第100回(H29) 助産師国家試験 解説【午前1~5】

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問題の引用:第100回保健師国家試験、第97回助産師国家試験、第103回看護師国家試験及び第103回看護師国家試験(追加試験)の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。コメント欄にて誤字・脱字等、ご指摘お待ちしています。よろしくお願いいたします。

 

1 遺伝性疾患で正しいのはどれか。

1.常染色体劣性遺伝疾患では患児の同胞の遺伝的危険率は1/2である。
2.近親婚では児が常染色体劣性遺伝疾患を発症する可能性が低くなる。
3.両親が正常であっても常染色体優性遺伝疾患の児が生まれる。
4.X 連鎖劣性遺伝疾患は女児に発症する。

解答

解説

1.× 常染色体劣性遺伝疾患では患児の同胞の遺伝的危険率は、「1/2」ではなく1/4である。常染色体劣性遺伝とは、常染色体上の遺伝子の変異が2つある場合に発症する遺伝形式である。男性と女性の両方に現れる。したがって、AA,Aa,Aa,aaとなる。

2.× 近親婚では児が常染色体劣性遺伝疾患を発症する可能性が「低く」ではなく高くなる。なぜなら、近親者同士の結婚は、希少な劣性遺伝子(アレル:対立遺伝子)を持つ確率が高くなるため。つまり、両親が同じ劣性遺伝子を持つ可能性が高いため、その劣性遺伝子が子に伝わって発現する可能性が高まる。

3.〇 正しい。両親が正常であっても常染色体優性遺伝疾患の児が生まれる。なぜなら、遺伝子疾患には、突然変異が生じることがあるため。したがって、両親が正常であっても常染色体優性遺伝疾患の児が生まれ「ない」と断言できない。常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の約3割が孤発性と呼ばれ、血縁者に発症者が見つからない。ちなみに、常染色体優性遺伝とは、特徴が出やすい優性遺伝子に遺伝子変異があるために男女差なく1/2の確率で病気に関係する遺伝子症状が出る遺伝である。

4.× X 連鎖劣性遺伝疾患は、「女児」ではなくほとんど男児(まれに女児)に「」発症する。X連鎖劣性遺伝疾患とは、X染色体上の遺伝子に異常が生じて発症する疾患である。女性はX染色体を2本、男性はX染色体を1本持っているため、通常は男性のみ発症する。

常染色体優性遺伝とは?

染色体には性染色体と常染色体がある。常染色体優性遺伝とは、遺伝によって子孫に伝えられる性質(形質)が常染色体上の遺伝子で決定され、その形質が現れる場合のことを指す。

 

 

 

 

 

2 Aさん(33歳、初産婦)は、陣痛発来後20時間で体重3,250gの男児を頭位で経腟分娩した。出生直後の児頭には、頭頂部方向に伸びる形で変形があり、左側前方に産瘤が認められた。
 産道通過の状態として推測されるのはどれか。

1.第1胎向であった。
2.大泉門側が先進していた。
3.小泉門は母体の前方であった。
4.小斜径周囲面が児頭最大通過面となって産道を下降した。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(33歳、初産婦)
・陣痛発来後20時間:体重3,250gの男児を頭位で経腟分娩。
・出生直後の児頭:頭頂部方向に伸びる形で変形左側前方に産瘤
→出生直後の児頭から、どのような顎の位置(胎勢)で分娩したか分かるようにしておこう。本児は、頭頂部方向に伸びる形で変形(短頭蓋)しているため、前頭位(反屈位)であることが分かる。ちなみに、①長頭蓋:後頭位もしくは頭頂位(屈位)、②短頭蓋:前頭位もしくは頭頂位(反屈位)、③三角形:額位(反屈位)、④鞍状:顔位(反屈位)※頭頂位は、長頭蓋、短頭蓋の両方なる可能性がある。

1.× 「第1胎向」ではなく第2胎向である。なぜなら、「左側前方に産瘤」があるため。第一胎向であれば、産瘤が右側に起こる。第1胎向の場合は、第2回旋の際、左側の頭蓋骨が仙骨から圧迫を受ける。すると左側の頭蓋骨が右側の頭蓋骨の下に潜り込むように骨重積(産道からの圧迫により骨同士が重なり合うこと)をし、右側の頭蓋骨が浮き上がり、その結果右側の皮下組織に産瘤が生じる。ちなみに、産瘤とは、赤ちゃんが産道を通過する際に、周囲から圧迫を受けて、頭や足などの皮下にこぶができることである。主に頭に数cmのこぶができることが多く、似た病気に頭血腫と帽状腱膜下血腫があり、見分けることが必要である。

2.〇 正しい。大泉門側が先進していた。なぜなら、本児は、頭頂部方向に伸びる形で変形(短頭蓋)し、前頭位(反屈位)にて分娩となっているため。ちなみに、後頭位であれば小泉門、頭頂位であれば頭頂部、額位であれば額部、顔位であれば顔部が先進部となる。

3.× 小泉門は母体の「前方」ではなく後方である。なぜなら前頭位であるため。第2回旋で右回りとなる。

4.× 「小斜径周囲面」ではなく児頭前径周囲が児頭最大通過面となって産道を下降した。屈位では、最短の小斜径周囲で産道を通過できる。一方、反屈位の場合、通過面が産道抵抗を大きくするため、小斜径周囲とはならない。したがって、反屈位の場合、遷延分娩、微弱神通、胎児機能不全などの合併症を起こしやすい。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

 

 

 

 

 

3 疾患と徴候の組合せで正しいのはどれか。

1.深部静脈血栓症:Homans<ホーマンズ>徴候
2.絨毛膜下血腫:Blumberg<ブルンベルグ>徴候
3.前置胎盤:Piskacek<ピスカチェック>徴候
4.胎児水腫:スカーフ徴候

解答

解説
1.〇 正しい。Homans<ホーマンズ>徴候は、「深部静脈血栓症」に用いられる。Homans徴候とは、膝関節伸展位で足関節の背屈を他動的に強制する。腓腹部に疼痛を訴える場合(Homans徴候陽性)には下腿の深部静脈血栓症の可能性を示唆する。ちなみに、深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

2.× Blumberg<ブルンベルグ>徴候とは、圧痛のある部位をできるだけ深く圧迫し、急に手を離すと鋭い痛みを感じる反跳痛のことである。炎症が波及した腹膜が急速に元の場所へ戻ると痛覚がより刺激されるために生じるもので、炎症が虫垂壁を超えて壁側腹膜に及んでいるサインである。腹膜に炎症があることを示し、腹膜炎を呈する疾患(消化管穿孔・急性虫垂炎など)で出現する。ちなみに、絨毛膜下血腫とは、妊娠初期や中期にみられる胎嚢の周りにみられる血液が溜まった部分のことをいう。不正性器出血で気づき、超音波検査で診断がつく。報告に幅がみられるが、全妊娠の0.5%~22%ぐらいの頻度である。多くの場合が、安静などの自然経過で改善する。

3.× Piskacek<ピスカチェック>徴候とは、妊娠初期には子宮の増大が均等に進まず、着床部が膨隆し柔らかくなる徴候である。妊娠6〜12週頃に著明となる。ちなみに、前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部もしくは全部を覆っている状態のことをいう。頻度として、全分娩の約1%弱を占めている。一般的に前置胎盤は無症状であるが、典型的な症状として①腹痛を伴わない突然の性器出血(警告出血)や大量性器出血があげられる。これらの症状は、お腹が大きくなり張りやすくなる妊娠28週以降に増加するといわれている。

4.× スカーフ徴候とは、正常(陰性)の場合、腕を首に巻きつけるようにすると抵抗するが、陽性の場合は抵抗がみられない反応のことである。例えば、ダウン症児の筋緊張低下の際に陽性となる。ちなみに、胎児水腫とは、お母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんの全身がむくんでしまっている状態である。むくみはお腹のなかや、胸のなか、皮膚の下、胎盤などあらゆるところでみられ、赤ちゃんの状態がよくないことを意味する。 胎児水腫を発症した際、赤ちゃんの状態は非常に悪く、死産に陥ることもある。

 

 

 

 

 

4 30歳の初妊婦。身長161cm、体重88kg(非妊時体重78kg)。妊娠前に高血圧症を指摘されていたが、薬物治療は行われていなかった。妊娠初期は尿蛋白が陰性であった。妊娠33週0日、妊婦健康診査で、体温37.0℃、脈拍78/分、整、血圧156/108mmHg。動悸、息切れなどの訴えはない。浮腫はない。尿蛋白3+、尿糖(-)、日尿蛋白量は2.7g/日であった。腹部超音波検査では、胎児推定体重1,970g、胎児形態異常はない。
 この時点で考えられるのはどれか。

1.加重型妊娠高血圧腎症
2.ネフローゼ症候群
3.高血圧合併妊娠
4.妊娠高血圧

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の初妊婦(身長161cm、体重88kg:非妊時体重78kg)
・妊娠前:高血圧症(薬物治療は行われず)。
・妊娠初期:尿蛋白は陰性
・妊娠33週0日:体温37.0℃、脈拍78/分、整、血圧156/108mmHg
・動悸、息切、浮腫はない。
尿蛋白3+、尿糖(-)、日尿蛋白量は2.7g/日。
・腹部超音波検査:胎児推定体重1,970g、胎児形態異常はない。
→それぞれの病気の特徴や定義をしっかりおさえておこう。

1.〇 正しい。加重型妊娠高血圧腎症がもっとも考えられる。
【加重型妊娠高血圧腎症の定義】
高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に蛋白尿、もしくは基礎疾患のない肝腎機能障害、脳卒中、神経障害、血液凝固障害のいずれかを伴う場合。
②高血圧と蛋白尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降にいずれかまたは両症状が増悪する場合。
③蛋白尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に高血圧が発症する場合。
④高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に子宮胎盤機能不全を伴う場合。

2.× ネフローゼ症候群は考えにくい。なぜなら、本症例は浮腫が認められないため。ちなみに、ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

3.× 高血圧合併妊娠は考えにくい。なぜなら、本症例は蛋白尿が認められるため。蛋白尿が認められなかった場合、高血圧合併妊娠といえる。ちなみに、高血圧合併妊娠とは、妊娠前または妊娠20週未満、または分娩後12週以降も140/90mmHg以上の高血圧を認める場合をいう。

4.× 妊娠高血圧は考えにくい。なぜなら、本症例は妊娠前から高血圧症と診断されているため。ちなみに、妊娠高血圧とは、妊娠20週以降に高血圧が出現し、分娩後12週までに正常化する場合である。妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に高血圧と蛋白尿が出現し、分娩後12週までに正常化する場合である。

(※図引用:「妊娠高血圧腎症の診断」著:神田昌子より)

 

 

 

 

 

5 24歳の初産婦。妊娠37週3日、自然に陣痛が発来した。陣痛開始から5時間後の胎児心拍数陣痛図を下図に示す。
 判読で正しいのはどれか。

1.早発一過性徐脈
2.遅発一過性徐脈
3.変動一過性徐脈
4.遷延一過性徐脈

解答

解説


1.× 早発一過性徐脈とは、子宮収縮にともなって心拍数の減少の開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなってゆるやかに元に戻る徐脈のことをいう。一過性徐脈の最下点が子宮収縮の最強点と概ね一致しているものをいう。

2.× 遅発一過性徐脈とは、子宮収縮の最強点に遅れて心拍数が減少し、減少開始から最下点まで30秒以上の経過でゆるやかに下降し、子宮収縮の消退にともなって元に戻る徐脈である。母児間におけるガス交換の減少を示し、胎児の危険を示す。糖尿病、高血圧、妊娠中毒症、腎炎、予定日超過などの胎盤機能不全や母児低血圧、その他子宮収縮剤の過剰投与などが原因となる。

3.〇 正しい。変動一過性徐脈がもっとも考えられる。変動一過性徐脈とは、15bpm以上の心拍減少が急速に起こり、減少開始から最下点まで30秒未満で急速し、回復までに15秒以上2分未満かかる徐脈である。高度の判断は、①最下点が70 bpm未満で持続時間が30秒以上、②最下点が70 bpm以上80 bpm未満で持続時間が60秒以上で評価する。子宮収縮に伴って発生する場合は、一定の形を取らず、下降度、持続時間は子宮収縮ごとに変動することが多い。

4.× 遷延一過性徐脈とは、心拍数減少が15bpm以上で、開始から回復まで2分以上10分未満の波形をいう。その心拍数減少は直前の心拍数より算出される。10分以上の心拍数減少の持続は基線の変化とみなす。最下点が80bpm未満のものは高度遷延一過性徐脈と呼ばれる。

胎児心拍数陣痛図の基準値

胎児心拍数基線は、10分間の区間の平均心拍数で5の倍数で表現する。基線は一過性変動部分や基線細変動増加の部分は除外し、2分間以上持続している部分で判断する。胎児心拍数基線細変動は、胎児心拍数基線が判読可能な部分で判読する。基線細変動は、胎児心拍数基線の細かい変動で、定義上、1分間に2サイクル以上の胎児心拍数の変動で、振幅、周波数とも規則性がないものを指す。

①胎児心拍数基線
・頻脈:160bpm以上
・正常脈:110bpm~160bpm
・徐脈:110bpm未満

②胎児心拍数基線細変動
・細変動消失:肉眼的に認められない
・細変動減少:5bpm以下
・細変動中等度:6~25bpm
・細変動増加:26bpm以上

 

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