第103回(R2) 助産師国家試験 解説【午後26~30】

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26 生後12時間の新生児。在胎32週1日、出生体重1,700gで出生した。保育器内で経鼻的持続気道陽圧呼吸療法<CPAP>(吸入酸素濃度25%)を開始し、輸液管理中である。バイタルサインは、体温(腋窩温)36.5 ℃、呼吸数65/分、心拍数160/分、血圧50/32mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SPO2>94%であった。また、血糖値は60mg/dLであった。
 現在の児の状態の評価で正しいのはどれか。

1.頻脈
2.多呼吸
3.低血圧
4.低体温
5.低酸素血症

解答

解説

本症例のポイント

・新生児(生後12時間)。
・出生:在胎32週1日出生体重1,700g
・保育器内:経鼻的持続気道陽圧呼吸療法:吸入酸素濃度25%)、輸液管理中。
・バイタルサイン:腋窩温36.5 ℃、呼吸数65/分、心拍数160/分、血圧50/32mmHg、SPO2:94%、血糖値60mg/dL
→本症例は、早産低出生児である。早産児は37週未満(36週6日まで)、低出生体重児は2,500g未満である。ちなみに、1,500g未満であれば極低出生体重児、1,000g未満であれば超低出生体重児という。42週以上であれば過期産児という。

1.× 頻脈とはいえない。なぜなら、本症例の心拍数は160/分であるため。新生児の頻脈の基準は180回/分以上である(なかには170回/分以上というものもある)。新生児の正常な脈拍は120~160/分が正常範囲とされている。
2.〇 正しい。多呼吸であると評価できる。なぜなら、本症例の呼吸数は65/分であるため。多呼吸とは、浅くて速い呼吸のことである。基準値として、新生児は60回/分以上、乳児は50回/分以上、幼児は40回/分以上である。主に肺炎など肺のコンプライアンスが減少するために1回換気量が不足し、呼吸回数で補おうとする。ちなみに、頻呼吸とは呼吸の深さは変わらないが回数が増えた状態で、多呼吸とは深さも数も増加した状態(主に運動時)である。
3.× 低血圧とはいえない。なぜなら、本症例の血圧は50/32mmHgであるため。新生児の血圧の正常値は60〜90/30〜50mmHgである。本症例は、早産低出生児であるため、血圧がやや低くても、出生体重が小さいほど血圧は低くなるため、低血圧と言い切ることはできず、他の選択肢にもっと優先度が高いものがある。
4.× 低体温とはいえない。なぜなら、本症例の腋窩温は36.5 ℃であるため。新生児の低体温の基準は深部体温36.5℃未満である。本症例は腋窩温で測定しているが、できれば深部体温が望ましい。また、保育内の場合、体温は37℃を保つことが望ましいとされている。ただし赤ちゃんの体温が低くなっても一時的で、しばらくして平熱に戻れば問題ない。
5.× 低酸素血症とはいえない。なぜなら、本症例のSPO2は94%であるため。酸素投与中は、SPO2 85%以上を保つようにする。ちなみに、低酸素血症とは、動脈血中の酸素が不足した状態である。酸素投与中以外のSPO2:95~100%が正常である。本症例のSPO2は94%であるが、低酸素血症とは言い切れず、他の選択肢にもっと優先度が高いものがある。

 

 

 

 

 

27 機能性月経困難症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.周期性の痛みがある。
2.30歳以降の発症が多い。
3.子宮内膜症が関与している。
4.月経が始まると症状が消失する。
5.レボノルゲストレル放出子宮内システム<LNG-IUS>で症状が緩和する。

解答1・5

解説

月経困難症について

月経困難症には主に2種類あげられる。

器質性月経困難症:子宮内膜症、チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫などの器質的疾患を伴う。30歳以降の女性に多くみられる。
機能性月経困難症:器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。

1.〇 正しい。周期性の痛みがある。通常は月経の1~2日目に痛みのピークがあり、下腹部や腰に引きつるような痛みが周期的に来ることが多い。広くは腰痛や腹部膨満感、嘔気、疲労、いらいらなども含まれる。
2.× 「30歳以降」ではなく思春期~20歳台前半の発症が多い。ちなみに、30歳以降の発症が多いのは器質性月経困難症である。
3.× 子宮内膜症が関与しているのは、器質性月経困難症である。器質性月経困難症とは、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの器質的な病気に伴う月経困難症である。30歳以降の女性に多くみられる。子宮内膜症は子宮以外の卵巣、骨盤内に本来ないはずの子宮内膜が増殖する病気である。
4.× 月経が始まると症状が「消失」ではなく出現する。月経に伴って病的な症状がみられ、通常は月経の1~2日目に痛みのピークがあり、下腹部や腰に引きつるような痛みが周期的に来ることが多い。
5.〇 正しい。レボノルゲストレル放出子宮内システム<LNG-IUS>で症状が緩和する。レボノルゲストレル放出子宮内システム<LNG-IUS>とは、子宮内に挿入、留置する器具である子宮内避妊用具 (IUD)に黄体ホルモンであるレボノルゲストレル(LNG) を子宮内に放出するための薬剤放出部を付加した製剤である。避妊及び過多月経、または特発性過多月経、月経困難症に関する効能・効果として承認されており、機能性月経困難症にも症状緩和が期待される。商品名ではミレーナがある。

 

 

 

 

28 胎児期における男性化の性分化で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.ウォルフ管が退縮する。
2.SRY遺伝子の発現が必要である。
3.アンドロゲン作用が抑制されている。
4.抗ミューラー管ホルモンが作用する。
5.外性器の形成は胎生2か月で完了する。

解答2・4

解説

性分化とは?

性分化とは、胎生期に染色体に存在する遺伝子のプログラムのもとに、体の性(性腺、内性器および外性器の性)が分化する過程の総称である。性染色体(X染色体とY染色体のことを指します)に基づき精巣や卵巣が発育し、男女それぞれに特徴的な内性器(体の中の性器)や外性器(体の外側の性器)が造られる過程を指す。

1.× ウォルフ管が退縮するのは、女性である。男性の場合は、ウォルフ管が「退縮」ではなく分化する。ウォルフ管とは、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき(男性になるとき)、精巣上体・輸精管・精嚢に分化する。テストステロンが存在しないとき(女性になるとき)は退縮する。性管・外性器は、胎児精巣由来ホルモンの有無に依存して分化する。
2.〇 正しい。SRY遺伝子の発現が必要である。SRY遺伝子とは、哺乳類のY染色体上にあり、胚の性別を雄(男性)に決定する遺伝子である。SRY遺伝子は精巣決定因子ともいわれ、未分化性腺は精巣に分化する。
3.× アンドロゲン作用が抑制されている。アンドロゲン(雄性ホルモン、男性ホルモン)とは、ステロイドの一種で、生体内で働いているステロイドホルモンのひとつである。アンドロゲンにはテストステロンとジヒドロテストステロン (dihydrotestosterone;DHT)があり、精巣の分化、機能、組織形成、さらに内性器・外性器の形成に重要な役割を果たす。精巣のライディッヒ細胞からは男性ホルモンであるアンドロゲンが分泌され、妊娠9〜20週にかけて精巣周囲の環境を整えながら、体外の陰嚢・陰茎を形成する。
4.〇 正しい。抗ミューラー管ホルモンが作用する。Müller<ミュラー>管は、セルトリ細胞から分泌される抗ミュラー管ホルモンが存在するとき退縮し、存在しないとき子宮・卵管・腟上部に分化する。Müller<ミュラー>管は男性では退化するが、代わりにWolff<ウォルフ>管が発達する。 Wolff<ウォルフ>管は、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき精巣上体・輸精管・精嚢に分化し、存在しないとき退縮する。また、性腺の位置も胎児精巣由来ホルモンの有無に依存する。
5.× 外性器の形成は、「胎生2か月」ではなく「胎生6か月」で完了する。外性器の分化は胎生10週~12週までには始まり、男性の外性器の分化は12~13週ごろに急速に発達する。外陰の形成は胎生18~20週ごとに完成する。

 

 

 

 

 

 

29 33歳の女性。卵管因子による不妊のため1年前から治療を開始し、今回初めて体外受精―胚移植<IVF-ET>を受けることになった。
 女性への治療方法の説明で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「移植する胚は1個です」
2.「胚は卵管内に移植します」
3.「卵子の採取には腹腔鏡を使用します」
4.「成熟卵胞を穿刺して卵子を採取します」
5.「顕微鏡下で精子を卵子に注入し受精させます」

解答1・4

解説

本症例のポイント

・33歳の女性。
・1年前:卵管因子による不妊治療を開始。
・初めて:体外受精―胚移植<IVF-ET>を受ける。
→体外受精―胚移植<IVF-ET>とは、受精し分裂した卵を子宮内に移植することである。排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触(媒精)させて受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことであり、移植する胚は1個である。つまり、同じお皿に精子と卵子を一緒に培養して受精をさせる一般的な体外受精のことをいう。

1.〇 正しい。「移植する胚は1個です」「成熟卵胞を穿刺して卵子を採取します」と女性への治療方法の説明をする。体外受精―胚移植<IVF-ET>とは、受精し分裂した卵を子宮内に移植することである。排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触(媒精)させて受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことであり、移植する胚は1個である。回収された卵胞は顕微鏡下で観察し、卵子が見つかると清潔操作で培養液中に回収する。つまり、同じお皿に精子と卵子を一緒に培養して受精をさせる一般的な体外受精のことをいう。
2.× 胚は「卵管内」ではなく子宮内に移植する。外子宮口から子宮内腔へとカテーテルを挿入し、胚を移植する。
3.× 卵子の採取には「腹腔鏡」ではなく経腟超音波で静脈麻酔あるいは局所麻酔下を使用し行う。これを経腟超音波下採卵法という。経腟プローブを挿入して、超音波画像を見ながら卵巣の中の卵胞に採卵針(採卵専用の針)を刺して卵胞液とともに卵子を吸引・採取する。卵子はとても小さいため、顕微鏡を使って卵胞液の中に卵子を観察し卵子の質を確認する。ちなみに、腹腔鏡手術とは、腹部に5~12mm程度の小さな切開(穴)をあけて、内視鏡や手術のための鉗子やハサミを挿入するための筒を挿入し、術者は、モニターを見ながら、他のポートから挿入した手術道具(鉗子やハサミ)により手術を行う方法を指す。
5.× 顕微鏡下で精子を卵子に注入し受精させる方法は顕微授精(ICSI)である。顕微授精(ICSI)とは、細いガラス針の先端に1個の精子を入れて卵子に顕微鏡で確認しながら直接注入する方法である。男性側に原因のある不妊症に対して行われる。

主な生殖補助医療

顕微授精(ICSI:卵細胞質内精子注入法)とは、体外受精がうまくいかない場合や精子の数が非常に少ない重症の男性不妊症が発覚した場合に行われ、精子を直接卵子に注入する顕微授精のことである。

体外受精―胚移植<IVF-ET>とは、受精し分裂した卵を子宮内に移植することである。排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触(媒精)させて受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことであり、移植する胚は1個である。つまり、同じお皿に精子と卵子を一緒に培養して受精をさせる一般的な体外受精のことをいう。

凍結融解胚移植(FET)とは、採卵をして受精した胚を一旦凍結して、次以降の周期で胚を融解し移植する技術のことである。凍結保護剤の入った培養液の中に胚(受精卵)を入れて急速に融解し、融解後数時間~数日培養して最終的な状態を確認して子宮内に移植する。凍結融解胚移植出生児が年々増えている理由として、2つ挙げられる。①:1回の採卵で複数個の胚を凍結できることが多く複数回胚移植ができること、②:着床に適した状態で胚を子宮に移植することができ高い妊娠率が見込めること、③:胚の凍結融解技術が向上し、ほとんど胚がダメージを受けなくなったことなどである。

 

 

 

 

30 妊娠による母体の生理学的変化で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.血清アルブミン値は上昇する。
2.血中尿素窒素は低下する。
3.凝固機能が抑制される。
4.心拍出量が増える。
5.腹式呼吸になる。

解答2・4

解説

妊娠中の生理的機序

心疾患合併の頻度は全分娩の1~3%である。妊娠により母体では様々な生理的変化が出現する。中でも、循環器系変化は顕著である。循環血液量と心拍出量は妊娠の進行と伴に増加し、妊娠28~32週頃にはピークとなり、非妊娠時の約1.5倍の増加を示す。正常妊娠ではこうした増加に対し、末梢血管抵抗が低下し、腎臓や子宮への血流量を増加させている。実際、腎血流量は非妊娠時に比べ30%増加し、子宮血流量は10倍になる。これらの循環変化は母体が順調に胎児を育んで行く上に必須のものであるが、心疾患を合併した妊婦ではしばしば負担となる。また、分娩中は子宮収縮により静脈環流量が増加し、第2期では努責による交感神経興奮により頻脈になり、心拍出量が増加する。したがって、分娩中は心疾患合併妊婦の症状が悪化する危険な時期といえる。分娩後(産褥早期)、子宮は急速に収縮し静脈環流量が増加するが、循環血液量は急には減少しないため、一過性に心負担は増加する。この心拍出量増加は、産後の利尿により循環血液量が減少するまで継続する。産褥期に一過性に浮腫が増悪することがあるが、こうした循環器系変化のためと考えられる。

(※一部引用:「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」(中井章人著,東京医学社)より)

1.× 血清アルブミン値は「上昇」ではなく低下する。妊娠中の総たんぱく質、アルブミンは低下し、総脂質、総コレステロール、中性脂肪は増加する。膠質浸透圧は血中アルブミン濃度に大きく依存し、妊婦の血中アルブミン濃度は減少するが、妊娠高血圧腎症ではさらに減少する。ちなみに、血清アルブミン値は、栄養状態の評価としても用いられる。栄養状態を検査できる項目として、血清総たんぱく(TP)、アルブミン(Alb)、 コリンエステラーゼ(ChE)、ヘモグロビン(Hb)、総リンパ球数(TLC)である。血清アルブミンの血中半減期は、約15~21日であり、2~3週間前の静的栄養状態を示す。
2.〇 正しい。血中尿素窒素は低下する。なぜなら、妊娠中は心拍出量の増加、腎機能の亢進や循環器系・泌尿器系の機能の亢進が起きるため。尿素窒素とは、血中の尿素に含まれる窒素成分であり、通常は腎臓でろ過されて尿中へ排出される。腎機能が低下するとろ過しきれない分が血中に残るため、高値である場合は腎機能低下を示す。血中尿素窒素は、腎機能の指標となり、高値で急性腎臓病・慢性腎臓病・心不全などが疑われる。ちなみに、基準値:8mg/dl~20mg/dlである。
3.× 凝固機能は「抑制」ではなく亢進される。出産時には500cc程度の出血が見込まれるため、出血のリスクから母体を守るために、妊娠後期になると血液の凝固機能が高まるとされる。したがって、凝固因子では第Ⅶ・Ⅷ・Ⅸ因子の増加が認められる。
4.〇 正しい。心拍出量が増える。妊娠10週で増加し始め、25~30週の間に妊娠前のCO (4~6L/分)を30~50%上回るピークに達する。 1回拍出量は妊娠5週から20〜35%増加して約32週で最大に達し、以後わずかに減少していく。心拍数も心拍出量の増加に影響し、 分娩時には拍出量はさらに増加する。
5.× 「腹式呼吸」ではなく胸式呼吸になる。なぜなら、妊娠時には胎児の成長で横隔膜が圧迫されると腹式呼吸が難しくなるため。「妊娠子宮の増大で横隔膜は挙上され、胸郭は横に拡大する。そのため、機能的残気量、残気量は減少する。呼吸数はほとんど変化しないが、妊娠が進行するにつれ、一回換気量、分時換気量は増加する。一回換気量の増加、循環ヘモグロビン量の増加、心拍出量の増加で、妊娠によって増大した必要酸素量に見合う酸素を摂取する。妊婦では呼吸が増加し、血中Pco2濃度は低下するが、これはプロゲステロンが呼吸中枢のPco2反応閾値に作用する結果と考えられている(※参考:「産科疾患の診断・治療・管理」より)」。

(※図引用:「妊娠期の生理学的変化」より)

 

 

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