第106回(R5)助産師国家試験 解説【午後26~30】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

26 特別養子縁組制度について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.親権は実親が持つ。
2.平成28年から日本で導入されている。
3.養親子の戸籍に養子関係の記載をする。
4.保護を必要とする子どものための制度である。
5.特別養子縁組の成立には家庭裁判所の調査に基づく審判が必要である。

解答4・5

解説

特別養子縁組制度とは?

特別養子縁組とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度である。特別養子縁組は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立する。(※参考:「特別養子縁組制度について」厚生労働省HPより)

1.× 親権は、「実親」ではなく養親が持つ。実親とは、生みの親のことをさす。ただし、養親になる条件として、配偶者のいる方(夫婦)でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになる。また、養親となる方は25歳以上でなければならない。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親となることができる。
2.× 「平成28年」ではなく昭和62年から日本で導入されている。ちなみに、養子制度(普通養子制度)は、明治29年の民法制定時から存在している。
3.× 養親子の戸籍に養子関係の記載をする必要はない。特別養子縁組の場合、養親と養子の関係は養子としてではなく、実子として戸籍に記載する。したがって、例えば、続柄を「長男(長女)」などと記載する。
4.〇 正しい。保護を必要とする子どものための制度である。家庭に恵まれない子に温かい家庭を提供して、その健全な養育を図ることを目的として創設された、専ら子どもの利益を図るための制度である(※参考:「特別養子制度について」法務省HPより)。
5.〇 正しい。特別養子縁組の成立には家庭裁判所の調査に基づく審判が必要である。特別養子縁組の成立には、要件を満たした上で、父母による養子となるお子さんの監護が著しく困難又は不適当であること等の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると家庭裁判所に認められる必要がある。ちなみに、成立の要件として、①実親の同意、②養親の年齢、③養子の年齢、④半年間の監護である。

 

 

 

 

 

27 Biophysical Profile Score〈BPS〉の評価項目で正常と判定できるのはどれか。2つ選べ。

1.3cmの羊水ポケットが確認できる。
2.四肢の動きが30分間に3回確認できる。
3.体幹と四肢が30分間、伸展位で屈曲しない。
4.10秒続く呼吸様運動が30分間に1回確認できる。
5.ノンストレステスト〈NST〉で一過性頻脈が40分間に1回確認できる。

解答1・2

解説

胎児のwell-beingの評価

胎児のwell-beingの評価には、主にバイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)が用いられることが多い。バイオフィジカルプロファイルスコアリング(BPS:biophysical profile scoring:生物物理的プロフィール得点)とは、超音波検査とNST(分娩監視装置による胎児心拍の観察)を用いて胎児のwell-beingを評価する方法である。胎児の各状態をチェックして点数評価し合計点で胎児の状態を診断する。

①胎児の呼吸運動:【正常な状態(2点)30分間に30秒以上続く運動が1回以上】【異常な状態(0点)無いとき】

②胎動:【正常な状態(2点)30分間に身体の大きな動きが3回以上】【異常な状態(0点)2回以下】

③筋緊張:【正常な状態(2点)30分間に手足の動きが1回以上】【異常な状態(0点)認めない】

④羊水量:【正常な状態(2点)直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上】【異常な状態(0点)2cm以下】

⑤non-stress test:【正常な状態(2点)20~40分間中に15bpm以上の一過性品脈が2回以上】【異常な状態(0点)2回未満】

1.〇 正しい。3cmの羊水ポケットが確認できる。羊水量の正常な状態(2点)は、直径2cm以上の羊水ポケットが1ヶ所以上である。
2.〇 正しい。四肢の動きが30分間に3回確認できる。胎動の正常な状態(2点)は、30分間に身体の大きな動きが3回以上である。
3.× 体幹と四肢が30分間、伸展位で屈曲しないのは、異常(0点)と判断する。筋緊張の正常な状態(2点)は、30分間に手足の動きが1回以上である。
4.× 10秒続く呼吸様運動が30分間に1回確認できるのは、異常(0点)と判断する。胎児の呼吸運動の正常な状態(2点)は、30分間に30秒以上続く運動が1回以上である。
5.× ノンストレステスト〈NST〉で一過性頻脈が40分間に1回確認できるのは、異常(0点)と判断する。non-stress testの正常な状態(2点)は、20~40分間中に15bpm以上の一過性頻脈が2回以上である。

 

 

 

 

 

28 硬膜外麻酔を用いた無痛分娩で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.血圧の高い産婦には禁忌である。
2.分娩第2期の所要時間が延長する。
3.出生児のApgar〈アプガー〉スコアが低くなる。
4.麻酔薬の投与開始後30分間は頻回に血圧を測定する。
5.下肢が動かない時は血管内に誤って注入した可能性がある。

解答2・4

解説

無痛分娩とは?

無痛分娩とは、麻酔を用いて痛みを緩和しながら分娩を行うことである。お産の痛みについて悩みや不安がある症例に対し、無痛分娩の検討を促す。硬膜外麻酔は他の産痛緩和法よりも産痛緩和効果は高い。硬膜外麻酔とは、局所麻酔の一つ。 硬膜外腔に局所麻酔薬やオピオイドを投与することにより、鎮痛を得るものである。しかし、分娩第 2期遷延、オキシトシン使用頻度の増加、吸引鉗子分娩の増加、胎児機能不全による帝王切開分娩のリスク等を高める可能性がある。したがって、硬膜外麻酔のメリットとデメリットについて、産婦が理解したうえで、産婦が選択できるようにする。

1.× 血圧の高い産婦は「禁忌ではない」。感染徴候、出血傾向、極度の脱水は硬膜外無痛分娩の禁忌である(※参考:「硬膜外麻酔分娩(無痛分娩)のマニュアル(麻酔担当医師、助産師用)」)。
2.〇 正しい。分娩第2期の所要時間が延長する。なぜなら、硬膜外麻酔により、下半身の感覚が麻痺し、産婦の陣痛の押し出す力を減らすため。一般的に、硬膜外無痛分娩を行うと分娩第一期の長さは変わらないが、分娩第二期は多少長くなると報告されている。しかし、赤ちゃんへの悪影響はない。
3.× 出生児のApgar〈アプガー〉スコアが低くなるとはいえない。なぜなら、硬膜外麻酔により、赤ちゃんへの悪影響はないため。アプガースコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであるため。①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。
4.〇 正しい。麻酔薬の投与開始後30分間は頻回に血圧を測定する。なぜなら、硬膜外麻酔による副作用で血圧低下が起こるため。硬膜外麻酔によって、交感神経が抑制されることで、血管拡張と静脈還流量の減少が生じ、血圧低下する。体温、心拍、血圧、呼吸、SPO2 の測定と
記録を行う。血圧のインターバルを 2.5 分に設定する。
5.× 下肢が動かない時は「血管内」ではなくくも膜下腔に誤って注入した可能性がある。ほかにも、神経損傷や硬膜外血種の形成、それに伴う脊髄圧迫による麻痺の可能性も考えられる。

(※図引用:「アプガースコア」ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

29 第1前方後頭位の仰臥位分娩介助で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.排臨になった時点で肛門保護を会陰保護に切り替える。
2.小泉門が恥骨弓下を滑脱するまで児頭を屈位に保つ。
3.児頭娩出後は児の顔が母体の左大腿側に向くように誘導する。
4.前在肩甲娩出時は児の側頭部を会陰側に押し下げる。
5.後在肩甲娩出後に児の体幹を両手で把持し骨盤軸に沿って娩出させる。

解答4・5

解説

第1頭位とは?

第1頭位とは、胎児の背中が母体の左手側にあることをいう。つまり第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。
第2頭位とは、胎児の背中が母体の右手側にあることをいう。

不正軸進入とは、胎児の頭が背骨に対して左右どちらかへ傾いた状態で骨盤の中に入り込んでしまい、恥骨や仙骨が邪魔になって分娩が停止してしまう状態である。

1.× 「排臨」ではなく発露になった時点で肛門保護を会陰保護に切り替える。なぜなら、児頭または肩甲部が陰門を通過する際には、会陰部が強く伸展されて会陰裂傷をつくりやすいため。ちなみに、排臨とは、分娩第2期において陣痛発作時に児頭は大きく下降して見えるようになるが、陣痛間欠期に児頭は腟内に後退して見えなくなることを繰り返す状態である。一方、発露とは、陣痛が増強して胎児がさらに下降して児頭は陣痛間欠期でも後退しなくなる状態である。会陰保護(仰臥位会陰保護法)は、会陰保護する手と肛門部の間にできる窪みを埋めて、保護する手の圧迫が会陰から肛門部にかけて均等にかかるようにするものである。目的として、①児頭や児の肩甲が陰門を通過する際に、会陰や軟産道の裂傷を予防すること、②急速に胎児が娩出するのを防ぐことがあげられる。繰り返しになるが、開始時期は、経産婦:排臨(陣痛発作時に胎児先進部が下降して陰裂の間に見え、陣痛間欠時には後退して見えなくなる状態)であり、初産婦:発露(胎児先進部が陰裂間に絶えず見え、陣痛間欠時にも後退しない状態)である。
2.× 「小泉門」ではなく後頭結節が恥骨弓下を滑脱するまで児頭を屈位に保つ。なぜなら、児頭が最小周囲で骨盤腔を通過できるようにするため。左右の側頭部を交互に通過させるようにすることもある。左手は、陰唇から見えている児頭に手指をそろえて軽くあてる。自然の回旋を助け、示指と中指で外側頭隆起を触知するまで、屈位を保つように軽く児頭を押し下げる。
3.× 児頭娩出後は児の顔が母体の「左大腿側」ではなく右大腿側に向くように誘導する。なぜなら、第1頭位は、胎児の背中が母体の左手側にあることをいうため。したがって、第1頭位の場合、入口部における小泉門は母体の左方にある。
4.〇 正しい。前在肩甲娩出時は児の側頭部を会陰側に押し下げることは、第1前方後頭位の仰臥位分娩介助である。第4回旋の介助段階であり、児の前在側頭部から頸部あたりを介助しながら、児の頸部・肩甲に大きな負担をかけないように自然の娩出力を活かし、児の屈位を保ちながら児の前面内側を母体の後下方に軽く押し下げ、恥骨弓下から前在肩甲を前上腕1/2まで娩出させる。右手の会陰の保護位置を確認し、左手の手掌を児の後在側頭部から頸部にあて、骨盤誘導線方向(母体の前方向)に上げ、後在肩甲をゆっくりと娩出させる。
5.〇 正しい。後在肩甲娩出後に児の体幹を両手で把持し骨盤軸に沿って娩出させることは、第1前方後頭位の仰臥位分娩介助である。左手で児の体幹を固定しながら、右手の会陰保護綿を捨てる。空いた右手の示指と母指とで「児の上腕」を把持し、左手も同様に「児の上腕」を把持する。ほかの3指を児の背中にあてて、体幹を支えながら骨盤誘導線に沿ってゆっくりと娩出させる。つまり、後在肩甲娩出後に児の体幹を両手で把持し骨盤軸に沿って娩出させている。

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

 

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

 

30 経腟分娩後に正常に経過している産褥6週の褥婦の状態で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.外子宮口は閉鎖している。
2.血液凝固能は亢進している。
3.子宮の重さは約300gである。
4.循環血液量は非妊時より多い。
5.腎血流量は非妊時の状態に回復している。

解答1・5

解説

産褥とは?

産褥とは、分娩終了直後から、妊娠分娩によって生じた母体の解剖学的および機能的変化が妊娠前の状態に復帰するまでの期間をいう。産褥の期間は通常6~8週で、この間に復古現象が進行する。通常6~8週にて、おおむね非妊時と同様の状態へと回復する。

1.〇 正しい。外子宮口は閉鎖している。外子宮口は2〜3週間後に復元するが横裂状となる。ちなみに、子宮の入り口から腟までの部分を子宮頸管といい、腟側を外子宮口、赤ちゃん側を内子宮口という。
2.× 血液凝固能は亢進している。「妊娠によって惹起された血液所見の変化は分娩後2週後にほぼ正常に復帰する。分娩直前にみられた赤血球や白血球の増加は産褥1週後には正常に復する。凝固・線溶系においては、血小板数は胎盤剝離後ただちに低下するが数日以内に増加する。凝固因子Ⅱ、Ⅶ、Ⅹ因子は陣痛発来とともに低下し、産褥3日以降には非妊娠時の正常レベルまで下がる。フィブリノーゲンは、産褥1週間維持されるがその後低下し10日目には正常のレベルに下がる。線溶系のプラスミノーゲン活性は産褥3日後には非妊娠時のレベルにもどる(※引用:「分娩の生理・産褥の生理」杏林舎様HPより)」。
3.× 産褥6週の子宮の重さは、「約300g」ではなく60~70gである。ちなみに、子宮の重さが約300gになるのは、出産2週間ごろである。妊娠末期は1000gである。
4.× 循環血液量は非妊時「より多い」のではなく変わらない。妊娠によって惹起された血液所見の変化は分娩後 2 週後にほぼ正常に復帰する。
5.〇 正しい。腎血流量は非妊時の状態に回復している。「妊娠中に増加した腎血漿流量や糸球体濾過率は産褥6週までに非妊娠時の状態に戻る。また、産褥早期にはANPが増加することもあり、分娩後は生理的利尿期があり尿量は増加する。一方、分娩後に一時的な尿閉をみることがあるが、これは、分娩時の膀胱、尿道、神経に対する過度の圧迫が関係している」(※引用:「分娩の生理・産褥の生理」杏林舎様HPより)」。

子宮復古の状態

・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)