影は認められない。

48 出生後の児への母子感染予防対策で適切なのはどれか。

1.ワクチンの接種
2.抗ウイルス薬の内服
3.早期母子接触の中止
4.特異的ヒト免疫グロブリン製剤の筋肉内注射
5.Aさんの乳頭から出血している場合の授乳中止

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、大学生、未婚、主訴:腹痛)
・意識清明、体温38.0℃、脈拍85/分、整、血圧118/78mmHg。
・陣痛発来、内診所見:既に破水、子宮口全開大、Station+2。
・児は頭位で推定体重:3,000g。
・1人暮らし、特定のパートナーはおらず妊娠の自覚もなし。
・1年以上病院への受診歴はない。
・HIV抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陽性、梅毒スクリーニング検査陰性、新型コロナウイルスPCR検査陰性
・胸部エックス線写真:肺野に異常陰影は認められない。
→本症例は、HCV抗体陽性であるためC型肝炎が疑われる。C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。赤ちゃんに感染しても多くは無症状であるが、まれに乳児期に重い肝炎を起こすことがあり、将来、肝炎、肝硬変、肝がんになることもある。

1.× ワクチンの接種は必要ない。なぜなら、HCV抗体陽性に対するワクチンは現時点で存在しないため。HBs抗原が「陽性」の場合に行われる。

2.× 抗ウイルス薬の内服は時期尚早である。なぜなら、抗ウイルス薬は、新生児が、HCV感染していた場合に用いられるため。

3.× 早期母子接触を中止する必要はない。なぜなら、早期母子接触の中止基準に該当しないため。また、C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液体液から感染するため、一般的な早期母子接触であれば感染リスクは低い。

4.× 特異的ヒト免疫グロブリン製剤の筋肉内注射は、HBs抗原の陽性(B型肝炎ウイルス)の際に用いられる。HBs(B型肝炎ウイルス)抗原陽性の妊婦から出生した児は、「B型肝炎母子感染防止対策」の対象となる。全妊婦の抗原検査を実施し、キャリア妊婦発見後、出産直後に抗HBsヒト免疫グロブリンを投与することによって産道感染を予防する。その後、HBワクチンを投与して免疫能を獲得し感染を予防する。赤ちゃんに感染しても多くは無症状であるが、まれに乳児期に重い肝炎を起こすことがあり、将来、肝炎、肝硬変、肝がんになることもある。

5.〇 正しい。Aさんの乳頭から出血している場合の授乳中止は、出生後の児への母子感染予防対策である。なぜなら、C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液体液から感染するため。母親の乳頭から出血している場合、新生児への感染リスクが高まる。したがって、出血している場合の授乳は中止することが推奨される。

母子感染とは?

 何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することを「母子感染」と言います。妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。「母子感染」には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染の3つがあります。
 赤ちゃんへの感染を防ぐとともにお母さん自身の健康管理に役立てるために、妊娠中に感染の有無を知るための感染症検査(抗体検査という場合もあります。)をします。妊婦健診を受診して、感染症検査を受けましょう。もし、検査で感染症が見つかった場合には、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療や保健指導が行われます。(※引用:「母子感染を知っていますか?」厚生労働省HPより)

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

次の文を読み48~50の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、大学生、未婚)は腹痛を主訴に救急外来を受診した。Aさんの意識は清明で、体温38.0℃、脈拍85/分、整、血圧118/78mmHgであった。診察の結果、Aさんは陣痛発来しており、内診所見では既に破水しており、子宮口全開大、Station+2であった。児は頭位で推定体重は3,000g。Aさんは1人暮らしで、特定のパートナーはおらず妊娠の自覚もなく、1年以上病院への受診歴はない。HIV抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陽性、梅毒スクリーニング検査陰性、新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉PCR検査陰性、胸部エックス線写真で肺野に異常陰影は認められない。

49 Aさんは男児を出産した。出生体重3,150g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後9点。Dubowitz法による新生児成熟度評価で在胎週数は39週3日だった。日齢3、Aさんから「この子はかわいいけど私が育てられるとは思えない。夜も1回1時間も寝ないですぐに泣き、授乳時も30分以上おっぱいを吸っていて、時間がかかり大変だ」という訴えが聞かれた。この日の児の体重は2,770g(前日比-70g)、活気はあり、吸啜はしっかりしている。昨日の排尿回数は3回、排便回数は2回であった。
 Aさんと児への支援で最も適切なのはどれか。

1.おしゃぶりの使用を勧める。
2.しばらく母子分離を勧める。
3.母乳栄養を中止することを勧める。
4.母乳を搾乳して与えることを勧める。
5.母乳哺乳後に人工乳を追加することを勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、大学生、未婚、HCV抗体陽性
・男児出産、出生体重3,150g
・アプガースコア:1分後8点、5分後9点。
・Dubowitz法:新生児成熟度評価で在胎週数は39週3日。
日齢3「この子はかわいいけど私が育てられるとは思えない。夜も1回1時間も寝ないですぐに泣き、授乳時も30分以上おっぱいを吸っていて、時間がかかり大変だ」と。
体重:2,770g(前日比-70g)、活気はあり吸啜はしっかりしている
・昨日の排尿回数は3回、排便回数は2回。
→Aさんの訴え「授乳時も30分以上おっぱいを吸っていて、時間がかかり大変だ」と、本児の体重の変化に着目しよう。体重減少率は12%(異常)である。正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は、出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。

1.× おしゃぶりの使用を勧めるより優先されるものが他にある。なぜなら、おしゃぶりは寝かしつけ泣き止ませる目的で使用されるため。また、生後1週間以降の使用が望ましい。

2.× しばらく母子分離を勧める必要はない。なぜなら、Aさんは「この子はかわいいけど私が育てられるとは思えない」と育児に対する不安はあるが愛着がみられ始めているため。愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。

3.× 母乳栄養を中止することを勧める必要はない。なぜなら、授乳状況は、活気はあり、吸啜はしっかりしているため。また、母乳栄養を中止する根拠が乏しい。

4.× 母乳を搾乳して与えることを勧めるより優先されるものが他にある。なぜなら、授乳状況は、活気はあり、吸啜はしっかりしているため。搾乳とは、児の哺乳力が弱いか、陥没乳頭などでうまく捕乳できない場合に、母乳を絞って哺乳瓶で与える方法である。ほかにも、NICUに入院したときや、今後児に影響がかかる薬物を内服する治療が始まるときなどに用いられる。

5.〇 正しい。母乳哺乳後に人工乳を追加することを勧める。なぜなら、赤ちゃんの体重減少や頻回の授乳に対するAさんの不安の軽減に寄与するため。これにより、赤ちゃんの体重増加を促進し、Aさんが少し休める時間を確保することができる。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

 

 

 

 

 

次の文を読み48~50の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、大学生、未婚)は腹痛を主訴に救急外来を受診した。Aさんの意識は清明で、体温38.0℃、脈拍85/分、整、血圧118/78mmHgであった。診察の結果、Aさんは陣痛発来しており、内診所見では既に破水しており、子宮口全開大、Station+2であった。児は頭位で推定体重は3,000g。Aさんは1人暮らしで、特定のパートナーはおらず妊娠の自覚もなく、1年以上病院への受診歴はない。HIV抗体陰性、HBs抗原陰性、HCV抗体陽性、梅毒スクリーニング検査陰性、新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉PCR検査陰性、胸部エックス線写真で肺野に異常陰影は認められない。

50 Aさんは実家で家族の支援を受けて子育てをすることになり、母子は日齢7に退院した。退院後3日の夜、産科病棟にAさんから電話があり、児の臍が取れた後、浸出液が認められると相談があった。Aさんは、児の臍は湿潤しており、淡黄色の浸出液が少量認められるが悪臭はなく、臍周囲の発赤・腫脹も臍出血も認めず、発熱もなく元気で哺乳も良好であると話した。
 助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「しばらく沐浴を中止してください」
2.「ポビドンヨードで臍を毎日消毒してください」
3.「臍が蒸れないようオムツの外に出してください」
4.「今すぐに家の近くの病院の救急外来を受診してください」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさんは実家で家族の支援を受けて子育てをする。
・母子は日齢7に退院した。
・退院後3日の夜:Aさんから「児の臍が取れた後、浸出液が認められる」と。
・児の臍は湿潤、淡黄色の浸出液が少量認められる。
・悪臭はなく、臍周囲の発赤・腫脹・臍出血・発熱もなし。
・元気で哺乳も良好である。
→臍の緒がどのような状態となれば異常かしっかり判断できるようにしよう。

1.4.× 「しばらく沐浴を中止してください」「今すぐに家の近くの病院の救急外来を受診してください」と伝える必要はない。なぜなら、現在の臍の緒は「悪臭はなく、臍周囲の発赤・腫脹・臍出血・発熱もなし」ということから、炎症や感染症状がみられていないため。むしろ、沐浴することで、清潔を保つことができる。

2.× 「ポビドンヨードで臍を毎日消毒してください」と伝えるより優先度が高いものが他にある。なぜなら、臍帯ケアの方法は消毒の要・不要を含め、確立されていないため。また、「ポビドンヨードの連用は甲状腺機能低下をきたす可能性があり、特に皮膚の成熟が未熟な早産児への使用は注意が必要である」という報告もある(※参考:「へその緒のケアに使用する消毒は?」福岡県薬剤師会様HPより)。ちなみに、ポビドンヨードとは、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。

3.〇 正しい。「臍が蒸れないようオムツの外に出してください」と説明する。なぜなら、臍のケアとして大切なことは乾燥であるため。沐浴の後は、綿棒などでしっかりおへその中の水分を吸い取り、乾燥させる。これにより、細菌の侵入(臍炎)の予防につながる。

 

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