第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午後81~85】

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81 食事摂取基準に耐容上限量が示されているビタミンはどれか。2つ選べ。

1.ビタミンA
2.ビタミンB1
3.ビタミンB2
4.ビタミンC
5.ビタミンD

解答1/5

解説

耐用上限量とは?

耐容上限量とは、栄養素を摂取するための指標の1つで、「健康障害をもたらすリスクがない」とみなされる習慣的な摂取量の上限を与える量と定義される。この耐容上限量を超えて摂取すると、過剰摂取によって生じる潜在的な健康障害のリスクが高まると考えられる。

1.〇 正しい。ビタミンAは、食事摂取基準に耐容上限量が示されている。なぜなら、ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、体内に蓄積されるため。脂溶性ビタミンは、尿中に排泄されず体内に蓄積されるため、過剰に摂取すると組織(特に肝臓など)に影響を与え過剰症が生じやすい。過剰摂取により脳圧亢進や消化器症状などの症状(頭痛、筋肉痛など)を引き起こす。ちなみに、成人で2700μgRAE/日が耐容上限量である。また、催奇性(さいきせい:ある物質が生物の発生段階において奇形を生じさせる性質や作用のこと)があることが確認されており、妊婦や、妊娠を希望する女性では、摂取量に特に注意が必要である。
2~4.× ビタミンB1/ビタミンB2/ビタミンCは、食事摂取基準に耐容上限量が示されていない。なぜなら、水溶性ビタミンであるため。過剰摂取した場合は尿中に排泄される。
5.〇 正しい。ビタミンDは、食事摂取基準に耐容上限量が示されている。なぜなら、ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、体内に蓄積されるため。過剰摂取により高カルシウム血症、腎不全などさまざまな症状を引き起こす。ちなみに、成人の耐用上限量が100㎍/日と設定されている。ビタミンDとは、カルシウムとリンの吸収を促進する働きがある。ビタミンDの欠乏によりくる病をきたす。

脂溶性ビタミンとは?

ビタミンは、①脂溶性ビタミンと②水溶性ビタミンに分けられる。大部分のビタミンは体内で合成されず、食事などから摂取する必要があるため、どちらも欠乏症にはなり得る。
①脂溶性ビタミン:尿中に排池されず体内に蓄積されるため、過剰に摂取すると組織(特に肝臓など)に影響を与え過剰症が生じやすい。脂溶性ビタミンは「DAKE(だけ)」と覚えておく。

②水溶性ビタミン:水に溶けるため過剰症をきたしにくい。水溶性ビタミンとは、水に溶けやすく、油脂には溶けにくい性質のビタミンである。ビタミンB群とビタミンCが該当する。

 

 

 

 

 

82 水腎症の原因で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.前立腺癌
2.陰囊水腫
3.ループス腎炎
4.神経因性膀胱
5.腎アミロイドーシス

解答1/4

解説

水腎症とは?

水腎症とは、尿の体外への排泄が何らかの病態で妨げられた際に、排泄障害を起こした部位から腎臓までの間に尿が貯留し内圧が上昇、腎孟や尿管の拡張を生じる疾患である。尿の流れが一気に悪くなるため、痛みだけでなく、吐き気や高熱などを伴うことある。原因は、炎症や尿管内の腫瘍・結石により尿管の内腔が狭くなること、尿管が外からの病気(腫瘍など)により押しつぶされること、尿管自体が狭いこと、尿の逆流などがあげられる。

1.〇 正しい。前立腺癌は、水腎症の原因となる。なぜなら、前立腺は尿道を覆うよう位置し、前立腺癌や前立腺肥大症などで肥大すると、尿路を狭窄して尿排泄を妨げるため。ちなみに、前立腺がんとは、男性の膀胱の下にある前立腺という臓器に発生するがんのことである。早期は、多くの場合、自覚症状がないが、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることもある。進行すると、排尿の症状に加えて、血尿や、腰痛などの骨への転移による痛みがみられることがある。治療ではがんの状態や年齢などに応じて、手術や放射線治療、薬物療法を組み合わせて行う。検査の結果、治療をしないでも問題ない場合には、治療をせずに経過観察で様子を見ることもある。
2.× 陰囊水腫は、水腎症の原因とはいえない。なぜなら、排泄の尿路に関与しないため。陰嚢水腫とは、精巣の周囲に液体がたまって陰嚢がふくらんだ状態をいう。原因は、外傷や炎症により、陰嚢周囲の血管からの液体漏れやリンパ液が溜まることがあげられる。症状として、痛みは少ない陰嚢の腫れである。
3.× ループス腎炎は、水腎症の原因とはいえない。なぜなら、排泄の尿路に関与しないため。ループス腎炎とは、全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う腎障害(糸球体障害)である。腎臓の中の糸球体(尿のろ過装置)に、全身性エリテマトーデス(SLE)に起因する免疫複合体の沈着、細胞の増殖、微小血栓や壊死などが発生することによって腎機能の低下が引き起こされる。つまり、腎臓内の実質に生じる疾患であるため、尿量の低下があっても腎機能の低下によるもので、水腎症の原因とはならない。
4.〇 正しい。神経因性膀胱は、水腎症の原因となる。なぜなら、神経因性膀胱は、排尿をつかさどる神経がうまく働かなくなり、膀胱の収縮能が低下して尿排泄が妨げられるため。神経因性膀胱とは、排尿に関与する神経の障害によって膀胱機能に異常が生じた病態である。主に、間欠自己導尿を用い排尿する。間欠自己導尿とは、何らかの原因によって自分で尿を出せなくなった場合に、一定時間ごとに尿道から膀胱にカテーテルを入れて、膀胱内に溜まった尿を排泄する方法である。
5.× 腎アミロイドーシスは、水腎症の原因とはいえない。なぜなら、排泄の尿路に関与しないため。腎アミロイドーシスとは、アミロイド細線維が腎臓内に沈着し、尿検査異常と腎機能低下を呈する疾患である。蛋白尿やネフローゼ症候群の原因となり、進行すると慢性腎不全となることもある。

アミロイドーシスとは?

アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる異常蛋白質が脳、心臓、腎臓、消化管、神経など全身の様々な臓器に沈着し、機能障害を起こす病気の総称です。複数の臓器にアミロイドが沈着するものを、全身性アミロイドーシスといい、一つの限局した臓器にアミロイドが沈着するものを、限局性アミロイドーシスという。

 

 

 

 

 

83 児童相談所の業務はどれか。2つ選べ。

1.児童の一時保護
2.自立支援給付の決定
3.不登校に関する相談
4.身体障害者手帳の交付
5.放課後児童健全育成事業の実施

解答1/3

解説

1.〇 正しい。児童の一時保護は、児童相談所の業務である。「児童福祉法」の第11条に「ホ 児童の一時保護を行うこと。ヘ 児童の権利の保護の観点から、一時保護の解除後の家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保すること」と規定されている。(※引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)
2.× 自立支援給付の決定は、「児童相談所」ではなく市町村等の業務である。「障害者総合支援法」の19条「(介護給付費等の支給決定)介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定を受けなければならない。」より規定されている(※引用:「障害者総合支援法」e-GOV法令検索様HPより)。
3.〇 正しい。不登校に関する相談は、児童相談所の業務である。「児童福祉法」の第11条に「ロ 児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること」と規定されている(※引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。
4.× 身体障害者手帳の交付は、「児童相談所」ではなく都道府県知事の業務である。「身体障害者福祉法」の15条に「4 都道府県知事は、第一項の申請に基いて審査し、その障害が別表に掲げるものに該当すると認めたときは、申請者に身体障害者手帳を交付しなければならない」と規定されている(※引用:「身体障害者福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、身体障害者手帳とは、身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書にあたる。障害者手帳を提示することで、障害者雇用枠での就労が可能になるほか、医療費の負担減や税金の控除、割引等のサービスが受けることができる。
5.× 放課後児童健全育成事業の実施は、「児童相談所」ではなく市町村の業務である。「児童福祉法」の34条8に「市町村は、放課後児童健全育成事業を行うことができる」と規定されている(※引用:「「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。放課後児童健全育成事業とは、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、就労等で昼間保護者のいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後や夏休みや春休みなどの長期休業日等に小学校の余裕教室等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業である。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①市町村への援助(市町村相互間の連絡調整、情報提供、研修その他必要な援助)
②児童・その家庭の相談のうち、専門的な知識・技術を必要とする者への対応
③児童・その家庭の必要な調査、医学的、心理学的、教育学的、社会学的、精神保健上の判定
④調査、判定に基づいた児童の健康・発達に関する専門的な指導
⑤児童の一時保護
⑥児童福祉施設等への入所措置
⑦一時保護解除後の家庭・その他の環境調整,児童の状況把握・その他の措置による児童の安全確保
⑧里親に関する業務
⑨養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

84 前腕の内側中央部に創部がある患者で、創部のガーゼがずれないよう固定をする必要がある。
 伸縮性のある巻軸包帯を使う場合に適切なのはどれか。2つ選べ。

1.創の部位から巻き始める。
2.包帯を伸ばした状態で巻く。
3.前腕部の巻き方は螺旋帯とする。
4.手関節から肘関節まで巻く。
5.巻き終わりは環行帯とする。

解答3/5

解説

1.× 巻き始めるのは、「創の部位から」ではなく固定しやすい部分から行う。なぜなら、前腕の内側中央部に創がある場合、巻き始めが創部だと、往復しなければならなず、多くの包帯が必要となるため。また、汚染されている可能性も少なくない。ちなみに、巻き終わりの際は結び目などが患部の上にならないような注意する。
2.× 包帯を伸ばした状態では巻かない。なぜなら、包帯を伸ばした状態で巻くと緩みやすく固定ができないため。また、伸縮性包帯を必要以上に伸ばして巻くと、血行障害を招くおそれがある。
3.〇 正しい。前腕部の巻き方は螺旋帯とする。螺旋帯とは、包帯を1/2~1/3程度重ねながら、らせん状に巻く方法である。広範囲の保護・固定をする場合や、ガーゼの保護や副え木を固定する場合などに用いられる。創部のガーゼがずれにくい特徴を持つ。
4.× 手関節から肘関節まで巻く必要はない。なぜなら、手・肘関節まで巻くことで、関節の動きを制限し、日常生活動作に必要以上制限をきたすため。必要以上巻くことで、運動障害のほかにも血行障害を招くこともある。したがって、前腕の中央部のみ巻く。
5.〇 正しい。巻き終わりは環行帯とする。環行帯は、同じ位置に重ねて巻く方法である(※読み:かんこうたい)。巻き始めと巻き終わりはこの巻き方を用いる。

包帯法の6つの目的

被覆:皮膚の創傷、病変などを保護する。
支持(保持):局所の安静、保持により痛みや病変の進行を防ぐ。
圧迫:患部への圧迫圧にて止血、浮腫を軽減させる。
固定:局所的に体動を制限し安静とする。
牽引:組織の位置異常があった場合に正常な位置に戻す。
矯正:骨、筋組織の変形を矯正する。

 

 

 

 

 

85 壮年期の特徴はどれか。2つ選べ。

1.骨密度の増加
2.味覚の感度の向上
3.総合的判断力の向上
4.早朝覚醒による睡眠障害
5.水晶体の弾力性の低下による視機能の低下

解答3/5

解説

壮年期とは?

壮年期とは、30歳代から60歳代くらいまでを指す。社会的役割が増大し、心理的に最も充実するが、種々の身体機能は徐々に低下し始める時期である。
【加齢による精神機能の変化】
①流動性知能は、加齢とともに低下する。
②結晶性知能は、加齢でもあまり低下しない。
③機械的記憶能力は、加齢とともに低下する。
④論理的記憶能力は、加齢でもあまり低下しない。
④意欲・行動力は、加齢により低下する。

1.× 骨密度は、「増加」ではなく低下する。特に女性は、閉経以後エストロゲンの減少により骨密度の低下が著明になる。
2.× 味覚の感度は、「向上」ではなく低下する。なぜなら、加齢とともに味蕾が減少するため。
3.△ 微妙かも・・・。総合的判断力(結晶性知能)の向上は、壮年期の特徴である。なぜなら、壮年期までの経験の積み重ねとして得られるため。総合的判断力は、結晶性知能に近しい意味を持つ。ちなみに、結晶性知能とは、理解力・洞察力といった、経験や学習などから長期にわたり獲得していく知能である。60歳手前でピークを迎え、それ以降は緩やかに低下する特徴がある。また、老年期にも維持されやすい認知機能といえる。
4.× 早朝覚醒による睡眠障害は、「壮年期」ではなく老年期以降の高齢者の特徴である。老年期以降は、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などによる睡眠障害が起こりやすい。ちなみに、早朝覚醒とは、自分の望む起床時刻より2時間以上早く目覚めてしまう状態である。
5.〇 正しい。水晶体の弾力性の低下による視機能の低下は、壮年期の特徴である。水晶体の弾力性の低下は40代ぐらいから始まる。これを老視という。老視とは、近いところが見えにくくなる症状のことである。ちなみに、水晶体とは、ほぼ透明で眼の中でレンズの役割を担う器官である。

 

(図引用:「加齢による身体機能の変化」著:瀬尾 芳輝)

 

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