第107回(R6) 助産師国家試験 解説【午後1~5】

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1 乳幼児の予防接種で正しいのはどれか。

1.接種の開始は生後2か月が推奨される。
2.定期接種、任意接種ともに就学前に完了する。
3.同時接種とは複数のワクチンを混合して接種することである。
4.生ワクチン接種から6日以上あけて次の生ワクチン接種が可能となる。

解答

解説

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

1.〇 正しい。接種の開始は生後2か月が推奨される。これには、B型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチン、インフルエンザ菌b型ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどが含まれる。

2.× 定期接種、任意接種ともに、「就学前に完了する」とはいえない。例えば、日本ではインフルエンザワクチンの接種は任意接種であり、年齢にかかわらず毎年の接種が推奨されている。

3.× 同時接種とは、複数のワクチンを「混合して」ではなく別々の場所に接種することである。同時接種とは、複数のワクチンを別々の場所に一度に接種することを指す。例えば、片腕にHibワクチンを、もう片腕に肺炎球菌ワクチンを同時に接種することである。

4.× 生ワクチン接種から、「6日以上」ではなく28日(4週間)以上あけて次の生ワクチン接種が可能となる。次の生ワクチン接種までに十分な間隔を空けることで、効果的な免疫応答を確保し、副反応を防ぐことができる。

(※図引用:「ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ」厚生労働省HPより)

予防接種法とは?

予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。

A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎

B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症

(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)

 

 

 

 

 

2 20歳代女性を対象とした妊娠前の栄養と食生活に関する情報提供で適切なのはどれか。

1.炭水化物の摂取を制限する。
2.野菜は200g/日の摂取を目標とする。
3.カルシウム摂取量は約660mg/日を推奨量とする。
4.蛋白質は総エネルギー摂取量の30%以上を目標とする。

解答

解説

(図引用:「食事バランスガイド」農林水産省様HPより)

1.× 炭水化物の摂取を制限する必要はない。主食とは、ごはん、パン、麺など、炭水化物を多く含み、エネルギーのもととなる料理のことをいう。健康寿命の延伸につながる健康の保持・増進、生活習慣病の予防となる。

2.× 野菜は、「200g/日」ではなく350g/日の摂取を目標とする。ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランスよく摂取することができるとは言われているが、科学的根拠はない。

3.〇 正しい。カルシウム摂取量は約660mg/日を推奨量とする。「骨格を構成する重要な物質であるため、不足すると骨が十分に成長せず、骨粗鬆症の原因にもなります。「日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人1人1日当たりの推奨量を、男性で700mgから800mg、女性で650mgと設定しています。しかし、カルシウムの摂取量が十分であったとしても、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が悪くなり、また運動などである程度骨に負荷をかけないと利用効率が低くなってしまいます(※引用:「カルシウム」厚生労働省様HPより)」。

4.× 蛋白質は総エネルギー摂取量の「30%以上」ではなく13~20%を目標とする。「日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なたんぱく質は、18~49歳は、摂取エネルギーの13~20%、50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%が理想とされており、推奨量は、18~64歳の男性は一日65g、65歳以上の男性は60g、18歳以上の女性は一日50gとなっています(※引用:「三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量」健康長寿ネット様HPより)」。

(※引用:「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

3 日本人女性の乳癌のリスク要因はどれか。

1.やせ
2.遅い初経
3.授乳経験
4.アルコール摂取

解答

解説

乳癌とは?

乳癌とは、乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である。乳管起源のものを乳管癌といい、小葉上皮由来のものを小葉癌という。年々増加しており、女性のがんで罹患率第1位、死亡率は第2位である。40~60歳代の閉経期前後の女性に多い。

乳がんのリスク要因は、①初経年齢が早い、②閉経年齢が遅い、③出産歴がない、④初産年齢が遅い、⑤授乳歴がないことなどである。閉経後の肥満は乳がん発症の高リスクであると考え、 また閉経後の女性では運動による乳がんリスク減少の可能性が示されている。

1.× 「やせ」ではなく閉経後の肥満は乳癌のリスク要因である。なぜなら、閉経後に脂肪細胞で男性ホルモンがエストロゲンに変換されるため。

2.× 「遅い」ではなく早い初経は乳癌のリスク要因である。なぜなら、長期間にわたるエストロゲン曝露が乳癌のリスクを高めるため。

3.× 「授乳経験」ではなく授乳歴がないことは乳癌のリスク要因である。乳管を母乳が通るという行為そのものや、出産・授乳に関わる女性ホルモンの影響が、乳がんのかかりやすさ・かかりにくさに関係していると考えられる。

4.〇 正しい。アルコール摂取は、日本人女性の乳癌のリスク要因である。なぜなら、過剰なアルコールの摂取が女性ホルモンであるエストロゲンの濃度を上昇させるため。

 

 

 

 

 

4 淋菌感染症について正しいのはどれか。

1.多剤耐性淋菌の発生は減少傾向である。
2.性器感染者の0.1%に咽頭感染を認める。
3.女性感染者の子宮頸管炎の帯下は水様透明である。
4.男性感染者の尿道炎では灼熱感のある排尿痛が出現する。

解答

解説

淋菌感染症とは?

淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。

1.× 多剤耐性淋菌の発生は、「減少」ではなく増加傾向である。多剤耐性淋菌とは、薬剤耐性淋菌ともいい、さまざまな抗菌薬に耐性を持つ淋菌のことである。淋菌の治療には、主にセフトリアキソンやスペクチノマイシンなどの抗菌薬が用いられてきたが、近年これらの薬剤に耐性を持つ淋菌が出現してきている。

2.× 性器感染者の「0.1%」ではなく約10~30%に咽頭感染を認める。クラミジアや淋病に感染した人の10〜30%は咽頭からも菌が検出され、咽頭炎、扁桃腺炎などといった病気が発症する(※参考:「咽頭淋病(淋菌)」あおぞらクリニック様HPより)。性行為により、性器から咽頭への感染が生じることがあり、特にオーラルセックスを行う場合にリスクが高まる。

3.× 女性感染者の子宮頸管炎の帯下は、「水様透明」ではなく膿性・膿粘性・粘性である。なぜなら、炎症を伴うため。帯下が増加し、黄色や緑色を帯びることがある。

4.〇 正しい。男性感染者の尿道炎では灼熱感のある排尿痛が出現する。男性の淋病(淋菌性尿道炎)の症状には、排尿時の灼熱感や強い痛みなどがある。性行為による感染から1週間ほどで症状が現れ、尿道口から黄色の膿を排出する。また、尿道のかゆみや不快感(残尿感)、副睾丸の腫れ、発熱などの症状も現れる。

 

 

 

 

 

5 非侵襲的出生前遺伝学的検査〈NIPT〉で適切なのはどれか。

1.母体血清マーカー検査と比べ感度が低い。
2.胎児疾患の確定診断を目的に行う。
3.13トリソミーは対象疾患である。
4.羊水を採取する。

解答

解説

非侵襲的出生前遺伝学的検査とは?

非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT:Noninvasive prenatal genetic testing)とは、お母さんの血液中には胎盤を通して赤ちゃんのDNAが10%程度混ざっているため、お母さんから血液を採血し、DNAの断片を分析することで赤ちゃんに染色体疾患があるかどうかを検出する検査方法である。この検査で検出できるのは、21トリソミー症候群(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つの染色体の数的異常症である。その他の染色体疾患や遺伝子異常の検査はできない。

【NIPTの検査】
①保険の適用にはならない。(20~25万円前後)
②対象:出産予定日の年齢が35歳以上の方、染色体疾患に罹患した児を妊娠もしくは分娩した経験のある方。
③検査期間:妊娠10週~22週の間。
④検査:遺伝カウンセリングが行われる。
⑤お母さんから血液を20cc採血し2~3週間後に結果が 陽性 / 陰性 で判定される。

1.× 母体血清マーカー検査と比べ感度が「低い」のではなく高い。母体血清マーカー検査の感度は約70%、一方、非侵襲的出生前遺伝学的検査の感度は99%である。母体血清マーカー検査とは、母体から採血した血液に含まれる特定の成分を調べることで児に染色体疾患があるかどうかを調べる非確定的検査である。この検査の施行時期は15~20週で、検出できるのは 21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖不全などである。利点として、非侵襲的である点と、陰性の場合には、羊水検査を回避できるかもしれない点、胎児二分脊椎の診断につながるかもしれない点があげられる。欠点として、確定診断ではない対象となる染色体異常は、18、21 トリソミー(13 トリソミーは対象でない)ことがあげられる。

2.× 胎児疾患の「確定診断」ではなくスクリーニング目的に行う。遺伝学的検査とは、染色体疾患、遺伝性疾患に関する検査で①確定的検査と②非確定的検査がある。①確定的検査は、胎児・母体に対して侵襲的で診断の確定に用いられる検査で、羊水検査や絨毛検査(CVS)がある。②非確定的検査は、母体血を用いた非侵襲的で非確定的な検査である。妊娠中期母体血清マーカー検査、妊娠初期コンバインド検査、出生前遺伝学的検査(NIPT)がある。

3.〇 正しい。13トリソミーは対象疾患である。非侵襲的出生前遺伝学的検査の対象疾患は、21トリソミー症候群(ダウン症候群)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3つの染色体の数的異常症である。その他の染色体疾患や遺伝子異常の検査はできない。

4.× 羊水を採取するのは、「羊水検査」である。羊水検査とは、羊水穿刺により羊水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査である。15~16週以降の胎児染色体異常・遺伝子異常に適応となり、ほぼ100%で確定診断が可能である。

用語説明

・疾病を有するものを正しく疾病ありと診断する確率を「感度」という。
・疾病を有さないものを正しく疾病なしと診断する確率を「特異度」という。

・検査陽性者のうち実際に疾病を有する者の割合を「陽性反応的中度(陽性的中率)」という。
・検査陰性者のうち実際に疾病を有さない者の割合を「陰性反応的中度(陰性的中率)」という。

・疾病なしだが、検査結果は陽性と判定される割合を「偽陽性率」という。
・疾病ありだが、検査結果は陰性と判定される割合を「偽陰性率」という。

 

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