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26 更年期障害に対する治療としてホルモン補充療法が禁忌となるのはどれか。
1.深部静脈血栓症の既往
2.子宮頸部異形成
3.高脂血症
4.骨粗鬆症
5.喘息
解答1
解説
更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。
1.〇 正しい。深部静脈血栓症の既往は、更年期障害に対する治療としてホルモン補充療法が禁忌である。深部静脈血栓症とは、深部静脈に血の塊(血栓)ができることである。血栓が足の静脈から心臓や肺に向かって流され、肺の血管に詰まった場合、肺塞栓症を引き起こす。
2.× 子宮頸部異形成とは、子宮頸がんの前段階(前がん病変)である。 別名で子宮頸部上皮内腫瘍とも呼ばれます。子宮頸がんや子宮頸部異形成は、20~30歳代の女性に急速に増加している。
3.× 高脂血症とは、中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたし、血液中の値が正常域をはずれた状態をいう。 動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すれば脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患をまねく原因となる。
4.× 骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。
5.× 喘息とは、空気の通り道である気道が長い期間炎症を繰り返すことで狭くなり、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーといった音が聞こえる喘鳴や呼吸困難などの発作が生じる病気である。
【禁忌】
①エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮 内膜癌)及びその疑いのある患者[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがある。]
②未治療の子宮内膜増殖症のある患者[子宮内膜増殖 症は細胞異型を伴う場合がある。]
③乳癌の既往歴のある患者[乳癌が再発するおそれがある。]
④血栓性静脈炎や肺塞栓症のある患者、 又はその既往歴のある患者[エストロゲンは凝固因子を増加させ、血栓形成傾向を促進するとの報告がある。]
⑤動脈性の血栓塞栓疾患(例えば、冠動脈性心疾患、 脳卒中)又はその既往歴のある患者
⑥授乳婦
⑦重篤な肝障害のある患者
⑧診断の確定していない異常性器出血のある患者[出血が子宮内膜癌による場合は、癌の悪化あるいは顕性化を促すことがある。]
⑨本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(※一部引用:「ジュリナ錠0.5mg」バイエル薬品株式会社HPより)
27 妊娠中のヒトパルボウイルスB19感染による児への影響で正しいのはどれか。
1.貧血
2.結膜炎
3.心奇形
4.水頭症
5.内耳性難聴
解答1
解説
1.〇 正しい。貧血は、妊娠中のヒトパルボウイルスB19感染による児への影響である。ヒトパルボウイルスB19とは、小児でよくみられる両頬の紅斑を特徴とした伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスである。通常は年長児に好発する予後良好な急性感染症である。成人では不顕性感染が多いが、妊娠中の初感染によって胎児水腫や胎児死亡を引き起こすことがある。日本人妊婦の抗体保有率は、20~50%とされる。伝染性紅斑は春から夏にかけて流行する傾向があり、4~5年周期で流行がみられる。近年では、2007年と2011年の流行の後、2015年に全国的な流行があった。妊婦が初めて感染した場合、約2割でウイルスが胎盤を通過し胎児感染を起こし、そのうち約2割が胎児の貧血や胎児水腫を起こす。これは、全初感染妊婦のおよそ4%にあたる。胎児水腫の発生機構としては、ウイルスが胎児赤血球系前駆細胞に感染し、造血障害による重症貧血、心不全、低酸素血症を引き起こす。ヒトパルボウイルスB19は心筋細胞にも感染し、心筋の障害が胎児水腫や胎児死亡の発生に関与する。重篤な血小板減少が胎児水腫の約半数にみられる。胎児水腫は母体感染から9週以内に発症し、その多くは2~6週に発症する。特に妊娠早期の感染が問題となる、妊娠28週以降の母体ヒトパルボウイルスB19感染による胎児水腫や胎児死亡の発生率は低いとされる。胎児水腫の約3割は自然に軽快する。(一部引用:「ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態」NID国立感染症研究所様HPより)
2.× 結膜炎(流行性角結膜炎)とは、眼感染症のひとつで、いわゆる「はやり目」のことである。ウイルス性結膜炎で最も多くみられる疾患である。
3.× 心奇形(心臓奇形)とは、生まれながら心臓の構造に異常があるものをいう。 先天性心疾患のほとんどを占める。 通常、心臓に隣接する胸部大動脈や肺動脈本幹の異常も含めて心臓奇形とよばれる。
4.× 水頭症(正常圧水頭症)とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。
5.× 内耳性難聴とは、蝸牛が障害され、音が聞こえない・音がひずむなどの症状がでた難聴のことである。内耳より奥の聴こえに関係する神経が原因となる「後迷路性難聴」は、音がきこえるけれども言葉が聞き取れないという特徴がある。「内耳性難聴」と「後迷路性難聴」をあわせて「感音難聴」と呼ぶ。障害の原因として、血管障害、炎症、変性、老化、腫瘍などが考えられる。
28 37歳の初産婦。妊娠40週3日に陣痛発来で入院した。子宮口5cm開大ころから努責感が抑制できず、陣痛発作時にいきんでいたところ、子宮口8cm開大から急激に全開大となり分娩に至った。会陰右側切開術を施行。児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にある。胎盤娩出後の子宮底は臍下3横指で硬く触れる。子宮底を圧迫して凝血塊の排出は認められない。
このときの助産師の対応で適切なのはどれか。
1.会陰切開部に裂傷がないか確認する。
2.子宮底輪状マッサージをする。
3.頸管把持鉗子を準備する。
4.子宮収縮薬を準備する。
5.導尿する。
解答3
解説
・37歳の初産婦(入院:妊娠40週3日に陣痛発来)
・子宮口5cm開大ころから、努責感が抑制できず、陣痛発作時にいきんでいたところ、子宮口8cm開大から急激に全開大となり分娩に至った。
・会陰右側切開術を施行。
・児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にある。
・胎盤娩出後の子宮底は臍下3横指で硬く触れる。
・子宮底を圧迫して凝血塊の排出は認められない。
→本症例は、子宮口5cm開大ころから、努責感が抑制できず、陣痛発作時にいきんでいたこと、児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にあることから、腟壁や頚管からの出血が疑われる。したがって、まずは出血部位の特定が優先されるため、頸管把持鉗子を準備する。ちなみに、努責感(どせきかん)とは「いきみ」の異称で、フンッと腹に力を込めることである。
(※図引用:「頸管把持鉗子」エム・シー・メディカル株式会社様HPより)
1.× 会陰切開部に裂傷がないか確認する優先度は低い。なぜなら、会陰右側切開術を施行しているため会員切開部に流血があってもおかしくない。児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にあることを優先する。
2.× 子宮底輪状マッサージをする優先度は低い。なぜなら、子宮底輪状マッサージは分娩直後の子宮収縮不全の防止に有効であるため。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。 排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。 早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。
3.〇 正しい。頸管把持鉗子を準備する。症例は、子宮口5cm開大ころから、努責感が抑制できず、陣痛発作時にいきんでいたこと、児の娩出直後から腟口から鮮紅色の出血が持続的にあることから、腟壁や頚管からの出血が疑われる。したがって、まずは出血部位の特定が優先されるため、頸管把持鉗子を準備する。ちなみに、鉗子(読み方:かんし)は外科手術用具の一つで、鋏(はさみ)のような形をし、組織・異物などをはさんだりするのに使う。
4.× 子宮収縮薬を準備する優先度は低い。なぜなら、子宮収縮薬の適応に該当しないため。子宮収縮剤の投与の適応としては、①胎児側因子と②母体側因子が考えられる。①胎児側因子:過期妊娠、胎盤機能不全、子宮内胎児発育遅延などで、子宮内環境が悪く、 分娩させて体外で管理したほうがよいと判断される場合。一方、②母体側因子:前期破水、妊娠中毒症など、妊娠を継続することで母体に危険があると判断される場合である。
5.× 導尿する優先度は低い。なぜなら、導尿の適応に該当しないため。導尿の対象者は、急性尿閉や水腎症を来した慢性尿閉、全身管理が必要な重症患者、全身麻酔下の手術を受ける患者、骨折した患者などに用いられる。つまり、尿意がない患者に適応となりやすい。ただし、カテーテルを長期にわたり留置すると、尿路感染や出血、膀胱萎縮などのリスクが高まり、QOLの低下を招く。
29 Aさん(27歳、初産婦)は身長160cm、非妊時体重58kgである。妊娠39週5日で、3,560gの男児を正常分娩した。分娩時出血量は300mL、産後2日の採血でHb11.0g/dLであった。授乳は1日8〜10回行っている。
Aさんに推奨される1日の栄養付加量で正しいのはどれか。
1.葉酸10μg
2.鉄分10mg
3.タンパク質5g
4.カルシウム300mg
5.エネルギー350kcal
解答5
解説
(図引用:「《参考資料1》対象特性 1 妊婦・授乳婦」厚生労働省HPより)
1.× 葉酸は、「10μg」ではなく100μgである。葉酸には新しい細胞へと生まれ変わらせる「細胞分裂」をサポートする働きがあり、産後でダメージを受けた子宮の細胞分裂を行わせることで、子宮回復の手助けをしてくれる。
2.× 鉄分は、「10mg」ではなく2.5mgである。鉄分を摂ることで、酸素が全身に届けられ、貧血症状の改善が期待される。
3.× タンパク質は、「5g」ではなく20gである。たんぱく質をとることで、神経伝達物質をはじめ、酵素やホルモンの合成を始め、肌、髪など、さまざまな部分がよみがえることが期待される。
4.× カルシウム300mgといった推奨量はない。妊娠によりカルシウム吸収率が上昇する。
5.〇 正しい。エネルギー350kcalはAさんに推奨される1日の栄養付加量である。
30 Aさん(28歳、初産婦)はFallot<ファロー>四徴症があり、幼少時に心臓の修復手術を受けた既往がある。学生時代にはスポーツの部活動は避けていたが、軽い運動や日常生活において特に問題を生じることなく生活していた。正常血圧で服薬はしていない。自然妊娠して産婦人科医院を受診し、妊娠6週の診断となった。
助産師がAさんに話す内容で適切なのはどれか。
1.「妊娠中は積極的に運動しましょう」
2.「赤ちゃんに心臓の病気が生じる心配はありません」
3.「妊娠後半に心臓への負担が大きくなります」
4.「お産は帝王切開で行われます」
5.「母乳育児はできません」
解答3
解説
・Aさん(28歳、初産婦、ファロー四徴症)
・既往:心臓の修復手術(幼少時)
・学生時代:日常生活は特に問題を生じなかった。
・正常血圧で服薬はしていない。
・自然妊娠して産婦人科医院を受診し、妊娠6週の診断となった。
→本症例は、ファロー四徴症を呈している。ファロー四徴症とは、心室中隔欠損・大動脈騎乗・肺動脈狭窄・右室肥大のことである。ファロー四徴症修復手術後の長期生存成績はよく、妊娠も注意して管理をうけていれば特に問題ないとする報告がほとんどである。妊娠すると、赤ちゃんを子宮内で育てるため循環血液量や1回の心拍出量、心拍数が増え、全身の血管抵抗は減少するなどの変化が起こる。そういった妊娠による変化も関連して母体に心血管系の合併症が起こると報告されている。報告によってさまざまであるが、合併症が起こる方は1割くらいからもう少し高いとする報告が多い。合併症としては不整脈、肺動脈逆流による右心拡大、右心不全などが多いと報告されている。これらの合併症を認める場合には、抗不整脈薬や、利尿剤、強心剤などの投与を必要とする場合や、重症の場合には妊娠の中断を選択せざるを得ないこともある。
1.× 「妊娠中は積極的に運動しましょう」と伝える優先度が低い。なぜなら、なんの運動をどれぐらいの負荷量で週何回やれば「積極的」な運動と言えるのか決まっていないため。ましてや本症例は、ファロー四徴症修復手術後である。曖昧な伝え方は誤解を招きやすい・また妊娠により心拍数・心拍出量の増加により心臓に負担がかかりやすい。
2.× 「赤ちゃんに心臓の病気が生じる心配はありません」と断定することはできない。報告によってさまざまであるが、合併症が起こる方は1割くらいからもう少し高いとする報告が多い。合併症としては不整脈、肺動脈逆流による右心拡大、右心不全などが多いと報告されている。これらの合併症を認める場合には、抗不整脈薬や、利尿剤、強心剤などの投与を必要とする場合や、重症の場合には妊娠の中断を選択せざるを得ないこともある。
3.〇 正しい。「妊娠後半に心臓への負担が大きくなります」と助産師がAさんに話す。なぜなら、妊娠により妊娠6週から母体の循環血液量は増加し、妊娠28週〜35週頃に最大となるため。ファロー四徴症修復手術後の長期生存成績はよく、妊娠も注意して管理をうけていれば特に問題ないとする報告がほとんどである。
4.× 「お産は帝王切開で行われます」という説明は、どちらかというと「助産師」ではなく主治医が行う。また、帝王切開術分娩を選択すべき、という報告はなく、帝王切開術での分娩は産科的適応がある場合に考慮される。しかし、帝王切開率は、2〜3 割と、結果的に帝王切開術分娩となった方の割合は一般の方より高いようである。これは母体の心臓への影響を考慮して、帝王切開術が選択された場合が多いためではないかと考えられている。とはいえ、現状、帝王切開と決まっているわけではない。
5.× 母乳育児はできる。産後について、出産を終えられれば、その後のトラブルは少ないようである。産後出血が多い、などの報告もない。
(※参考「ファロー四徴症に対する手術を受けられた方の妊娠について」国立成育医療研究センターHPより)