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次の文を読み50、51の問いに答えよ。
Aさん(41歳、初産婦、会社員)。夫(45 歳、会社員)と2人暮らし。妊娠39週で体重3,180gの男児を吸引分娩で出産した。会陰切開部の痛みが強いため、産褥3日まで鎮痛薬を内服し日中のみ母児同室をしていた。「母乳で育てたいが、傷が痛くて授乳をするのがつらい」と話す。夫の両親は既に死亡し、Aさんの実母は実父の介護のため多忙で、退院後の育児のサポートは得られない状況である。
51 Aさんは市内の助産所で産後ケアを受けた。夫はAさんの退所に合わせて1週間の休みを取ることとなった。退所前日、Aさんは「夫が仕事に戻れば日中は1人で育児をしなければならず、授乳について相談できる人もいないので不安です」と訴えた。助産所の助産師はAさんに、困ったことがあれば連絡するように伝えた。
退所後の早期の支援についての提案で最も適切なのはどれか。
1.「保健センターの新生児訪問を受けましょう」
2.「インターネットから情報を得ましょう」
3.「地域の育児サークルに参加しましょう」
4.「育児講演会に参加しましょう」
解答1
解説
・Aさん:産後ケアを受けた。
・夫:退所に合わせて1週間の休みをとる。
・退所前日:Aさん「夫が仕事に戻れば日中は1人で育児をしなければならず、授乳について相談できる人もいないので不安です」と。
・「困ったことがあれば連絡するように」と伝えた。
→本症例は、「1人で育児をしなければならず、授乳について相談できる人もいないので不安」と訴えている。①一人での不安、②授乳についての不安の両方を解消できる支援が必要となる。
1.〇 正しい。「保健センターの新生児訪問を受けましょう」と退所後の早期の支援につなげる。本症例は、「1人で育児をしなければならず、授乳について相談できる人もいないので不安」と訴えている。①一人での不安、②授乳についての不安の両方を解消できる支援が必要となる。ちなみに、保健センターとは、市町村が設置・運営している。地域住民に対して直接的な保健サービスを提供することを目的としている。保健センターは設置することが義務ではないため、市町村に保健センターがない場合もある。名称についても「保健福祉センター」、「健康センター」などと称する場合がある。また、新生児訪問とは、新生児訪問指導事業のことであり、保健師、助産師、看護師が家庭を訪問してくれる制度で生後28日以内の児がいる家庭を対象に行われ、母子が健康であるかどうかを確認し、必要なケアや支援を行うことを第一の目的としている。
2.× あえてインターネットから情報を得る必要はない。なぜなら、各家庭ごと様々な事情があり、授乳についても様々な情報が飛び交っているため必ず解決できるとは限らないため。インターネットは膨大な情報にアクセスできる反面、その情報を取捨選択、つまり使う人にある程度、調べるものへの知識がないと、余計に産後の母親を混乱させる危険もある。専門性の高い職種に直接相談するのが望ましい。
3.× 「地域の育児サークル」「育児講演会」に参加しても確実に不安が解消されるとは限らない。なぜなら、授乳に関しては、話しにくい事柄(センシティブな情報)でもあるため。個人情報保護に関するコンプライアンスプログラムの要求事項では、センシティブ情報の具体的項目に関して、以下の5項目を挙げている。①思想及び信条に関する事項、②政治的権利の行使に関する事項、③労働者の団体交渉に関する事項、④医療、性に関する事項、⑤犯罪の経歴、人種、民族、社会的身分、門地並びに出生地及び本籍地など社会的差別の原因となる事項である。ちなみに、研修会(講演会)は、テーマについて専門性の高い話ができる講師や、テーマに沿った体験をもつ有名人を講師として招き、開催することができる。さらに民生委員を対象にすることで、地域へ波及する効果も期待できる。
産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。
(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(33歳、1回経産婦)は、妊娠39週3日に陣痛が発来したため午前5時に総合病院の産婦人科病棟に入院した。その後、順調な経過で分娩室に入室した。午前8時10分に震度6弱の地震が発生した。一時的に分娩室の照明が消えたが、非常用電源が作動して再度照明が点灯した。この時点で、病棟内には助産師5名と医師1名が勤務していた。分娩室で付き添っていたB助産師が分娩進行を確認したところ、子宮口全開大、Station+2まで進行していた。Aさんは不安な様子であったが、3分ごとに強い陣痛を感じていきみを抑えきれない状態であった。B助産師は、病棟内のリーダーから、分娩室でAさんに継続的に付き添うように指示を受けた。
52 B助産師の対応で正しいのはどれか。
1.インファントラジアントウォーマーを分娩台の近くに寄せる。
2.Aさんをストレッチャーに移動する。
3.分娩室の入口の扉を開放する。
4.分娩台の固定を解除する。
5.分娩室の照明を消す。
解答3
解説
・Aさん(33歳、1回経産婦)
・妊娠39週3日:陣痛発来、午前5時入院。
・その後:経過順調。
・午前8時10 分:震度6弱の地震発生。
・一時的に分娩室の照明が消えたが、非常用電源が作動して再度照明が点灯した。
・この時点:病棟内には助産師5名と医師1名が勤務中。
・分娩進行:子宮口全開大、Station+2まで進行。
・Aさん:不安な様子、3分ごとに強い陣痛を感じていきみを抑えきれない状態。
・リーダー指示:「B助産師は分娩室でAさんに継続的に付き添うように」
→Aさんは、子宮口全開大まで進行していることから分娩第2期である。基本的に分娩第2期は、児の娩出を行う。胎盤剝離徴候があれば胎盤娩出後避難準備する。リーダーからも「B助産師は分娩室でAさんに継続的に付き添うように」と指示されていることから、産婦を安全確保しながら①避難路の確保、②スタッフの移動確保のため分娩室の入口の扉を開放する。
(※参考:「災害発生時の対応マニュアル作成ガイド P38」公益社団法人 日本看護協会より)
1.× インファントラジアントウォーマーを分娩台の近くに寄せる必要はない。なぜなら、地震の余震によりインファントラジアントウォーマーが倒れたり動いたりすることで、妊婦に危険を及ぼす恐れがあるため。ちなみに、インファントラジアントウォーマーとは、新生児の体温が奪われないように温める機械であり、周囲の物体に熱が移動して喪失する伝導の予防策である。
2.× Aさんをストレッチャーに移動する必要はない。なぜなら、基本的に避難は、分娩第3〜4期に行うため。また、リーダーから「B助産師は分娩室でAさんに継続的に付き添うように」と指示されている。避難指示があった場合、Aさんをストレッチャーに移動する。
3.〇 正しい。分娩室の入口の扉を開放する。Aさんは、子宮口全開大まで進行していることから分娩第2期である。基本的に分娩第2期は、児の娩出を行う。胎盤剝離徴候があれば胎盤娩出後避難準備する。産婦を安全確保しながら①避難路の確保、②スタッフの移動確保のため分娩室の入口の扉を開放する。
4.× 分娩台の固定を解除する必要はない。なぜなら、地震の余震により分娩台が動くことで、処置がうまくできないだけでなく妊婦に危険を及ぼす恐れがあるため。基本的に避難は、分娩第3〜4期に行う。
5.× 分娩室の照明を消す必要はない。なぜなら、照明がないことは処置がうまくできないだけでなく妊婦に危険を及ぼす恐れがあるため。停電にも備え、分娩室の入口の扉を開放する。設問から「一時的に分娩室の照明が消えたが、非常用電源が作動して再度照明が点灯した」状態である。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(33 歳、1回経産婦)は、妊娠39週3日に陣痛が発来したため午前5時に総合病院の産婦人科病棟に入院した。その後、順調な経過で分娩室に入室した。午前8時10 分に震度6弱の地震が発生した。一時的に分娩室の照明が消えたが、非常用電源が作動して再度照明が点灯した。この時点で、病棟内には助産師5名と医師1名が勤務していた。分娩室で付き添っていたB助産師が分娩進行を確認したところ、子宮口全開大、Station+2まで進行していた。Aさんは不安な様子であったが、3分ごとに強い陣痛を感じていきみを抑えきれない状態であった。B助産師は、病棟内のリーダーから、分娩室でAさんに継続的に付き添うように指示を受けた。
53 午前8時50分、Aさんは正常分娩で出産した。児はよく啼泣し皮膚色は良好で、Aさんと児はB助産師とともに分娩室で待機していた。初回の強い揺れのあと2回の弱い揺れが発生した。午前11時にB助産師は上階で火災が発生したとの連絡を受け、Aさんと児を分娩室から避難させることになった。Aさんは軽度の後陣痛を感じているが、意識清明で自立歩行が可能である。分娩室は6階建ての病院の3階に位置している。
B助産師の避難時の対応で正しいのはどれか。
1.屋上を目指して避難する。
2.児を保温できる物品を携行する。
3.児をAさんより先に避難させる。
4.避難のためにエレベーターを確保する。
解答2
解説
・午前8時50分:出産(正常分娩)。
・児:啼泣、皮膚色は良好。
・初回の強い揺れのあと2回の弱い揺れが発生した。
・午前11時:上階で火災発生。
・Aさん:軽度の後陣痛、意識清明で自立歩行が可能。
・分娩室:6階建ての病院の3階に位置。
→災害発生時は病院のアナウンスに従い避難・誘導を行う必要がある。アナウンスがない場合の誘導方法については、各病院で提示された指揮命令系統に従う。今回、①地震が起こったこと、②上階で火災発生していることに考慮して避難する必要がある。
新生児の保温は重要である。避難の際は、毛布やバスタオルで児をおおい、母親が新生児
を抱いて避難する。または、避難場所で児を母親に手渡す。エレベーターは閉じ込められ
る危険があるため、使用しない。
1.× 屋上を目指して避難する必要はない。むしろ上階で火災発生しているため、屋上へ避難してはならない。
2.〇 正しい。児を保温できる物品を携行する。新生児の対応として、①母子同室中は、毛布やバスタオルで児を覆い、母親が抱っこし避難するように各病室を巡回し声をかける。②病児室に児を収容している場合は、母親に病児室に行くように声をかけ、母親と児のネームバンドを照合した上で児を母親に預ける。③避難時は状況により保温ブランケットを母親に預け、児を保温し避難してもらう。(※一部引用:「災害発生時の対応マニュアル作成ガイド P40〜41」公益社団法人 日本看護協会より)
3.× 児をAさんより先に避難させる必要はない。なぜなら、児の取り違えに発展する可能性があるため。また、母親の不安にも配慮しなくてはならないため、母親が抱っこし避難するように各病室を巡回し声をかける。
4.× 避難のためにエレベーターを確保する必要はない。むしろエレベーターは止まってしまう恐れや重症患者のためエレベーターは使用しない。
【避難経路と避難方法】
・災害発生時は病院のアナウンスに従い避難・誘導を行う。
・アナウンスがない場合は、安全を確認し、まずはフロア内での避難誘導を行う。
・歩行可能な妊産褥婦は、階段または避難用スロープを使用し避難する。
・エレベーターは使用しない。
・入院時オリエンテーションで、避難経路と災害発生時のオリエンテーションを行う。
【病棟患者の避難】
①妊産褥婦・婦人科患者
・点滴中の患者のラインの扱いを決めておき、状況判断して、自分で対処してもらうか、スタッフが対処するなどして、避難誘導を行う。
・尿道留置カテーテル挿入患者は、留置したまま避難し安全な場所で看護職が抜去する。
・胎胞形成のある安静中の妊婦については、妊婦自身の生命を優先し避難するように誘導する。
②重症患者
・意識レベルの低下した患者、麻酔下にある患者や麻薬使用患者、術直後の患者はトリアージに従って担送する。
・重症患者には、ナースステーション内のナースコールボードと病室前のネームプレートに赤いマークをつけておくなどすべてのスタッフが分かるようにしておく。
③新生児
・母子同室中は、毛布やバスタオルで児を覆い、母親が抱っこし避難するように各病室を巡回し声をかける。
・病児室に児を収容している場合は、母親に病児室に行くように声をかけ、母親と児のネームバンドを照合した上で児を母親に預ける。
・避難時は状況により保温ブランケットを母親に預け、児を保温し避難してもらう。
④患児の母親が退院した児について
・保育器収容中の患児は、酸素は中止し、点滴は抜針してバスタオル・保温ブランケットで覆い、看護職が抱っこもしくは新生児避難具に収容し避難する。
・コット収容中の患児は、保温ブランケットで覆い新生児避難具に収容し避難する。
(※一部引用:「災害発生時の対応マニュアル作成ガイド P40〜41」公益社団法人 日本看護協会より)
次の文を読み54の問いに答えよ。
Aさん(28歳、初産婦)。産婦人科病院にて妊婦健康診査を受けていた。合併症はなく、妊娠経過および胎児の発育は順調であった。妊娠32週以降、胎位は骨盤位であった。経腟分娩と帝王切開術のそれぞれに関する胎児および母体のリスクについて主治医からの説明を受けて、Aさんと夫は帝王切開術を選択し、文書による同意をした。妊娠38週5日、脊髄くも膜下麻酔にて帝王切開術が実施された。体重3,210gの男児を出産し、術中出血量は羊水を含め800mLで、手術経過は順調であった。手術後8時間までAさんの全身状態に異常を認めていなかった。手術翌日の朝7時、助産師がAさんの病室を訪れたところ、心肺停止の状態であった。助産師からの連絡で主治医が駆けつけ蘇生が開始されたが反応せず、Aさんの死亡が確認された。Aさんの死亡原因は特定できていない。死亡の連絡を受けたAさんの夫が病院に到着した。当初、夫は混乱した様子であったが主治医と助産師からの状況の説明後に少し落ち着きを取り戻した。
54 この時点で、夫に対して伝える内容として適切なのはどれか。
1.「Aさんの司法解剖が必要です」
2.「産科医療補償制度の対象になります」
3.「帝王切開術の合併症による死亡ではありません」
4.「医療事故調査の実施について病院内で検討を行います」
解答4
解説
・Aさん(28歳、初産婦、合併症なし)
・妊娠経過および胎児の発育:順調
・妊娠32週以降:骨盤位
・主治医からの説明後:文書による同意あり
・妊娠38週5日:脊髄くも膜下麻酔にて帝王切開術が実施。
・体重3,210gの男児(術中出血量:羊水を含め800mL、手術経過:順調)
・手術後8時間まで:異常なし。
・朝7時:Aさん心肺停止の状態(死亡原因:特定できず)
・当初、夫は混乱した様子(状況の説明後に落ち着く)
→Aさんの死亡原因は「特定できていない」。言った・言わない論争にならないためにも、確実なことを感情論抜きに説明していくことが大切である。
1.× Aさんの司法解剖は必要とはいえない。なぜなら、司法解剖は、犯罪性のある死体またはその疑いのある死体の死因などを究明するために行われる解剖であるため。司法検視の結果、犯罪に関係ある死体、もしくはその疑いのある死体について、死因、創傷の部位・程度、成傷器の種類・用法、死後経過時間、血液型、その他参考事項などを明らかにするために、鑑定を司法警察員・検察官・裁判官などの嘱託・命令によってされて行うものである。
2.× 産科医療補償制度の対象ではない。対象は、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子である。ちなみに、産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。
3.× 「帝王切開術の合併症による死亡ではありません」と断定することはできない。なぜなら、Aさんの死亡原因は「特定できていない」ため。言った・言わない論争にならないためにも、確実なことを感情論抜きに説明していくことが大切である。ちなみに、帝王切開術の合併症として、出血、周辺臓器の損傷(膀胱・直腸・尿管など)、赤ちゃんの損傷(擦り傷・切り傷)、赤ちゃんの一過性多呼吸、術後の腸管麻痺、腹腔内感染、創部離開、血栓塞栓症などが考えられる。
4.〇 正しい。「医療事故調査の実施について病院内で検討を行います」と説明する。医療事故調査・支援センターとは、医療法第6条の15第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める団体で医療事故調査を実施する機関である。現在、社会問題となっている医療事故の再発防止を目的として、厚生労働省や日本医師会などを中心として、設置に向けた議論が進行している。初期の対応が終わったら、院内に医療事故調査委員会を設置し、収集した情報を分析して事故原因を究明していく必要がある。
次の文を読み55の問いに答えよ。
Aさん(17歳、高校生)。無月経を主訴に、母親とともに病院を受診した。妊娠反応は陰性で、思春期やせ症による無月経と診断された。その後、定期的に病院を受診し、月経は再開した。2回目の受診時からは、交際中の男性がついてくるようになった。ある日、Aさんは1人で受診し、相談室で助産師に話し始めた。Aさんは「友達の紹介で、3か月前から彼と付き合い始めた。彼はとてもいい人。でも、最近私が待ち合わせに少し遅れると、イライラして腕を引っ張ったり、大声で怒鳴ったりするようになった。昨日は殴られそうになった。その後はいつもの優しい彼に戻って、二度としないと謝ったから許した。彼を怒らせる私も悪いと思う。でも、ちょっと怖かった」と話した。
55 Aさんと交際中の男性との関係を説明する理論で適切なのはどれか。
1.適応理論
2.ストレス対処理論
3.暴力のサイクル理論
4.愛着<アタッチメント>理論
解答3
解説
・Aさん「友達の紹介で、3か月前から彼と付き合い始めた。彼はとてもいい人。でも、最近私が待ち合わせに少し遅れると、イライラして腕を引っ張ったり、大声で怒鳴ったりするようになった(①緊張蓄積期)。昨日は殴られそうになった(②暴力暴発期)。その後はいつもの優しい彼に戻って、二度としないと謝ったから許した(③悔恨期)。彼を怒らせる私も悪いと思う。でも、ちょっと怖かった」と話した。
1.× 適応理論(ロイ)とは、人間が絶えず変化する生活条件や健康状態などの環境(刺激)に対して適応を維持しようとする人間の適応能力に着目した理論で、人間を全体的適応システムととらえ、理論の中で看護過程を明確に示すものである。つまり人間をシステムとして見て分解・分析し、そして統合をしていく。4つの適応様式として、①生理的様式、②自己概念様式、③役割機能様式、④相互依存様式があげられる。
2.× ストレス対処理論は、さまざまなストレスに対してどのように対処していくのかを明らかにしようとする理論である。原因となるストレッサーを取り除くことができれば、ストレス反応をなくすことができる。これはストレス対処法の最も基本になるアプローチである。ストレッサーは複合して作用するので、それぞれのストレッサーのレベルを低減し、その総和を下げることも重要である。
3.〇 正しい。暴力のサイクル理論がAさんと交際中の男性との関係を説明する理論である。暴力のサイクル理論(Walker, 1979)とは、ドメスティックバイオレンス(DV)に関連した理論である。パートナー暴力関係にある者は、①緊張蓄積期(緊張形成期)、②暴力暴発期、③悔恨期(ハネムーン期)という3つの周期を繰り返すというものである。①緊張蓄積期(緊張形成期)とは、張りつめた雰囲気になり、暴言などの比較的軽い虐待を起こすと言われている。この時期に加害者の緊張が徐々に高まる。②暴力暴発期とは、緊張が最高潮に達し、ちょっとした刺激をきっかけに暴力の暴発が始まる時期である。加害者はこの爆発により、高まった緊張を解く。③悔恨期(ハネムーン期)は、加害者が暴力をふるったことに対して謝罪し、優しい言葉をかけたりなどの魅力的な行動をとる。被害者は、この時期の相手に強く惹かれ、関係を解消することができないと言われている。このサイクルは広く知られているにも関わらず、これまで実証的検討はなされていない。
4.× 愛着<アタッチメント>理論は、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる。愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。