第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前31~35】

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31 腹部の検査の画像を下に示す。
 生体の代謝を利用した検査はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答3

解説

1.× ①は、腹部単純エックス線撮影検査である。単純エックス線検査とは、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる。骨折や肺炎、腸閉塞、マンモグラフィなどで有用である。
2.× ②は、腹部造影CT検査である。CT検査とは、腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。
3.〇 正しい。③は、PET-CT検査である。PET-CT検査とは、がん細胞が正常細胞に比べて3~8倍ブドウ糖を取り込む性質を利用した検査である。がん細胞がグルコースを取り込みやすいという代謝上の特徴を利用した検査である。
4.× ④は、腹部エコー検査である。腹部エコー検査は、超音波を当ててその反響を映像化することで臓器の内部を診断することができる。エコープローブに向かう血流は赤、プローブから離れる血流は青で表示する。

 

 

 

 

 

32 医療保険について正しいのはどれか。

1.医療給付には一部負担がある。
2.高額療養費の受給には年齢制限がある。
3.市町村国民健康保険は職域保険の1つである。
4.後期高齢者医療における公費負担は8割である。

解答1

解説

医療保険とは?

(公的)医療保険とは、私たちやその家族が、病気やケガをしたときに医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことである。日本では「国民皆保険」といって、すべての人が何らかの公的医療保険に加入している

1.〇 正しい。医療給付には一部負担がある。70歳未満の者は3割、(小学校入学前の者は2割)である。ちなみに、医療給付とは、本人(被保険者)とその家族(被扶養者)が業務外の事由で病気やケガをしたり出産や死亡した場合に受けられるサービスである。主に、診察、処置・手術、薬剤・治療材料、食事療養、入院・看護、在宅療養・看護、訪問看護である。
2.× 高額療養費の受給には年齢制限がない。高額額療養費とは、療養の給付について支払われた一部負担金の額が著しく高額であるときに支給する。これは、国民健康保険法の第五十七条の二に記載されている。
3.× 市町村国民健康保険は、「職域保険」ではなく地域保険の1つである。職域保険とは、被用者保険であり、会社員や公務員などが加入するものであり、それ以外の自営業者などが加入する市町村国民健康保険は地域保険である。ちなみに、国民健康保険とは、日本の国民健康保険法等を根拠とする、法定強制保険の医療保険である。病気やケガで医療機関や薬局を受診する場合に、「国民健康保険証」を窓口に提示することで医療費の一定の割合を国民健康保険が負担できる。国民健康保険の加入者は、職場の健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)の加入者、75歳以上等で後期高齢者医療制度の加入者および生活保護を受けている人以外の方となる。3か月を超えて日本に滞在する外国人は、原則として国民健康保険に加入する。
4.× 後期高齢者医療における公費負担は、「8割」ではなく5割である。後期高齢者医療制度の財源構成は、原則として公費5割、後期高齢者交付金(現役世代からの支援金)4割、後期高齢者である被保険者の保険料1割である。

高額療養費とは?

第五十七条の二 市町村及び組合は、療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費若しくは特別療養費として支給される額若しくは第五十六条第二項の規定により支給される差額に相当する額を控除した額(次条第一項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、世帯主又は組合員に対し、高額療養費を支給する。ただし、当該療養について療養の給付、保険外併用療養費の支給、療養費の支給、訪問看護療養費の支給若しくは特別療養費の支給又は第五十六条第二項の規定による差額の支給を受けなかつたときは、この限りでない。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。
(※一部引用:「国民健康保険法」e-GOV法令検索様HPより)

 

 

 

 

 

33 日本の平成23年度(2011年度)の国民医療費について正しいのはどれか。

1.総額は約25兆円である。
2.財源の約半分は保険料である。
3.国民所得に対する比率は5%台である。
4.人口1人当たりでは65歳以上が65歳未満の約2倍である。

解答2

解説

国民医療費の状況

平成23年度の国民医療費は38兆5,850億円、前年度の37兆4,202億円に比べ1兆1,648億円、3.1%の増加となっている。人口一人当たりの国民医療費は30万1,900円、前年度の29万2,200円に比べ3.3%増加している。国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は8.15%(前年度7.79%)、国民所得(NI)に対する比率は11.13%(同10.62%)となっている。

(※引用:厚生労働省様HP「日本の平成23年度(2011年度)の国民医療費」より)

1.× 総額は、「約25兆円」ではなくで、38兆5,850億円ある。増加傾向である。
2.〇 正しい。財源の約半分は、保険料である。財源は、公費が38.4%(14兆8,120億円)、保険料が48.6%(18兆7,518億円)、患者負担を含むその他が13.0%(5兆212億円)である。
3.× 国民所得に対する比率は、「5%台」ではなく約10%である。平成24年度の国民所得351兆1,139億円に対する国民医療費の比率は、11.17%となっている。ちなみに、国内総生産(GDP)に対する比率は7.81%である。
4.× 人口1人当たりでは65歳以上が、65歳未満の「約2倍」ではなく4倍である。平成24年度の人口1人あたりの国民医療費をみると、65歳未満は17万7,100円、65歳以上は71万7,200円となっている。したがって、65歳以上は65歳未満の約4倍である。

(※引用データ:厚生労働省様HP「日本の平成23年度(2011年度)の国民医療費」より)

 

 

 

 

 

34 地域子育て支援センターの整備を掲げたのはどれか。

1.児童福祉法
2.新エンゼルプラン
3.次世代育成支援対策推進法
4.児童虐待の防止等に関する法律

解答2

解説

地域子育て支援センターとは?

地域子育て支援センターとは、地域において子育て親子の交流を促進する子育て支援拠点の設置を推進することにより、地域の子育て支援機能の充実を図り、子育ての不安を緩和し、子どもの健やかな育ちを支援することを目的としている。

1.× 児童福祉法に基づき設置される施設は、児童福祉施設(乳児院や保育所・児童養護施設等)である。ちなみに、児童福祉法とは 児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。
2.〇 正しい。新エンゼルプランは、地域子育て支援センターの整備を掲げている。新エンゼルプランとは、保育サービス等子育て支援サービスの充実のため、地域子育て支援センターの整備について目標値が掲げられた政府の少子化対策でエンゼルプランの後継版である。平成12年度からの5年間が対象で、現在は終了している。
3.× 次世代育成支援対策推進法とは、次世代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ育成される環境整備を図るための次世代育成支援対策の基本理念を定めた法律である。都道府県・市町村の行動計画、一般事業主の行動計画を次世代育成支援対策推進センターなどで規定している。
4.× 児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)とは、児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護することを目的としている。児童に対する虐待の禁止、虐待に関する地方自治体の責務、児童の保護措置などが規定されている。

 

 

 

 

 

35 学校保健について正しいのはどれか。

1.学校医は健康相談を実施する。
2.校長は学校医を置くことができる。
3.教育委員会は小学校入学1年前の児童に対して健康診断を実施する。
4.学校医は感染症に罹患した児童生徒の出席を停止させることができる。

解答1

解説

学校保健とは?

学校保健とは、学校における保健教育及び健康管理をいう。文部科学省設置法は、文部科学省の設置と任務及びそれらに関する必要な事務などを定めた法律である。

1.〇 正しい。学校医は、健康相談を実施する。ちなみに、学校医とは、就学時や定期的な健康診断をはじめ、修学旅行やマラソン大会など学校行事にあわせた健康チェックや健康相談を行ったり、心の相談や性に関する相談にも応えたりする。また、集団健康管理の点から伝染病・感染症対策についての必要な指導と助言とを行っている。
2.× 学校医を置くのは、「校長」ではなく教育委員会である。また、「置くことができる」ではなく、特別な事情がない限り、必ず置かなければならない。教育委員会とは、教育行政における重要事項や基本方針を決定し、それに基づいて教育長が具体の事務を執行する役割を持つ。地域の学校教育、社会教育、文化、スポーツ等に関する事務を担当する機関として、全ての都道府県及び市町村等に設置している。首長から独立した行政委員会としての位置付けになっている。
3.× 教育委員会は、小学校入学「1年前」ではなく4か月前の児童に対して健康診断を実施する。市町村の教育委員会は、小学校に就学させるべき者で市町村に住所を有するものについて、学齢簿が作成された後、翌学年の初めから4か月前(手続の実施に支障がないときは3か月前)までの間に就学時の健康診断を実施する。
4.× 感染症に罹患した児童生徒の出席を停止させることができるのは、「学校医」ではなく校長である。学校医が診断したうえで校長が指示する。したがって、校長は感染症に罹患した児童生徒の出席を停止させることができる。

学校長の主な職務

学校長の主な職務は、①学校保健計画および学校安全計画の指導、助言、決定。②定期・臨時健康診断の実施。③感染症、その疑いのある児童生徒等の出席停止などである。一方、教育委員会の主な職務は、①学校その他の教育財産の管理に関すること。②教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。③学齢児童生徒の就学並びに児童生徒及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。④学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関することなどがあげられる。

 

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