第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後11~15】

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11 神経伝達物質はどれか。

1.アルブミン
2.フィブリン
3.アセチルコリン
4.エリスロポエチン

解答3

解説

神経伝達物質とは?

神経伝達物質とは、神経終末で放出され、次の神経細胞や筋細胞に結合して情報を電伝達する物質である。神経細胞のニューロンで産生される化学物質で、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する働きがある。神経伝達物質には、アミノ酸、ペプチド類、モノアミン類(ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミンなど)、アセチルコリンなどがあげられる。

1.× アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。
2.× フィブリンとは、血液凝固に関連するタンパク質のフィブリノゲンが分解され活性化したものである。フィブリンは、出血した際の傷口を防いで止血する血液凝固の役割を果たす。 血液凝固は一次止血と二次止血の二段階で行われる。
3.〇 正しい。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。
4.× エリスロポエチンとは、赤血球の産生を促進する造血因子の一つである。加齢に伴い、腎臓の機能が低下してエリスロポエチンの分泌が少なくなる。すると赤血球も減少するため、貧血症状があらわれやすくなる。

 

 

 

 

 

12 キューブラー・ロス,E.による死にゆく人の心理過程で第2段階はどれか。

1.死ぬことへの諦め
2.延命のための取り引き
3.死を認めようとしない否認
4.死ななければならないことへの怒り

解答4

解説

キューブラー・ロスとは?

キューブラー・ロスとは、アメリカ合衆国の精神科医で、死と死ぬことについて関する書『死ぬ瞬間』の著者として知られる。死にゆく人の心理過程を提唱し、人が死を自覚したときから死を受容するまでのこころの反応とその経過が示されている。第1段階「否認(「何かの間違いだ」『信じられない」といった反応を示し、病を現実のものと受け止めることができない段階)」、第2段階「怒り(「自分だけがこんな目に遭うなんて」といった怒りが込み上げてる段階)」、第3段階「取り引き(「病気を治してくれたら。二度と悪いことはしない」などと、神や人と何らかの取り引きをしようとする段階)」、第4段階「抑うつ(「もうだめだ」「生きていても仕方ない」と抑うつ状態になる段階)」、第5段階「受容(自らのおかれた状況を理解しそれを受け入れることができる段階)」とされているが、段階的に一方向に移行するというよりは、重なり合ったり、行ったり来たりを繰り返しながら進み、必ずしも「受容」に至るとは限らないとされている。

1.× 死ぬことへの諦めは、キューブラー・ロスの説には含まれていない。ちなみに、第4段階は、抑うつに該当し、「もうだめだ」「生きていても仕方ない」と抑うつ状態になる段階である。「諦め」とは異なる。
2.× 延命のための取り引きは、第3段階である。「病気を治してくれたら。二度と悪いことはしない」などと、神や人と何らかの取り引きをしようとする段階である。
3.× 死を認めようとしない否認は、第1段階である。「何かの間違いだ」『信じられない」といった反応を示し、病を現実のものと受け止めることができない段階である。
4.〇 正しい。死ななければならないことへの怒りは、第2段階である。「自分だけがこんな目に遭うなんて」といった怒りが込み上げてる段階である。

 

 

 

 

 

13 下血がみられる疾患はどれか。

1.肝囊胞
2.大腸癌
3.卵巣癌
4.腎盂腎炎

解答2

解説

下血とは?

下血とは、肛門から黒い血が出ることである。血便と下血は別のものであり、血便とは、赤い血が混じっている便である。一方、下血は黒い血が混じっている便のことをいう。赤い便(血便)は、下部消化管、すなわち回腸や大腸・肛門からの出血が原因である。一方、黒い便(下血)の原因は、上部消化管、つまり食道、胃、十二指腸などの上部小腸からの出血である。

1.× 肝囊胞とは、肝臓内に袋状に水がたまる良性の腫瘤である。一般に自覚症状が少なく、無症状が多い。偶然に、または健診などで発見されることがある。40歳以上の中高年層が80%と大部分を占め、性別では女性が多いとされている。
2.〇 正しい。大腸癌は、下血がみられる疾患である。大腸がんとは、大腸の一番内側にある粘膜に発生するがんであり、70%がS状結腸と直腸に発生する。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。 代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどがある。
3.× 卵巣癌は、初期の段階では無症状の場合が多く、進行してから発見されることが多い。症状として、腹部膨満、腹痛、胃腸障害、頻尿、体重減少などがみられる。不正出血としてからの出血がみられることがある。
4.× 腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 20~40歳代では、男女比は1対30である。なぜなら、膀胱炎からの逆行性感染によって生じることが多いため。したがって、解剖学的に尿道が短く膀胱炎になりやすい女性に多い。また、女性は男性よりも尿道が短く尿道口と肛門が近いため、細菌が膀胱へ侵入しやすいことが原因の一つとして挙げられる。症状が急に現れるが、治療が早くできると症状は3日~5日で落ち着く。 しかし、症状が悪くなれば入院する必要があるため、注意する必要がある。

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院様HPより)

 

 

 

 

 

14 無尿の定義となる1日の尿量はどれか。

1.0mL
2.100mL未満
3.400mL未満
4.700mL未満

解答2

解説

尿とは?

健常者の尿は、1日に8回程度で、1,000~1,500mL程度である。尿は、生体内代謝産物を排泄するため、腎臓で血液が濾過され作られる。健康人では体重1kgあたり、1時間に約1mLの尿が排泄されるとされている。膀胱は通常100~150mLで最初の尿意(初発尿意)を感じる。

希尿とは、日中に3回以下である。尿量は関係ない。
頻尿とは、日中に8回以上である。尿量は関係ない。
無尿とは、100 mL/日以下である。
乏尿とは、400 mL/日以下である。
多尿とは、3,000 mL/日以上である。
正常な1日の尿量とは、1.000~1500mL/日である。

1.4.× 0mL/700mL未満という基準はない
2.〇 正しい。100mL未満の場合を無尿という。
3.× 400mL未満の場合を乏尿という。

 

 

 

 

 

15 飛沫感染するのはどれか。

1.疥癬
2.コレラ
3.A型肝炎
4.インフルエンザ

解答4

解説

1.× 疥癬とは、接触感染で、疥癬虫(ヒゼンダニ)による皮膚の角層内感染症で、強い痒み、丘疹が特徴である。(※読み:かいせん)
2.× コレラとは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することにより感染する疾患(経口感染)である。潜伏期間は、12時間〜5日で、小腸で増殖し、腸毒素(コレラ毒素)を放出する。症状は、下痢・嘔吐、それらに伴う脱水症状を生じる。
3.× A型肝炎は、A型肝炎ウイルスが原因で、水や食べ物を介する経口感染により発症する。A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。
4.〇 正しい。インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で、主に飛沫感染、接触感染によって発症する。インフルエンザとは、A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

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