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次の文を読み51、52の問いに答えよ。
29歳の1回経産婦。妊娠41週0日、予定日超過で入院した。これまでの妊娠経過は母児ともに順調であった。
既往歴:前回は妊娠38週で体重3,280gの児を正常分娩した。
身体所見:身長160cm、体重65kg。体温36.5℃、脈拍72/分、整、血圧110/78mmHg。子宮口4cm開大、展退度80%以上、Station-1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方、未破水。胎児推定体重は3,030gで形態異常はない。胎位は頭位、胎児心拍数は130bpm。陣痛発来はしていない。
検査所見: 尿蛋白(-)、尿糖(-)。
51 オキシトシン点滴静脈内注射による分娩誘発を開始することとなった。
分娩誘発時の管理で適切なのはどれか。
1.投与開始前に頸管拡張を行う。
2.2日間連続での投与は行わない。
3.手動による滴下量の調整を行う。
4.投与開始後は分娩終了まで絶飲食とする。
5.開始時の投与速度は1〜2ミリ単位/分とする。
解答5
解説
・29歳の1回経産婦(妊娠41週0日、予定日超過で入院)。
・身体所見:身長160cm、体重65kg。体温36.5℃、脈拍72/分、整、血圧110/78mmHg。
・子宮口4cm開大、展退度80%以上、Station-1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方、未破水。
・胎児推定体重:3,030g(形態異常はない)。
・胎位は頭位、胎児心拍数は130bpm(陣痛発来はしていない)。
・検査所見: 尿蛋白(-)、尿糖(-)。
・オキシトシン点滴静脈内注射による分娩誘発を開始することとなった。
→オキシトシン点滴静脈内注射に関しての知識をしっかりおさえておこう。
(※図引用:「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020」日本産科婦人科学会より)
1.× 投与開始前に頸管拡張を行う必要はない。なぜなら、本症例の子宮口4cm開大、展退度80%以上、子宮頸管の硬度は軟であるため。ちなみに、吸湿性頸管拡張材とは、子宮収縮薬投与前の使用が効果的な陣痛を促す。吸湿性頸管拡張材は頸管内の水分を吸って徐々に子宮口を押し広げる器具であり、子宮口が硬い場合や分娩誘発時に使用される。子宮収縮薬は子宮口が開いていない場合、有効な陣痛が起きない可能性があるため、器械的に刺激して子宮口が開いてから投与することが望ましい。
2.× 2日間連続での投与を「行うこともある」。分娩の誘発において、「子宮筋の感受性は個人差が大きく、少量でも過強陣痛になる症例があることなどを考慮し、できる限り少量(2ミリ単位/分以下)から投与を開始し、陣痛発来状況及び胎児心音を観察しながら適宜増減すること。過強陣痛等は、点滴開始初期に起こることが多いので、特に注意が必要であること」が記載されている(※参考:「医療用医薬品 : オキシトシン」富士製薬工業株式会社様より)。
3.× 「手動」ではなく輸液ポンプによる滴下量の調整を行う。なぜなら、手動での滴下量調整は正確さに欠けるため。ちなみに、分娩の誘発において、「①点滴速度をあげる場合は、一度に1〜2ミリ単位/分の範囲で、30分以上経過を観察しつつ徐々に行うこと。②点滴速度を20ミリ単位/分にあげても有効陣痛に至らないときは、それ以上あげても効果は期待できないので増量しないこと。」が記載されている(※参考:「医療用医薬品 : オキシトシン」富士製薬工業株式会社様より)。
4.× 投与開始後は分娩終了まで絶飲食とする必要はない。一般的に異常がない場合(オキシトシン投与中も含め)は、分娩で消耗した体力・発汗による水分を回復するためエネルギー・水分補給を勧めていく。
5.〇 正しい。開始時の投与速度は1〜2ミリ単位/分とする。オキシトシンは子宮収縮の誘発、促進並びに子宮出血の治療目的で使用される。分娩誘発・促進目的の開始時の投与量は1〜2m IU/分から開始し、陣痛発来状況と胎児心拍等を観察しながら適宜増減していく。なお点滴速度は20m単位/分を超えないようにする。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P245」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
次の文を読み51、52の問いに答えよ。
29歳の1回経産婦。妊娠41週0日、予定日超過で入院した。これまでの妊娠経過は母児ともに順調であった。
既往歴:前回は妊娠38週で体重3,280gの児を正常分娩した。
身体所見:身長160cm、体重65kg。体温36.5℃、脈拍72/分、整、血圧110/78mmHg。子宮口4cm開大、展退度80%以上、Station-1、子宮頸管の硬度は軟、子宮口の位置は前方、未破水。胎児推定体重は3,030gで形態異常はない。胎位は頭位、胎児心拍数は130bpm。陣痛発来はしていない。
検査所見: 尿蛋白(-)、尿糖(-)。
52 妊娠41週1日、分娩誘発を行ったが、有効な陣痛は発来しなかった。41週2日の6時ころから自然に陣痛が発来した。10時、子宮口全開大、Station +3で自然破水した。14時、陣痛間欠3分、陣痛発作45秒。内診所見は、矢状縫合が横径に一致し、Station +4。体温36.6℃、脈拍88/分、整、血圧114/76mmHg。胎児心拍数陣痛図で、基線細変動は正常で、胎児心拍数150bpm、時折、軽度の変動一過性徐脈がみられる。
現在の状態で異常な所見はどれか。
1.陣痛間欠3分
2.陣痛発作45秒
3.変動一過性徐脈
4.胎児心拍数150bpm
5.矢状縫合が横径に一致
解答5
解説
・29歳の1回経産婦(予定日超過で入院)。
・妊娠41週1日:分娩誘発を行ったが、有効な陣痛は発来しなかった。
・41週2日6時:自然に陣痛が発来。
・10時:子宮口全開大、Station +3で自然破水した。
・14時:陣痛間欠3分、陣痛発作45秒。
・内診所見:矢状縫合が横径に一致し、Station +4。
・体温36.6℃、脈拍88/分、整、血圧114/76mmHg。
・胎児心拍数陣痛図:基線細変動は正常、胎児心拍数150bpm、時折、軽度の変動一過性徐脈。
→本症例は、分娩第2期である。分娩第2期の所見と異常をおさえておこう。
(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)
第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。
第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。
1.× 陣痛間欠3分は、異常な所見とはいえない。微弱陣痛とは、一旦分娩開始した(陣痛の間隔が10分以内ごとであり 、痛みを伴う子宮収縮により分娩が進行)にも関わらず、陣痛の強さが弱く、発作の持続が短く、かつ陣痛の間隔が長くなってしまい、分娩が進行しない状態をいう。子宮口の開き具合により、6分30秒以上(子宮口の開き:4~6cm)、6分以上(子宮口の開き:7~8cm)、4分以上(子宮口の開き:9~10cm)が陣痛周期の目安とされている。
2.× 陣痛発作45秒は、異常な所見とはいえない。過強陣痛とは、子宮口が十分に開いていないのに分娩直前の陣痛が過剰に強く起きる事をさす。子宮の収縮が非常に強く長く続くのが特徴で、定義として、子宮口7cmの過強陣痛(外側法)は、2分以上の陣痛持続時間の場合をいう。ちなみに、陣痛発作とは、陣痛の間(子宮の収縮と休止を一定の間隔で繰り返し)で、子宮が収縮するときをいう。
3.× 変動一過性徐脈は、異常な所見とはいえない。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍数減少が急速に起こり、開始から回復まで15秒以上2分未満の波形をいう。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。
4.× 胎児心拍数150bpmは、異常な所見とはいえない。胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。
【胎児心拍数基線】
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満
5.〇 正しい。矢状縫合が横径に一致は、現在の状態で異常な所見である。本児は、底在横底位が疑われる。低在横定位とは、異常分娩の1つであり、第2回旋が起こらなかったため骨盤底に達しても矢状縫合が横径に一致した状態である。児頭が横向きのまま下降するため、縦長の骨盤峡部で引っかかってしまい分娩が停止した状態となる。
(※図:児頭下降度に関する各種表現方法の対応表)
分娩時間は、陣痛発来(陣痛周期が10分間隔)から胎盤娩出までの時間である。陣痛とは、子宮の収縮が規則的に1時間に6回以上(間隔が 10 分以内)になったときである。つまり、分娩所要時間は、分娩第1期から第3期までの合計時間となる。
【分娩第1期】
陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間を指す。
・分娩第1期
「①潜伏期」と「②活動期」に分けられる。
①潜伏期:陣痛がリズミカルになり、子宮頸部が薄くなり4cmほど開いた状態まで(初産婦で12時間・経産婦で5時間程度かかる)の時期を示す。
②活動期:子宮口が4センチから10cm(全開)に開き、胎児の一部が胎盤内に降りてくる(初産婦で3時間・経産婦で2時間程度かかる)。いきみたくなって来る段階である。
・分娩第2期:赤ちゃんが産道を通っている間
子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間を指す。この段階は初産婦では平均45~60分間、経産婦では15~30分間続く。
・分娩第3期:「後産」の時期
胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間である。この段階は数分間で終わるのが普通であるが、最大30分ほど続くこともある。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(38歳、1回経産婦)。現在、パートナーと8歳の子どもとの3人暮らし。33歳からIgA腎症のため大学病院の腎臓内科に通院中で、病状の進行による腎機能の悪化のため人工透析の導入が予定された。高血圧症に対して内服薬による治療が開始されたが、血圧のコントロールは不良である。
53 Aさんは、月経が遅れていたため、市販の妊娠検査薬で検査して陽性であり産婦人科を受診した。経腟超音波検査で子宮内に胎囊が確認され、胎児の頭殿長<CRL>は20mmであった。医師の診察の後、Aさんは助産師に「まさか妊娠するとは思っていませんでした。主治医から今の状態での妊娠継続は難しいと言われています。パートナーには秘密で中絶したいと思っています」と話した。
Aさんの話を傾聴した後の説明で適切なのはどれか。
1.「パートナーとよく話し合いましょう」
2.「人工妊娠中絶には、分娩誘発が必要です」
3.「高血圧症の治療を中止すれば妊娠継続が可能です」
4.「1週間以内に、中絶を行うかどうかの決断が必要です」
5.「人工妊娠中絶の同意書は、医療者の前で署名してください」
解答1
解説
・Aさん(38歳、1回経産婦、33歳からIgA腎症)。
・3人暮らし:パートナーと8歳の子ども。
・妊娠検査薬で検査:陽性。
・経腟超音波検査:子宮内に胎囊あり、胎児の頭殿長<CRL>20mm。
・Aさん「まさか妊娠するとは思っていませんでした。主治医から今の状態での妊娠継続は難しいと言われています。パートナーには秘密で中絶したいと思っています」と。
→中絶にあたって、パートナーの同意も必要となる。これは、「母体保護法」に規定されている。母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。
母体保護法の不妊手術に関しては、第二条(定義)に規定されている(※引用:「母体保護法」e-GOV法令検索様HPより)。
第二条 この法律で不妊手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で内閣府令をもつて定めるものをいう。
2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
第二章 不妊手術
第三条 医師は、次の各号の一に該当する者に対して、本人の同意及び配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、不妊手術を行うことができる。ただし、未成年者については、この限りでない。
一 妊娠又は分娩が、母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの
二 現に数人の子を有し、かつ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下するおそれのあるもの
2 前項各号に掲げる場合には、その配偶者についても同項の規定による不妊手術を行うことができる。
3 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足りる。
1.〇 正しい。「パートナーとよく話し合いましょう」とAさんの話を傾聴した後の説明で行うべきである。なぜなら、「母体保護法」において、中絶(不妊手術)には、パートナーの同意も必要となるため。
2.× 「人工妊娠中絶には、分娩誘発が必要です」という説明は、妊娠12週〜22週未満の場合である。なぜなら、本症例の場合、胎児の頭殿長<CRL>20mmであることから、妊娠8~9週(妊娠初期:0~15週)に相当するため。妊娠初期(12週未満)の中絶方法は、子宮内容除去術として掻爬法(そうは法、内容をかきだす方法)または吸引法(器械で吸い出す方法)が行われる。
3.× 「高血圧症の治療を中止すれば妊娠継続が可能です」という説明の優先度は低い。なぜなら、本症例は、妊娠継続の希望が聞かれていないため。また、主治医から「今の状態での妊娠継続は難しい」と言われている状態で、助産師が「高血圧症の治療を中止する」判断をすることは、Aさんの健康に対して重大なリスクを伴う。
4.× 「1週間以内に、中絶を行うかどうかの決断が必要です」という説明をする必要はない。なぜなら、本症例の場合、胎児の頭殿長<CRL>20mmであることから、妊娠8~9週(妊娠初期:0~15週)に相当するため。「母体保護法」において、中絶は22週未満でも可能である。したがって、人生を大きく左右するような決断になるため、早急な決断を迫るような発言の優先度は低い。
5.× 「人工妊娠中絶の同意書は、医療者の前で署名してください」という説明をする必要はない。なぜなら、医療者の前での署名(捺印)は、母体保護法にも規定されていないため。
①妊娠初期(12週未満)と②妊娠12 週〜22 週未満の場合では中絶手術の方法やその後の手続きが異なる。人工妊娠中絶手術は母体保護法が適応される場合で、今回の妊娠を中断しなければならないときに行う手術である。
①妊娠初期(12週未満):子宮内容除去術として掻爬法(そうは法、内容をかきだす方法)または吸引法(器械で吸い出す方法)が行われる。子宮口をあらかじめ拡張した上で、ほとんどの場合は静脈麻酔をして、器械的に子宮の内容物を除去する方法である。通常は10 〜15分程度の手術で済み、痛みや出血も少ないため、体調などに問題がなければその日のうちに帰宅できる。
②妊娠12週〜22週未満:あらかじめ子宮口を開く処置を行なった後、子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させる方法をとる。個人差はあるが、体に負担がかかるため通常は数日間の入院が必要になる。妊娠12週以後の中絶手術を受けた場合は役所に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証をもらう必要がある。
中絶手術はほとんどの場合、健康保険の適応にはならない。妊娠12週以後の中絶手術の場合は手術料だけでなく入院費用もかかるため経済的な負担も大きくなる。したがって、中絶を選択せざるをえない場合は、できるだけ早く決断した方がいろいろな負担が少なくて済む。
次の文を読み53、54の問いに答えよ。
Aさん(38歳、1回経産婦)。現在、パートナーと8歳の子どもとの3人暮らし。33歳からIgA腎症のため大学病院の腎臓内科に通院中で、病状の進行による腎機能の悪化のため人工透析の導入が予定された。高血圧症に対して内服薬による治療が開始されたが、血圧のコントロールは不良である。
54 1週後、A さんが再度来院し「主治医にもう一度相談しましたが、やはり妊娠継続は勧められないと言われました。私も覚悟はしたつもりですが、簡単には決められません」と話して、うつむいた。
Aさんの意思決定を支援する方法として適切なのはどれか。
1.バズ・セッション
2.ネゴシエーション
3.ピアカウンセリング
4.ブレインストーミング
5.治療的コミュニケーション
解答5
解説
・Aさん(38歳、1回経産婦、33歳からIgA腎症)。
・3人暮らし:パートナーと8歳の子ども。
・妊娠検査薬で検査:陽性。
・胎児の頭殿長<CRL>20mm:妊娠8~9週。
・Aさん「まさか妊娠するとは思っていませんでした。主治医から今の状態での妊娠継続は難しいと言われています。パートナーには秘密で中絶したいと思っています」と。
・1週後、A さん「主治医にもう一度相談しましたが、やはり妊娠継続は勧められないと言われました。私も覚悟はしたつもりですが、簡単には決められません」と話して、うつむいた。
→Aさんからも医療者からも、今回のテーマは繊細な問題である。Aさんのプライバシーの保護や傾聴、受容しながら対応することが求められる。
1.× バズ・セッションは優先度が低い。なぜなら、今回は、個人の深刻な意思決定を支援するため。プライバシーが担保された方法が優先される。ちなみに、バズ・セッションとは、参加者全員が自由に意見を出し合うことができるグループディスカッション手法である。参加者を6人くらいのグループに分けてある問題についてのディスカッションを行わせ、その内容をグループの代表者が発表し、参加者全体で問題の解決を図ろうとするものである。
2.× ネゴシエーションは優先度が低い。なぜなら、今回は、命や意思決定を重んじるテーマであるため。ネゴシエーションとは、ビジネスで用いられる用語で、直訳すると「交渉」「折衝」を意味する言葉である。お互いの意思や利害を調整・補完し合って、何らかの合意を得ることを指す。
3.× ピアカウンセリングは優先度が低い。なぜなら、今回は、個人の深刻な意思決定を支援するため。プライバシーが担保された方法が優先される。ピアカウンセリングとは、同じような立場や悩みを抱えた人たちが集まって、仲間として相談し合い、支え合うことを目的としたカウンセリングである。カウンセリングとは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。
4.× ブレインストーミングは優先度が低い。なぜなら、今回は、個人の深刻な意思決定を支援するため。プライバシーが担保された方法が優先される。ちなみに、ブレインストーミング(brainstorming)とは、問題解決やアイデア創出を目的とした集団発想法で、複数の人が自由に意見交換をする会議方法です。別名、集団思考・課題抽出・ブレスト・BS法などとも呼ばれています。
5.〇 正しい。治療的コミュニケーションが優先されるAさんの意思決定を支援する方法である。なぜなら、Aさんのような複雑な状況では、医療者が共感を持って話を聞き、支援することが重要であるため。ちなみに、氏家(2002)による治療的コミュニケーションの定義として、「単なるおしゃべりではなく、 援助を必要とする人の行動の変容を意図した専門的コミュニケーションである」とされている。相手との間に心理的関係を形成し、相手のなかに積極的変化を促すことを目的としている。つまいr、治療的コミュニケーションは、医療者が患者との信頼関係を築き、感情的な支援や情報提供を行う手法で
次の文を読み55の問いに答えよ。
Aさん(65歳、女性)。3回経妊3回経産婦。3回の分娩は経腟分娩であった。52歳で閉経。腟炎のため婦人科に通院している。外来の助産師に「以前から尿は近いほうだった。1年くらい前からは夜間に2、3回トイレに起きるようになり、熟睡できない。最近では、日中も頻繁に尿意を感じるようになり、1〜2時間ごとにトイレに行っているが少量しか尿が出ない。1か月後に友人と旅行することを楽しみにしていたが、旅行をあきらめようか迷っている」と相談した。咳をしたときや立ち上がったときの尿漏れはなく、長時間立っていても内臓が下がってくるような感じはない。Aさんは3か月前に子宮がん検診を受けており、特に問題はなかったという。
既往歴:60歳から高血圧症に対して降圧薬を内服している。
生活歴:3人の娘が独立してからは、夫と2人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は週に1回缶ビール1本程度。
家族歴:実母が糖尿病。
身体所見:身長155cm、体重60kg。血圧130/80mmHg。
55 相談された助産師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.家族以外の人とは一緒に旅行しないよう勧める。
2.医師に手術治療について相談するよう勧める。
3.医師に薬物治療について相談するよう勧める。
4.夜間の水分摂取は控えるよう勧める。
5.膀胱訓練を指導する。
解答3・5
解説
・Aさん(65歳、女性、3回経妊3回経産婦)。
・すべて経腟分娩、52歳で閉経、腟炎のため通院中。
・助産師「以前から尿は近いほうだった。1年くらい前からは夜間に2、3回トイレに起きるようになり、熟睡できない。最近では、日中も頻繁に尿意を感じるようになり、1〜2時間ごとにトイレに行っているが少量しか尿が出ない。1か月後に友人と旅行することを楽しみにしていたが、旅行をあきらめようか迷っている」と相談。
・咳をしたときや立ち上がったときの尿漏れはなく、長時間立っていても内臓が下がってくるような感じはない。
・3か月前:子宮がん検診で特に問題なし。
・既往歴:60歳から高血圧症(降圧薬を内服)
・生活歴:3人の娘が独立してからは、夫と2人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は週に1回缶ビール1本程度。
・家族歴:実母が糖尿病。
・身体所見:身長155cm、体重60kg。血圧130/80mmHg。
→Aさんの症状は頻尿や夜間頻尿(過活動膀胱の疑い)であり、まずは薬物療法や生活習慣の改善が試みられるべきである。更年期になると、女性ホルモンの分泌量が減ることで骨盤底筋がゆるむなどし、夜間頻尿の症状が増える可能性がある。日本排尿機能学会の調査によると、50代の約6割、60代では約8割の人が夜間頻尿の症状を経験しているとしている。
1.× 家族以外の人とは一緒に旅行しないよう勧める必要はない。なぜなら、活動の制限は、さらなる精神面・身体機能の低下を助長しかねないため。また、Aさんは、1か月後に友人と旅行することを楽しみにしている。したがって、旅行に対するアドバイスや対策が優先される。
2.× 医師に手術治療について相談するよう勧める必要はない。なぜなら、Aさんから骨盤臓器脱(子宮脱)の症状はみられないため。女性の場合に子宮や膀胱、直腸が骨盤底部の筋肉や靭帯の衰えにより骨盤内から脱出してしまう症状であり、加齢に伴って筋肉や靭帯の弾力性が低下することが一因となって発症する。骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。子宮脱では、排尿障害・下垂感・腰痛・失禁などの症状を呈する。
3.〇 正しい。医師に薬物治療について相談するよう勧める。なぜなら、Aさんの症状は頻尿や夜間頻尿(過活動膀胱の疑い)であるため。過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。
4.× 夜間の水分摂取は控えるよう勧める必要はない。なぜなら、Aさんは膣炎のため通院中である。また、少量しか尿が出ず、水分摂取量が多くて頻尿になっているとは考えにくい。脱水の予防のためにも水分摂取は促すべきである。ちなみに、老人性腟炎とは、萎縮性腟炎ともいい、主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)の分泌低下により、腟の潤いがなくなり、外陰部や腟が乾燥・萎縮して、雑菌が繁殖するために起こる炎症である。治療は、エストロゲンの補充が第1選択になる。膣の中に入れるエストロゲンの錠剤や飲み薬を使い、性交痛に対しては潤滑ゼリーの併用も効果的である。 また、細菌感染を合併している場合は抗生剤を併用する。
5.〇 正しい。膀胱訓練を指導する。なぜなら、Aさんの症状は頻尿や夜間頻尿(過活動膀胱の疑い)であるため。膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。
更年期とは、閉経の5年前から5年後までの約10年、つまり、生殖期から非生殖期への間の移行期のことをさすことが多い。閉経の年齢は人によって異なり、40歳代前半に迎える人もいれば、50歳代後半になっても迎えない人もいる。
更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。
問題の引用:第103回保健師国家試験、第100回助産師国家試験、第106回看護師国家試験の問題および正答について
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。