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21 Aさん(29歳、2回経産婦)。妊娠38週4日、午前5時に自宅で少量の褐色帯下がみられたため、かかりつけの産科病院に電話連絡をした。Aさんは、15分に1回の不規則で弱い子宮収縮を感じており、胎児はよく動いていること、2日前の妊婦健康診査では子宮口が2cm開大していると言われたこと、前回の分娩では陣痛発来から分娩まで4時間であったことを助産師に伝えた。これまでの出産はいずれも正常分娩であった。
来院の必要性を判断するために最も重要な情報はどれか。
1.胎児の推定体重
2.第2子の出生体重
3.病院までの所要時間
4.妊娠中の体重増加量
5.次の妊婦健康診査の予約日
解答3
解説
・Aさん(29歳、2回経産婦、正常分娩)。
・妊娠38週4日、午前5時:少量の褐色帯下がみられた。
・15分に1回の不規則で弱い子宮収縮を感じている。
・胎児はよく動いている。
・2日前:子宮口が2cm開大している。
・前回の分娩は、陣痛発来から分娩まで4時間であった。
→選択するうえで最も重要な情報を取得できるようになろう。
1.× 胎児の推定体重より優先されるものが他にある。なぜなら、現在の状況(陣痛や褐色帯下の有無、分娩の進行の速さ)を判断するための直接的な情報とはいえないため。ただし、児の推定体重が小さいと分娩所要時間が短縮される可能性もあるため、必要な情報として収集しておこう。
2.× 第2子の出生体重より優先されるものが他にある。なぜなら、現在の状況(陣痛や褐色帯下の有無、分娩の進行の速さ)を判断するための直接的な情報とはいえないため。過去の出産時の体重は、今回の分娩の進行には直接関係しない。
3.〇 正しい。病院までの所要時間は、来院の必要性を判断するために最も重要な情報である。なぜなら、前回の分娩が短時間であったことから、今回も急速に進行する可能性があるため。病院までの移動時間を考慮し、適切なケアを行っていく。ちなみに、一般的に分娩全体に要する時間は、平均すると初産で約14時間、経産で約8時間である。
4~5.× 妊娠中の体重増加量/次の妊婦健康診査の予約日より優先されるものが他にある。なぜなら、現在の状況(陣痛や褐色帯下の有無、分娩の進行の速さ)を判断するための直接的な情報とはいえないため。
22 正期産において、陣痛発来前に経産婦よりも初産婦で生じやすいのはどれか。
1.外子宮口の開大
2.外陰部の静脈瘤
3.子宮頸部の軟化
4.子宮頸管の展退
5.腹直筋の離開
解答4
解説
(図引用:「女性器の解剖と整理」医学出版様より)
1.× 外子宮口の開大は、初産婦より経産婦に生じやすい。なぜなら、経産婦は、以前に出産を経験し胎児がすでに外子宮口を通過しているため。経産婦の外子宮口は長円形をして、初産婦と比べて子宮口が柔らかい特徴を持つ。
2.× 外陰部の静脈瘤は、初産婦より経産婦に生じやすい。なぜなら、外陰部の静脈瘤は、骨盤内の静脈が原因で生じるため。つまり、循環血液量の増加や妊娠子宮による圧迫などにより、静脈瘤の発生が多くなる。妊娠、分娩を反復するたびに悪化する特徴を持つ。
3.× 子宮頸部の軟化は、初産婦より経産婦に生じやすい。なぜなら、経産婦は以前に出産を経験し胎児がすでに子宮頸部(子宮の入り口)を通過しているため。
4.〇 正しい。子宮頸管の展退は、経産婦よりも初産婦で生じやすい。子宮頸管の展退(短縮)とは、分娩時に子宮頸管が子宮筋の収縮や胎児の下降によって短くなり、軟らかくなって開きやすくなる現象である。この現象は頸管熟化と呼ばれ、出産が近づくと胎児が通過しやすいように起こる。初産婦の子宮頸部はまだ一度も出産を経験していないため、組織がより弾力性に富んでいる。これにより、妊娠が進むにつれて子宮頸管が短くなり、薄くなるのが比較的容易である。一方、経産婦の子宮頸部は出産経験によって一度伸びた後に回復しているが、完全に元の状態に戻るわけではなく、弾力性が若干失われている。
5.× 腹直筋の離開は、初産婦より経産婦に生じやすい。なぜなら、妊娠中、子宮が大きくなることで腹直筋が左右に引っ張られ、中央の結合組織(白線)が伸びるため。経産婦はすでに一度または複数回この伸縮を経験しているため、筋肉や結合組織が再び引っ張られやすくなる。
23 回旋異常(前方前頭位)が生じている児頭および骨盤の状態を図に示す。先進部はStation +4 である。
骨盤内における児頭の最大周囲径の高さはどれか。
1.高在
2.高中在
3.低中在
4.低在
5.出口部
解答2
解説
骨盤内における児頭の最大周囲径の高さは、「骨盤濶部上腔」となる。高在と中在の間である。
(※図:児頭下降度に関する各種表現方法の対応表)
1.× 高在は、児頭最大周径が入口部に位置している状態である。
2.〇 正しい。高中在が、骨盤内における児頭の最大周囲径の高さである。骨盤内における児頭の最大周囲径の高さは、「骨盤濶部上腔」となる。高在と中在の間である。
3.× 低中在は、児頭最大周径が骨盤濶部(中在)と骨盤峡部(低在)の間に位置している状態である。
4.× 低在は、児頭最大周径が骨盤峡部(低在)に位置している状態である。
5.× 児頭最大周径が出口部の場合は、児頭先進部はすでに骨盤外となっている。
(※図引用:「C.産婦人科検査法16.骨盤計測」)
24 Aさん(38歳、1回経産婦)は、陣痛発来後2時間で体重3,650gの女児を経腟分娩した。分娩時の出血量は650mLであった。分娩直後に産道裂傷は認めなかった。Aさんは分娩30分後から下腹部痛の増強を訴えた。出血は少量。子宮底は腹壁から硬く触れ、内診を行うと腟壁の左側に圧痛を伴う8cm程度の緊満した腫瘤を触れた。内診後からAさんは気分不快を訴えた。体温36.3℃、脈拍150/分、血圧75/45mmHg。四肢に冷感が認められる。
Aさんの状態のアセスメントとして最も考えられるのはどれか。
1.弛緩出血
2.胎盤遺残
3.腟壁血腫
4.子宮内反症
5.羊水塞栓症
解答3
解説
・Aさん(38歳、1回経産婦)
・陣痛発来後2時間:体重3,650gの女児(経腟分娩)。
・分娩時の出血量:650mL(分娩直後に産道裂傷なし)。
・分娩30分後:下腹部痛の増強を訴えた。
・出血:少量、子宮底:腹壁から硬く触れる。
・内診:腟壁の左側に圧痛を伴う8cm程度の緊満した腫瘤あり。
・内診後:気分不快を訴えた。
・体温36.3℃、脈拍150/分、血圧75/45mmHg。
・四肢に冷感が認められる。
→それぞれの選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。
1.× 弛緩出血より優先されるものが他にある。なぜなら、Aさんは分娩後30分で、子宮底は腹壁から硬く触れ、出血は少量であるため。ちなみに、弛緩出血とは、児と胎盤の娩出後、本来なら子宮が収縮することで止まるはずの出血が続く状態である。原因は、多胎妊娠や巨大児による子宮の過伸展、子宮収縮剤の長時間投与、長引く分娩による母胎の疲労、子宮奇形などの体質によるもの、子宮内の凝血塊の遺残、全身麻酔などが挙げられる。弛緩出血が起きたときには、子宮収縮を促すためオキシトシンなどの子宮収縮剤の投与や、子宮マッサージが行われる。
2.× 胎盤遺残は考えにくい。なぜなら、Aさんの子宮底は硬く触れ、出血も少量であるため、胎盤遺残も考えにくい。ちなみに、胎盤残留とは、通常赤ちゃんの出生後数分~10分ほどで自然に排出される胎盤が、なにかしらの原因で排出されず子宮内に残ってしまう状態のことをいう。胎盤・卵膜の遺残は、出血が多く凝血塊が貯留するため、弛緩出血を助長する。
3.〇 正しい。腟壁血腫がもっとも考えられる。なぜなら、本症例の腟壁の左側に圧痛を伴う8cm程度の緊満した腫瘤あるため。ほかにも、脈拍の増加、血圧の低下、気分不快、四肢に冷感(ショック症状)も認められることからも症状と一致する。ちなみに、腟壁血腫とは、腟壁粘膜下組織の血管が破綻・断裂して血腫ができた状態のことである。急速な分娩進行による腟壁の急激な伸展、過大な頭部や肩甲の通過による腟壁の過度な伸展などが原因である。
4.× 子宮内反症は考えにくい。なぜなら、本症例の子宮底は、腹壁から硬く触れるため。ちなみに、子宮内反とは、子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう。子宮が裏返しになり子宮内膜面が腟内または腟外に露出し、胎盤剝離面から出血が続く状態である。病因は①外因性と②内因性、③もしくは複合したものがある。①ほとんどが外因性で、胎盤剝離前の臍帯牽引によることがもっとも多く、他のリスク因子として癒着胎盤や過短臍帯、臍帯巻絡がある。②内因性のものとしては、子宮奇形に伴う子宮筋の弛緩、多胎妊娠、巨大児、羊水過多などの子宮筋が弛緩した状態に起こりやすい。また、外因性と内因性が複合して発症する場合もある。
5.× 羊水塞栓症は考えにくい。なぜなら、羊水塞栓症の特徴である意識消失や呼吸困難などがみられないため。羊水塞栓症とは、羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる。肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と、それによる呼吸循環障害を病態とする疾患である。羊水塞栓症の症状として、①意識消失、②ショックバイタル、③播種性血管内凝固症候群(DIC)、④多臓器不全になる。ちなみに、播種性血管内凝固症候群〈DIC〉とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできて、細い血管を詰まらせる病気である。血液凝固が増加することで出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまい、過度の出血を引き起こす。感染、手術、出産時の合併症など、考えられる原因はいくつかある。
ショック指数(ショックインデックス)とは、出血、体液喪失が原因で起こる循環不全を循環血液量減少性ショックといい、重症度の指標としてショック指数(SI)を用いることがある。SI=「脈拍数(心拍数)/収縮期血圧」で表す。1.0で循環血液量のおよそ20%が、1.5でおよそ40%が失われていると考えられる。基準として、正常(0.5)、軽症(1.0)、中等症(1.5)、重症(2.0)となる。
25 Aさんは正常分娩後順調に経過し、退院3週後に母乳外来を訪れた。「急に寒気がして、熱を測ったら38.9℃でした。左の乳房が触るだけで痛くて、赤ちゃんも嫌がって飲みません」と話した。左乳房の外側上部に硬結があり、発赤がみられた。どろっとした乳汁が少量分泌された。
Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
1.「授乳は中止しましょう」
2.「抗菌薬が必要となります」
3.「市販の解熱薬を内服してください」
4.「乳房のしこりの部分を温めましょう」
5.「しこりがなくなるまで搾乳してください」
解答2
解説
・Aさん(正常分娩後順調、退院3週後の母乳外来)
・「急に寒気がして、熱を測ったら38.9℃でした。左の乳房が触るだけで痛くて、赤ちゃんも嫌がって飲みません」と話した。
・左乳房の外側上部に硬結があり、発赤がみられた。
・どろっとした乳汁が少量分泌された。
→本症例は、化膿性乳腺炎が疑われる。化膿性乳腺炎とは、うっ滞性乳腺炎の症状に加え高熱、倦怠感、筋肉痛、おっぱいの色が黄色くドロドロしているなどの症状がある。原因として、細菌が乳頭部から乳管を通って乳管や乳腺組織内に広がって炎症を起こした結果と考えられている。原因となる細菌は黄色ブドウ球菌が多い。治療として、有効な抗生物質が投与され、解熱鎮痛薬で痛みや炎症を抑える。
→うっ滞性乳腺炎とは、乳腺に炎症を起こしている状態で、母乳が乳房にたまってしまうことが原因となって発症する。赤ちゃんが飲む量より母乳分泌量が大幅に多いことで発症するケースが多い。乳管が十分に開いていないと母乳が出にくく、それによって乳腺に母乳がたまって起こる。症状は、おっぱいが張り石のように硬くなる、痛みや熱感、発赤などである。化膿性乳腺炎はうっ滞性乳腺炎の症状に加え高熱、倦怠感、筋肉痛、おっぱいの色が黄色くドロドロしているなどの症状がある。うっ滞性乳腺炎の治療として、症状が乳房の一部分のみで軽度の場合には、健康的な生活習慣と乳房のケアによって改善が期待できる。具体的には、バランスの取れた食事と十分な休養を心がけるほか、乳房を温めてマッサージしながら積極的に授乳を行う、授乳だけで母乳が余る場合には搾乳を行うといったケアが挙げられる。乳房のマッサージには乳管を広げ、母乳が出やすくなる効果が期待できる。
1.× 「授乳は中止しましょう」と伝える必要はない。むしろ、乳房を温めてマッサージしながら積極的に授乳を行う、授乳だけで母乳が余る場合には搾乳を行うことで、乳腺炎の治療となる。これは、乳腺内に溜まった乳汁を排出することで症状の改善が期待できるためである。
2.〇 正しい。「抗菌薬が必要となります」と説明する。なぜなら、化膿性乳腺炎の原因として、細菌が乳頭部から乳管を通って乳管や乳腺組織内に広がって炎症を起こした結果と考えられているため。原因となる細菌は黄色ブドウ球菌が多い。治療として、有効な抗生物質が投与され、解熱鎮痛薬で痛みや炎症を抑える。
3.× 「市販の解熱薬を内服してください」と説明する優先度は低い。なぜなら、化膿性乳腺炎の発熱の原因は、細菌であるため。まず優先される治療として、有効な抗生物質が投与され、次に対症療法として解熱鎮痛薬で痛みや炎症を抑える。つまり、根本的な原因(細菌)に対する抗菌薬が必要である。
4.× 「乳房のしこりの部分を温めましょう」と伝える必要はない。乳房のしこりの部分を冷やすことが優先される。なぜなら、冷やすことで張りや熱のこもりの改善が見込めるため。炎症症状に対する温熱療法は、血流を促進させ炎症を助長される可能性があるため行わないことが望ましい。
5.× 「しこりがなくなるまで搾乳してください」と伝える必要はない。なぜなら、搾乳を行う場合は、授乳だけで母乳が余るときであるため。しこりの有無で判断しない。
急性化膿性乳腺炎とは、乳汁うっ滞に細菌感染が生じた病態のことである。特徴的な臨床症状は、乳房の発赤、腫脹、硬結、疼痛といった局所症状と共に悪寒戦慄を伴う発熱や全身倦怠感などの全身症状を認めることである。また患側の腋窩リンパ節の有痛性の腫大を認める場合もある。化膿性乳腺炎の発症する時期は、産褥2~6週頃とされている。重症になるにつれて病巣が拡大し乳房全体が浮腫状に腫大するが、乳腺の炎症が限局してくると最終的には膿瘍形成をきたすことになる。化膿性乳腺炎の原因としては、うっ滞乳腺炎から移行して乳管口から細菌が侵入して炎症を起こしたタイプと乳頭亀裂、乳頭のびらんからの細菌感染による炎症によって引き起こされたタイプの二種類がある。起炎菌は、黄色ブドウ球菌が最も多いが、連鎖球菌、大腸菌なども認められる。また頻度は低いが、嫌気性菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブトウ球菌(MSSA)、カンジダ菌が原因菌となる場合もある。臨床症状は、うっ滞性乳腺炎に比較して強く、白血球数の増加やCRPの上昇が参考になる。極めて稀ではあるが、乳腺炎と鑑別しなければいけない疾患に産褥期の炎症性乳癌があげられる。炎症性乳癌に特徴的な皮膚所見である橙皮様(peaud orange)、豚皮様 (pig skin) 皮膚を呈し、血液生化学検査で炎症反応の所見が乏しい場合は、本症も念頭に置いて鑑別診断の目的で組織生検などの精査も必要となる。化膿性乳腺炎の治療は、まず保存療法としては、局所の安静、冷庵法を行い、乳汁うっ滞を防止することが重要である。特に乳汁うっ滞は、炎症を悪化させるので、重症例を除いては、基本的に授乳は中止させる必要はない。薬物療法としては、抗菌薬、消炎鎮痛剤などの投与を行う。広域抗菌スペクトラムを有する合成ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系が第一選択とされ、適合性が得られれば、48時間以内に臨床症状は改善するが、投与期間に関しては7~10日間程度の長期投与を行う方が良好な経過が得られると報告されている(※参考:「医療での乳腺炎の診断と治療の実際」著:竹下茂樹)。