第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午後46~50】

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次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、初産婦)は、妊娠41週3日、予定日超過のため子宮収縮薬を使用しての分娩誘発が開始された。無痛分娩を希望し、硬膜外麻酔による疼痛緩和が開始された。分娩第1期15時間、分娩第2期15時間、分娩遷延のため会陰切開し、吸引分娩となった。児は体重3,280g、Apgar<アプガー>スコアは1分後7点、5分後9点であった。出血量は550mL、分娩第4期の経過は正常。バイタルサインは問題なく、硬膜外カテーテルを抜去し帰室した。

46 産褥3日に尿意が出現し自然排尿できるようになった。母児同室中であるが夜間は休息のため、新生児室に児を預けることがある。1日の直接授乳回数は、6、7回程度である。「おっぱいが張って痛い。赤ちゃんも泣いてばかりでどうしてよいか分からない」と疲労した様子で訴えた。体温37.4℃、子宮底の高さは臍下3横指、血性悪露中等量。乳房全体が緊満し乳輪部はむくんでいる。両乳頭に発赤があり、乳管の開口数は左右とも2、3本、分泌は乳汁がにじむ程度である。
 Aさんの状態のアセスメントで考えられるのはどれか。

1.産褥熱
2.産褥精神病
3.乳房うっ積
4.化膿性乳腺炎

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、初産婦、硬膜外麻酔による分娩)
産褥3日尿意出現自然排尿できる
・母児同室中:夜間休息、新生児室に児を預けることがある。
・1日の直接授乳回数:6~7回程度。
・「おっぱいが張って痛い。赤ちゃんも泣いてばかりでどうしてよいか分からない」と疲労した様子で訴えた。
体温37.4 ℃、子宮底の高さ:臍下3横指、血性悪露中等量。乳房全体が緊満し乳輪部はむくんでいる
両乳頭に発赤、乳管の開口数:左右とも2、3本、分泌:乳汁がにじむ程度
→評価項目から各選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 産褥熱は考えにくい。なぜなら、本症例は、体温37.4 ℃であるため。産褥熱とは、骨盤内感染によって分娩後24時間~産褥10日目に、2日以上にわたって38℃以上の発熱が続くことである。

2.× 産褥精神病は考えにくい。なぜなら、産褥精神病の症状と合致しないため。産褥精神病とは、産褥期に生じる精神病であり、精神的な興奮や錯乱、まとまりのない言動などがみられる。錯乱状態に陥って自殺や他害(赤ちゃんや家族を傷つけること)の恐れもあるため早急な治療が必要である。発症の予測は困難で、出産後1週間以内に発症して急激に悪化し、速やかに精神科病棟への入院が必要になることが多い。

3.〇 正しい。乳房うっ積がもっとも考えられる。なぜなら、Aさんの乳房全体が緊満し乳輪部はむくんでおり、両乳頭に発赤、乳管の開口数は左右とも2、3本と少なめ(一般的には産褥3〜4日目では乳管開口数が4本以上)であるため。ちなみに、乳房うっ積とは、乳汁生産に必要な動脈血流・リンパ液の乳房内への流入と静脈への還流のアンバランスにより、主に産後3〜4日目頃に生じる乳房内の循環不全状態である。症状としては、乳房の両側性に熱感を伴った緊満感、疼痛、硬結などが認められます。乳汁うっ積が持続すると乳頭病変から細菌感染が併発し、化膿性乳腺炎に移行する場合もある。

4.× 化膿性乳腺炎は考えにくい。なぜなら、Aさんの乳汁は、にじむ程度であるため。ちなみに、化膿性乳腺炎とは、うっ滞性乳腺炎の症状に加え高熱、倦怠感、筋肉痛、おっぱいの色が黄色くドロドロしているなどの症状がある。原因として、細菌が乳頭部から乳管を通って乳管や乳腺組織内に広がって炎症を起こした結果と考えられている。したがって、原因となる細菌は黄色ブドウ球菌が多い。治療として、有効な抗生物質が投与され、解熱鎮痛薬で痛みや炎症を抑える。

 

 

 

 

 

次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 Aさん(37歳、初産婦)は、妊娠41週3日、予定日超過のため子宮収縮薬を使用しての分娩誘発が開始された。無痛分娩を希望し、硬膜外麻酔による疼痛緩和が開始された。分娩第1期15時間、分娩第2期15時間、分娩遷延のため会陰切開し、吸引分娩となった。児は体重3,280g、Apgar<アプガー>スコアは1分後7点、5分後9点であった。出血量は550mL、分娩第4期の経過は正常。バイタルサインは問題なく、硬膜外カテーテルを抜去し帰室した。

47 産褥5日の退院時、A さんは「無痛分娩は産後の体が楽だと聞いていたが、疲れがとれません。まだ授乳に慣れてないので心配です」と不安そうな表情で話した。夫の育児休業は1週間の予定であるという。助産師は訴えをしばらく傾聴した。両乳房緊満+、乳管の開口数は左右とも5、6本で射乳あり。日中の授乳は母乳のみで夜間は人工乳を補足している。
 退院に向けての説明で最も適切なのはどれか。

1.「睡眠薬を処方してもらいましょう」
2.「母乳外来で授乳について相談しましょう」
3.「Aさんだけ先に退院して体を休めましょう」
4.「産後ケアを受けられる施設に入所しましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(37歳、初産婦、乳房うっ積
・1日の直接授乳回数:6~7回程度。
・産褥5日:A さん「無痛分娩は産後の体が楽だと聞いていたが、疲れがとれません。まだ授乳に慣れてないので心配です」と不安そうな表情で話した。
・夫の育児休業は1週間の予定
・助産師は訴えをしばらく傾聴した。
・両乳房緊満+、乳管の開口数は左右とも5、6本で射乳あり。
・日中の授乳:母乳のみ。夜間:人工乳を補足
→本症例の現在の主訴で最も優先されるものを選択しよう。
→乳房うっ積とは、乳汁生産に必要な動脈血流・リンパ液の乳房内への流入と静脈への還流のアンバランスにより、主に産後3〜4日目頃に生じる乳房内の循環不全状態である。症状としては、乳房の両側性に熱感を伴った緊満感、疼痛、硬結などが認められます。乳汁うっ積が持続すると乳頭病変から細菌感染が併発し、化膿性乳腺炎に移行する場合もある。

1.× 「睡眠薬を処方してもらいましょう」と説明する必要はない。なぜなら、Aさんから不眠の訴えは聞かれていないため。また、睡眠薬や抗不安薬は赤ちゃんの眠気を増し、十分な量の母乳が吸えなくなってしまうことがあるため、授乳中の赤ちゃんの様子に注意する必要がある。

2.〇 正しい。「母乳外来で授乳について相談しましょう」が最も優先度が高い。なぜなら、Aさんから「まだ授乳に慣れてないので心配です」と不安そうな表情であること、その訴えが「しばらく」続いていること、夜間に人工乳を補足しているため。ちなみに、母乳外来とは、助産師から母乳ケア(乳房ケアや母乳育児サポートなど)を教えてもらう外来のことである。 産婦人科や助産院などで行われている。出産を終えてこれから母乳育児をするママ、卒乳・断乳を考えているママなど、必要に応じてマッサージをしてくれたり、赤ちゃんの成長に合わせた母乳育児の相談に乗ってくれる。母子の個別性に合わせて指導をする。

3.× 「Aさんだけ先に退院して体を休めましょう」と説明する必要はない。なぜなら、Aさんだけ先に退院しても「授乳に慣れてないので心配です」という訴えの直接的な解決にはつながらないため。また、日中は母乳育児をしているため、母親だけが先に退院すると母乳を与える機会が失ってしまう。

4.× 「産後ケアを受けられる施設に入所しましょう」と説明する必要はない。なぜなら、Aさんから産後ケアに関しての希望が聞かれていないため。一方的に施設入所を促す説明をすると、Aさんからすると、さらに不安を助長する発言として聞き取られかねない。ちなみに、産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。

 

 

 

 

次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫と義父母の4人暮らし。市販の妊娠検査薬で陽性反応が出たため2週前に産科外来を受診したが、胎児心拍は確認できなかった。本日、再度受診し胎児心拍が確認され、妊娠7週であると判明した。最終月経は3月10日から5日間あった。

48 Naegele<ネーゲレ>概算法によるA さんの分娩予定日を求めよ。

解答: ①②月③④日

解答 1217

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、初妊婦)。
・4人暮らし:夫と義父母。
・市販の妊娠検査薬:陽性反応が出た。
・2週前に産科外来を受診(胎児心拍は確認できず)。
・本日:胎児心拍が確認、妊娠7週である。
・最終月経:3月10日から5日間あった。

ネーゲレ概算法とは、最終月経日から出産予定日を概算する計算方法である。
【計算方法】
①最終月経があった月から3を引き(※もしくは9をたす)
・4~12月の場合:3を引く。
・1~9月の場合:9を足す。
②最終月経の開始日に7を足す。

【本症例の場合】
最終月経の開始日が3月10日の場合
出産予定日=12(3+9)月 17(10+7)日

したがって、分娩予定日は、12月17日となる。

 

 

 

 

 

次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫と義父母の4人暮らし。市販の妊娠検査薬で陽性反応が出たため2週前に産科外来を受診したが、胎児心拍は確認できなかった。本日、再度受診し胎児心拍が確認され、妊娠7週であると判明した。最終月経は3月10日から5日間あった。

49 Aさんは「22時くらいには布団に入って寝ます。疲れが取れていないようで、いつも眠いです。朝は7時に起きます」と状況を訴えた。
Aさんの睡眠のアセスメントとして正しいのはどれか。

1.レム睡眠が増加している。
2.睡眠時間が不足している。
3.オキシトシンの影響である。
4.プロラクチンの影響である。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、初妊婦)。
・4人暮らし:夫と義父母。
・Aさんは「22時くらいには布団に入って寝ます。疲れが取れていないようで、いつも眠いです。朝は7時に起きます」と状況を訴えた。
→ほかの選択肢の消去理由もしっかりおさえておこう。

1.× レム睡眠は、「増加」ではなく低下することが多い。妊娠中にプロゲステロンやエストロゲンなどの女性ホルモン、乳汁(母乳)分泌を促進するホルモンであるプロラクチンが大量に分泌される。これらのホルモンの睡眠に対する作用は、完全には明らかにされていなが、高濃度になると深睡眠(徐波睡眠)を増やし、レム睡眠を抑え、日中の眠気を強くすると考えられている。一般的に、レム睡眠+ノンレム睡眠で約90分周期を繰り返す。睡眠は、深いノンレム睡眠から始まり、睡眠欲求が低下する朝方に向けて、徐々に浅いノンレム睡眠が増えていく。その間に約90分周期でレム睡眠が繰り返し出現し、睡眠後半に向けて徐々に一回ごとのレム睡眠時間が増加する。レム睡眠+ノンレム睡眠で約90分周期を繰り返す。レム睡眠とは、脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われ、夢を見る浅い眠りである。目がぴくぴく活発に動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があることからREM(レム)睡眠と呼ばれる。ノンレム睡眠とは、脳の睡眠といわれ、①新陳代謝を促進する成長ホルモンの分泌が増加、②エネルギー代謝の抑制、③体温の低下があげられる。

2.× 睡眠時間が不足しているとはいえない。なぜなら、Aさんの睡眠時間は、22時から7時(9時間)であるため。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、成人は6時間以上の睡眠を目安に確保することが推奨されている。

3.× オキシトシンの影響であると断言できない。なぜなら、オキシトシンと疲労や眠気への関連性は低いため。ちなみに、オキシトシンとは、脳下垂体後葉から分泌される。乳汁射出、子宮収縮作用がある。また、分娩開始前後には分泌が亢進し、分娩時に子宮の収縮を促し、胎児が下界に出られるように働きかける。児の吸啜刺激によって分泌が亢進し、分娩後の母体の子宮筋の収縮を促す。

4.〇 正しい。プロラクチンの影響である。妊娠中にプロゲステロンやエストロゲンなどの女性ホルモン、乳汁(母乳)分泌を促進するホルモンであるプロラクチンが大量に分泌される。これらのホルモンの睡眠に対する作用は、完全には明らかにされていなが、高濃度になると深睡眠(徐波睡眠)を増やし、レム睡眠を抑え、日中の眠気を強くすると考えられている。ちなみに、プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

 

 

 

 

 

次の文を読み48〜50の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫と義父母の4人暮らし。市販の妊娠検査薬で陽性反応が出たため2週前に産科外来を受診したが、胎児心拍は確認できなかった。本日、再度受診し胎児心拍が確認され、妊娠7週であると判明した。最終月経は3月10日から5日間あった。

50 妊娠28週の妊婦健康診査時、Aさんは「実家の近くの病院で分娩をする予定です。自宅から実家まで高速道路を使って3時間くらいかかります。夫の運転する車で里帰りするときに注意することがありますか」と助産師へ質問した。
 助産師の説明で適切なのはどれか。

1.「車内では水分摂取を控えましょう」
2.「移動は妊娠37週以降にしましょう」
3.「ドライブインでは出歩かないようにしましょう」
4.「後部座席の場合はシートベルトをしなくてよいです」
5.「腰のシートベルトは恥骨上を通るように装着しましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(25歳、初妊婦)。
・4人暮らし:夫と義父母。
妊娠28週の妊婦健康診査。
・Aさん「実家の近くの病院で分娩をする予定です。自宅から実家まで高速道路を使って3時間くらいかかります。夫の運転する車で里帰りするときに注意することがありますか」と。
→妊娠28週(妊娠後期)においての日常生活の支援や助言をおさえておこう。

1.× 「車内では水分摂取を控えましょう」と伝える必要はない。むしろ、水分の摂取を促す。なぜなら、肺血栓塞栓症を予防するため。長時間の運転は、血栓ができやすい。また、妊婦は深部静脈血栓症のハイリスクである。ちなみに、肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。ちなみに、リンパ浮腫の合併症として、蜂窩織炎、リンパ管炎などの炎症がみられる。

2.× 「移動は妊娠37週以降にしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、産休に入る妊娠34週頃には里帰りしておくのが一般的であるため。妊娠37週に入ると正産期に入り、赤ちゃんはいつ産まれてもおかしくない時期である。

3.× 「ドライブインでは出歩かないようにしましょう」と伝える必要はない。むしろ、長時間の移動では定期的に休憩を取り、身体を動かすことが重要である。なぜなら、肺血栓塞栓症を予防するため。したがって、ドライブインなどでの休憩時に出歩くことは推奨される。

4.× 「後部座席の場合はシートベルトをしなくてよいです」と伝える必要はない。むしろ、後部座席の場合でも、現時点のAさん(妊娠28週)は、シートベルトの着用は義務である。妊娠中で、腹痛や出血がひどい、陣痛が始まったなど緊急な場合のみシートベルトの着用は免除されている。これは、「道路交通法施行令第26条の3の2」に規定されている。

5.〇 正しい。「腰のシートベルトは恥骨上を通るように装着しましょう」と伝える。なぜなら、恥骨上を通すことで、腹部の圧迫を防止できるため。

(※引用:産婦人科診療ガイドライン産科編 2020 P370

妊娠後期とは?

妊娠後期とは、妊娠28~40週までのことで、おなかはますます大きくなり、張りを感じることも増えてくる時期である。

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)

妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)

妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

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