第106回(R5)助産師国家試験 解説【午前41~45】

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次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、未婚)は初経が11歳で、半年前からの無月経を主訴に婦人科医院を受診した。妊娠の可能性はない。ホルモン検査は、プロゲスチン投与で消退出血なし、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あり、卵胞刺激ホルモン〈FSH〉正常値、黄体化ホルモン〈LH〉低値、ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉負荷試験に反応ありという結果であった。

41 Aさんの無月経の原因で考えられるのはどれか。

1.処女膜閉鎖
2.子宮性無月経
3.下垂体性無月経
4.視床下部性無月経
5.早発卵巣機能不全

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、未婚、初経11歳)
・半年前:無月経(妊娠の可能性なし)
・ホルモン検査:プロゲスチン投与で消退出血なし、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あり、FSH:正常値、LH:低値、GnRH負荷試験:反応あり
→本症例は、視床下部性無月経が疑える。卵胞刺激ホルモン〈FSH〉は、脳下垂体前葉から分泌される。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを性腺刺激ホルモンと呼ぶ。黄体化ホルモン〈LH〉は、プロゲステロンの分泌を促進する。GnRH負荷試験とは、視床下部ホルモンのGnRH(LH─RH)を投与することにより、視床下部、下垂体、性腺の異常の部位と程度を下垂体から分泌されるLHとFSHを経時的に測定することにより、評価する方法である。

1.× 処女膜閉鎖は考えにくい。なぜなら、本症例は、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あったため。性器の解剖学的異常(例:処女膜閉鎖症,腟中隔,腟,子宮頸部,または子宮の形成不全)を検出するためには内診を行う。腟留血症により処女膜が隆起することがあり、性器の流出路閉塞を示唆する。内診の所見はエストロゲンが欠乏しているかどうか判定するためにも有用である。思春期以降の女性で、薄く蒼白で、しわがなく、pH>6.0の腟粘膜はエストロゲン欠乏を示す。牽糸性(糸を引き,伸びる性質)の頸管粘液は通常、十分なエストロゲンを示唆する。医師は子宮、卵巣、および陰核の増大がないか確認すべきである。
2.× 子宮性無月経は考えにくい。なぜなら、本症例は、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あったため。子宮性無月経とは、子宮自体の異常(例:子宮内膜の非反応性)により月経が発生しない状態を指す。
3.× 下垂体性無月経は考えにくい。なぜなら、本症例は、①卵胞刺激ホルモン〈FSH〉は正常値で、②ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉負荷試験に反応があるため。脳下垂体から、①成長ホルモン、②甲状腺刺激ホルモン、③プロラクチン、④副腎皮質刺激ホルモン、⑤黄体形成ホルモン、⑥卵胞刺激ホルモン、⑦バソプレシン、⑧オキシトシンが分泌される。
4.〇 正しい。視床下部性無月経が無月経の原因で考えられる。視床下部性無月経とは、ダイエット、運動、ストレスで無月経になったものをさす。視床下部は、今、妊娠すると危ないと感じれば生殖活動を停止させるため、低栄養状態や過度のストレスで生理が止まる。ちなみに、3ヶ月間生理が来ない状態を無月経という。女性全体の数%、無月経の人の中では35%が視床下部性無月経と考えられている。
5.× 早発卵巣機能不全は考えにくい。早発卵巣不全とは、早発閉経ともいい、40歳未満で卵巣機能が低下して無月経(月経が3ヶ月以上無い状態)となった状態である。2つのタイプがあり、①永久に月経が停止するタイプ(早発閉経)と、②卵巣に卵胞が少数存在するため非常に低い頻度ながらも卵胞発育や排卵が起こるタイプがある。ただし、両者の鑑別は困難である。早発卵巣機能不全の診断基準として、欧州生殖医学会(ESHRE)では、無月経が4ヶ月以上続き、4週間以上間隔をあけて2回以上の検体で卵胞刺激ホルモン〈FSH〉が閉経後高値(>25 U/l)を示す場合をいう。

月経の種類

無月経(月経がない状態)には①原発性、②続発性、③その他のものがある。

①原発性無月経:正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。

②続発性無月経:規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし、以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。

③その他:解剖学的原因(妊娠を含む)、慢性無排卵、卵巣不全など

(※参考:「無月経」MSDマニュアルプロフェッショナル版様より)

 

 

 

 

 

次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、未婚)は初経が11歳で、半年前からの無月経を主訴に婦人科医院を受診した。妊娠の可能性はない。ホルモン検査は、プロゲスチン投与で消退出血なし、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あり、卵胞刺激ホルモン〈FSH〉正常値、黄体化ホルモン〈LH〉低値、ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉負荷試験に反応ありという結果であった。

42 その後Aさんの月経周期は順調になり、婦人科を受診せずに数年が経過した。しかし月経痛が徐々に強くなり市販の鎮痛薬も効かなくなってきたため、29歳のときに婦人科医院を受診した。機能性月経困難症と診断され、医師から低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬〈低用量ピル〉の内服を勧められた。Aさんは助産師に「生理痛がつらいので低用量ピルを飲んでみたいのですが、副作用や注意点を教えてもらえますか」と相談した。
 Aさんへの助産師の説明で適切なのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:解なし)

1.「骨密度が下がる可能性があります」
2.「体重が増加する可能性があります」
3.「静脈血栓塞栓症は服用開始後早期に多く認めます」
4.「内服中の静脈血栓塞栓症のリスクは妊娠中より高いです」
5.「内服中に手術が必要となる場合は、手術の4週間前に内服を中止します」

解答 解なし
理由:選択肢の表現が不十分で正解を得ることが困難なため。

解説

本症例のポイント

・月経周期:順調。
・数年後:月経痛が徐々に強くなった。
・29歳:婦人科医院を受診(診断:機能性月経困難症)。
・医師から低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬〈低用量ピル〉の内服を勧められた。
・Aさんは助産師に「生理痛がつらいので低用量ピルを飲んでみたいのですが、副作用や注意点を教えてもらえますか」と。
→機能性月経困難症とは、器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。機能性月経困難症の治療として、プロスタグランジンの合成を抑制する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めが月経痛に有効である。痛み止めだけでは効果がない場合は、ホルモン剤治療(低用量ピルや黄体ホルモン剤)などの治療を行う。

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)の副作用

軽い頭痛、軽い嘔気、少量の不正性器出血が起こることがありますが、飲み続けると徐々に改善します。重要な副作用として、血栓症(静脈血栓症・動脈血栓症)があります。血栓症は頻度こそ低いものの、致死的となる場合があるので、厳重な注意が必要です。海外の調査によると、服用していない女性の静脈血栓症発症のリスクは年間10,000人あたり1-5人であるのに対し、服用女性では3-9人と報告されています。喫煙、高年齢(40歳以上)、肥満、長時間の航空機搭乗(いわゆるエコノミークラス症候群)、などは血栓症の発症リスクを高めるため、注意が必要です。血栓症は以下の症状(ACHES)と関連することが報告されていますので、服用中に症状を認める場合には、すぐに医療機関を受診して下さい。
A:abdominal pain (激しい腹痛)
C:chest pain(激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み)
H:headache(激しい頭痛)
E:eye / speech problems(見えにくい、視野が狭い、舌のもつれ、失神、意識障害)
S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み、むくみ、握ると痛い、赤くなっている)

(※引用:「IUS(ミレーナ)とLEP製剤(ルナベル・ヤーズ)について」大橋病院産婦人科様HPより)

1.× 骨密度が下がる可能性を予防できる。40歳以上でピルを服用すると大腿骨頚部骨折の発生を25%低下させるという報告がある。閉経して、このエストロゲンの分泌量が減ると、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨が脆くなってしまう。
2.△ 正しい。「体重が増加する可能性があります」と説明する。なぜなら、低用量ピルを飲むことで、月経困難症による食欲不振が改善されたり、副作用による食欲増進、むくみ、体重増加が起こったりすると、痩せにくいと感じることがあるため。
3.△ 正しい。「静脈血栓塞栓症は服用開始後早期に多く認めます」と説明する。ピルを飲み始めて最初の1年は特に血栓ができやすいという報告がある(※参考:「低用量ピル添付文書」より)。ただし、「服用開始後早期」という表現があいまいで、具体的な服用期間の記載が欲しい。
4.× 内服中の静脈血栓塞栓症のリスクは、妊娠中より「低い」。ピルを飲んでいる方では、飲んでいない方と比較して、3~4倍、血栓ができる可能性が高くなると言われている。一方、妊娠により、静脈血栓塞栓症の発症は、5~6倍になると言われている。
5.〇 正しい。「内服中に手術が必要となる場合は、手術の4週間前に内服を中止します」と説明する。手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者[血液凝固能が亢進され、心血管系の副作用の危険性が高くなることがある(※引用:「ヤーズフレックス配合錠」より)。

更年期とは?

更年期とは、閉経の5年前から5年後までの約10年、つまり、生殖期から非生殖期への間の移行期のことをさすことが多い。閉経の年齢は人によって異なり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいる。

更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文を読み41~43の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、未婚)は初経が11歳で、半年前からの無月経を主訴に婦人科医院を受診した。妊娠の可能性はない。ホルモン検査は、プロゲスチン投与で消退出血なし、エストロゲンとプロゲスチンを投与した後に消退出血あり、卵胞刺激ホルモン〈FSH〉正常値、黄体化ホルモン〈LH〉低値、ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉負荷試験に反応ありという結果であった。

43 Aさんは、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬〈低用量ピル〉の内服開始前に乳がんの検査を受け、右乳癌と診断された。医師からは手術と放射線療法、術後10年間のホルモン療法が必要と説明を受けた。
 Aさんから妊孕性温存について相談を受けた助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「妊孕性温存には公的保険が適用されます」
2.「胚凍結保存は卵子凍結保存より妊娠率が高いです」
3.「医師に相談して治療開始を遅らせてもらいましょう」
4.「化学療法を受けないので妊孕性温存の必要はありません」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(乳がんの検査:右乳癌)。
・医師からは「手術と放射線療法、術後10年間のホルモン療法が必要」と。
→妊孕性温存とは、妊孕性(にんようせい:妊娠するために必要な能力)を温存(保存)することを指す。手術をはじめ、がん治療(抗がん剤や放射線治療など)によって妊孕性がダメージを受ける。女性では、未婚の女性のための妊孕性温存の方法として未受精卵子凍結(いわゆる卵子凍結)が、既婚のパートナーがいる女性のためのために受精卵凍結(いわゆる胚凍結)があり、これらはすでに「確立された治療法」として認められている。

1.× 妊孕性温存には公的保険が適用されない。つまり、保険診療の対象外=健康保険等が使えないため、全額自己負担である。ただ、確立された治療法として認められている。
2.〇 正しい。「胚凍結保存は卵子凍結保存より妊娠率が高いです」と伝える。胚凍結保存とは、体外受精や顕微授精で得られた受精卵を発育させた胚を、凍らせて保存しておくための方法で妊娠率は約25~35%といわれている。一方、卵子凍結保存とは、卵巣から採取した卵子を将来の妊娠に備えて凍結保存することで妊娠率は約4.5~12%といわれている(※参考:「卵子凍結保存」Natural ART Clinic 日本橋HPより)。
3.× 「医師に相談して治療開始を遅らせてもらいましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんと医師の考えを聞いておらず、助産師が一方的に治療方針決めているため。また、がん治療の遅延は、がんの進行・転移に直結し、生命を脅かす可能性がある。医師との詳細な相談により、慎重に検討されるべきである。
4.× 「化学療法を受けないので妊孕性温存の必要はありません」と伝える必要はない。化学療法を受けたとしても治療後は、妊娠が可能である。ちなみに、妊孕性温存とは、妊孕性(にんようせい:妊娠するために必要な能力)を温存(保存)することを指す。また、がんの化学療法とは、化学療法剤(抗がん剤、化学物質)を使ってがん細胞の増殖を抑えたり、破壊したりする事による治療法で、薬物療法とも呼ばれる。 

 

 

 

 

 

次の文を読み44~46の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、初産婦)は身長155cm、非妊時体重48kgで妊娠経過は順調であった。13時に陣痛発来し、15時に夫に付き添われて入院した。入院時、内診所見は子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は3時の方向に触れ、未破水である。陣痛間欠5~6分、陣痛発作30秒。胎児心拍数基線は145bpmであった。

44 入院時の助産診断で正しいのはどれか。

1.第2頭位である。
2.児頭最大径は骨盤峡部である。
3.Bishop〈ビショップ〉スコアは9点である。
4.Friedman〈フリードマン〉曲線の潜伏期である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、初産婦、身長155cm、非妊時体重48kg)
13時:陣痛発来、15時:入院。
入院時の内診所見:子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は3時の方向に触れ、未破水。
陣痛間欠5~6分陣痛発作30秒。胎児心拍数基線は145bpm。
→各評価の正確な読み取りと考察が必要となる問題である。異常や正常値なども正確に覚えておこう。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

1.× 「第2頭位」ではなく第1頭位である。なぜなら、本症例の子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は3時の方向に触れているため。第1頭位とは、胎児の背中が母体の左手側にあることをいう。つまり第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。一方、第2頭位とは、胎児の背中が母体の右手側にあることをいう。

(※図引用:「C.産婦人科検査法16.骨盤計測」)

2.× 児頭最大径は、「骨盤峡部」ではなく骨盤濶部である。なぜなら、Station-3であるため。ドゥリーのステーション法に基づき、左右の坐骨棘間を結んだ線上をStation±0として、それより上方に1cmきざみで−1、−2、−3…、下方に1cmきざみで+1、+2、+3…と表現する。分娩に関与する部分は分界線より下の骨産道である小骨盤で、小骨盤腔は上から①入口部(※読み:にゅうこうぶ)、②濶部(※読み:かつぶ)、③狭部、④出口部の 4 部分に分けられる。骨盤形側はこの小骨盤腔の大きさを推定するために行われる。ちなみに、一番狭いのは、名前の通り骨盤峡部である。

3.× Bishop〈ビショップ〉スコアは、「9点」ではなく6点である。なぜなら、入院時の内診所見:子宮口3cm開大(2点)、展退度60%(2点)、Station-3(0点)、子宮頸管の硬度は中(1点)、子宮口の位置は中央(1点)であるため。ちなみに、ビショップスコアとは、最も広く使用されている子宮頚管の熟化評価法である。以下の表を参考に、5項目のスコアを合計し、13点満点で評価する。通常、9点以上を「良好」、6点以下を「不良」、3点以下を「特に不良」と評価することが多い。

Friedman曲線とは?

フリードマン曲線とは、分娩第1期から分娩第2期(破水)までの分娩経過をグラフ化したものである。子宮口開大度と胎児の下降度を縦軸に、分娩開始からの時間を横軸に表されている。

4.〇 正しい。Friedman〈フリードマン〉曲線の潜伏期である。なぜなら、①陣痛初来:2時間経過、②入院時の内診所見:子宮口3cm開大、③陣痛間欠5~6分、陣痛発作30秒であるため。陣痛曲線(Friedman曲線)とは、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大までの期間)として、分娩開始からの時間を横軸に、子宮口開大度と胎児の下降度を縦軸としてグラフ化したものである。大量の正常分娩のデータから作成されており、これに照らしあわせることによって、個々の症例の分娩経過が問題ないかを判断することに役立つ。

 

 

 

 

 

次の文を読み44~46の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、初産婦)は身長155cm、非妊時体重48kgで妊娠経過は順調であった。13時に陣痛発来し、15時に夫に付き添われて入院した。入院時、内診所見は子宮口3cm開大、展退度60%、Station-3、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は中央、矢状縫合は横径に一致し、小泉門は3時の方向に触れ、未破水である。陣痛間欠5~6分、陣痛発作30秒。胎児心拍数基線は145bpmであった。

45 入院後10時間、陣痛開始から12時間経過し、陣痛間欠は4分、陣痛発作は40~50秒となった。胎児心拍数陣痛図は正常。内診所見は、子宮口6cm開大、展退度70%、Station+1、小泉門が先進し1時の方向に触れた。Aさんは陣痛間欠時、うとうとする様子が見られた。
 このときのアセスメントで正しいのはどれか。

1.正常経過
2.微弱陣痛
3.低在横定位
4.分娩第1期遷延

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、初産婦、身長155cm、非妊時体重48kg)
・入院後10時間(陣痛開始から12時間経過
・陣痛間欠:4分、陣痛発作:40~50秒。
・胎児心拍数陣痛図:正常。
・内診所見:子宮口6cm開大、展退度70%、Station+1小泉門が先進し1時の方向に触れた
・陣痛間欠時:うとうとする様子が見られた。
→各評価の正確な読み取りと考察が必要となる問題である。異常や正常値なども正確に覚えておこう。

1.〇 正しい。正常経過がこのときのアセスメントである。なぜなら、本症例は、初産婦で分娩第一期であるため。Aさんは陣痛開始から12時間で子宮口が6cm開大し、子宮口の展退度は70%、Stationが+1に進行しており、分娩が順調に進行していることを示している。陣痛間欠が4分、陣痛発作が40~50秒となっており、胎児心拍数は正常範囲内である。
2.× 微弱陣痛は考えにくい。なぜなら、陣痛間欠は4分であるため。微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。
3.× 低在横定位は考えにくい。なぜなら、内診所見にて、展退度70%、Station+1小泉門が先進し1時の方向に触れることができているため。低在横定位とは、異常分娩の1つであり、第2回旋が起こらなかったため骨盤底に達しても矢状縫合が横径に一致した状態である。児頭が横向きのまま下降するため、縦長の骨盤峡部で引っかかってしまい分娩が停止した状態となる。
4.× 分娩第1期遷延は考えにくい。なぜなら、本症例は、初産婦で分娩第一期は、10~12時間かかるため。遷延分娩の定義は、「分娩開始後すなわち陣痛周期が10分以内になった時点から、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らないもの」をいう。一般的に、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)の平均所要時間:初産婦10~12時間、経産婦4~6時間であり、初産婦の潜伏期遷延は20時間未満、活動期開大遷延は12時間未満である。

分娩期

【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。

・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。

・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。

・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。

 

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