第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午後6~10】

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6 自分の性別を認識できるようになる年齢はどれか。

1.1歳ころ
2.3歳ころ
3.5歳ころ
4.7歳ころ

解答

解説

(※図:日本版デンバー式発達スクリーニング検査)

1.× 1歳ころは、パパ・ママなど意味のある言葉を1語いえる時期である。自発的になぐり書きが行えたり、検査者とボール遊びが行えるようになる。

2.〇 正しい。3歳ころは、自分の性別を認識できるようになる年齢である。反対類推や前後・上下の理解、空腹や疲労、寒いことの理解も付いてくる。ちなみに、反対類推とは、「ゾウは大きい、ではネズミは?」 「氷は冷たい、ではお湯は?」 文字による意味理解のことである。

3.× 5歳ころは、単語の定義や物の素材の理解がついてくる。

4.× 7歳ころは、論理的思考も育まれる時期で、保存の概念が理解できる時期である。相手の気持ちを理解できるほか、相手が何を言いたいのかも理解できる。

 

 

 

 

 

7 Aさん(33歳、初産婦、会社員)。結婚後3年で妊娠。パートナーと2人暮らしで、勤務歴は10年。妊娠28週0日、妊婦健康診査のため受診し、経過は順調であった。診察後に、Aさんは助産師に「職場では妊娠を経験した人がいないので気持ちを分かってもらえない。妊娠は初めてのことなので、少しおなかが張ったりするとすぐ不安になってしまう。パートナーは妊娠を喜んでいるので、体調が悪いときも心配させないように明るく振る舞うようにしている。1人でいると落ち込んで涙が出ることがある」と訴えた。
 Aさんの訴えを受け止めた後の助産師の対応として最も適切なのはどれか。

1.「この時期の不安はよくあることです」
2.「パートナーに不安な気持ちを話してみましょう」
3.「体調が悪いときは、遠慮せずに仕事を休みましょう」
4.「妊娠の経過は順調なので、気にせずに頑張りましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦、会社員、結婚後3年で妊娠)。
・2人暮らし(パートナー、勤務歴10年)。
妊娠28週0日:経過順調。
・Aさん「職場では妊娠を経験した人がいないので気持ちを分かってもらえない。妊娠は初めてのことなので、少しおなかが張ったりするとすぐ不安になってしまう。パートナーは妊娠を喜んでいるので、体調が悪いときも心配させないように明るく振る舞うようにしている。1人でいると落ち込んで涙が出ることがある」と訴えた。
→Aさんの気持ちに寄り添いながら支援していこう。一般的に、妊娠8ヶ月(28~31週)の時期は、出産が近づいてくるため、不安やストレスを感じることもある時期である。赤ちゃんに会える喜びと親になること、変化に対する不安などから、気持ちが不安定になることがある。

1.4.× 「この時期の不安はよくあることです」「妊娠の経過は順調なので、気にせずに頑張りましょう」と伝える必要はない。なぜなら、Aさんの気持ちを軽視・否定しているように受け取られかねませんため。

2.〇 正しい。「パートナーに不安な気持ちを話してみましょう」と伝える。なぜなら、パートナーと気持ちを共有することで、Aさんの気持ちも軽減し、パートナーの支援も受けられるため。

3.× 「体調が悪いときは、遠慮せずに仕事を休みましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、Aさんの仕事内容や仕事環境を具体的に評価できていない状態であるため。Aさんから「職場では妊娠を経験した人がいないので気持ちを分かってもらえない」と言っていることから、「遠慮せず休むこと」でさらに会社に居づらい環境となりえない。

 

 

 

 

8 30歳の初産婦。妊娠41週で体重3,800gの男児を経腟分娩で出産した。8年前に統合失調症と診断され、精神科に通院し向精神薬を内服している。羊水混濁+、Apgar<アプガー>スコアは1分後6点、5分後8点であった。生後1日、児は啼泣時に下顎と両側上肢の震えがみられる。安静時の体温37.0℃、呼吸数40/分、心拍数200/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>98%。呻吟や努力性呼吸はない。血糖値は60mg/dLであった。
 このときの児の全身状態に直接関連しているのはどれか。

1.血糖値
2.羊水混濁
3.向精神薬からの離脱
4.1分後のApgar<アプガー>スコア

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠41週:体重3,800gの男児出産)
・8年前:統合失調症(精神科に通院し向精神薬を内服中)。
・羊水混濁+、アプガースコア:1分後6点5分後8点
・生後1日:児は啼泣時に下顎と両側上肢の震えがみられる。
・安静時の体温37.0℃、呼吸数40/分、心拍数200/分、SpO2:98%。
呻吟や努力性呼吸はない。血糖値は60mg/dLであった。
新生児薬物離脱症候群が疑われる。ほかの選択肢も消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 血糖値が直接の原因とは考えにくい。なぜなら、児の血糖値は60mg/dL正常範囲であるため。ちなみに、45mg/dl以下を低血糖疑いとして鑑別診断や治療を検討するほうがよいとされている。

2.× 羊水混濁が直接の原因とは考えにくい。なぜなら、今回の児の呻吟や努力性呼吸はなく、発熱・呼吸数とも正常範囲内であるため。羊水混濁とは、胎児が子宮内で大腸から老廃物(胎便)を排出することで羊水が濁っている状態を指す。羊水混濁の原因として、胎児のストレスや胎便吸引症候群を示唆することがある。ちなみに、胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。

3.〇 正しい。向精神薬からの離脱がもっとも関連性が高い。なぜなら、Aさんは統合失調症により向精神薬を内服中であったため。向精神薬とは、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入剤(睡眠薬)など薬の総称である。ちなみに、新生児薬物離脱症候群とは、お産の前に投与された薬や常用している嗜好品が、胎盤を通過して生まれてきた赤ちゃんに一時的な効果を及ぼし、その物質が赤ちゃんの体から排泄される過程で、赤ちゃんの脳、消化管や自律神経の症状が一時的に現われることです。脳の症状として、筋肉の緊張がなくなってグッタリしたり、不安興奮状態で手足をブルブルふるったりすることがあります。もっと重い症状として、息を止めたり、けいれんしたりすることがあります。消化管の症状として、下痢や嘔吐がみられる場合もあります。自律神経の症状として、たくさん汗をかいたり、熱をだしたりします。この原因として、てんかんの治療薬、不安感などの精神の安定をはかる薬、鎮 痛薬や喘息の治療に使う飲み薬などです。嗜好品には、アルコー ルやカフェイン、非合法の麻薬などがあります「※一部引用:「重篤副作用疾患別対応マニュアル 新生児薬物離脱症候群」厚生労働省HPより」。

4.× 1分後のアプガースコア(6点)が直接の原因とは考えにくい。なぜなら、5分後は8点と改善しているため。ちなみに、アプガースコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。10~8点は正常、7~4点は軽症仮死、3~0点は重症仮死と判定する。

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

9 新生児および乳児のビタミンK欠乏性出血症の予防について適切なのはどれか。

1.ビタミンK2シロップは5%ブドウ糖液で希釈して投与する。
2.母乳栄養児では母親にビタミンKが豊富な食事摂取を勧める。
3.1か月児健康診査時に2回目のビタミンK2シロップを投与する。
4.人工栄養児では3か月までビタミンK2シロップを投与する必要がある。

解答

解説

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは?

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、出生後7日以内に起きるビタミンK欠乏に基づく出血性疾患である。出血斑や注射・採血など皮膚穿刺部位の止血困難、吐血、下血が認められ、重度の場合は頭蓋内出血など致命的な出血を呈する場合もある。特に第 2~4生日に起こることが多いものの出生後24時間以内に発症することもある。合併症をもつ新生児やビタミンK吸収障害をもつ母親から生まれた新生児、妊娠中にワルファリンや抗てんかん薬などの薬剤を服用していた母親から生まれた新生児では、リスクが高くなる。また、新生児でビタミンK欠乏状態に陥るのは、①母乳中のビタミンK含量が少ないこと、②ビタミンKは経胎盤移行性が悪いこと、③出生時の生体内の蓄積量が元々少ないうえ、腸内細菌叢が十分には形成されていないことが理由として考えている。

 ビタミンK欠乏性出血症の予防には、出生直後および生後1週間(産科退院時)ならびに生後1か月の3回、ビタミンK2シロップ1mL(2mg)をすべての合併症のない成熟新生児に投与する方式が普及している。

1.× ビタミンK2シロップは、「5%ブドウ糖液で希釈」せず、新生児の場合10倍程度に薄めて投与する。新生児の場合は、湯冷ましで10倍程度に薄める。湯冷ましとは、沸騰させたお湯を冷ました水のことである。また、母乳が飲めるようになった後はそのまま飲ませる。

2.〇 正しい。母乳栄養児では母親にビタミンKが豊富な食事摂取を勧める。なぜなら、新生児でビタミンK欠乏状態に陥る原因の一つに、母乳中のビタミンK含量が少ないことがあげられるため。

3.× 「1か月児健康診査時」ではなく生後1週間に、2回目のビタミンK2シロップを投与する。ケイツーシロップを合計 3 回 (出生2~3日後:哺乳確立後、 生後1週、 生後1ヵ月時)、 各1回1mL を投与して、 ビタミンKの欠乏を防ぐ。

4.× 「人工栄養児」ではなく完全母乳では3か月までビタミンK2シロップを投与する必要がある。なぜなら、母乳より人工乳には、ビタミンKが多く含まれているため。1か月健診の時点で人工栄養が主体(おおむね半分以上)の場合は、それ以降の投与を中止してもよいとされている。

ビタミンK2シロップの予防投与についてのご案内

ケイツーシロップは、 赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐためのお薬です。 ケイツーシロップ1mL あたり、 ビタミンK2を2mg含んでいます。日本の多くの産科施設では、 赤ちゃんに対してケイツーシロップを合計 3 回 (出生2~3日後:哺乳確立後、 生後1週、 生後1ヵ月時)、 各1回1mL を投与して、 ビタミンKの欠乏を防いでいます。 この方法でほとんどの赤ちゃんのビタミンK欠乏を予防できますが、 中には 3 回投与してもビタミンK欠乏性出血症を発症する赤ちゃんがいるので、 生後3か月まで毎週 1 回ケイツーシロップを投与する方法も勧められています。当院でもビタミンK欠乏をより確実に予防するために3か月法を採用しています。

新生児ビタミンK欠乏性出血症とは、生まれてから7日までに起こります。 特に生後2~4日目に起こりやすく、 消化管での出血が多いため、 血を吐いたり、便に血が混じったりします。

(※一部引用:「ビタミンK2シロップの予防投与についてのご案内」成城木下病院様HPより)

 

 

 

 

10 Aさん(33歳、初産婦)は、妊娠39週4日に体重3,380gの男児を正常分娩した。妊娠32週に妊娠糖尿病と診断され、インスリン治療を受けていた。出生2時間後に児は呼吸数80/分、心拍数160/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>88%、血糖値24mg/dLであった。児はNICUに入院し、保育器内で酸素投与とブドウ糖液の点滴静脈内注射が開始された。出生3時間後に児は呼吸数80/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>93%(保育器内酸素濃度40%)、血糖値は80mg/dLとなった。このとき、Aさんは初めてNICUを訪れた。
 NICUの助産師がAさんへ最初に行う対応で適切なのはどれか。

1.児を抱っこするよう促す。
2.人工乳の与え方を指導する。
3.保育器内で児にタッチングするよう促す。
4.感染予防対策として児への面会は最小限とするよう説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦)
・妊娠32週:妊娠糖尿病、インスリン治療。
・妊娠39週4日:体重3,380gの男児を正常分娩。
・出生2時間後:児は呼吸数80/分、心拍数160/分、SpO2:88%、血糖値24mg/dL。
・児:酸素投与ブドウ糖液の点滴静脈内注射が開始。
・出生3時間後:呼吸数80/分、SpO2:93%(保育器内酸素濃度40%)、血糖値は80mg/dL。
・Aさんは初めてNICUを訪れた。
→早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法についておさえておこう。

1.× 児を抱っこするよう促すことはできない。なぜなら、保育器内で多呼吸(新生児の場合:1分間に60回以上)がみられるため。したがって、現時点で、児を保育器外で抱っこを行える状況ではない。

2.× 人工乳の与え方を指導する優先度は低い。なぜなら、現在は点滴静脈内注射をしているため。また、Aさんから人工乳の希望もなく、母乳の選択肢がないという決断も時期尚早である。

3.〇 正しい。保育器内で児にタッチングするよう促す。なぜなら、母親に保育器内でのタッチングを促すことは、親子の絆を深めるだけでなく、母親の安心感の安定に寄与し、児の成長発達を促せると考えられるため。ちなみに、タッチングとは、意図的な身体への接触のことで、非言語的コミュニケーションの1つとして手や指で撫でる、さするなど肌と肌との触れ合いを通じた相互作用性のある行為であり、心の触れ合い、情緒的安定をもたらす。

4.× 感染予防対策として児への面会は最小限とするよう説明する必要はない。感染予防対策は重要ではあるが、むしろ、ディベロップメンタルケアの観点も取り入れる必要がある。ディベロップメンタルケアとは、早産で出生した低出生体重児や疾患をもって出生した新生児の成長発達を促すケアである。主な内容として、①ポジショニング、②ハンドリング、③早期母子接触、④タッチケアなどがある。光や音による刺激を緩和し、静かで暗くて温かい子宮内に近づけた環境に調整し、子宮内にいた時の姿勢に近づけたポジショニング(良肢位保持)を行う。また、赤ちゃんの睡眠覚醒リズムに合わせたケアを行い、体位変換やおむつ交換などでストレスがかからないよう優しい手技でケアを行う。また、家族の協力を得て、肌との触れ合いによる情緒的ケアも行う(※参考:「NICUにおける看護の取り組み」富山県HPより)。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
・出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
・継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

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