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6 産科の診療所で妊婦健康診査を受けている妊婦が妊娠中期に前置胎盤と診断された。
出血や子宮収縮がなく妊娠が経過している場合に、高次施設への紹介のタイミングとして推奨される時期はどれか。
1.妊娠33週0日未満
2.妊娠33週0日以降35週0日未満
3.妊娠35週0日以降37週0日未満
4.妊娠37週0日以降
解答1
解説
・妊娠中期に、前置胎盤と診断されている。
→前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P147」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
1.妊娠33週0日未満は、出血や子宮収縮がなく妊娠が経過している場合に、高次施設への紹介のタイミングとして推奨される時期である。”前置胎盤や低置胎盤で「自院では緊急時の対応困難」と判断した場合は妊娠31週末までに高次施設を紹介し,妊娠32週末までに他院受診が完了するようにする”と記載されている(※一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P147」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。
2〜4.妊娠33週0日以降35週0日未満/妊娠35週0日以降37週0日未満/妊娠37週0日以降は、時期としては遅い。なぜなら、一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられるため。また、これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。
7 新生児の低体温によって起こる生体反応で正しいのはどれか。
1.ノルアドレナリン分泌低下
2.代謝性アルカローシス
3.末梢血管拡張
4.肺動脈収縮
解答4
解説
低体温症は、世界保健機関(World Health Organization)によって深部体温が36.5℃(97.7°F)未満のものと定義されている。早産児では、低体温症は罹病率および死亡率を上昇させる。低体温症は、単に環境性の場合もあれば、併発疾患(例、敗血症)の存在を示す場合もある。分娩室または手術室の適切な環境温度を維持することが、新生児の低体温症の予防において極めて重要である。低体温症の新生児は復温させ、基礎疾患がある場合は診断、治療を行う必要がある。
(※一部引用:「新生児の低体温症」MSDマニュアルプロフェッショナル版より)
1.× ノルアドレナリン分泌「低下」ではなく増加する。なぜなら、新生児には冷却に対する代謝反応があり、これには褐色脂肪組織における交感神経のノルアドレナリン放出による化学的(非ふるえ)熱産生が関与するため。「新生児で特に豊富にみられるこの組織は,後頸部,肩甲骨の間,ならびに腎臓および副腎の周囲に存在し,脂肪分解とそれに続く放出された脂肪酸の酸化または再エステル化という形で反応する。このような反応により局所的に熱が産生され,褐色脂肪への豊富な血液供給がこの熱を新生児の体の残りの部位に伝達する一助となる。この反応によって,代謝速度および酸素消費量が2~3倍に増える。このため呼吸機能不全のある新生児(例,呼吸窮迫症候群の早期産児)では,寒冷ストレスの結果,組織低酸素症および神経損傷が起こることもある」(※一部引用:「新生児の低体温症」MSDマニュアルプロフェッショナル版より)
2.× 「代謝性アルカローシス」ではなく代謝性アシドーシスが起こる。代謝性アシドーシスは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。
3.× 末梢血管は、「拡張」ではなく収縮する。ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)により末梢血管を収縮させ組織の虚血による低酸素症を引き起こす。ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。
4.〇 正しい。肺動脈収縮が新生児の低体温によって起こる生体反応である。新生児が低体温になるとノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が分泌され、交感神経優位となる。血管収縮作用により肺動脈収縮をきたし、肺血管抵抗は高まる。これが新生児遷延性肺高血圧症の機序となる。
新生児遷延性肺高血圧症とは、肺につながる動脈が出生後も狭い(収縮した)状態が続くことが原因で、肺に十分な量の血流が行きわたらず、結果的に血流中の酸素量が不足する重篤な病気である。満期産児または過期産児に重度の呼吸困難(呼吸窮迫)を引き起こす。この場合の左右差は見られないことが多い。呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。
8 月齢2か月の男児。在胎30週3日、常位胎盤早期剝離のため緊急帝王切開で出生した。出生体重1,515g。Apgar<アプガー>スコアは1分後1点、5分後4点、10分後8点。現在、全身状態は良好だが、退院前の頭部MRI検査で多発性囊胞性病変を認めた。MRI 検査所見を下図に示す。
この児の予後で最も考慮する疾患はどれか。
1.難聴
2.水頭症
3.脳性麻痺
4.下垂体機能低下症
解答3
解説
・月齢2か月の男児。
・在胎30週3日:常位胎盤早期剝離のため緊急帝王切開。
・出生体重:1,515g。
・アプガースコア:1分後1点、5分後4点、10分後8点。
・現在:全身状態良好
・退院前の頭部MRI検査:多発性囊胞性病変を認めた。
→本症例は、①仮死状態、②MRIから脳室周囲白質軟化症が疑われる。脳室周囲白質軟化症とは、早産児あるいは低出生体重児が来たしうる、脳室周囲の白質に軟化病巣が生じる疾患である。原因として、出生前~周産期に低酸素や仮死、出血などがあげられる。脳室周囲白質部、特に三角部には頭頂葉に存在する運動中枢からの神経線維、いわゆる皮質脊髄路が存在するため、脳室周囲白質軟化症の存在する児ではその連絡が絶たれ、痙性麻痺(脳性麻痺の一つ)となる。
常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。
1.× 難聴より優先度が高いものが他にある。先天性難聴とは、生まれつき難聴である。およそ半数が遺伝的要因によって引き起こされると考えらえている。また母親が妊娠初期に風疹やサイトメガロウイルスに感染した場合や出産時にその他の感染症に母子感染したり、母親が妊娠中にある種の抗生物質などを服用したりした場合も原因になる可能性がある。
2.× 水頭症より優先度が高いものが他にある。(正常圧)水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。水頭症の脳MRIの特徴として、①シルビウス裂の拡大、②側脳室の拡大がみられる。
3.〇 正しい。脳性麻痺が、この児の予後で最も考慮する疾患である。脳性麻痺の原因は、低出生体重、胎児期または周産期仮死による低酸素脳症、感染や遺伝性疾患である。知的障害やてんかんを合併することが多くある。ちなみに、脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。脳性麻痺の約半数は常位胎盤早期剥離と臍帯因子によるもので、常位胎盤早期剥離では児の救命が困難であることや救命しても脳性麻痺になる危険性がある。常位胎盤早期剥離は下腹部痛や性器出血があるが、軽症の場合は自覚症状がほとんどないことも少なくない。
4.× 下垂体機能低下症より優先度が高いものが他にある。下垂体機能低下症とは、1種類以上の下垂体ホルモンの不足により下垂体の機能が低下する病気である。ちなみに、障害されるホルモンが1つの場合は単独下垂体ホルモン欠損と呼び、複数のホルモンが分泌低下している場合は複合型下垂体機能低下症と呼ぶ。
(※画像引用:ナース専科様HPより)
9 産婦健康診査事業で正しいのはどれか。
1.エジンバラ産後うつ病質問票<EPDS>による問診が必須である。
2.児の診察が健康診査に含まれる。
3.産後2か月までが対象となる。
4.全額公費負担となる。
解答1
解説
産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図る観点から、産後2週間、産後1か月など出産後間もない時期の産婦に対する健康診査(母体の身体的機能の回復や授乳状況及び精神状態の把握等)の重要性が指摘されている。このため、産婦健康診査の費用を助成することにより、産後の初期段階における母子に対する支援を強化し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制を整備する。
(※図、一部引用:「説明資料」厚生労働省HPより)
1.〇 正しい。エジンバラ産後うつ病質問票<EPDS>による問診が必須である。産婦健康診査事業とは、産後うつの予防や新生児への虐待防止などを図るため、出産後間もない時期の産婦に対する健康診査を実施することにより、産後の初期段階における母子に対する支援を強化し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制のことをいう。健診内容は問診、診察、体重測定、血圧測定、尿検査、母体の回復状況、乳房の状態の確認、エジンバラ産後うつ病質問票<EPDS>による問診が行われる。
2.× 児の診察は、健康診査に「含まれない」。産婦健康診査事業は、産婦に対する健康診査のみである。
3.× 対象となる期間は、「産後2か月まで」ではなく産後1か月までである。産婦健康診査事業は、産後2週間と1か月の2回までの実施である。
4.× 「全額公費負担」ではなく、健診1回につき5000円を上限に助成される。産婦健康診査事業は、出産後間もない時期の産婦に対する健康診査を公費負担により実施される。
産後うつ病をスクリーニングするために使用する質問票のこと。10項目の質問で、対象者は過去7日間の気分を答える。日本におけるカットオフポイント(区分点)は9点で、EPDS9点以上で「うつの可能性が高い」と考える。ただし、9点以上がうつ病で、8点以下はうつ病ではないと判断するものではない。
10 院内助産において分娩時の出血時に助産師が自らの判断で行う対応で適切なのはどれか。
1.昇圧薬の投与
2.胎盤用手剝離
3.輸血開始の決定
4.腟内ガーゼ充塡
解答4
解説
院内助産とは、緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥1か月頃まで、正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供する体制をいう。院内助産は、「①緊急時の対応が可能な医療機関において、②助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、③妊娠から産褥1か月頃まで、④正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供 する体制をいう」と定義した。
1.× 昇圧薬の投与は、医師の指示のもと行う。ちなみに、助産師ガイドラインに子宮収縮薬の投与は認めている。また、保健師助産師看護師法37条に助産師の業務範囲が規定されている。保健師助産師看護師法(通称:保助看法)とは、保健師・助産師及び看護師の資質を向上し、もって医療及び公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。
2.× 胎盤用手剝離の医療処置は、医師が行う。尿道留置カテーテルの使用まで行える。胎盤用手剝離とは、胎盤が自然に剥がれなかった際に行う手技のことである。
3.× 輸血開始の決定は、医師が行う。血管確保まで行える。
4.〇 正しい。腟内ガーゼ充塡は助産師が自らの判断で行える。充填(読み:じゅうてん)とは、いれ物・すき間に物を(一杯に)詰めることである。特に分娩後の対応として、①止血操作とし双手圧迫、②子宮膣内強圧タンポン法、③子宮収縮薬の使用が挙げられる。腟内ガーゼ充塡は、分娩時の助産過程における必要に応じた救急処置である。
保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。(※一部引用:「保健師助産師看護師法37条」e-GOV法令検索様HPより)