第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午前46~50】

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次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 A さん(38歳、1回経産婦)。妊娠28週3日。これまでの妊娠経過に異常はなかった。突然、自宅で性器出血があり、かかりつけの産婦人科診療所を受診した。診察時、腟内に約100mLの血液貯留を認め、子宮口から少量の出血が持続していた。子宮に痛みの自覚はなかった。直ちに総合周産期母子医療センターに救急搬送され入院した。
 既往歴:24歳のときにクラミジア頸管炎のため抗菌薬治療を受けた。35歳のときに骨盤位のため妊娠38週で予定帝王切開術によって出産した。
 生活歴:喫煙20本/日、妊娠後は5本/日まで減らしている。
 家族歴:実父が糖尿病および高血圧症の治療中である。
 身体所見:身長150cm、体重70kg (非妊時体重60kg)。脈拍70/分、血圧132/80mmHg。子宮口は閉鎖。腟内に凝血塊を認めるが、取り除くと出血は止まっていた。NSTでは胎児心拍数に異常はなく、15分に回程度の弱い子宮収縮を認める。
 検査所見:血液検査の結果、感染徴候はなく、凝固系に異常を認めない。

46 妊娠32週0日、再度500mLを超える性器出血があり、Aさんは緊急帝王切開術によって体重2,030gの男児を分娩した。手術中の出血が多量となり、腟上部切断術によって子宮体部が摘出され、輸血が行われた。出血量は4,500mLであった。手術後のAさんの経過は良好であり、産褥8日に退院することとなった。Aさんは助産師に「子宮を取ることになったのは残念ですが、何とか無事に退院でき、ほっとしています。今後はどんなことに気を付ければいいでしょうか」と話した。
 助産師が情報提供を行う内容として最も適切なのはどれか。

1.「尿漏れが起きやすくなります」
2.「エストロゲンを補充する必要があります」
3.「輸血後の感染症の抗体検査は必要ありません」
4.「今後も子宮頸がん検診を受ける必要があります」

解答

解説

本症例のポイント

・A さん(38歳、1回経産婦、前置胎盤)。
・妊娠32週0日:再度500mLを超える性器出血
・緊急帝王切開術(体重2,030gの男児を分娩)
・手術中の出血:多量(腟上部切断術子宮体部が摘出、輸血)
・出血量:4,500mL
・手術後:経過良好(産褥8日に退院)
・Aさん「子宮を取ることになったのは残念ですが、何とか無事に退院でき、ほっとしています。今後はどんなことに気を付ければいいでしょうか」と。
→腟上部切断術についての知識をおさえておこう。

1.× 「尿漏れが起きやすくなります」とはいえない。なぜなら、現時点でAさんの手術後の経過は良好であるため。

2.× 「エストロゲンを補充する必要があります」とはいえない。なぜなら、腟上部切断術は卵巣を残存しているため。ホルモン補充療法の適応として、卵巣も摘出された場合や更年期障害である。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。

3.× 「輸血後の感染症の抗体検査は必要ありません」とはいえない。なぜなら、一般的に輸血後に感染症にかかる恐れがあるため。輸血後、輸血による合併症や副作用の有無を確認するために、輸血後2~3ヶ月で感染症検査を受ける必要がある。検査項目は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV(AIDS)ウイルスなどである。

4.〇 正しい。「今後も子宮頸がん検診を受ける必要があります」とは説明する。なぜなら、腟上部切断術は、子宮頸部が残るため。腟上部切断術(子宮亜全摘)とは、子宮頸部を残し、子宮体部のみ摘出する手術である。対象は、子宮筋腫など良性疾患のほか、産後多量出血のため、子宮摘出しなければならないときにも行われることがある。子宮摘出より手術としては簡便で費用も安いなどのメリットはあるが、子宮頸部が残るので子宮頚がんになる可能性はあり健診は必要である。

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 30歳の初産婦。妊娠41週3日に陣痛が発来したため入院した。妊婦健康診査で、HBs抗原陽性、HBe抗原陰性。その他の異常は指摘されていなかった。入院時、子宮口8cm 開大。直ちに分娩監視装置を装着したところ軽度の変動一過性徐脈が認められた。入院から1時間後に児を娩出した。娩出時に血性羊水が認められた。出生直後、児の啼泣は弱く、筋緊張が低下していたため、インファントラジアントウォーマー下で児の足底を刺激した。出生から30秒後には、あえぎ呼吸で心拍数は6秒間に8回であった。体重は3,000g前後、外表奇形は認められない。

47 このときの児に対する処置を下図に示す。
 最も優先されるのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答

解説

JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)

(※図引用:「JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)」一般社団法人 日本蘇生協議会より)

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠41週3日に陣痛が発来)。
・入院から1時間後:児を娩出(娩出時に血性羊水)。
・出生直後:児の啼泣は弱く筋緊張が低下
・インファントラジアントウォーマー下で児の足底を刺激した。
・出生から30秒後:あえぎ呼吸心拍数は6秒間に8回(80回/分)
→NCPRのアルゴリズムにより、どのような対応をすべきか把握しておこう。今回は、心拍数80回/分であるため人工呼吸を行う。ちなみに、あえぎ呼吸とは、瀕死状態で認められるほぼ完全な呼吸中枢機能消失による異常な呼吸パターンで、開口しておこなう深い努力様呼吸である。毎分数回以下の徐呼吸となり、長い呼吸停止をともなう。 吸気時に呼吸補助筋の協働運動のため頭部を後ろへ反らす動きを認める。

1.× ①は、バッグバルブマスクを使用しての陽圧換気である。なぜなら、新生児仮死の人工呼吸では、90%以上はバックマスク換気だけで改善する可能性が高いため。

2.× ②は、持続性気道陽圧法(CPAPである。気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。したがって、新生児に対し、持続性気道陽圧法(CPAP)は、早産の新生児で呼吸障害や呼吸困難がある場合に用いられる非侵襲的な呼吸補助法である。鼻に管を挿入するか、鼻を覆う柔らかいマスクを装着して酸素を送り込む。

3.× ③は、酸素チューブによる酸素投与である。NCPRのアルゴリズムにおいて、出生直後のチェックポイントに該当し、「自発呼吸があり、かつ、心拍数100回/分以上」のときに用いられる。

4.〇 正しい。④(バッグバルブマスクを用いた用手換気)が最も優先される。なぜなら、人工呼吸に最も近いアプローチが行えるため。ちなみに、バッグバルブマスク(BVM)換気とは、呼吸停止または重度の換気不全の場合に人工換気を迅速に行う手段である。バッグ・マスク換気は、無呼吸、あえぎ呼吸、心拍数100回/分未満の場合が適応である。

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。

【睡眠時のNPPVの適応】
①慢性肺胞低換気(肺活量が60%以下の場合はハイリスク)
②昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以下)
③睡眠時SpO2モニターで、apnea-hypopnea index(AHI)が10/時間以上、SpO2が92%未満になることが4回以上か、全睡眠時間の4%以上

【睡眠時に加えて覚醒時のNPPVの適応】
①呼吸困難に起因する嚥下困難
②ひと息に長い文章を話せない
③慢性肺胞低換気症状を認め、昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以上)

(引用:NPPVガイドライン改訂第2版より)

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 30歳の初産婦。妊娠41週3日に陣痛が発来したため入院した。妊婦健康診査で、HBs抗原陽性、HBe抗原陰性。その他の異常は指摘されていなかった。入院時、子宮口8cm 開大。直ちに分娩監視装置を装着したところ軽度の変動一過性徐脈が認められた。入院から1時間後に児を娩出した。娩出時に血性羊水が認められた。出生直後、児の啼泣は弱く、筋緊張が低下していたため、インファントラジアントウォーマー下で児の足底を刺激した。出生から30秒後には、あえぎ呼吸で心拍数は6秒間に8回であった。体重は3,000g前後、外表奇形は認められない。

48 出生後の適切な処置によって児の全身状態は改善した。
 B型肝炎の母子感染を予防するために行う出生直後の対応として正しいのはどれか。

1.児への抗HBsヒト免疫グロブリンの皮下注射
2.児へのB型肝炎ワクチンの皮下注射
3.臍帯血のHBs抗原の測定
4.児のHBs抗原の測定

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠41週3日に陣痛が発来)。
・妊婦健康診査:HBs抗原陽性、HBe抗原陰性。
・出生後の適切な処置:児の全身状態は改善。
B型肝炎の母子感染を予防するために行う出生直後の対応を覚えておこう。

【B型肝炎ウイルス検査】
・HBs抗原が「陰性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染していない。自覚症状などがあれば、再度検査を促す。
・HBs抗原が「陽性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染している。医療機関の受診を強く勧める。HBs抗原が陽性となった場合には、医療機関において、現在の感染状態を調べるため、さらに詳しい検査を実施する。

【さらに詳しい検査項目】
①HBs抗体:陽性であれば過去に感染し、その後、治癒やしたことを示す。HBVワクチンを接種した場合にも陽性となる。
②HBc抗体:陽性であればHBVに感染したことを示す。(HBVワクチン接種の場合は陽性にはならない。)
③HBc-IgM抗体:最近HBVに感染したことを示す。
④HBe抗原:陽性であれば一般にHBVの増殖力が強いことを示す。
⑤HBe抗体:陽性であれば一般にHBVの増殖力が低下していることを示す。
⑥HBV-DNA:血液中のHBVのウイルス量を測定する。

1.× 児への抗HBsヒト免疫グロブリンの「皮下注射」ではなく筋肉内注射を行う(※引用:「医療用医薬品 : 抗HBs人免疫グロブリン」一般社団法人日本血液製剤機構様HPより)。ちなみに、B型肝炎ワクチンは、10歳以上の場合は筋肉内接種が可能である。

2.〇 正しい。児へのB型肝炎ワクチンの皮下注射を実施する。なぜなら、B型肝炎ワクチンを接種することが感染予防につながるため。B型肝炎の検査結果が陽性の場合、新生児は出生直後にB型肝炎ワクチン(HBワクチン)と抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の2つの予防接種を受ける。手順として、①出生直後(12時間以内)に抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を投与するとともに、1回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種を行う。②生後1か月に2回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)、③生後6か月に3回目のB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を実施する。HBs抗原陽性かつHBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児を放置した場合、感染率が100%、キャリア化率が80~90%であるため、B型肝炎ウイルス母子感染予防処置が行われている。

3.× 臍帯血のHBs抗原の測定は、B型肝炎の母子感染の予防とならない。なぜなら、妊婦健康診査において、HBs抗原陽性と出ているため。「従来、出生直後に臍帯血を用いた検査、生後2か月の乳児に対する検査を行っていたが、臍帯血については採取時に臍帯周囲に付着した母体血が混入する場合があるので、今後臍帯血の検査については行わず、生後1か月時の検査により判断することとする。また、生後1か月の検査結果をもとに、2回目のHBIG投与(生後2か月)の要否を決めることとなるので、従来行われていた生後2か月の検査は必ずしも必要としない」と記載されている(※引用:「B型肝炎母子感染防止対策の手引き」)。

4.× 児のHBs抗原の測定は、B型肝炎の母子感染の予防とならない。なぜなら、妊婦健康診査において、HBs抗原陽性と出ているため。「妊婦がHBs抗原陽性ならばHBe抗原陰性であっても、肝細胞内にはHBウイルスが存在することを意味するものであり、またこれまでの研究により、HBs抗原陽性でHBe抗原陰性の妊婦から出生した乳児でも、その10%程度に一過性感染が起こり、急性肝炎や劇症肝炎が発生していることが明らかとなっている。したがって、劇症肝炎や急性肝炎等の発生を防止するため、従来のキャリア化阻止を目標とした、HBe抗原陽性の妊婦から出生した乳児に加えて、HBs抗原陽性、HBe抗原陰性の妊婦から出生した乳児をも対象としたB型肝炎母子感染防止を行う必要があると考えられる」と記載されている(※引用:「B型肝炎母子感染防止対策の手引き」)。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 30歳の初産婦。妊娠41週3日に陣痛が発来したため入院した。妊婦健康診査で、HBs抗原陽性、HBe抗原陰性。その他の異常は指摘されていなかった。入院時、子宮口8cm 開大。直ちに分娩監視装置を装着したところ軽度の変動一過性徐脈が認められた。入院から1時間後に児を娩出した。娩出時に血性羊水が認められた。出生直後、児の啼泣は弱く、筋緊張が低下していたため、インファントラジアントウォーマー下で児の足底を刺激した。出生から30秒後には、あえぎ呼吸で心拍数は6秒間に8回であった。体重は3,000g前後、外表奇形は認められない。

49 生後8時間に経口哺乳を開始した。生後1日にビタミンK2シロップを投与し、人工乳による補足を開始した。生後3日に血便がみられ、アプト試験で変色なし、血便の検査で好酸球の集積が認められた。呼吸状態や哺乳力に異常はなかった。
 この児の血便の原因として最も考えられるのはどれか。

1.新生児メレナ
2.母体血の嚥下
3.ミルクアレルギー
4.胎便関連性腸閉塞
5.新生児壊死性腸炎

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初産婦(妊娠41週3日に陣痛が発来)。
・入院から1時間後:児を娩出(娩出時に血性羊水)。
・体重:3,000g前後、外表奇形は認められない。
・生後8時間に経口哺乳を開始した。
・生後1日にビタミンK2シロップを投与し、人工乳による補足を開始した。
・生後3日に血便がみられ、アプト試験で変色なし、血便の検査で好酸球の集積が認められた。
呼吸状態や哺乳力に異常はなかった
→各選択肢を消去できる理由をしっかり把握しておこう。

1.× 新生児メレナは考えにくい。なぜなら、アプト試験変色なしであるため。アプト試験とは、アルカリ抵抗試験ともいわれ、新生児の吐物や便が血性であった場合に新生児自身の消化管出血によるもの(新生児メレナ)か、出生時に飲み込んだり、授乳時に乳首が切れて乳汁に混じって嚥下された母体血(仮性メレナ)かを鑑別するための検査である。仮性メレナ(母体血)であればただちに、また真性メレナ(新生児血)であれば徐々に色が暗赤色に変化することから鑑別が可能である。ちなみに、新生児メレナとは、生後2〜4日の新生児に突然の吐血、血便、タール便(ノリのつくだ煮様)などの胃腸管出血をみる病気で、ビタミンKに依存する凝固因子の不足により血液が凝固しにくくなり出血を起こした病気を総称して呼ぶ。

2.× 母体血の嚥下は考えにくい。なぜなら、アプト試験変色なしであるため。母体血の嚥下により、仮性メレナが生じる。仮性メレナとは、新生児メレナのひとつで、出生時に母体の血液を児が飲み込んだために便中や吐物に血液が混じることである。消化管出血のハイリスク児には、出生後ただちにビタミンKの予防投与を行う。出血量が多い場合は、輸液や輸血療法が必要になる。

3.〇 正しい。ミルクアレルギーが、この児の血便の原因として最も考えられる。なぜなら、血便の検査で好酸球の集積が認めたため。ミルクアレルギーとは、牛乳たんぱく質に過敏なアレルギー体質の赤ちゃんに起こる食物アレルギーで、血便などの消化管症状が現れることがある。他の症状としては、嘔吐、下痢、腹部膨満、発疹、体重増加不良などがある。ちなみに、好酸球の集積とは、白血球の一種である好酸球が特定の部位に大量に集まることを指す。好酸球はアレルギー反応に関与しており、その集積によって炎症を引き起こし、組織を傷つけたり機能不全をきたしたりする疾患を引き起こす。

4.× 胎便関連性腸閉塞は考えにくい。なぜなら、血便との因果関係は低いため。胎便関連性腸閉塞とは、胎便が小腸や大腸につまり、腸が閉塞した状態になる病態である。1000g以下の超低出生体重児に多く発症し、子宮内胎児発育遅延の児にも起こりやすい。腸管の機能が未熟なために胎便をおくりだすことができず、腸管内に停滞する時間が長くなって胎便から水分が吸収され、さらに粘稠度が増して詰まってしまうことが原因で起こる。症状としては,胆汁性嘔吐,腹部膨隆,出生後数日間の胎便の排泄不全などがある。

5.× 新生児壊死性腸炎は考えにくい。なぜなら、呼吸状態や哺乳力に異常がないため。壊死性腸炎とは、腸への血液の流れの障害に、細菌感染などの因子が加わることにより腸が壊死してしまう病気である。 ほとんどは生まれてから30日未満(特に1週間以内)の赤ちゃんにみられ、時に生後30日目以降にみられることもある。早産児で生まれたか、重篤な病気がある新生児でみられる場合がほとんどである。症状として、腹部が膨れ、便に血液が混じり、新生児は緑色や黄色、さび色をした液体を吐き、非常に具合が悪くなりぐったりする。原因は完全には分かっていないが、血液中の酸素レベルの低下や腸への血流量の低下に伴い、腸が成熟していないことが部分的に関係している。低出生体重児、早産児の場合、経口摂取に必要な機能が成熟しておらず、消化管機能の未熟性があるため起こりやすい。

新生児メレナとはどんな病気ですか?

“メレナ”とは、本来“黒色便”のことです。そのため、“新生児メレナ”は新生児期の下血による黒色便を意味し、新生児が吐血や下血などの症状を呈する病気を総称して新生児メレナと呼ばれます。新生児メレナには、吐血や下血となる血液の由来が母体の血液である “仮性メレナ”と、児の血液である“真性メレナ”があります。仮性メレナの要因としては、出生時の胎盤からの出血や、授乳時に母親の乳頭裂傷などによる出血の嚥下があげられます。一方、真性メレナでは、主に児のビタミン K 欠乏による消化管出血が要因となります。両者はアプト試験(新生児血液中に多く存在するヘモグロビン F のアルカリ抵抗性を利用して母体血か新生児血かを判定する簡易検査)で鑑別することができます。ビタミン K は数種類の凝固因子の産生に必要な補助因子です。そのため、ビタミン K が欠乏すると消化管出血だけでなく、重症例では頭蓋内出血などを合併し、死亡する場合もあります。ビタミン K は胎盤通過性が悪く、母乳中のビタミン K 含量が少ないことなどから、新生児は出生時からビタミン K が欠乏しやすく、哺乳条件によっては乳児期まで欠乏しやすい状態が持続します。

(※一部引用:「Q3-6. 新生児メレナとはどんな病気ですか?」著:川口 千晴より)

 

 

 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 Aさん(38歳、1回経産婦)。妊娠36週5日。これまでの妊娠経過に異常はなかった。家事をしていたとき、少量の出血があり総合病院の産婦人科に来院した。Aさんは「出血と同時に水が流れる感じもあったが、最近は尿漏れが少しあり、破水かどうかはっきりしない」と言う。前回は正期産の経腟分娩であった。腟鏡診で後腟円蓋に少量の淡血性の貯留液を認めたが、視診では破水の有無は明らかではなかった。子宮口1.5cm開大、展退度30%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方であった。児は頭位であり、卵膜を触知する。

50 破水を確認するために行う検査として最も適切なのはどれか。

1.腟分泌物のインスリン様成長因子結合蛋白型定性
2.頸管内顆粒球エラスターゼ定量
3.超音波によるAFI測定
4.腟分泌物のグラム染色
5.胎便中トリプシン定量

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(38歳、1回経産婦、妊娠36週5日)。
・これまでの妊娠経過:異常はなかった。
・家事をしていたとき、少量の出血があり。
・Aさん「出血と同時に水が流れる感じもあったが、最近は尿漏れが少しあり、破水かどうかはっきりしない」と。
・前回:正期産の経腟分娩。
・腟鏡診:後腟円蓋に少量の淡血性の貯留液を認めた。
・視診:破水の有無は明らかではなかった
・子宮口1.5cm開大、展退度30%、Station -2、子宮頸管の硬度は中、子宮口の位置は後方。
・児は頭位、卵膜を触知する。
破水の有無を明確に行える検査を選択しよう。他の検査の目的も把握しよう。

1.〇 正しい。腟分泌物のインスリン様成長因子結合蛋白型定性は、破水を確認するために行う検査である。インスリン様成長因子結合蛋白-1(IGFBP-1)は,胎盤基底脱落膜および胎児の肝臓で産生され,羊水中に出現し,その濃度は妊娠10週ぐらいから妊娠週数に伴って急速に増加する。破水によって羊水が腟内に漏出すると子宮頸管腟分泌液中のIGFBP-1が出現,増加するため,妊婦における破水診断の指標となる(※引用:「検査項目スピード検索」Primary Care様HPより)。

2.× 頸管内顆粒球エラスターゼ定量は、早産や前期破水の主因である絨毛膜羊膜炎の診断を行う検査である。頸管内顆粒球エラスターゼ定量とは、子宮頸管粘液中の感染部位に遊走した好中球の顆粒から放出された遊離顆粒球エラスターゼやインヒビターと結合し不活性化された顆粒球エラスターゼを定量する検査である。

3.× 超音波によるAFI測定は、羊水量を評価するときに用いる。羊水過多とは、羊水量が800 mLを超える場合であり、母体の糖尿病や児が羊水をうまく飲めない消化管閉鎖などが原因となることが多い。診断方法は超音波検査によるamniotic fluid index(AFI)の計測であり、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。

4.× 腟分泌物のグラム染色は、細菌性腟症の検査である。スライドガラスに腟分泌物擦過物を塗り、グラム染色法で形態を観察して、腟内に存在する細菌の有無や量を調べる。ちなみに、グラム染色とは、主として細菌類を色素によって染色する方法の一つである。細菌を分類する基準の一つで、デンマークの学者ハンス・グラムによって発明された。

5.× 胎便中トリプシン定量は、破水後の羊水塞栓症などの検査の際に用いられる。羊水塞栓症とは、通常は破水直後、胎便中トリプシンや羊水中の物質から播種性血管内凝固症候群から発症する。頻度は2万分娩に1例である。

絨毛膜羊膜炎とは?

絨毛膜羊膜炎は、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。 この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。 したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。

 

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