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次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>96%であった。
116 頭部CTの結果、高血圧性脳出血と診断され、集中治療室に入室した。入室時にはジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-30。体温37.0℃、呼吸数16/分、脈拍82/分、血圧154/110mmHg。入室から8時間後、体温37.2℃、呼吸数18/分、脈拍50/分、血圧208/106mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>97%になり、呼びかけと痛み刺激に開眼しなくなった。
このときのAさんの状態はどれか。
1.低酸素脳症
2.脳圧亢進症状
3.髄膜刺激症状
4.正常圧水頭症
解答2
解説
(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)
・Aさん(70歳、男性、高血圧性脳出血)
・集中治療室入室時:<JCS>Ⅱ-30。体温37.0℃、呼吸数16/分、脈拍82/分、血圧154/110mmHg。
・入室8時間後:体温37.2℃、呼吸数18/分、脈拍50/分、血圧208/106mmHg、<SpO2>97%、呼びかけと痛み刺激に開眼しなくなった(JCS:Ⅲ桁)。
→本症例は、入室時と入室8時間後を比較すると、血圧の上昇と脈拍数の低下、意識レベルの低下がみられる。これらの症状と合致するものを選択しよう。
1.× 低酸素脳症は考えにくい。なぜなら、〈SpO2〉97%と正常であるため。低酸素脳症とは、脳に酸素が足りなくなってしまい、脳が酸素不足の状態になることをさす。症状としては、意識障害、運動麻痺、認知機能の低下、安静時の骨格筋の緊張が低下する四肢筋トーマス、痙攣発作、不随意運動などがある。脳に酸素が足りなくなると、重症の場合は意識がなくなったり、脳死状態になり死に直結したりする場合もある。
2.〇 正しい。脳圧亢進症状である。なぜなら、本症例は、入室時と入室8時間後を比較すると、血圧の上昇と脈拍数の低下、意識レベルの低下がみられるため。頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。脳出血拡大や脳出血後の浮腫のため、脳出血の際には脳圧が亢進しやすい。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。
3.× 髄膜刺激症は考えにくい。髄膜刺激症状は、髄膜炎やくも膜下出血で起こり、頭痛、悪心・嘔吐のほか、項部硬直など診察所見でも異常がみられる。ほかの症状としては、羞明、頭痛、項部硬直、嘔吐、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候、皮膚知覚過敏などがある。
4.× 正常圧水頭症は考えにくい。なぜなら、正常圧水頭症の症状は認められないため。正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。
Kernig徴候(ケルニッヒ徴候)は、膜刺激症状の検査で陽性の場合みられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。
次の文を読み115〜117の問いに答えよ。
Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール<JCS>Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>96%であった。
117 入院から4週が経過し、病状が安定して意識が回復した。Aさんは後遺症として運動性失語が残り、言葉がうまく発せられないため涙ぐむことがあった。妻は面会後「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っていた。
妻に対する対応で最も適切なのはどれか。
1.「いつもどおり話をしてあげてください」
2.「看護師も同席してAさんとお話ししましょう」
3.「リハビリテーションで話せるようになりますよ」
4.「分かりやすい言葉で話しかけてあげてください」
解答2
解説
・Aさん(70歳、男性、高血圧性脳出血)
・2人暮らし(妻:74歳)。
・入院4週経過:病状が安定して意識が回復した。
・後遺症:運動性失語、言葉がうまく発せられないため涙ぐむ。
・妻「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っていた。
→本症例は、運動性失語がみられる。運動性失語とは、他人の話すことは理解できるが、自分の思っていることを言語に表現できない状態である。「はい」「いいえ」で答えられるよう質問を工夫したり、言いたいことを推測して答えを書いて示すことが有効である。前頭葉Broca野(運動性失語中枢)を中心とした前頭葉の障害によって生じる。
1.× 「いつもどおり話をしてあげてください」は、不適切である。なぜなら、妻は「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っている様子があるため。Aさんには運動性失語があるので、コミュニケーションをとる上で工夫するポイントを指導する必要がある。
2.〇 正しい。「看護師も同席してAさんとお話ししましょう」と伝える。なぜなら、看護師が同席し会話することで、運動性失語に対する妻の理解度を確認でき、理解が不足していれば説明することができるため。
3.× 「リハビリテーションで話せるようになりますよ」は、不適切である。なぜなら、リハビリテーションで100%以前のように話せるようになるという保証は確実ではないため。もし離れなかった場合、看護師の虚偽となってしまうため安易な約束は行わない方が良い。
4.× 「分かりやすい言葉で話しかけてあげてください」は、不適切である。なぜなら、運動性失語は、言語理解は良好であるため。夫が話す言葉がわからないことが問題であり、妻がわかりやすい言葉で話しかけても解決にならない。ちなみに、運動性失語とは、ブローカ失語ともいい、①復唱困難、②言語理解良好、③非流暢を特徴として言語障害である。
次の文を読み118、119の問いに答えよ。
Aさん(89歳、女性)は、認知症と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男(66歳、未婚)との2人暮らし。Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。
118 Aさんは「家事は私の仕事だ。息子にも他人にも任せられない」と言い、夕方になると、歩いて5分程度のスーパーマーケットへ買い物に行くことが長年の習慣となっている。最近、夜になっても帰宅せず、長男が探しに行くとスーパーマーケットから離れた公園のベンチに座っていることが数回あった。長男は訪問看護師に「母は私が後をついてきたと思い込んで怒るんです。このままでは心配です」と相談した。
看護師が長男へ助言する内容で最も適切なのはどれか。
1.「先に公園で待っていてはどうですか」
2.「ホームヘルパーの利用をお勧めします」
3.「Aさんに買い物はやめるよう話しませんか」
4.「荷物を持つという理由で同行してはどうですか」
解答4
解説
・Aさん(89歳、女性、認知症)
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準:ランクⅡb。
・2人暮らし:定年退職後の長男(66歳、未婚)。
・Aさん「家事は私の仕事だ。息子にも他人にも任せられない」と。
・夕方になると、歩いて5分程度のスーパーマーケットへ買い物に行くことが長年の習慣。
・最近、夜になっても帰宅せず、長男が探しに行くとスーパーマーケットから離れた公園のベンチに座っていることが数回あった。
・長男「母は私が後をついてきたと思い込んで怒るんです。このままでは心配です」と。
→本症例は、認知症(ランクⅡb、要支援1)である。ランクⅡbは、誰かが注意していれば自立できる状態である。長年の習慣である「歩いて5分程度のスーパーマーケットへ買い物」の帰り道に、公園のベンチに座っていることが数回あったことから、なぜ座っているのか考える必要がある。本症例は、認知症であるが、「帰り道がわからなくなった」と決めつけるのではなく、①疲れて休んでいるのか、②公園の鳩に餌をあげているのか、③仲の良い人と話せないか待っている、など理由は様々な可能性がある。まずは、ご長男の意見も傾聴しつつ、本症例の尊厳を尊重して関わることが大切である。
1.× 「先に公園で待っていてはどうですか」は、不適切である。なぜなら、先に公園で待っていることにより、さらに「後をついてきた」と思わせてしまう可能性があるため。
2.× 「ホームヘルパーの利用をお勧めします」は、不適切である。なぜなら、ホームヘルパーに買い物を依頼することで、本症例の長年の習慣である買い物が不要となり、より活動性が低下や役割の喪失、認知症の進行につながるため。また、Aさんの日常生活自立度判定基準は、ランクⅡb(誰かが注意していれば自立できる状態)であり、ホームヘルパーの利用を勧める前に、Aさんのできることに働きかけることを勧めるべきである。
3.× 「Aさんに買い物はやめるよう話しませんか」は、不適切である。なぜなら、本症例の長年の習慣である買い物が不要となり、より活動性の低下や役割の喪失、認知症の進行につながるため。
4.〇 正しい。「荷物を持つという理由で同行してはどうですか」と伝える。なぜなら、荷物を持つという自然な形で同行することができれば、なぜ公園で座っているのか?、その理由が判明しやすいため。また、長年の習慣である買い物も継続でき、Aさんの能力を引き出すことにつながる。
(※図:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランク)
次の文を読み118、119の問いに答えよ。
Aさん(89歳、女性)は、認知症と診断されており、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡbである。定年退職後の長男(66歳、未婚)との2人暮らし。Aさんは「役所の世話になるのは嫌だ」と言い、要介護認定を受けることを承諾していなかった。しかし、Aさんが室内で転倒したことをきっかけに、要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入された。
119 ある冬の訪問時、長男が「母がここ数日寒さを訴え、居間にある電気こたつの温度を最も高くして、肩までもぐり込んでそのまま朝まで眠ってしまう」と話した。
長男の話を受けて、看護師が最初に観察する項目で最も優先度が高いのはどれか。
1.筋力低下の有無
2.感染徴候の有無
3.認知機能のレベル
4.全身の皮膚の状態
解答4
解説
・Aさん(89歳、女性、認知症)
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準:ランクⅡb。
・室内で転倒:要支援1の判定を受け介護予防訪問看護が導入。
・ある冬の訪問時:長男「母がここ数日寒さを訴え、居間にある電気こたつの温度を最も高くして、肩までもぐり込んでそのまま朝まで眠ってしまう」と。
→電気こたつで寝るときには、低温やけどのほか、脱水症状や塞栓、脳梗塞など発生しやすい。
1~3.× 筋力低下の有無/感染徴候の有無/認知機能のレベルを観察することも重要であるが、優先度は低い。なぜなら、電気こたつで朝まで寝る理由が、「数日寒さ」と言及されているため。電気こたつで寝るときには、低温やけどのほか、脱水症状や塞栓、脳梗塞など発生しやすい。
4.〇 正しい。全身の皮膚の状態は、看護師が最初に観察する項目で最も優先度が高い。なぜなら、こたつやカイロで低温熱傷を起こしやすいため。
消費者庁には、65歳以上の高齢者が不注意や暖房器具等の誤使用によりやけどを負ったという事故情報が338件寄せられており、死亡に至った事例もあります(平成 21年9月1日から平成 27 年9月末日までの登録分)。高齢者は若年者に比べて皮膚が薄く、また、運動機能や感覚機能が低下するため重いやけどを負うリスクが高まります。事故が多発する冬に向けて、特に高齢者に多い以下の事故を防ぐための注意点をお知らせします。
(1)低温やけど
(2)着衣着火
(3)ストーブの上に置いたやかん等の熱湯を浴びる事故
(4)入浴に際しての事故
(※引用:「高齢者のやけどに御注意ください」消費者庁様HPより)
次の文を読み120の問いに答えよ。
Aさん(70歳、男性)は、妻と長男との3人暮らしである。左被殻出血で入院し、歩行訓練および言語訓練のリハビリテーションを行い自宅に退院した。退院時の検査所見は、HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL、トリグリセリド150mg/dLであった。退院後、週1回の訪問看護を利用することになった。
初回の訪問時、血圧は降圧薬の内服で130/80mmHgであった。右片麻痺、麻痺側の感覚障害、運動性失語があり、一本杖や手すりを利用して自宅内を移動していた。Aさん宅は、酒屋を自営しており、1階は店舗、トイレおよび浴室、2階に居室がある。各階の移動は手すりのあるらせん状階段のみで、階段昇降機の取り付けは構造上できない。Aさんは「店に出て親しい客に会うのが楽しみだ」と話した。
120 訪問看護計画に取り入れる内容で最も優先度が高いのはどれか。
1.言語訓練
2.食事指導
3.内服薬の管理
4.排便コントロール
5.階段を昇降する練習
解答5
解説
・Aさん(70歳、男性、左被殻出血)
・3人暮らし(妻と長男)。
・歩行訓練および言語訓練のリハビリテーションを行い自宅に退院。
・退院時:HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL、トリグリセリド150mg/dL。
・退院後:週1回の訪問看護を利用する。
・初回の訪問時:血圧は降圧薬の内服で130/80mmHg。
・右片麻痺、麻痺側の感覚障害、運動性失語があり、一本杖や手すりを利用して自宅内を移動。
・Aさん宅:酒屋を自営、1階は店舗、トイレおよび浴室、2階に居室。
・各階の移動:手すりのあるらせん状階段のみ、階段昇降機の取り付けは構造上できない。
・Aさん「店に出て親しい客に会うのが楽しみだ」と。
1.× 言語訓練は、優先度は低い。なぜなら、本症例は、運動性失語があるが「店に出て親しい客に会うのが楽しみだ」と話していることから日常生活のコミュニケーションがとれることがわかるため。
2.× 食事指導は、優先度は低い。なぜなら、本症例の退院時は、HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL、トリグリセリド150mg/dLと基準値をやや超えている程度であるため。ちなみに、基準値は、HDLコレステロール40~80mg/dL、LDLコレステロール70~139mg/dL、トリグリセリド30~150mg/dLである。
3.× 内服薬の管理は、優先度は低い。なぜなら、初回訪問時に降圧剤で、血圧は130/80mmHgとコントロールできているため。
4.× 排便コントロールは、優先度は低い。なぜなら、設問文中に、排便コントロールが不十分な記載がないため。また、トイレは1階にあり、十分間に合っている(自立している)と予想できる。
5.〇 正しい。階段を昇降する練習は、訪問看護計画に取り入れる内容で最も優先度が高い。なぜなら、本症例の居室は2回であり、Aさん「店に出て親しい客に会うのが楽しみだ」と、頻繁に1階と2階の行き来をすることが予想されるため。本症例は右片麻痺があり、転倒のリスクが高いため、階段を安全に昇降できるように計画していく。
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。
問題引用:第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について