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次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
Bさん(39歳、1回経産婦)。妊娠32週の妊婦健康診査目的でA 病院の助産師外来を受診した。血圧126/68mmHg。尿蛋白(-) 、尿糖(-) 。下肢浮腫(-) 。子宮底28cm。推定胎児体重1,950g。胎動あり。Bさんは「上の子の出産後に会陰切開の痛みが強かったので、できれば今回は会陰切開をせずにお産したいです」と話している。
51 Bさんは、妊娠39週で3,450gの男児を正常分娩した。産褥3日、Bさんは疲れた様子で、泣いている児をあやしている。助産師が声をかけると「上の子はこんなに泣かなかったのに、この子は何をしても泣き止まなくて、どうしていいかわかりません」と張りのない声で答え、涙を流している。助産師はマタニティブルーズを疑い、退院後のフォローアップについて検討するためにカンファレンスを行った。A病院は、母親のメンタルヘルスの支援を充実させるために、保健センターとの連携を強化している。
Bさんのマタニティブルーズの経過を評価するときの方法と評価者との組合せで、最も適切なのはどれか。
1.退院後1週以内の電話による状況確認:A 病院の助産師
2.産後1か月健診:A病院の助産師外来の担当者
3.新生児訪問事業:保健センターの保健師
4.乳児家庭全戸訪問事業:乳児家庭全戸訪問事業の訪問員
解答1
解説
・Bさん(妊娠39週:3,450g男児を正常分娩)
・産褥3日:Bさんは疲れた様子、泣いている児をあやしている。
・Bさん「上の子はこんなに泣かなかったのに、この子は何をしても泣き止まなくて、どうしていいかわかりません」と張りのない声で答え、涙を流している。
・助産師:マタニティブルーズを疑い、退院後のフォローアップについて検討するためにカンファレンスを行った。
・A病院:母親のメンタルヘルスの支援を充実させるために、保健センターとの連携を強化している。
→マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、内分泌バランスの変化や母体の体力低下、育児への精神的負担などから、涙もろさ、不安感などの症状や、集中力低下、頭痛などの身体的症状が表れやすい。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。したがって、できればそれなりの専門職が評価に携わることが望ましい。ちなみに、保健センターとは、市町村が設置・運営している。地域住民に対して直接的な保健サービスを提供することを目的としている。
1.〇 正しい。退院後1週以内の電話による状況確認を「A 病院の助産師」が行うことが最も適切である。マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、内分泌バランスの変化や母体の体力低下、育児への精神的負担などから、涙もろさ、不安感などの症状や、集中力低下、頭痛などの身体的症状が表れやすい。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。マタニティブルーズの経過を評価するには入院中の様子を知るA 病院の助産師が退院後1週以内に電話で状況を確認することが適している。
2.× 「産後1か月健診」では、Bさんのマタニティブルーズの経過評価には適さない。なぜなら、マタニティーブルーズの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。
3.× 「新生児訪問事業」では、Bさんのマタニティブルーズの経過を評価には適さない。なぜなら、新生児訪問指導は主に「Bさん」ではなく、新生児に対する問題を扱うことが多いため。「新生児訪問指導」とは、母子保健法第11条に定められた事業で、主に新生児の発育、栄養、生活環境、疾病予防など育児上重要な事項の指導を目的として、生後28日以内(里帰りの場合は60日以内)に保健師や助産師が訪問する事業である。
4.× 乳児家庭全戸訪問事業において、乳児家庭全戸訪問事業の訪問員がBさんのマタニティブルーズの経過を評価より優先度が高いものが他にある。マタニティーブルーズとは、分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験し、内分泌バランスの変化や母体の体力低下、育児への精神的負担などから、涙もろさ、不安感などの症状や、集中力低下、頭痛などの身体的症状が表れやすい。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。したがって、できればそれなりの専門職が評価に携わることが望ましい。乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)とは、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問することにより、子育てに関する情報の提供並びに乳児及びその保護者の心身の状況及び養育環境の把握を行うほか、養育についての相談に応じ、助言その他の援助を行うことを目的としている。訪問者については、保健師、助産師、看護師の他、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験者等から幅広く人材しているため、適切な人材と当たる可能性が薄く、またマタニティーブルーズ経過を評価するタイミングとしては遅くなってしまう可能性が高い。
次の文を読み50〜52の問いに答えよ。
Bさん(39 歳、1回経産婦)。妊娠32週の妊婦健康診査目的でA 病院の助産師外来を受診した。血圧126/68 mmHg。尿蛋白(-) 、尿糖(-) 。下肢浮腫(-) 。子宮底28cm。推定胎児体重1,950 g。胎動あり。B さんは「上の子の出産後に会陰切開の痛みが強かったので、できれば今回は会陰切開をせずにお産したいです」と話している。
52 Bさんは、産後の身体的な経過は良好で、授乳も順調で母乳栄養である。退院前日、夫から第1子(3歳)がインフルエンザと診断されたと連絡があった。Bさんは、妊娠中にインフルエンザワクチンを接種している。A病院の産科病棟は、子どもの立ち入りが禁止されている。Bさんは退院を強く希望し、主治医と相談した結果、予定通り退院することになった。Bさんは「退院後にこの子(第2子)の育児で注意することを教えてください」と話している。
Bさんへの指導内容で正しいのはどれか。
1.沐浴を中止する。
2.手洗いを励行する。
3.搾乳して児に与える。
4.第2子の衣類は第1子と分けて洗濯する。
解答2
解説
・Bさん(妊娠39週:3,450g男児を正常分娩)
・Bさん:産後の身体的な経過良好、授乳も順調で母乳栄養。
・退院前日:夫から第1子(3歳)がインフルエンザと診断された。
・Bさん:妊娠中にインフルエンザワクチンを接種している。
・A病院の産科病棟:子どもの立ち入りが禁止されている。
・Bさん:退院を強く希望し、主治医と相談した結果、予定通り退院することになった。
・Bさんは「退院後にこの子(第2子)の育児で注意することを教えてください」と話している。
→インフルエンザウイルスの感染経路は、接触感染や飛沫感染である。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。感染防止策を徹底する。感染拡大防止対策としては、①手洗い、②速乾性擦式消毒薬を用いた手指消毒、③人ごみを避ける、④インフルエンザ発症者の空間的な隔離が有効である。
1.× 沐浴を中止する必要はない。むしろ、沐浴は児の清潔を保つために必要である。
2.〇 正しい。手洗いを励行する。インフルエンザウイルスの感染経路は、接触感染や飛沫感染である。A型、B型、C型の3種類があり、このうち冬季に流行する「季節性インフルエンザ」はA型とB型によるものである。症状として、38度以上の発熱や寒気、関節痛、全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪のような症状が現れる。感染防止策を徹底する。感染拡大防止対策としては、①手洗い、②速乾性擦式消毒薬を用いた手指消毒、③人ごみを避ける、④インフルエンザ発症者の空間的な隔離が有効である。
3.× 搾乳して児に与える必要はない。なぜなら、インフルエンザウイルスの感染経路は、接触感染や飛沫感染であるため。母乳から移ることはない。ただし、授乳時マスクをしたり、清潔を保ったり、手洗いうがいが推奨される。
4.× 第2子の衣類は第1子と分けて洗濯する必要はない。なぜなら、インフルエンザウイルスの感染経路は、接触感染や飛沫感染であるため。また、基本的な通常の洗濯や洗浄で除菌できるため、同じ洗濯槽で洗濯しても問題はない。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(33歳、初産婦)。自然妊娠し、産婦人科病院で妊婦健康診査を受けており妊娠経過は順調であった。子宮底部前壁に4cm大の子宮筋層内筋腫が指摘されていた。妊娠38週の妊婦健康診査では児の推定体重2,860g、羊水量正常で胎盤位置は子宮底部の後壁であった。妊娠39週2日、午後10時に陣痛が開始して来院した。体温37.4 ℃、心拍数85/分、血圧125/75mmHg。内診所見は頭位、子宮口6cm開大、展退度80%、Station ±0、未破水で入院となった。
入院時の胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
53 この胎児心拍数陣痛図の徐脈性変化の原因で最も適切なのはどれか。
1.臍帯圧迫
2.子宮筋腫
3.母体発熱
4.胎児発育不全
5.産道による児頭圧迫
解答5
解説
・Aさん(33歳、初産婦、自然妊娠)
・妊娠経過:順調。
・子宮底部前壁に4cm大の子宮筋層内筋腫が指摘されていた。
・妊娠38週:児の推定体重2,860g、羊水量正常で胎盤位置は子宮底部の後壁。
・妊娠39週2日午後10時:陣痛(体温37.4 ℃、心拍数85/分、血圧125/75mmHg)
・内診所見:頭位、子宮口6cm開大、展退度80%、Station ±0、未破水。
→この胎児心拍数陣痛図は、「早発一過性徐脈」が疑われる。早発一過性徐脈とは、子宮収縮に伴って、心拍数が緩やかに減少し、緩やかに回復する波形で、一過性徐脈の最下点が子宮収縮の最強点と概ね一致しているものをいう。ちなみに、変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。
1.× 臍帯圧迫とは、分娩進行中に臍帯が圧迫されることにより迷走神経反射を起こしもので、心拍数が急速に減少する変動一過性徐脈を起こすことが多い。変動一過性徐脈は15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形である。臍帯圧迫は子宮収縮に伴って発生するが、収縮がない場合でも起こる可能性がある。また、臍帯脱出や臍帯圧迫の場合は胎児心拍数が急激に下がり、胎児の予後が不良となる。そのため、胎児心拍数の確認は最も優先されるべき対応である。
2.× 子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。子宮筋腫は切迫流産・早産、前期破水、胎盤の位置異常、妊娠高血圧症候群などのリスクとなる。一方、主に、徐脈は圧の変化や低酸素が原因で起こる。
3.× 母体発熱とは、胎児の低酸素の原因となり、低酸素は遅発一過性徐脈を起こすことが多い。遅発一過性徐脈とは、子宮収縮開始よりもやや遅れて徐脈が起こり、収縮後ある程度時間が経過してから収縮前の心拍数に回復する波形である。母児間におけるガス交換の減少を示し、胎児の危険を示す。糖尿病、高血圧、妊娠中毒症、腎炎、予定日超過などの胎盤機能不全や母児低血圧、その他子宮収縮剤の過剰投与などが原因となる。
4.× 胎児発育不全とは、子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態で、妊娠週数に対して胎児が明らかに小さい場合をいい、胎児発育曲線において「-1.5SD以下」の場合に診断される。
5.〇 正しい。産道による児頭圧迫が、早発一過性徐脈の原因として考えられる。本症例は、子宮底部前壁に4cm大の子宮筋層内筋腫が指摘されていた。子宮口が4〜6cmほど開大するころには子宮収縮にあわせて児頭が圧迫されると典型的な早発一過性徐脈が出現しやすい。早発一過性徐脈とは子宮収縮に同期して起こる徐脈であり、収縮曲線の山頂と心拍曲線の谷と一致する。子宮収縮による児頭内圧の一時的亢進による反応であり、良好なパターンと考えてよい。
胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。
①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満
②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(33 歳、初産婦)。自然妊娠し、産婦人科病院で妊婦健康診査を受けており妊娠経過は順調であった。子宮底部前壁に4cm大の子宮筋層内筋腫が指摘されていた。妊娠38 週の妊婦健康診査では児の推定体重2,860 g、羊水量正常で胎盤位置は子宮底部の後壁であった。妊娠39週2日、午後10時に陣痛が開始して来院した。体温37.4 ℃、心拍数85/分、血圧125/75 mmHg。内診所見は頭位、子宮口6cm 開大、展退度80 %、Station ±0、未破水で入院となった。
入院時の胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
54 入院翌日の午前4時に破水となり、内診所見は子宮口全開大、Station+2であった。午前5時の時点で陣痛周期3分、陣痛持続時間1分でAさんは仰臥位で陣痛時にいきみを生じている。内診所見はStation+3で、軽度産瘤形成があり、矢状縫合は斜めの向きで大泉門を10時方向に触れた。胎児心拍数陣痛図では胎児心拍に異常は認めない。
このときのAさんへの助産師の対応で正しいのはどれか。
1.帝王切開の準備をする。
2.吸引分娩の準備をする。
3.Aさんにマスクによる酸素投与を行う。
4.Aさんの体位を変えて経過を観察する。
5.強く努責を行うことをAさんに勧める。
解答4
解説
・入院翌日午前4時:破水。
・内診所見:子宮口全開大、Station+2。
・午前5時:陣痛周期3分、陣痛持続時間1分(仰臥位で陣痛時にいきみ)
・内診所見:Station+3、軽度産瘤形成、矢状縫合は斜めの向きで大泉門を10時方向に触れた。
・胎児心拍数陣痛図:胎児心拍に異常は認めない。
→本症例の問題点として、「矢状縫合は斜めの向きで大泉門を10時方向に触れている」ことである。つまり、回旋異常がみられるため改善・修正できる助産ケアを実施する。助産ケアとしては、四つん這いで骨盤高位の姿勢になり、骨盤内からいちど児頭を持ち上げ、正しい姿勢で骨盤内に入るように促したり、陣痛促進剤を使用しい陣痛を強めることで正しい姿勢に戻ることを期待する治療法などがある。
1.× 帝王切開の準備をする必要はない。なぜなら、帝王切開は胎児機能不全や常位胎盤早期剥離など異常があり、急を要する場合に行われるため。
2.× 吸引分娩の準備をする必要はない。吸引分娩とは、分娩第2期に分娩を補助および促進するために鉗子または吸引器を児頭に対して使用することである。子宮口全開大から胎児娩出までの遷延や胎児機能不全の疑いがある場合などに行われる。
3.× Aさんにマスクによる酸素投与を行う必要はない。なぜなら、Aさんは呼吸状態の悪化などは見られず、胎児の心拍も異常は認めないため。母親への酸素投与として、胎児機能不全がある場合に適応となる。胎児の一部は分娩時に、心拍数異常または排便(胎便)など機能不全の徴候を示すことがあり、これは胎盤を通って母親から胎児に運ばれる酸素が不足しているためと考えられている。場合によって女性は、胎児が利用可能な酸素を増加させるため、マスクを用いて十分に酸素を吸うよう(酸素投与)促される場合がある。
4.〇 正しい。Aさんの体位を変えて経過を観察する。本症例の問題点として、「矢状縫合は斜めの向きで大泉門を10時方向に触れている」ことである。つまり、回旋異常がみられるため改善・修正できる助産ケアを実施する。助産ケアとしては、四つん這いで骨盤高位の姿勢になり、骨盤内からいちど児頭を持ち上げ、正しい姿勢で骨盤内に入るように促したり、陣痛促進剤を使用しい陣痛を強めることで正しい姿勢に戻ることを期待する治療法などがある。
5.× 強く努責を行うことをAさんに勧める必要はない。なぜなら、Aさんの子宮口は全開大ではあるが、児頭がまだ降りてきておらず、強く努責をかけてしまうと胎児に負担がかかってしまうため。怒責は、子宮口が全開大で児頭の矢状縫合が縦径に一致したら開始し、本人のタイミングではなく、子宮収縮のタイミングで行うことでお産が進みやすくなる。また、Aさんは仰臥位で陣痛時にいきみを生じていることから体位を変えていきみを逃しつつお産が進むようにして経過を観察する。
①母体適応:児頭骨盤不均衡 前置胎盤,子宮破裂,重症妊娠高血圧症候群,常位胎盤早 期剝離,分娩停止,分娩遷延など。
②胎児適応:胎児機能不全(胎児ジストレス),臍帯脱出,子宮内胎児発育遅延,切迫早産,前期破水,多胎など。
次の文を読み55の問いに答えよ。
Aさん(30歳、1回経産婦)。第1子は骨盤位のため38週0日に予定帝王切開で出産した。今回の妊娠経過は順調で、Aさんは経腟分娩を希望している。妊娠38週3日9時、陣痛発来し入院した。入院時子宮口3cm開大、未破水。末梢静脈の血管確保をして経過観察をしていたところ分娩は順調に進行し、14時の内診では子宮口9cm開大、Station+1、破水していた。その直後、Aさんは突然激しい腹痛を訴えた。呼吸数30/分、血圧70/30mmHg、脈拍120/分。胎児心拍数陣痛図では変動一過性徐脈が出現し、その後高度徐脈となった。直ちに助産師が内診を行うと児頭を触知できなかった。異常な性器出血はみられなかった。
55 このときのAさんの状態で最も考えられるのはどれか。
1.頸管裂傷
2.子宮破裂
3.常位胎盤早期剝離
4.仰臥位低血圧症候群
解答2
解説
・Aさん(30歳、1回経産婦)
・第1子:骨盤位、38週0日:予定帝王切開。
・今回の妊娠経過:順調、経腟分娩を希望。
・妊娠38週3日9時:陣痛発来。
・入院時子宮口3cm開大、未破水。
・末梢静脈の血管確保:分娩は順調に進行し、14時の内診では子宮口9cm開大、Station+1、破水していた。
・Aさん:突然激しい腹痛を訴えた。
・呼吸数30/分、血圧70/30mmHg、脈拍120/分。
・胎児心拍数陣痛図:変動一過性徐脈、その後高度徐脈。
・直ちに助産師が内診を行うと児頭を触知できなかった。
・異常な性器出血はみられなかった。
→ショック指数(ショックインデックス)とは、出血、体液喪失が原因で起こる循環不全を循環血液量減少性ショックといい、重症度の指標としてショック指数(SI)を用いることがある。SI=「脈拍数(心拍数)/収縮期血圧」で表す。1.0で循環血液量のおよそ20%が、1.5でおよそ40%が失われていると考えられる。基準として、正常(0.5)、軽症(1.0)、中等症(1.5)、重症(2.0)となる。
1.× 頸管裂傷は考えにくい。頸管裂傷とは、子宮頸管に裂けてできた傷が起こることであり、急速に分娩が進行することや吸引分娩などの処置、巨大児などが原因となる。頸管裂傷になると持続的な出血(鮮紅色の出血)が起こる。主に分娩の際に生じる可能性があり、大量出血など生命の危険にまでつながるリスクがある。
2.〇 正しい。子宮破裂がAさんの状態で最も考えられる。子宮破裂とは、子宮が自然に裂けて開くことであり、強い腹痛が続き、胎児の心拍数が異常に下がる。帝王切開の既往がある女性で治癒した瘢痕線に沿って起こることが多い。他に多胎妊娠や羊水過多なども原因となることがある。本症例のように、子宮内圧の低下により胎児が押し上げられ、内診しても児頭を触知することができなくなっている。
3.× 常位胎盤早期剝離は考えにくい。とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。
4.× 仰臥位低血圧症候群は考えにくい。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際、妊娠子宮や腫瘤が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫し、それにより右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるものである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈する。対応としては、患者を仰臥位から左側臥位にし、右心系に血液が戻ってくるようにすることで、症状は速やかに回復する。(※参考:「仰臥位低血圧症候群」日本救急医学会HPより)