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次の文を読み50、51の問いに答えよ。
A さん(38歳、1回経産婦)。妊娠36週5日。これまでの妊娠経過に異常はなかった。家事をしていたとき、少量の出血があり総合病院の産婦人科に来院した。Aさんは「出血と同時に水が流れる感じもあったが、最近は尿漏れが少しあり、破水かどうかはっきりしない」と言う。前回は正期産の経腟分娩であった。腟鏡診で後腟円蓋に少量の淡血性の貯留液を認めたが、視診では破水の有無は明らかではなかった。子宮口1.5cm開大、展退度30%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方であった。児は頭位であり、卵膜を触知する。
51 Aさんは前期破水と診断され、入院した。破水後12時間が経過し、羊水の流出感が増したため助産師が診察すると、卵膜を触れず、児頭を直接触知した。破水後21時間には、母体の発熱がみられ、内診で子宮口2cm開大、展退度40%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方であった。黄色透明の羊水が流出しており、悪臭はない。子宮に圧痛はない。体温38.1℃、脈拍80/分、血圧120/80mmHg。血液検査の結果は、白血球15,500/μL、Hb 9.5 g/dL、血小板17万/μL、CRP 1.0mg/dLであった。このときの胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
現在のAさんの状態のアセスメントとして正しいのはどれか。
1.臨床的絨毛膜羊膜炎
2.胎児機能不全
3.母体敗血症
4.遷延分娩
解答1
解説
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2020 P142」)
・Aさん(38歳、1回経産婦、妊娠36週5日、前期破水)。
・破水後12時間:羊水の流出感が増す(卵膜を触れず、児頭を直接触知)
・破水後21時間:母体の発熱、子宮口2cm開大、展退度40%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方。
・黄色透明の羊水が流出、悪臭なし、子宮:圧痛なし。
・体温38.1℃、脈拍80/分、血圧120/80mmHg。
・血液検査:白血球15,500/μL、Hb 9.5 g/dL、血小板17万/μL、CRP 1.0mg/dL。
→本症例は、①体温38.1℃、②白血球15,500/μLであることから、臨床的絨毛膜羊膜炎が最も考えられる。
→【破水の種類】①前期破水とは、分娩が始まる前の破水のこと、②早期破水とは、分娩開始以降で子宮口全開大前の破水のこと、③適時破水:子宮口全開大に達する頃の破水のことをいう。
1.〇 正しい。臨床的絨毛膜羊膜炎が最も考えられる。絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである(※参考:「子宮内感染について」より)。
2.× 胎児機能不全は考えにくい。なぜなら、胎児心拍数陣痛図において、胎児心拍数波形に異常波形(レベル3以上)がみられないため。胎児機能不全とは、お産の途中でさまざまな原因によって胎児が低酸素状態になることをいう。胎児仮死、胎児ジストレスとも呼ぶ。原因としては母体の妊娠高血圧症候群、胎盤早期剥離、臍帯の圧迫などである。新生児蘇生法ガイドライン(NCPR)に従って蘇生初期処置を行い、蘇生終了後、新生児の健康に不安がある場合、新生児管理に関する十分な知識と経験がある医師に相談する。
3.× 母体敗血症は考えにくい。なぜなら、脈拍や血圧、CRP値の明らかな上昇がないため。ちなみに、母体敗血症とは、妊娠中に発症する敗血症のことである。敗血症は、感染症によって引き起こされる全身の重篤な反応で、血流を通じて広がる。初期症状としては、悪寒や全身のふるえ、発熱、発汗などがみられ、症状が進行すると心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じる。重症化すると、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まる。
【CRP値の基準】
0.4mg/dl以下:正常
0〜2:ウイルス感染症の疑い
2〜5:ウイルス感染 細菌感染症
5以上:細菌感染症
10以上:抗生剤点滴が必要なことが多い。
4.× 遷延分娩は考えにくい。なぜなら、陣痛が始まっていないため。遷延分娩の定義は、「分娩開始後すなわち陣痛周期が10分以内になった時点から、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出に至らないもの」をいう。一般的に、分娩第1期(分娩開始から子宮口全開大まで)の平均所要時間:初産婦10~12時間、経産婦4~6時間であり、初産婦の潜伏期遷延は20時間未満、活動期開大遷延は12時間未満である。
(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」より)
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(41歳、初産婦)。人工授精にて妊娠。予定帝王切開術にて男児を出産した。産褥8日、母子ともに出産後の経過は順調で、児の体重2,800gで退院した。夫は単身赴任で、現在子どもと2人暮らし。実父母は県外で暮らしている。退院後3週間は実母が手伝いに来ていた。1か月健康診査では母子ともに健康であり、児の体重は3,800gであった。
52 産後6週0日。Aさんは、地域の助産所の母乳相談を訪れ「子どもが先週から夜に寝てくれなくて体が休まらない。疲れて家事も思うようにならない。母が帰ってから相談できる人がいない。母乳が足りないのかな」と訴えた。助産師がAさんの全身状態を観察した結果、褐色の悪露が少量あり、子宮底は恥骨上に硬く触れた。バイタルサインは正常であった。乳房は柔らかく、両乳房の乳管開口数10本程度で射乳あり。1日の授乳回数は7、8回程度。児の体重は現在4,250gであり、皮膚のトラブルはなかった。
Aさんと児の状態のアセスメントで適切なのはどれか。
1.児に健康問題がある。
2.育児技術が未熟である。
3.子宮復古不全が疑われる。
4.母乳分泌が不足している。
5.育児のサポートが不足している。
解答3or5(複数正答)
理由:複数の正解があるため。
解説
・Aさん(41歳、初産婦、人工授精)。
・予定帝王切開術(男児出産)
・産褥8日:経過順調、児の体重2,800gで退院。
・2人暮らし(子どもと、夫:単身赴任、実父母:県外)。
・退院後3週間:実母が手伝いに来ていた。
・1か月健康診査:母子とも健康、児の体重3,800g。
・産後6週0日:Aさん「子どもが先週から夜に寝てくれなくて体が休まらない。疲れて家事も思うようにならない。母が帰ってから相談できる人がいない。母乳が足りないのかな」と。
・Aさん:褐色の悪露が少量あり、子宮底は恥骨上に硬く触れた。
・バイタルサイン:正常、乳房は柔らかく、両乳房の乳管開口数10本程度で射乳あり。
・1日の授乳回数:7、8回程度。
・児の体重:現在4,250g(皮膚のトラブルなし)
1.× 児に健康問題があるとは断定できない。なぜなら、1か月健康診査において母子とも健康であり、産後6週0日で、現在4,250g(皮膚のトラブルなし)であるため。
2.4.× 育児技術が未熟である/母乳分泌が不足しているとは断定できない。なぜなら、体重の変化や授乳回数も問題ないため。一般的に生後1か月の授乳回数は8~9回が多く、10回以上だと頻回授乳といえる。
【正常乳児の一日体重増加量の目安】
・0~3か月:25~30g
・3~6か月:20~25g
・6~9か月:15~20g
・9~12か月:7~10g
3.〇 正しい。子宮復古不全が疑われる。なぜなら、褐色の悪露が少量あり、子宮底は恥骨上に硬く触れられるため。一般的に、10日以降において、子宮底の高さは、腹壁上より触知不能であり、悪露の色調・においは、黄色・無臭である。子宮復古不全とは、妊娠によって大きくなった子宮が出産を終えて元に戻る過程である子宮復古に異常が起き、通常の子宮収縮が認められない病態である。 原因は、①子宮内に胎盤の一部が残っている場合(子宮内残留)や、②母体疲労によるもの、③胎盤や卵膜の子宮内感染など原因は多岐に渡る。
5.〇 正しい。育児のサポートが不足している。なぜなら、夫は単身赴任、実父母は県外にいるため。また、Aさん「母が帰ってから相談できる人がいない」と訴えていることから、育児のサポートが不足していると判断できる。
・分娩直後:①子宮底長(11~12cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・分娩後12時間:①子宮底長(15cm)、②子宮底の高さ(臍高~臍上1~2横指少し右方に傾く)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・1~2日:①子宮底長(11~17cm)、②子宮底の高さ(臍下1~2横指)、③悪露の色調・におい(赤色:鮮血性、血液のにおい)
・3日:①子宮底長(9~13cm)、②子宮底の高さ(臍下2~3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・4日:①子宮底長(9~10cm)、②子宮底の高さ(臍と恥骨結合の中央:臍恥中央)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・5日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・6日:①子宮底長(8~11cm)、②子宮底の高さ(恥骨結合上縁3横指)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・7~9日:②子宮底の高さ(恥骨結合上わずかに触れる)、③悪露の色調・におい(褐色、赤褐色:軽い異臭)
・10日以降~3週間:②子宮底の高さ(腹壁上より触知不能)、③悪露の色調・におい(黄色・無臭)
・4~6週間:③悪露の色調・におい(白色・無臭)
次の文を読み52、53の問いに答えよ。
Aさん(41歳、初産婦)。人工授精にて妊娠。予定帝王切開術にて男児を出産した。産褥8日、母子ともに出産後の経過は順調で、児の体重2,800gで退院した。夫は単身赴任で、現在子どもと2人暮らし。実父母は県外で暮らしている。退院後3週間は実母が手伝いに来ていた。1か月健康診査では母子ともに健康であり、児の体重は3,800gであった。
53 Aさんは、2週後に母乳相談の予約をしていたが来所しなかった。翌日助産師は連絡を取り自宅を訪問した。家の中は物が散乱しており、Aさんは疲弊した表情で「もう疲れました。泣いている子どもを見ると、私も涙が止まらない。何もする気が起こらず、自分のことはどうでもよくなってしまう」と話した。助産師はAさんの気持ちをしばらく傾聴した。児の健康状態は良好であった。
その後の助産師の対応で適切なのはどれか。
1.地域の育児サークルを紹介する。
2.母乳相談に来所するよう勧める。
3.児を乳児院に一時的に預ける。
4.地域の保健師と連携する。
解答4
解説
・Aさん(41歳、初産婦、人工授精)。
・1か月健康診査:母子とも健康、児の体重3,800g。
・Aさん:2週後、母乳相談を予約したが来所せず。
・翌日:助産師は連絡を取り自宅を訪問した。
・家の中:物が散乱。
・Aさんは疲弊した表情で「もう疲れました。泣いている子どもを見ると、私も涙が止まらない。何もする気が起こらず、自分のことはどうでもよくなってしまう」と。
・児の健康状態:良好。
→本症例はうつ病が疑われる。産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内(特に2週間以内)に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大切である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い、共感的態度をとることが基本である。
1.× 地域の育児サークルを紹介する優先度は低い。なぜなら、 Aさんは現在、非常に疲れ切っており、他者との交流がさらに負担が増し、症状が悪化する恐れがあるため。子育てサークル(育児サークル)は、親同士が子育てに関する情報交換や相互協力を、また子どもにとっては友達作りなどを行うサークルのことである。他児の保護者と気持ちを共有したり情報交換できる場である。
2.× 母乳相談に来所するよう勧める優先度は低い。なぜなら、Aさんが母乳相談に行けなかったのは、抑うつ状態となっているため。したがって、まずはAさんの負担を減らし、家庭内で支援する方法を考えるべきである。
3.× 児を乳児院に一時的に預けると決断するのは時期尚早である。なぜなら、Aさんは「自分のことはどうでもよくなってしまう」と言っているものの、育児放棄や育児に対し大きな支障となっていないため。極端な措置をすることで、さらにAさんは無力感や自責感に陥ってしまう可能性がある。ちなみに、乳児院とは、保護者の養育を受けられない乳幼児を養育する児童福祉施設であり、児童養護施設が原則として1歳以上の児童を養育するのに対し、1歳未満の乳児を主に養育する。
4.〇 正しい。地域の保健師と連携する。なぜなら、地域の保健師と連携することで、包括的な支援が提供できるため。特に、子育て世代包括支援センターと連携することが望ましい。子育て世代包括支援センターとは、母子保健法に基づき市町村が設置するもので、保健師等の専門スタッフが妊娠・出産・育児に関する様々な相談に対応し、必要に応じて支援プランの策定や地域の保健医療福祉の関係機関との連絡調整を行うなど、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を一体的に提供している。
【主な5つの事業】
①母性・乳幼児の健康の保持増進に関する実情の把握
②母子保健に関する相談への対応
③母性・乳幼児に対する保健指導
④母子保健に関する機関との連絡調整等、健康の保持・増進に関する支援
⑤健康診査、助産その他の母子保健に関する事業(※参考:「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン 」厚生労働省HPより)
かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。
うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。
①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。
【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)
【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
在胎29週0日、体重1,400gで出生した男児。NICUに入院後に呼吸窮迫症候群<RDS>のため気管挿管、人工サーファクタントの投与を受けた。生後2日、人工呼吸管理によって呼吸状態は安定していたが、強い啼泣直後に心拍数80/分に低下し、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>が98%から70%に急激に低下した。
54 このときに撮影した胸部エックス線写真を下図に示す。
突然の呼吸状態の悪化の原因として最も考えられるのはどれか。
1.急性肺炎
2.緊張性気胸
3.動脈管開存症
4.胎便吸引症候群
5.未熟児無呼吸発作
解答2
解説
・男児(在胎29週0日、体重1,400g、呼吸窮迫症候群)。
・気管挿管、人工サーファクタントの投与を受けた。
・生後2日:人工呼吸管理によって呼吸状態は安定。
・強い啼泣直後:心拍数80/分に低下、SpO2:98%から70%に急激に低下。
・胸部エックス線写真:①透過性の亢進、②対側へ圧排している。
→呼吸窮迫症候群とは、早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。呼吸窮迫症候群の合併症には、脳室内出血、脳室周囲白質部の損傷、緊張性気胸、気管支肺異形成症、敗血症および新生児死亡などがある。
1.× 急性肺炎は考えにくい。なぜなら、急性肺炎の場合、通常エックス線で炎症部位が白く見えることが多いため。肺炎とは、何らかの理由で肺に炎症がみられる状態で、主な症状として、せき、発熱、胸痛、痰がでる、息苦しいなどである。
2.〇 正しい。緊張性気胸が最も考えられる。なぜなら、特に人工呼吸管理中の早産児では、気道圧が高く気胸が発生しやすいため。ちなみに、緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。
3.× 動脈管開存症は考えにくい。なぜなら、本症例(呼吸窮迫症候群、人工呼吸管理、胸部エックス線など)との因果関係が説明できないため。動脈管開存症とは、胎児期に開存している大動脈と肺動脈間に存在する動脈管が出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患である。つまり、出生後に動脈管が自然閉鎖しない病気である。大動脈から肺動脈への短絡が生じ、管が大きいと左心系の容量負荷になる。出生後は肺動脈圧が下がるため、胎児期とは逆に大動脈から肺動脈へ血液が流れるようになり、肺の血流が増加する。したがって、典型例では、ピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。治療が必要な症状として、動脈管が太く、たくさん血液が肺に流れて肺うっ血による心不全症状(哺乳不良、嘔吐、体重増加不良、頻脈、頻呼吸など)を引き起こした場合である。
4.× 胎便吸引症候群は考えにくい。なぜなら、胎便吸引症候群の場合、出生直後に症状が見られることが多く、エックス線で①両肺野にびまん性の策状影、②縦郭気腫などのエアリーク所見、③両側肺の過膨張がみられることが多いため。ちなみに、胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児にチアノーゼや呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることである。酸素不足などのストレスによって反射的にあえぎ、胎便を含む羊水を肺に吸い込んでしまうことなどで起こる。多呼吸、羊水混濁が特徴である。
5.× 未熟児無呼吸発作は考えにくい。なぜなら、本症例のエックス線に緊張性気胸の所見がみられているため。未熟児無呼吸発作とは、【定義】在胎期間37週未満で出生した無呼吸の原因となる基礎疾患がない新生児における,20秒を超える呼吸休止,または20秒未満の呼吸休止で徐脈(80/分未満)か,中枢性チアノーゼ,および/または85%未満の酸素飽和度を伴うものとされる。原因として、脳の呼吸中枢や気道の未熟性などである。呼吸休止が20秒以内であっても、徐脈(心拍数の低下)やチアノーゼ(皮膚や唇が青みがかった色になること)を伴う場合も含まれる。
次の文を読み54、55の問いに答えよ。
在胎29週0日、体重1,400gで出生した男児。NICUに入院後に呼吸窮迫症候群<RDS>のため気管挿管、人工サーファクタントの投与を受けた。生後2日、人工呼吸管理によって呼吸状態は安定していたが、強い啼泣直後に心拍数80/分に低下し、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>が98%から70%に急激に低下した。
55 生後2週に頭部超音波検査を施行したところ、両側の脳室周囲にエコー輝度の低い領域が認められた。頭部超音波像を下図に示す。
この所見について正しいのはどれか。
1.児の高炭酸ガス血症との関連がある。
2.アテトーゼ型の脳性麻痺の原因となる。
3.子宮内感染の早産児では発症しやすい。
4.自閉症スペクトラム障害の原因となる。
解答3
解説
アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。
1.× 児の高炭酸ガス血症との関連があるのは、「未熟児無呼吸発作」である。新生児の高炭酸ガス血症は、延髄にある呼吸中枢の化学性調節の異常が原因で発症することがある。高炭酸ガス血症を来すと、pH(水素イオン濃度)の低下(呼吸性アシドーシス)と低酸素血症を伴い、頭痛やめまい、発汗、錯乱、高血圧などの症状がみられる。また、動脈血中のPaCO2が急激に上昇した場合には、CO2ナルコーシスを招き、昏睡、呼吸停止に至ることがある。ちなみに、未熟児無呼吸発作とは、【定義】在胎期間37週未満で出生した無呼吸の原因となる基礎疾患がない新生児における,20秒を超える呼吸休止,または20秒未満の呼吸休止で徐脈(80/分未満)か,中枢性チアノーゼ,および/または85%未満の酸素飽和度を伴うものとされる。原因として、脳の呼吸中枢や気道の未熟性などである。呼吸休止が20秒以内であっても、徐脈(心拍数の低下)やチアノーゼ(皮膚や唇が青みがかった色になること)を伴う場合も含まれる。
2.× アテトーゼ型の脳性麻痺の原因となるのは、低出生体重、胎児期または周産期仮死による低酸素脳症、感染や遺伝性疾患である。知的障害やてんかんを合併することが多くある。ちなみに、脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。脳性麻痺の約半数は常位胎盤早期剥離と臍帯因子によるもので、常位胎盤早期剥離では児の救命が困難であることや救命しても脳性麻痺になる危険性がある。常位胎盤早期剥離は下腹部痛や性器出血があるが、軽症の場合は自覚症状がほとんどないことも少なくない。
3.〇 正しい。子宮内感染の早産児では発症しやすい。本症例の頭部超音波像から、「脳室周囲白質軟化症」が疑われる。脳室周囲白質軟化症とは、早産児あるいは低出生体重児が来たしうる、出生前に脳室周囲の白質に軟化病巣・虚血状態になり、局所的に壊死する疾患である。つまり、発生機序としては、周囲から深部白質に向かう動脈と、脳表面から脳室へ向かう動脈との境界領域が深部白質にあるため、脳循環の低下などにより容易に脳室周囲の深部白質が虚血状態となり得ることから生ずる。脳室周囲白質部、特に三角部には頭頂葉に存在する運動中枢からの神経線維(皮質脊髄路)が存在するため、脳室周囲白質軟化症の存在する児ではその連絡が絶たれ、痙性麻痺となる。在胎32週以下の早産児に多くみられる脳性麻痺の主な原因の1つである。胎児性アルコール症候群では認知障害や重度の知的障害、ADHDやうつ病などの精神科的問題がみられる。
4.× 自閉症スペクトラム障害の原因となるのは、現在でも特定できていない。多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられている一方で、胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性も考えられている。
自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。
広汎性発達障害(自閉スペクトラム障害)とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンの障害、および限局・常同・反復的な行動パターンがあげられる。生後5年以内に明らかとなる一群の障害である。通常は精神遅滞を伴う。広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。