第106回(R5)助産師国家試験 解説【午前51~55】

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次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、経産婦、会社員)は3,000gの男児を正常分娩で出産した。会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)の4人暮らし。助産師は保健センターから新生児訪問事業の委託を受けて、生後21日に訪問した。

51 助産師が産後の生活について話を聞くと、Aさんは「出産してからBがまとわりついてきます。赤ちゃん返りだと分かっているのですが言うことを聞かないときもあって困ってしまいます」と話した。助産師はAさんの話を傾聴して思いを受け止め、育児を頑張っていることをねぎらった。
 その後のAさんへの助言で最も適切なのはどれか。

1.「Bちゃんにどうしてほしいか聞いてみましょう」
2.「Bちゃんと一緒に赤ちゃんのお世話をしましょう」
3.「赤ちゃんが寝ているときにBちゃんと遊びましょう」
4.「Bちゃんが言うことを聞かないときは分かりやすい言葉で注意しましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、経産婦、会社員、3,000g男児を正常分娩)
・4人暮らし:会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)
・Aさん「出産してからBがまとわりついてきます。赤ちゃん返りだと分かっているのですが言うことを聞かないときもあって困ってしまいます」と話した。
・助産師はAさんの話を傾聴して思いを受け止め、育児を頑張っていることをねぎらった。
→防衛機制の一つである「赤ちゃん返り(退行)」の症状がみられていると考えられる。赤ちゃんを家族として受け入れながら、Bちゃん(2歳2か月、長女)の情緒的な安定が保てるように配慮することが大切になる。ちなみに、退行とは、ある程度の発達を遂げた者が、より低い発達段階に「子供がえり」して、未熟な行動をすることをいう。

1.× 「Bちゃんにどうしてほしいか聞いてみましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Bちゃん(2歳2か月、長女)が、言葉を用いて説明するには難易度が高いため。2歳2か月の言語的コミュニケーションとして、2語文程度の発話能力で、自分の気持ちをうまく表現することが難しい。
2.× 「Bちゃんと一緒に赤ちゃんのお世話をしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんの世話の対象が赤ちゃんであるため。Aさんの世話の対象がBちゃんに向くように伝える必要がある。
3.〇 正しい。「赤ちゃんが寝ているときにBちゃんと遊びましょう」と助言する。なぜなら、Aさんの世話の対象がBちゃんに向くため。新しい兄弟姉妹が家族に加わると、既存の子供たちはしばしば親からの注意が新しい赤ちゃんに移ると感じる。赤ちゃんが寝ているときにBちゃんと一緒に遊ぶことで、Aさんは、Bちゃんが「重要な家族の一員である」というメッセージを伝えることができ、彼女の赤ちゃん返りの感情を和らげることができる。
4.× 「Bちゃんが言うことを聞かないときは分かりやすい言葉で注意しましょう」と伝える必要はない。なぜなら、分かりやすい言葉で伝えたとしても、Bちゃん(2歳2か月)には、我慢や素直に行動に移すことは困難であるため。また、注意することは、Bちゃんの情緒をさらに悪化させることにつながりかねない。赤ちゃんを家族として受け入れながら、Bちゃん(2歳2か月、長女)の情緒的な安定が保てるように配慮することが大切になる。

 

 

 

 

 

次の文を読み50~52の問いに答えよ。
 Aさん(35歳、経産婦、会社員)は3,000gの男児を正常分娩で出産した。会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)の4人暮らし。助産師は保健センターから新生児訪問事業の委託を受けて、生後21日に訪問した。

52 Aさんは「夫の仕事が忙しくなって帰宅が遅く、予想よりBの世話に手がかかります。夕方は赤ちゃんの世話と夕食の支度で精一杯です。どうしたらいいですか」と尋ねた。
 助産師の提案で適切なのはどれか。

1.子育て講演会への参加を勧める。
2.養育支援訪問事業の利用を勧める。
3.ファミリーサポートセンターの利用を勧める。
4.2歳児を対象とした自治体の育児教室を紹介する。
5.夜間養護等事業〈トワイライトステイ事業〉の利用を勧める。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、経産婦、会社員、3,000g男児を正常分娩)
・4人暮らし:会社員の夫とBちゃん(2歳2か月、長女)
・Aさん「夫の仕事が忙しくなって帰宅が遅く、予想よりBの世話に手がかかります。夕方は赤ちゃんの世話と夕食の支度で精一杯です。どうしたらいいですか」。
→Aさんは家事や育児で疲労感が見られる。すべて一人で行わなくてはならない環境だと精神状態が悪化する可能性もある。家族に頼ったり、子供を預かってもらえるサービスの検討も必要である。

1.× 子育て講演会への参加を勧める優先度は低い。なぜなら、講演会はテーマが決まり、Aさんの個別な家庭状況の解決策が得られる可能性が低いため。講演会とは、あるテーマに従って大勢に向かって話をすることである。そのテーマについて詳しい話ができる著名人や先生を講演者として招き、そこに参加した聴衆に対してテーマに沿った演説を行う。
2.× 養育支援訪問事業の利用を勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は養育支援訪問事業の対象ではないため。福祉法第6条5項に「養育支援訪問事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童、若しくは保護者に監護させることが不適当であると認められる児童及びその保護者又は出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)(以下「要支援児童等」という。)に対し、その養育が適切に行われるよう、当該要支援児童等の居宅において、養育に関する相談、指導、助言その他必要な支援を行う事業をいう」と規定されている(※一部引用「児童福祉法第6条5項」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、特定妊婦とは、妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のことである。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。
3.〇 正しい。ファミリーサポートセンターの利用を勧める。Aさんは家事や育児で疲労感や悩んでいる様子が見られる。すべて一人で行わなくてはならない環境だと精神状態が悪化する可能性もある。家族に頼ったり、子供を預かってもらえるサービスの検討も必要である。子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)とは、乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の保護者を会員として、児童の預かり等の援助を受けることを希望する者と援助を行うことを希望する者との相互援助活動である。
4.× 2歳児を対象とした自治体の育児教室を紹介する優先度は低い。なぜなら、Aさんは主に家事や育児で疲労感が見られるため。Aさんは「夕方は赤ちゃんの世話と夕食の支度で精一杯」と訴えていることから、時間を割けるようなサービスが望ましい。子育て教室(育児教室)とは、はじめて育児をする親や育児に自信がない若い親を対象に、育児の方法を教える教室のことである。
5.× 夜間養護等事業〈トワイライトステイ事業〉の利用を勧める優先度は低い。なぜなら、本症例は夜間養護等事業〈トワイライトステイ事業〉の対象ではないため。夜間養護等(トワイライトステイ)事業とは、保護者が仕事その他の理由により平日の夜間又は休日に不在となることで家庭において児童を養育することが困難となった場合その他緊急の場合において、その児童を児童養護施設等において保護し、生活指導、食事の提供等を行う事業である(※引用:「在宅の子ども・子育て 家庭支援事業の概要」厚生労働省HPより)。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み53、54の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、初産婦)は他院で体外受精治療にて妊娠が成立し、本日X年11月5日に受診した。治療経過は、最終月経X年9月12日から体外受精治療のために排卵誘発薬の投与を開始しX年10月1日に採卵。体外受精で3個の胚を得て、10月6日に新鮮胚を1個移植した。

53 本日(11月5日)の妊娠週数で正しいのはどれか。

1.まだ決定できない
2.4週2日
3.6週2日
4.7週0日
5.7週5日

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、初産婦、他院で体外受精治療:妊娠が成立)
・本日X年11月5日:受診。
【治療経過】
・最終月経:X年9月12日(体外受精治療のために排卵誘発薬の投与を開始)
採卵:X年10月1日
・体外受精で3個の胚を得て、10月6日に新鮮胚を1個移植。
・本日:11月5日
→人工授精・体外受精の場合の出産予定日の計算方法を覚えておく。人工授精や体外受精では、母体からの採卵日を2週目0日と考え、266日後を出産日として計算する。

1.× 「まだ決定できない」のではく、妊娠週数を求めることができる。自然妊娠の場合は、妊娠前の最後の月経における初日を0週0日と考えて妊娠週数を計算する。他にも、頭殿長を用いて妊娠週数を求めることができる。頭殿長が13〜41mm(8週0日~11週3日)において、分娩予定日(妊娠週数)決定を予想できる。これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭殿長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と頭殿長からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、頭殿長からの予定日を採用する。妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。
2~3.5.× 4週2日/6週2日/7週5日は妊娠週数ではない
4.〇 正しい。7週0日が妊娠週数である。人工授精や体外受精では、母体からの採卵日を2週目0日と考え、266日後を出産日として計算する。本症例の場合、胚移植日(採卵:10月1日)が2週目0日となり、本日:11月5日であるため、7週0日が妊娠週数である。1か月4週で…と考えると、計算ミスを起こしやすいため、「7日=1週間」と落ち着いて数えていこう。

 

 

 

 

 

次の文を読み53、54の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、初産婦)は他院で体外受精治療にて妊娠が成立し、本日X年11月5日に受診した。治療経過は、最終月経X年9月12日から体外受精治療のために排卵誘発薬の投与を開始しX年10月1日に採卵。体外受精で3個の胚を得て、10月6日に新鮮胚を1個移植した。

54 Aさんの妊娠経過は順調である。超音波検査写真を下図に示す。
 この時期の児の発育を評価するための測定項目で正しいのはどれか。

1.頭殿長
2.児頭大横径
3.胎児の腹囲
4.胎児推定体重
5.胎児大腿骨長

解答

解説
1.〇 正しい。頭殿長が、この時期の児の発育を評価するための測定項目である。なぜなら、胎児の頭殿長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するため。本症例の場合、9~10週頃であろう。頭殿長と妊娠週数を比較し、発育を評価する。
2.× 児頭大横径は、妊娠中期以降、胎児発育不全を判断するため評価する。また、妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長<CRL>の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。
3~5.× 胎児の腹囲/胎児推定体重/胎児大腿骨長は、妊娠中期以降、胎児発育不全を判断するため評価する。胎児発育不全とは、子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

 

次の文を読み55の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、1回経産婦)は妊娠35週4日、2時間ほど持続する下腹部痛が治まらないため、救急外来を受診した。来院時、Aさんは子宮全体に痛みを訴えており苦悶様の表情で、子宮は硬い。血性の帯下がみられている。Aさんの意識は清明で、バイタルサインは、体温37.3℃、呼吸数16/分、脈拍72/分、整、血圧158/96mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%(room air)である。胎児心拍数陣痛図を下図に示す。

55 診断のために最初に行われる検査はどれか。

1.尿検査
2.血液検査
3.超音波検査
4.胸部エックス線検査

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、1回経産婦、救急外来)
・妊娠35週4日:2時間ほど下腹部痛が持続。
・来院時:子宮全体に痛み苦悶様の表情子宮は硬い
血性の帯下がみられている。
・意識清明、バイタルサイン:体温37.3℃、呼吸数16/分、脈拍72/分、整、血圧158/96mmHg、SpO2:95%。
・胎児心拍数陣痛図:心拍数基線正常、基線細変動正常、軽度変動一過性徐脈
→本症例は、①常位胎盤早期剝離や②子宮破裂が疑われる。①常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。②子宮破裂とは、子宮が自然に裂けて開くことであり、強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。

1.× 尿検査の優先度は低い。尿検査とは、尿中の成分を検査することにより腎・尿路系、もしくは腎前性疾患を推測する検査である。たとえば、尿中の蛋白は腎臓の病気、潜血は結石や腎炎等、糖は糖尿病関連、ウロビリノーゲンは肝臓の病気の可能性が示唆される。
2.× 血液検査の優先度は低い。なぜなら、妊娠週数に応じて妊婦健診の際におこなわれているはずであるため。妊娠中の血液検査の目的は、妊娠の経過が正常であることの確認と、異常の早期発見や予防である。感染症の有無や血糖など測定する。
3.〇 正しい。超音波検査が、診断のために最初に行われる検査である。なぜなら、胎盤や子宮の状態を評価することができるため。本症例は、子宮全体に痛み、苦悶様の表情、子宮は硬く、血性の帯下がみられていることからも①常位胎盤早期剝離や②子宮破裂が疑われる。
4.× 胸部エックス線検査の優先度は低い。胸部エックス線検査とは、胸部レントゲン検査とも呼ばれ、胸部全体にX線(放射線の一種)を照射して、肺や心臓などの異常を確認する検査である。胸部に起こるさまざまな異常を見つけることができ、例えば、肺結核、肺炎・気管支炎などの肺の炎症、肺気腫・気胸・胸膜炎・肺線維症・心臓病・心肥大・胸部大動脈瘤、肺がんなどである。

 

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