第107回(R6) 助産師国家試験 解説【午後16~20】

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16 正常新生児の出生後の対応で正しいのはどれか。

1.母親のケア後にその新生児のケアをする場合は手袋を交換する必要はない。
2.四肢末梢にチアノーゼを認めた場合は酸素投与を行う。
3.母親の名前を書いた標識を2つ装着する。
4.点眼の前後には眼瞼を清拭する。

解答

解説
1.× 母親のケア後にその新生児のケアをする場合は、手袋を交換する。なぜなら、感染予防を行うため。新生児は免疫力が低いため、母親からの感染リスクを避けるためにも、清潔な手袋を使用する。

2.× 四肢末梢にチアノーゼを認めた場合は、「酸素投与を行う」と判断するには時期尚早である。なぜなら、出生直後の新生児は、四肢末梢のチアノーゼをたびたび認められ、一過性のものであることが多いため。この場合、直ちに「酸素投与を行う」のではなく、新生児全体の状態を観察し、他の異常(陥没呼吸や努力呼吸、中心性チアノーゼ)がないか確認することが重要である。

3.〇 正しい。母親の名前を書いた標識を2つ装着する。なぜなら、新生児の取り違いを防ぐため。標識(識別用ネームバンド)とは、入院中に患者の手首に装着されるベルトのことである。患者識別のために用いられている。 医療安全において、ネームバンドを用いた患者誤認予防は、年々その重要性を増している。ネームバンドに、氏名や年齢、ID、バーコードなどが記載されている。新生児標識とは、新生児の取り違いを防ぐために、2か所以上に母親の氏名をネームバンドに用いたりして標記するものである。

4.× 点眼の「前後」ではなく前のみに、眼瞼を清拭する。なぜなら、点眼後の眼瞼を清拭は、感染予防など効果は薄いため。点眼後は、あふれた点眼薬を清浄綿で拭き取る程度でよい。ちなみに、正常新生児の出生後の点眼は、淋菌性結膜炎と予防である。分娩時には、原因菌としての淋菌、クラミジアが多い。淋菌性結膜炎は生後2~5日目または前期破水例ではより早期に発症し、眼瞼浮腫や結膜浮腫があり、眼脂を認める。出生直後の点眼は、淋菌性結膜炎の予防効果はある。

 

 

 

 

 

17 Aさん(32歳、初産婦)は、双胎妊娠で、妊娠38週1日に帝王切開術で出産した。両児とも男児で、第1子2,590g、第2子2,670gで、出生後の経過は良好である。産褥6日、Aさんの乳汁分泌量は増えてきており、両児に直接授乳している。「退院後は夫と2人で育児をする予定ですが、育児に自信がありません」と助産師に話した。
 Aさんへの退院支援で正しいのはどれか。

1.児は1人ずつ順番に退院する。
2.人工乳に変更することを勧める。
3.児それぞれの授乳のリズムに合わせた授乳を勧める。
4.入院中に夫がAさんとともに両児の育児を経験できるようにする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦、双胎妊娠
・妊娠38週1日:帝王切開術で出産。
・両児とも男児(第1子2,590g、第2子2,670g)
・出生後の経過:良好
・産褥6日:乳汁分泌量は増える(両児に直接授乳)
・「退院後は夫と2人で育児をする予定ですが、育児に自信がありません」と。
→Aさんの育児に対する不安ともとれる発言に対し、どのように対応・支援するか考えよう。双胎妊娠に対してのストレスや困難感を下に乗せておくので参考にしてください。

1.× 児は1人ずつ順番に退院する必要はない。なぜなら、出生後の経過は良好であるため。

2.× 人工乳に変更することを勧める必要はない。なぜなら、乳汁分泌量は増え、両児とも直接授乳で良好であるため。ちなみに、人工乳とは、何らかの理由(アトピー性皮膚炎や乳頭裂傷など)で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。

3.× 児それぞれの授乳のリズムに合わせた授乳を勧める優先度は低い。なぜなら、児それぞれの授乳のリズムに合わせた授乳は、さらにAさんの育児に対する負担が増すと考えられるため。できるだけ「二人同時に」授乳すると育児が楽になるという意見が多い。ちなみに、一般的な授乳のタイミングは、自律授乳が基本となる。自律授乳とは、児が欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のことである。

4.〇 正しい。入院中に夫がAさんとともに両児の育児を経験できるようにする。なぜなら、家族の協力がAさんの負担の軽減につながるため。また、Aさんの育児スキルも向上し、育児に対する不安の軽減に寄与する可能性が高い。

 

 

 

 

 

18 在胎38週5日に経腟分娩で出生した児。羊水混濁は認めなかった。Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後8点であった。新生児蘇生中にフリーフロー酸素投与が行われても酸素化が改善せず、中心性チアノーゼと聴診で心雑音を認め、先天性心疾患を疑われ生後1時間でNICUに入院した。なお、経過中に呻吟や陥没呼吸は認めなかった。
 入院直後の処置で正しいのはどれか。

1.腹臥位にする。
2.気管内吸引を行う。
3.背部をこすって呼吸刺激を行う。
4.経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉モニターを右上肢と下肢に装着する。

解答

解説

本症例のポイント

・経腟分娩で出生(在胎38週5日)。
・羊水混濁:認めなかった。
・アプガースコア:1分後8点、5分後8点。
・新生児蘇生中:フリーフロー酸素投与が行われても酸素化が改善せず。
中心性チアノーゼと聴診で心雑音を認めた。
先天性心疾患を疑われ生後1時間でNICUに入院した。
・経過中:呻吟や陥没呼吸は認めなかった。
各選択肢の行動を起こす根拠をおさえておこう。呻吟や陥没呼吸は認められなかったことから、中心性チアノーゼは先天性心疾患からきていると考えられる。つまり、呼吸器疾患の対応より、心疾患系の対応を要す。

1.× 腹臥位にするより優先されるものが他にある。なぜなら、呻吟や陥没呼吸は認められなかったことから、中心性チアノーゼは先天性心疾患からきていると考えられるため。つまり、呼吸器疾患の対応より、心疾患系の対応を要す。腹臥位は、呼吸が安定しやすいが、観察者から表情が見えにくいというデメリットも挙げられる。

2.× 気管内吸引を行う優先度は低い。なぜなら、気管内吸引は主に胎便吸引症候群の場合に用いられるため。胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。多呼吸羊水混濁が特徴である。

3.× 背部をこすって呼吸刺激を行う優先度は低い。なぜなら、背部をこすって呼吸刺激を行うのは、蘇生処置であるため。自発呼吸がないとき、背中をこすったり、やさしく足底を叩く刺激を行う。本症例は、生後1時間ですでにNICUにいる状態である。

4.〇 正しい。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉モニターを右上肢と下肢に装着する。なぜなら、モニターを右上肢と下肢に装着することで、上肢と下肢の差を確認し、動脈管依存性先天性心疾患の診断に役立てることができるため。右手は腕頭動脈のSpO2値を見ることができ、下肢はその差を比較できる。必要に応じて、薬物療法や心臓手術が検討される。

MEMO

ファロー四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。

 

 

 

 

 

19 生後6か月の乳児の就寝環境で適切なのはどれか。

1.大人と一緒に同じベッドで就寝する。
2.児の好きなぬいぐるみをベッド内に置く。
3.マットレスと壁の間に隙間がないようにする。
4.乳汁の嘔吐があったときのためにタオルを児の口元に置く。

解答

解説

MEMO

乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む乳児の睡眠中の突然死を防ぐため、米国小児科学会およびNICHDでは、あおむけに寝かせる、表面の硬い寝具を使う、できるだけ母乳で育てる、同じ部屋で寝具を別にして寝かす軟らかい寝具類はベッドの外に出す、おしゃぶりの使用を考慮する、妊娠中と出生後は喫煙を避ける、妊娠中のアルコールや違法薬物の使用を避ける、暖めすぎない、妊婦健診を受ける、児は予防接種を予定どおりに受ける、SIDSリスクを減らすことを目的としてのホームモニターは使用しない、などの啓発を行っている。

(※引用:「乳幼児突然死症候群(SIDS)を含む睡眠中の乳幼児死亡を予防するための効果的な施策に関する研究」)

1.× 大人と一緒に同じベッドで就寝する必要はない。なぜなら、窒息や圧迫による事故のリスクがあるため。同じ部屋で寝具を別にして寝かすことが優先される。

2.× 児の好きなぬいぐるみをベッド内に置く必要はない。なぜなら、ぬいぐるみにより窒息や圧迫による事故のリスクがあるため。軟らかい寝具類はベッドの外に出すことが優先される。

3.〇 正しい。マットレスと壁の間に隙間がないようにする。なぜなら、ベビーベッドのマットレスと壁やベッドのフレームの間に隙間があると、乳児がその隙間に挟まって窒息する危険があるため。隙間がないように表面の硬い寝具を使い安全な設置が必要である。

4.× 乳汁の嘔吐があったときのためにタオルを児の口元に置く必要はない。なぜなら、タオルにより窒息や圧迫による事故のリスクがあるため。タオルを口元に置く代わりに、寝具を頻繁にチェックし、必要に応じて清潔に保つことが大切である。

乳幼児突然死症候群とは?

乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡してしまう病気である。何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、窒息などの事故とは異なる。日本での発症頻度はおよそ出生6,000~7,000人に1人と推定され、生後2か月から6か月に多いとされている。予防のために厚生労働省は①1歳になるまでは仰臥位で寝かせる、②できるだけ母乳で育てる、③禁煙するという3つのポイントをあげている。(※参考:「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

20 未熟児網膜症の発症のリスク因子となるのはどれか。

1.多血
2.低酸素症
3.低カルシウム血症
4.ステロイド薬の投与

解答

解説

MEMO

未熟児網膜症とは、未熟児で、まだ発達途上の眼球内で網膜血管が異常増殖する病気である。網膜血管は胎齢14週頃より発生を始め、枝分かれして成長して30週で完成するが、未熟児で出生して安定した母体から急激に環境が変化すると、網膜の血管は異常な方向に増殖する。これが進行すると、網膜を牽引して網膜剥離を起こし、重篤な視力障害、時には失明にいたる。

したがって、未熟児網膜症のリスク因子として、早産、低出生体重、循環不全、低酸素症(酸素療法:特に高濃度酸素の長期使用)などがあげられる。

1.× 多血と未熟児網膜症の直接的な関連は低い。多血とは、血液の中の赤血球やヘモグロビンの量が基準値よりも多くなっていることをいう。ヘモグロビンとは、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

2.〇 正しい。低酸素症は、未熟児網膜症の発症のリスク因子となる。未熟児は酸素供給が不安定であり、低酸素症は血管の異常成長を引き起こし、網膜症のリスクを高める。

3.× 低カルシウム血症と未熟児網膜症の直接的な関連は低い。新生児低カルシウム血症には、大きく①早発型(生後2日以内)、②遅発型(生後3日以降:ごくまれ)に分けられる。①早発型低カルシウム血症の徴候として、筋緊張低下、頻脈、頻呼吸、無呼吸、哺乳不良、テタニー、痙攣などがある。

4.× ステロイド薬の投与と未熟児網膜症の直接的な関連は低い。一般的にステロイド薬は、炎症を抑えるために使用される。また、早産児は肺が十分に発達していないため、呼吸困難や肺疾患のリスクがある。この場合、妊娠中に副腎皮質ステロイド薬を投与することで、赤ちゃんの肺の発達を促し、生存率を向上させる効果が期待できる。

 

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