第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後56~60】

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56 2人以上の精神保健指定医による診察結果の一致が要件となる入院形態はどれか。

1.応急入院
2.措置入院
3.医療保護入院
4.緊急措置入院

解答2

解説

精神保健指定医とは?

精神保健指定医とは、「精神保健福祉法」に基づいて、精神障害者の措置入院・医療保護入院・行動制限の要否判断などの職務を行う精神科医のことである。原則として、精神科病院では,常勤の指定医を置かなければならない。臨床経験・研修などの要件を満たす医師の申請に基づいて厚生労働大臣が指定する。

1.× 応急入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:1人の診察。③そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。④備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。⑤入院権限:精神科病院管理者
2.〇 正しい。措置入院は、2人以上の精神保健指定医による診察結果の一致が要件となる入院形態である。措置入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:2人以上の診察、③そのほか:自傷・他害のおそれがある。④備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。⑤入院権限:都道府県知事である。
3.× 医療保護入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない、②精神保健指定医の診察:1人の診察、③そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意、④備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る、⑤入院権限:精神科病院管理者である。
4.× 緊急措置入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない、②精神保健指定医の診察:1人の診察、③そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する、④備考:入院期間は72時間以内、指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される、⑤入院権限:都道府県知事である。

入院の形態

①任意入院:患者本人の同意:必要。精神保健指定医の診察:必要なし。そのほか:書面による本人意思の確認。備考:本人の申し出があれば退院可能。精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。入院権限:精神科病院管理者。

②医療保護入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意。備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る。入院権限:精神科病院管理者

③応急入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。入院権限:精神科病院管理者

④措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:2人以上の診察、そのほか:自傷・他害のおそれがある。備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。入院権限:都道府県知事

⑤緊急措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察、そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する。備考:入院期間は72時間以内。指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される。入院権限:都道府県知事

 

 

 

 

 

57 Aさん(65歳、男性)は、肺気腫で在宅酸素療法を受けている。ある日、Aさんの妻(70歳)から「同居している孫がインフルエンザにかかりました。今朝から夫も体が熱く、ぐったりしています」と訪問看護ステーションに電話で連絡があったため緊急訪問した。
 訪問看護師が確認する項目で優先度が高いのはどれか。

1.喀痰の性状
2.胸痛の有無
3.関節痛の有無
4.経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(65歳、男性、肺気腫
在宅酸素療法を受けている。
・ある日:妻(70歳)「同居している孫がインフルエンザにかかりました。今朝から夫も体が熱く、ぐったりしています」と。
→肺気腫とは、終末細気管支より末梢の気腔が、肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大し、明らかな線維化は認められない病変を指す。主な原因は喫煙である。慢性閉塞性換気障害を呈する。ちなみに、閉塞性換気障害では何らかの原因により気道が閉塞して気流が制限され、呼気が障害される。

→在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。

1.× 喀痰の性状より優先される選択肢が他にある。なぜなら、生命維持に重要なものから調べる方が優先順位は高いため。ちなみに、喀痰とは、主に咳をしたときに喉のほうから出てくる粘液状のものである。
2.× 胸痛の有無より優先される選択肢が他にある。なぜなら、肺気腫では胸痛は一般的にみられないため。また、インフルエンザの際に生じる胸痛も起こりにくく、多くの場合、腰痛や関節痛、筋肉痛などが起こる。
3.× 関節痛の有無より優先される選択肢が他にある。インフルエンザ罹患による関節痛がみられるが、生命維持に重要なものから調べる。
4.〇 正しい。経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>は、訪問看護師が確認する項目で優先度が高い。なぜなら、生命予後にかかわり、きわめて重要であるため。もともと在宅酸素療法を受けるほどの肺気腫があり、インフルエンザ罹患が加わり呼吸困難が増悪するリスクがある。

 

 

 

 

 

58 地域包括ケアシステムについて正しいのはどれか。

1.都道府県を単位として構築することが想定されている。
2.75歳以上の人口が急増する地域に重点が置かれている。
3.本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。
4.地域特性にかかわらず同じサービスが受けられることを目指している。

解答3

解説

地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。この地域包括ケアシステムが効果的に機能するために、「4つの助(自助・互助・共助・公助)」の考え方が連携し、課題解決に向け取り組んでいく必要がある。

「公助」は税による公の負担。
「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担。
「自助」には「自分のことを自分でする」ことに加え、市場サービスの購入も含まれる。
「互助」は相互に支え合い、費用負担が制度的に裏づけられていない自発的なものである。

1.× 「都道府県」ではなく、日常生活圏(中学校区)を単位として構築することが想定されている。したがって、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位として想定されている(※参考:「地域包括ケアシステムとは」健康長寿ネット様HPより)。
2.× 「75歳以上の人口が急増する地域」ではなく、全国的に重点が置かれている。なぜなら、「75歳以上の人口が急増する地域」と限定した場合、緩やかに上昇している地域への配慮が手薄になってしまうため。日本は、諸外国に例を見ないスピードで少子高齢化が進んでいる。
3.〇 正しい。本人・家族の在宅生活の選択と心構えが前提条件とされている。地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるよう、包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指すものである。
4.× 「地域特性にかかわらず」ではなく地域特性に応じて、さらに「同じサービス」ではなく、医療や介護・保健などの包括的なサービスが受けられることを目指している。地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じてつくり上げる必要がある。

 

 

 

 

 

 

59 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律<障害者総合支援法>に基づいて、障害者が利用できるサービスはどれか。

1.育成医療
2.居宅療養管理指導
3.共同生活援助<グループホーム>
4.介護予防通所リハビリテーション

解答3

解説

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

1.× 育成医療とは、『障害者総合支援法』の自立支援医療のひとつである。身体に障害のある児童又はそのまま放置すると将来障害を残すと認められる疾患がある児童18歳未満)で、確実な治療効果が期待できる方が指定医療機関において医療を受ける場合に給付が受けられる制度である。
2.× (介護予防)居宅療養管理指導は、『介護保険法』のサービスである。(介護予防)居宅療養管理指導とは、在宅で療養していて、通院が困難な利用者(要介護・要支援者)へ医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが家庭を訪問し療養上の管理や指導、助言等を行うサービスである。
3.〇 正しい。共同生活援助<グループホーム>は、障害者総合支援法に基づいて障害者が利用できるサービスである。共同生活援助とは、グループホームともいい、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつであり、ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。ちなみに、『障害者総合支援法』での障害者は、身体・知的・精神(発達障害を含む)の三障害者で18歳以上の者と、政令で定める難病で一定の程度にある者で18歳以上の者である。
4.× 介護予防通所リハビリテーションは、『介護保険法』によるサービスである。介護予防通所リハビリテーションとは、要支援者に対して要介護状態になることをできる限り防ぐ(発生を予防する)、あるいは状態がそれ以上悪化しないようにすることを目的とし、介護老人保健施設・病院等への通所で行われる理学療法、作業療法などのリハビリテーションを行うものである。

 

 

 

 

 

60 Aさん(55歳、女性)は、夫と2人で暮らしている。進行性の多発性硬化症で在宅療養をしている。脊髄系の症状が主で、両下肢の麻痺、膀胱直腸障害および尿閉がある。最近は座位の保持が難しく、疲れやすくなってきている。排尿はセルフカテーテルを使用してAさんが自己導尿を行い、排便は訪問看護師が浣腸を行っている。夫は仕事のため日中は不在である。
 Aさんの身体状態に合わせた療養生活で適切なのはどれか。

1.入浴はシャワー浴とする。
2.介助型の車椅子を利用する。
3.ベッドの高さは最低の位置で固定する。
4.セルフカテーテルはトイレに保管する。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(55歳、女性)
・2人暮らし:夫。
進行性の多発性硬化症:在宅療養。
・脊髄系の症状:両下肢の麻痺、膀胱直腸障害、尿閉。
・最近:座位の保持が難しく、疲れやすくなってきている
・排尿:セルフカテーテルを使用して自己導尿。
・排便:訪問看護師が浣腸。
・夫:仕事のため日中は不在。
→多発性硬化症が分からなくてもあきらめず、現在の様子から想像すると正解に導き出せる。

1.〇 正しい。入浴はシャワー浴とする。なぜなら、本症例は、座位の保持が難しく、疲れやすくなってきているため。入浴よりも安全性が高く、体力消耗の少ないシャワー浴が望ましい。
2.× 「介助型の車椅子」ではなく、電動式車椅子を利用する。なぜなら、本症例は、座位の保持が難しく、疲れやすくなってきているが、自己導尿を行っていることから、上肢は動かせる状態であると考えられるため。ちなみに、車椅子は、①自力で操作する自走型車椅子、②介助者が押す介助型車椅子、③電動式車椅子の3つに大きく分けられる。
3.× ベッドの高さは、最低の位置で固定する必要はない。なぜなら、ベッドから車椅子への移乗の際、車椅子の方が高いと介助負担が大きくなるため。ベッドの高さを固定する必要はなく、Aさんの夫が介護するときは介護しやすい高さにするなど、臨機応変に変更することが望ましい。
4.× セルフカテーテルは、「トイレ」ではなくベッド上に保管する。なぜなら、Aさんの状況から自己導尿はベッド上で行っていると思われるため。トイレに置いておくと、そこまでの起き上がり、移乗、車椅子移動など時間がかかりすぎる。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

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