第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 疾患と原因となる生活習慣の組合せで適切なのはどれか。

1.低血圧症:飲酒
2.心筋梗塞:長時間労働
3.悪性中皮腫:喫煙
4.Ⅰ型糖尿病:過食

解答2

解説

1.× 飲酒は、「低血圧症」ではなく高血圧症の要因の一つである。低血圧とは、寝た姿勢や座った姿勢から急に起き上がったり、立ち上がった際に血圧が低下し、めまいが起こる症状である。症例は運動時に症状が生じている。起立性低血圧は、原因として①自律神経障害、②薬剤性、③加齢、④飲酒、⑤出血や脱水などの循環血漿量の低下が挙げられる。
2.〇 正しい。長時間労働は、心筋梗塞の要因の一つである。心筋梗塞とは、心筋が壊死に陥った状態である。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。
3.× 喫煙は、「悪性中皮腫」ではなく、肺癌や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの要因の1つである。悪性中皮腫とは、石綿(アスベスト)の吸入後、30~40年を経て、胸膜や腹膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍である。ちなみに、アスベスト(石綿)とは、耐火材や断熱材などに利用されてきた天然の繊維状の鉱物である。
4.× 過食は、「Ⅰ型糖尿病」ではなくⅡ型糖尿病である。2型糖尿病とは、遺伝的な体質(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性)に過食、運動不足、肥満が加わることにより起こる糖尿病を指す。一方で、1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。

 

 

 

 

 

47 自動体外式除細動器<AED>による電気的除細動の適応となるのはどれか。

1.心静止
2.心房細動
3.心室細動
4.房室ブロック

解答3

解説

自動体外式除細動器とは?

AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。

1.× 心静止とは、心臓の電気的な活動が停止している状態である。心臓が止まってしまって、もう動かないという状態を指し、再び動くことはない。一方、心停止とは、心臓がブルブルとけいれんしてポンプとしての機能がなくなり、心臓から正常に血液を送り出すことができない状態を指す。
2.× 心房細動とは、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。心房細動を洞調律に戻す非薬物療法には、カテーテルアブレーションのほかに電気的除細動という方法もある。電気的除細動を行うのは、心房細動が起こると①血圧が急に下がって強い症状のために動けなってしまうような場合、②抗不整脈薬が有効でない場合、③肥大型心筋症・心アミロイドーシスや心不全などがあるため抗不整脈薬を使うよりも電気的除細動の方が安全と判断される場合などである。
3.〇 正しい。心室細動は、自動体外式除細動器<AED>の適応である。心室細動とは、脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態である。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともあるが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなることが多い。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。
4.× 房室ブロックとは、洞結節からの電気信号が房室まで伝わらない状態で、程度に応じてペースメーカーの植え込みが必要である。

房室ブロックとは?

房室ブロックは、心房から心室への伝導障害をいう。第1度〜第3度に分類される。
・1度房室ブロック:心房から心室への伝導時間が延長するが、P波とQRS波の数や形は変わらない。
・2度房室ブロック
①ウェンケンバッハ型(モビッツⅠ型):PR間隔が徐々に延長してQRSが脱落する。
②モビッツⅡ型:心房から心室への伝導が突然途絶える。P波の後のQRSが突然脱落する。

・3度房室ブロック:心房からの刺激が途絶え、P波とQRSが無関係に生じるようになる。

 

 

 

 

 

48 術中の仰臥位の保持によって発生することがある腕神経叢麻痺の原因はどれか。

1.上腕の持続的圧迫
2.前腕の回外の持続
3.肘関節の持続的圧迫
4.上肢の90度以上の外転

解答4

解説

(※図引用:日本整形外科学会様HPより)

腕神経叢麻痺とは?

腕神経叢とは、頚髄から分枝した神経が鎖骨や肋骨の間を通り、腋窩付近を走行する際に形成する神経の束のことである。腕神経叢麻痺は、腕神経叢の過伸展によって引き起こされることが多い。

1.× 上腕の持続的圧迫では、橈骨神経麻痺が生じやすい。橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。
2.× 前腕の回外の持続と同時に手関節を過伸展で、正中神経麻痺が生じやすい。正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。
3.× 肘関節の持続的圧迫は、尺骨神経麻痺を生じやすい。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
4.〇 正しい。上肢の90度以上の外転をすると、腕神経叢麻痺を生じやすい。ほかにも、肩関節の下方への牽引で起こりやすい。なぜなら、腕神経叢が過伸展されるような体位となるため。

 

 

 

 

 

49 点滴静脈内注射によって抗癌薬を投与している患者の看護で適切なのはどれか。

1.悪心は薬で緩和する。
2.留置針は原則として手背に挿入する。
3.血管痛がある場合は直ちに留置針を差し替える。
4.2回目以降の投与では過敏症の症状の確認は必要ない。

解答1

解説

1.〇 正しい。悪心は薬で緩和する。抗癌薬の副作用で悪心が起こる。これは、第4脳室底の最後野に存在する化学受容体誘発帯が刺激を受け、その刺激が延髄にある嘔吐中枢に伝達されるためである。また、治療や嘔吐に対する不安などが大脳皮質を刺激し、悪心・嘔吐が誘発されることもあり、基本的に制吐剤で対応する。
2.× 留置針は、原則として「手背」ではなく前腕に挿入する。なぜなら、手背・手首・肘関節などの動きのある部位は血管外漏出するおそれがあるため。したがって、主に前腕正中皮静脈、橈側皮静脈、 尺側皮静脈が用いられる。表在性の静脈にならどこにでも行うことができ、針の固定が容易で、太く弾力のある血管を選択する。麻痺側、利き手などを避けることが推奨されている。
3.× 血管痛がある場合は、直ちに「留置針を差し替える」のではなく、直ちに投与を中止すべきである。なぜなら、血管痛がある場合は血管外漏出の可能性があるため。点滴静脈内注射中に刺入部位に腫脹(ほかにも、発赤や痛み)を伴う場合、薬剤が血管外に漏れている可能性が高いため。数時間~数日後にはその症状が増悪し、水疱→潰瘍→壊死形成へと移行していき、さらに重症化すると漏出部位に よっては運動制限をきたして外科的処置(手術)が必要になることもある。
4.× 2回目以降の投与でも、過敏症の症状の確認は必要である。なぜなら、初回には起きなくても、2回目以降の投与で過敏症(じんま疹、掻痒感、発熱、アナフィラキシー様ショックなど)が起きることもあるため。回数を重ねることで過敏症の発症リスクの高い薬剤もある(※参考:「第 2 章 抗がん剤の副作用とその対応 皮膚や爪、血管の症状」)。

持続点滴静脈内注射

持続点滴静脈内注射とは、大量の薬品を持続的に静脈内に注入する方法である。治療においても使用頻度が高く、与薬ミスや感染防止対策なども多い処置である。主に前腕正中皮静脈、橈側皮静脈、 尺側皮静脈が用いられる。表在性の静脈にならどこにでも行うことができ、針の固定が容易で、太く弾力のある血管を選択する。麻痺側、利き手などを避けることが推奨されている。

 

 

 

 

 

50 Aさん(60歳、男性)は、慢性心不全の終末期で、積極的な治療を行わないことを希望している。現在、入院中で、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、水分制限がある。時々息切れがみられるが、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみにしている。バイタルサインは呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>88%であった。
 このときの対応で最も適切なのはどれか。

1.面会は制限しない。
2.水分制限を厳しくする。
3.Aさんに仰臥位を維持してもらう。
4.面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する。

解答1

解説

本症例のポイント

・Aさん(60歳、男性、慢性心不全の終末期
・希望:積極的な治療を行わない。
・現在:入院中で、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、水分制限がある
・時々:息切れ、Aさんは面会に来た長女との会話を楽しみ
・バイタルサイン:呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧76/50mmHg、<SpO2>88%
→終末期医療とは、末期がんの患者などが、残された余命を平穏に過ごせるように行われるケアのことである。主に身体的・精神的苦痛を取り除くための処置が行われる。ちなみに、退院支援カンファレンスとは、患者および家族の希望や状況、治療や入院中の経過などの情報を共有し、参加者がそれぞれの役割を明確にしたうえで話し合い、退院に向けての課題を明らかにする場でもある。

1.〇 正しい。面会は制限しない。なぜなら、Aさんは長女との会話を楽しみにしているため。終末期では、患者の苦痛を最小限にしたうえで、患者のQOLを最大限に高める援助を考える。
2.× 水分制限を厳しくする必要はない。なぜなら、本症例のバイタルサインも比較的安定しており、積極的な治療を行わない希望があるため。
3.× Aさんに仰臥位を維持してもらう必要はない。なぜなら、慢性心不全の患者は仰臥位になることで静脈還流が増し、呼吸苦が増強するため。体位は、半坐位(ファーラー位)や起座位が望ましい。
4.× 面会中は酸素マスクを鼻腔カニューラに変更する必要はない。なぜなら、鼻腔カニューラで供給できる酸素の量は、上限6L程度であるため。本症例は、リザーバーマスク10L/分で酸素を吸入し、<SpO2>88%であるため、酸素マスクを鼻腔カニューラに変更するという医療的根拠は乏しい。また、鼻腔カニューラで、流量を6L以上にすると、鼻粘膜の損傷を引き起こす可能性がある。そもそも、鼻腔カニューラに変更する判断は、看護師ではなく医師が行う。

 

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