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次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎と診断され、個室に入院した。入院後、末静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。
101 A君は病室内のトイレで排泄をしていた。看護師はマスク、手袋およびエプロンを着用しA君の排泄介助を行っていると、下着に便が付着していることに気付いた。看護師は、すぐにA君の下着を脱がせ流水で便を洗い流した。
下着の処理の方法で正しいのはどれか。
1.病室内のゴミ箱に捨てる。
2.病室内でエタノールに浸す。
3.病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。
4.病室外の汚物処理室の感染性廃棄物用の容器に捨てる。
解答3
解説
・A君(6歳、男児、ノロウイルスによる胃腸炎)
・A君:病室内のトイレで排泄(下着に便が付着している)。
・看護師:すぐにA君の下着を脱がせ流水で便を洗い流した。
→【ノロウイルスの予防・拡大防止】
①感染源となる二枚貝等は、中心部まで十分に加熱(85~95℃以上、90秒以上)する。
②消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。
③ノロウイルスは乾燥に強く、感染者の嘔吐物等が乾燥して空気中に飛散することで感染拡大するため完全に拭き取る。
④嘔吐物等の処理時には手袋、ガウンマスクを装着する。
1.× 病室内のゴミ箱に捨てる対応は不適切である。なぜなら、ノロウイルスは空気感染を起こすため。また、患児の私物を、看護師の判断でA君や家族に説明をしないで捨てることはできない。
2.× 病室内でエタノールに浸す対応は不適切である。なぜなら、ノロウイルスに対しては、エタノールなどのアルコールは無効であるため。エタノールとは、広く消毒液として用いられる。皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられ、粘膜への使用は禁忌である。
3.〇 正しい。病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。なぜなら、ノロウイルスに対し、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効であるため。ちなみに、次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。
4.× 病室外の汚物処理室の感染性廃棄物用の容器に捨てる対応は不適切である。なぜなら、患児の私物を、看護師の判断でA君や家族に説明をしないで捨てることはできないため。ちなみに、感染性廃棄物とは、医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体(感染性病原体)が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物を言い、廃棄物処理法施行令第1条第1項第8号に定める感染性一般廃棄物と、同法施行令第2条の4第1項第4号に定める感染性産業廃棄物を指す。
(※図引用:「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」環境省HPより)
ノロウイルスは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。
【予防・拡大防止】
①感染源となる二枚貝等は、中心部まで十分に加熱(85~95℃以上、90秒以上)する。
②消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。
③ノロウイルスは乾燥に強く、感染者の嘔吐物等が乾燥して空気中に飛散することで感染拡大するため完全に拭き取る。
④嘔吐物等の処理時には手袋、ガウンマスクを装着する。
(※参考:「ノロウイルスに関するQ&A」厚生労働省HPより)
感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。
①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。
②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。
③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。
(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)
次の文を読み100〜102の問いに答えよ。
A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎と診断され、個室に入院した。入院後、末静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。
102 入院後3日になったが両親は来院できない状況が続いている。A君は下痢が改善し体温も下がり笑顔がみられるようになった。看護師が清拭しながらA君と話していると「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」と話した。
このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
1.「お母さんが悲しむからそんなことを言ってはいけないよ」
2.「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」
3.「A君の言うとおりだとすると入院している子はみんな悪い子なのかな」
4.「お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね」
解答2
解説
・A君(6歳、男児、ノロウイルスによる胃腸炎)
・両親:同様の症状がある。
・入院後3日:両親は来院できていない。
・A君:下痢が改善、体温も下がり、笑顔がみられる。
・A君「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」と。
→本症例は、6歳(幼児後期~児童期)である。
・幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
・児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
1.× 「お母さんが悲しむからそんなことを言ってはいけないよ」と伝える必要はない。なぜなら、A君の「僕がお母さんの言うことを聞かなかったから病気になっちゃったんだ」ということを、看護師が認めたことになるため。その結果、さらにA君がひとりで抱え込み、さらに自分を責めることにつながりかねない。また、A君は幼児期後期であり、罪悪感を抱きやすい(エリクソン発達理論より)ので注意が必要である。
2.〇 正しい。「気持ちは分かるけれど病気になったのはA君のせいではないよ」と伝える。なぜなら、A君の気持ちを傾聴・受容・共感したうえで、A君の考えを修正することができているため。
3.× 「A君の言うとおりだとすると入院している子はみんな悪い子なのかな」と伝える必要はない。なぜなら、A君(6歳)がまわりのみんなのことまで理解・把握しきることができない年齢であるため。また、子どもが病気になる原因が、親の言うことを聞かなかったことという間違った理解をさらに促進させる恐れがある。
4.× 「お母さんの言うことを聞いていたら病気にならなかったかもしれないね」と伝える必要はない。なぜなら、本症例は、ノロウイルスによる胃腸炎で、きちんとした原因(ノロウイルス)があるため。また、A君は幼児期後期であり、罪悪感を抱きやすい(エリクソン発達理論より)ので注意が必要である。
乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
児童期・学童期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
前成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
成人期(結婚から子供が生まれる時期):生殖性vs自己没頭
壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(生後5か月、女児)は、出生時、腟の後方に瘻孔があり、腸内容物が排出され、低位鎖肛と診断された。他に奇形は認められず、瘻孔は腟と尿道に交通していなかったため、体重増加を待って会陰式肛門形成術を行う予定とされていた。Aちゃんは順調に体重が増加しており、定期受診のため来院した。
103 受診時の観察項目で優先度が高いのはどれか。
1.活気
2.腹部膨満
3.腹部腫瘤
4.チアノーゼ
解答2
解説
・Aちゃん(生後5か月、女児、低位鎖肛)
・出生時:腟の後方に瘻孔があり。
・腸内容物が排出された。
・他に奇形は認められず。
・瘻孔:腟と尿道に交通していなかった。
・予定:体重増加を待って会陰式肛門形成術を行う。
・Aちゃん:順調に体重が増加、定期受診のため来院。
→鎖肛とは、直腸および肛門の形成異常で、肛門が生まれつきうまく作られなかった病気である。出生5,000人に1人の頻度でみられる。低位型とは、直腸末端が肛門部皮膚のごく近くまで届いているものである。皮膚より遠く離れているものはその程度の差によって、中間位型と高位型に分けられる。
1.× 活気は、観察項目の最優先とはなりにくい。なぜなら、本症例は順調に体重が増加しているため。
2.〇 正しい。腹部膨満は、受診時の観察項目で優先度が高い。なぜなら、本症例は、瘻孔を通じた排便をしていると考えられるため。瘻孔を通じた排便では、十分な排便が難しいため、腹部膨満となる可能性が高い。本症例の問題文には、「膣の後方に痩孔がある」と記載されていることから、後方の小さな穴(瘻孔)を通して排便している状況である。
3.× 腹部腫瘤は、観察項目の最優先とはなりにくい。なぜなら、本症例は他に奇形が認めないため。ちなみに、腫瘤とは、医学的には、原因が炎症性か腫瘍性かはっきりしない、限局性の腫脹に用いる用語である。問診や診療に加えて、X線(レントゲン)写真で骨が隆起していたり、ぬけて見えたりするときに疑う。
4.× チアノーゼは、観察項目の最優先とはなりにくい。なぜなら、チアノーゼの原因として、心臓など他に奇形があげられるが、本症例は他に奇形が認めないため。ちなみに、チアノーゼとは、皮膚や粘膜が青紫色である状態をいう。 一般に、血液中の酸素濃度が低下した際に、爪床や口唇周囲に表れやすい。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(生後5か月、女児)は、出生時、腟の後方に瘻孔があり、腸内容物が排出され、低位鎖肛と診断された。他に奇形は認められず、瘻孔は腟と尿道に交通していなかったため、体重増加を待って会陰式肛門形成術を行う予定とされていた。Aちゃんは順調に体重が増加しており、定期受診のため来院した。
104 Aちゃんは、定期受診の1か月後、予定どおり会陰式肛門形成術を行った。術後2日、1日に6回の排便があり、造設された肛門周囲に発赤がみられている。
排便後の対応で最も適切なのはどれか。
1.石けんで洗浄する。
2.微温湯で洗浄する。
3.お尻拭きシートで拭き取る。
4.ポビドンヨードで消毒をする。
解答2
解説
・Aちゃん(生後5か月、女児、低位鎖肛)
・出生時:腟の後方に瘻孔があり。
・定期受診の1か月後:予定どおり会陰式肛門形成術を行った。
・術後2日:1日に6回の排便があり、造設された肛門周囲に発赤がみられている。
→手術部位(肛門周囲)に炎症症状(発赤)がみられる。したがって、皮膚トラブルにならないよう刺激を少なく清潔を保つよう心掛ける。ちなみに、炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。
1.× 石けんで洗浄するのは不適切である。なぜなら、本症例は、肛門周囲の発赤が生じており、石けん(アルカリ性)を使用することで、肛門周囲の発赤が助長することが考えられるため。石けんは、手洗いに使用することが多く、過度に皮脂を奪うなど、スキントラブルを助長することもある。
2.〇 正しい。微温湯で洗浄する。なぜなら、微温湯は、皮膚への刺激が最も少ないため。微温湯は、30~40℃である。
3.× あえて、お尻拭きシートで拭き取るのは優先度は低い。なぜなら、本症例の造設された肛門周囲に発赤がみられているため。お尻拭きシートの溶剤や繊維の刺激が強い場合があり、皮膚トラブル(かぶれなど)の原因ともなる。
4.× ポビドンヨードで消毒をするのは不適切である。なぜなら、本症例の造設された肛門周囲に発赤がみられているため。ポビドンヨードとは、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。施設に感染症が流行していない場合は、ポビドンヨードやアルコール溶液などで断端を消毒することは勧められていない。
次の文を読み103〜105の問いに答えよ。
Aちゃん(生後5か月、女児)は、出生時、腟の後方に瘻孔があり、腸内容物が排出され、低位鎖肛と診断された。他に奇形は認められず、瘻孔は腟と尿道に交通していなかったため、体重増加を待って会陰式肛門形成術を行う予定とされていた。Aちゃんは順調に体重が増加しており、定期受診のため来院した。
105 術後2週、全身状態や創部の状態が安定し、肛門拡張のためのブジーが開始された。退院後もブジーを継続するため母親に指導を行うことになった。
ブジーの指導で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.「食後は避けてください」
2.「腹臥位で行ってください」
3.「できるだけ深く入れてください」
4.「排便があった日は行わなくてよいです」
5.「直腸の向きに沿ってゆっくり入れてください」
解答1/5
解説
・Aちゃん(生後5か月、女児、低位鎖肛)
・出生時:腟の後方に瘻孔があり。
・定期受診の1か月後:予定どおり会陰式肛門形成術を行った。
・術後2日:造設された肛門周囲に発赤。
・術後2週:全身状態や創部の状態が安定。
・肛門拡張のためのブジーが開始。
・退院後:ブジーを継続するため母親に指導を行う。
→ブジーとは、食道や尿道、尿管、鼻涙管などの管状臓器の内径を拡張したり、拡張させるために用いる医療器具である。
【方法】
①ブジー先端に潤滑剤をつける
②おむつを開き、足首を持って固定する
③ブジーを肛門に対して垂直に挿入する
④抵抗のあるところまで入ったらブジーを半回転させる
⑤ブジーを寝かせながらラインまで挿入する
⑥おむつを替える(すぐに便やガスが出ないこともあります)
(※参考文献:「外科疾患の児に対する腹部ケアと胃管管理」北野病院NICU/GCU病棟 伊藤佐奈恵より)
1.〇 正しい。食後は避けるよう指導する。なぜなら、食後は、①腸内運動促進に伴い排便が促進される時間であること、②ブジー挿入による啼泣で嘔吐亢進する恐れが高いこと、③暴れたりして抵抗することにより、腹圧亢進にともない排便・嘔吐が促進されるためなどがあげられる。
2.× 「腹臥位(うつ伏せ)」ではなく、背臥位(仰向け)で行う。なぜなら、腹臥位は、直腸を損傷する可能性が高いため。腹臥位で行うと、肛門が閉じやすく、ブジーの挿入が困難なことがあげられる。
3.× できるだけ「深く」ではなく、適度な深さで行う。なぜなら、深く入れすぎると直腸粘膜を傷つけるおそれがあるため。抵抗のあるところまで入ったらブジーを半回転させる操作が必要である。
4.× 排便の有無にかかわらず定期的に行うべきである。なぜなら、肛門管を徐々に拡張させることが目的であるため。
5.〇 正しい。直腸の向きに沿ってゆっくり入れる。なぜなら、斜めに入ると直腸粘膜を傷つけるおそれがあるため。直腸の向きに沿い、肛門に対して垂直に挿入する。
(※図引用:「外科疾患の児に対する腹部ケアと胃管管理」北野病院NICU/GCU病棟 伊藤佐奈恵より)