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6 Aさん(39歳、初産婦)。妊婦健康診査で来院した。妊娠16週、単胎。身長160cm、体重56kg(非妊時体重55kg)。妊娠経過は順調である。Aさんは助産師に「今まで運動習慣はなかったのですが、マタニティビクスを始めたいと思っています。注意することはありますか」と質問した。
助産師の対応で適切なのはどれか。
1.「1分間の脈拍が145回を超えないようにしましょう」
2.「妊娠28週以降に始めましょう」
3.「午後3時以降に行いましょう」
4.「毎日運動しましょう」
解答1
解説
・Aさん(39歳、初産婦)。
・妊娠16週:単胎(妊娠経過:順調)
・身長160cm、体重56kg(非妊時体重55kg)
・Aさん「今まで運動習慣はなかったのですが、マタニティビクスを始めたいと思っています。注意することはありますか」と質問した。
→本症例は運動を始めようとしている。妊娠経過は順調であることから運動も遂行できる。運動は様々な効果があり有益とされている。安全に行うためにも運動の種類、運動強度や運動頻度を答えられるよう準備しておく。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P99」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
1.〇 正しい。「1分間の脈拍が145回を超えないようにしましょう」と指導する。マタニティビクスなどの有酸素運動によって血流改善、便秘改善、肥満予防など効果がある。「妊娠中に行う有酸素運動についても、非妊時と同様に過度とならないことが重要である。Talk test(運動中に負担を感じることなく会話ができる状態を保つ)は日常的に簡便に用いることができる指標である。なお、カナダのガイドラインでは、妊娠中の適切な心拍数の範囲として、①20歳未満:140~155 回/分、②20~29歳:135~150 回/分、③30~39歳:130~145 回/分、④40歳以上:125~140 回/分を推奨している(「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P99」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)」と記載されている。
2.× 始めるのは「妊娠28週以降」ではなく妊娠13週以降から行える。ちなみに、分娩直前まで行える。胎盤が完成する頃が望ましいとされ、心配であれば15週以降に行うよう伝える。
3.× 行う時間は、「午後3時以降」など決める必要はない。妊婦の体調・生活状況に合わせ、適宜行えることが望ましい。
4.× 「毎日運動しましょう」と指導するより優先度が高いものが他にある。なぜなら、選択肢の中に妊婦と胎児に影響を及ぼしやすいものがあるため。妊婦の体調・生活状況に合わせ、適宜行えることが望ましい。ちなみに、禁忌のない妊婦には、米国ガイドラインでは1日あたり30分ないしそれ以上の中等度の運動をほぼ毎日、英国ガイドラインでは少なくとも日に30分の中等度の運動を奨めている。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P100」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
7 乳幼児のアタッチメント<愛着>で正しいのはどれか。
1.不特定の他者と結ばれる関係である。
2.他者を遠ざけるために信号行動を行う。
3.愛着対象を安全基地として探索活動を行う。
4.アタッチメントの形成で人見知りは消失する。
解答3
解説
愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。
1.× 「不特定の他者」ではなく「養育者(主に母親)」と結ばれる関係である。乳幼児のアタッチメントとは、養育者(主に母親)との間に築く愛情の絆である。
2.× 「他者を遠ざけるため」ではなく、養育者(主に母親)の注意・関心を引くに信号行動を行う。信号行動とは、養育者(主に母親)の注意・関心を寄せ付けようとする行動である。そもそも赤ちゃんは社会的信号として、信号行動と呼ばれる行為する。この行動は、お母さんを赤ちゃんの方へと引き寄せる効果があり、最初の頃は泣き叫んだり、微笑んだり、意味のない言葉(齟齬)を言ったりする。
3.〇 正しい。愛着対象を安全基地として探索活動を行う。探索行動とは、知らない物事に興味を示し、それがどんなものなのかを確かめ知ろうとする動きである。探索行動の促進は問題解決にあたり、物ごとに対する極端な見方を改善することができる。療養者(安全既知)が近くに存在する場合、自由な探索行動が可能となるため、探索行動を促進できる。
4.× アタッチメントの形成で、人見知りは「消失」ではなく発生する。生後3ヶ月までは誰に対しても見つめたり微笑んだりするが、アタッチメントがより深く形成される生後3~6ヶ月ほどで養育者とそうでない人と区別をつけることができ人見知りが起こる。
8 在胎38週0日、2,800 gで出生した日齢12の新生児。母乳栄養のみである。
人工乳の補足の検討が必要な児の状況はどれか。
1.頻回の溢乳
2.体重2,750g
3.授乳回数10回/日
4.排便回数5〜6回/日
解答2
解説
人工乳とは、何らかの理由で母乳が与えられない場合、調製粉乳による人工乳が使用されることが多い。現在では母乳の代用品としての調製粉乳の品質も向上し、母乳の場合と比べても大差なく育児ができるようになっている。
1.× 頻回の溢乳は優先度が低い。なぜなら、溢乳は通常生後2~6週で消失するため。溢乳とは、授乳後に口から少量の乳がだらだらと吐き出される生理的現象である。
2.〇 正しい。体重2,750gは、人工乳の補足の検討が必要な児の状況である。なぜなら、本症例は日齢12日で体重2,750gで、出生体重に戻っていないため。つまり、母乳栄養だけでは足りていない可能性が高いと考えられる。ちなみに、生理的体重減少では、生後3~5日前後をピークに出生体重の5~10%の範囲で減少し、生後1~2週間以内に出生体重に戻るとされている。
3.× 授乳回数10回/日は優先度が低い。なぜなら、新生児の授乳回数は1日8~12回であるため。正常範囲内である。
4.× 排便回数5〜6回/日は優先度が低い。なぜなら、排便回数は個人差が大きく、1日に10回以上排便することもあるが、1〜2日に1回程度の場合もある。一応、目安としては、母乳栄養児の場合、20~30ℊ/日を7~10回する。一方、人工栄養児の場合、40~60ℊ/日を7~10回する。
正期産により出生した正常な新生児の生理的体重減少率は,出生体重の3~10%の範囲であり、生後3~5日がそのピークである。減少率とは、出生時体重からの減少の割合で、「(出生時の体重-現在の体重)÷出生時の体重×100」で算出される。
9 生後4か月の女児。外傷を主訴に、母親に連れられて救急外来を受診した。2歳の兄も一緒に来院した。母親は「2歳の兄が一緒に遊ぼうと腕を引っ張っていた。また、寝返りをしてソファから落ちたようだ」と話す。女児は不機嫌でぐずっている。医師が女児を診察した結果、左上腕内側と右前額部の出血斑、左鎖骨骨折、右肋骨骨折を認めた。
女児の受傷原因で最も考えられるのはどれか。
1.養育過誤
2.本人の転落
3.兄との遊びでの事故
4.保護者の身体的虐待
解答4
解説
・生後4か月:女児。
・主訴:外傷
・来院時:母と2歳の兄と一緒。
・母親「2歳の兄が一緒に遊ぼうと腕を引っ張っていた。また、寝返りをしてソファから落ちたようだ」と。
・女児:不機嫌でぐずっている。
・医師:女児の左上腕内側と右前額部の出血斑、左鎖骨骨折、右肋骨骨折。
→母親の事故が起きた発言と女児の受傷内容が一致していない。特に、ソファから落ちただけでは、左鎖骨骨折と右肋骨骨折の両側の骨折はなかなか考えにくい。したがって、選択肢4.保護者の身体的虐待が消去法で考えられる。
1.× 養育過誤は考えにくい。なぜなら、女児の身体的な受傷が観察されるため。過誤とは、あやまち、やり損じ、あやまりのことを指す。深刻な療育過誤では、反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)が起こることが報告されている。反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである。例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全など。この症候群は、両親によるひどい無視、虐待、または深刻な養育過誤の直接的な結果として起こるとみなされている。
2.× 本人の転落は考えにくい。なぜなら、母親の事故が起きた発言と女児の受傷内容が一致しておらず、受傷部位が多数あるため。寝返りによる本人の転落では左右に負傷が起こる可能性は低い。
3.× 兄との遊びでの事故は考えにくい。なぜなら、母親「2歳の兄が一緒に遊ぼうと腕を引っ張っていた」ことを信じ、生じた事故だと仮定しても、女児の左鎖骨骨折、右肋骨骨折は説明がつかないため。2歳の兄に骨折させるほどの力はなく、兄との遊びでの事故と考えるのは難しい。
4.〇 正しい。保護者の身体的虐待が女児の受傷原因で最も考えられる。なぜなら、母親の事故の発言と女児の受傷内容が一致しておらず、外傷が多岐に生じているため。特に、ソファから落ちただけでは、左鎖骨骨折と右肋骨骨折の両側の骨折はなかなか考えにくい。
10 NICU入院中の早産児の足底採血を行う際、児の感じる痛みのケアのために行うのはどれか。
1.経腸栄養投与後に採血する。
2.23G注射針を用いて採血する。
3.採血前に口腔内に白湯を投与する。
4.採血前に児の身体をタオルでくるむ。
解答4
解説
CQ7:NICUに入院している新生児にベッドサイド処置を行う場合、どのような非薬理的緩和法を用いると、最も新生児の入院中の痛みが緩和し生活の質が向上するか?
【A7】
①:環境調整を推奨する(1C)。
②:Swaddling(スワドリング,包み込み)や Facilitated Tucking(FT,ファシリテイテイッド・タッキング)を推奨する(1A)。
③:直接母乳授乳や搾母乳の投与を考慮することを提案する。実施に際しては、母親の同意を得る(2B)。
④:Non-nutritive-sucking(NNS,栄養に関係のない吸啜)を提案する。実施に際しては、親の同意を得る(2A)。
⑤:Skin-to-skin contact(SSC,スキン・トウ・スキン・コンタクト)やカンガルーケアを提案する。実施に際しては、親の同意を得る(2A)。
(※参考:「NICU に入院している新生児の 痛みのケアガイドライン」日本周産期・新生児医学会より)
1.× あえて「経腸栄養投与後」に採血する必要はない。むしろ、経腸栄養投与後すぐに採血すると、嘔吐などを引き起こす可能性がある。2時間以後に採血することが推奨されている。また、経腸栄養投与後に採血すると採血のデータに変動する可能性も考えれられるため、投与前に採血する。
2.× あえて「23G注射針」を用いて採血する必要はない。足底穿刺には、全自動型ランセットを用いることを提案する(※引用:「NICU に入院している新生児の 痛みのケアガイドライン」日本周産期・新生児医学会より)。
3.× あえて採血前に口腔内に「白湯」を投与する必要はない。「白湯」ではなく、「直接母乳授乳や搾母乳の投与を考慮することを提案する」(※引用:「NICU に入院している新生児の 痛みのケアガイドライン」日本周産期・新生児医学会より)。また、NICU入院中の早産児に対し、母乳以外のものは投与することは基本的に行わない。
4.〇 正しい。採血前に児の身体をタオルでくるむ。採血前に児の身体をタオルでくるむことによって、児を胎内姿勢に近づけることが可能である。したがって、児に安心感を与える。Swaddling(スワドリング,包み込み)や Facilitated Tucking(FT,ファシリテイテイッド・タッキング)を推奨する。Swaddling(スワドリング,包み込み:乳児の四肢が過度に動くことを防ぐために、ブランケットでしっかり包み込むこと)や FT(ファシリテイテイッド・タッキング:ケア提供者の両手を使い、片方の手で乳児の頭部、もう片方の手で四肢を屈曲させて、胎児姿勢のように包み込むこと。わが国では「ホールデイング」と称されている)は、結果にばらつきはあるが、痛みの緩和に有効と結論付けている(※参考:「NICU に入院している新生児の 痛みのケアガイドライン」日本周産期・新生児医学会より)。ちなみに、他に児の感じる痛みのケアとして、部屋の明るさなどの環境調整やおしゃぶりの使用などがある。
CQ6:NICU に入院している新生児に非薬理的緩和法を実践する際に、どのような配慮を補うと、最も新 生児の入院中の痛みが緩和し生活の質が向上するか?
【A6】
①:処置の実施や計画に際して、その必要性を常に評価し、痛みを伴う処置をできるだけ減らすことを 推奨する(1C)。
②:足底穿刺などの痛みを伴う処置の実施前には十分な安静時間をとることを提案する(2B)。
③:足底穿刺には、全自動型ランセットを用いることを提案する(2A)。
(※参考:「NICU に入院している新生児の 痛みのケアガイドライン」日本周産期・新生児医学会より)